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プレイヤーズ  作者: 雨川水海


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24/61

石器時代VS鉄器時代

 落とし穴スタートを決めた古代遺跡探索隊は、そこで待ち構えていたモンスターをボッコボコにして意気揚々と遺跡探索を開始した。


 広間の次に待っていたのは、やっぱり四角い部屋と今度は閉ざされたドアである。

 ドアにはなんか動きそうなパズル的なものがはめてあり、説明文らしき読めない文字もある。


「ユッキー男爵令嬢、これなに?」

「ドアを開くための仕掛けかな?」


 でしょうね。それ以上の情報が欲しくて話しかけたの。

 難しい顔で首を捻ってないで、このドアを開けてみて。


「ええと、この文字は……危険度の順に、色を並び替えろって書いてあるね」

「読めるのか、ユッキー!?」

「古代語解読スキルの力だよ!」


 このイベントのためだけにあるようなスキルを、男爵家のあのでかいお屋敷の地下書庫を歩き回って手に入れたんだってさ。

 そいつは頼もしいと、俺は早速このギミックについて尋ねる。


「しかし、危険度の順に色? なんの危険度? 赤と青と紫だけど? 信号機に紫ってないけど?」

「何の危険度かっていうと、多分ここに書いてあるやつだね……そして、ここの文字は、あたしには読めません!」

「ひょっとして、解読スキル低くない?」

「低いです!」


 胸を張って言いおった!

 ゲーム的に言って、あなたそれレベル上げ足りなかったやつでしょ。その不都合を満面の笑顔で認めるとは、いやー、本当にゲームを楽しんでいるよ、この子。


「じゃあ、仕方ないね。なんか当てはある?」

「ないね。さっぱりわかんない。まあ、赤は危険だよね。信号機を基準にして」

「そうだね。じゃあ、赤を一番危険な方に……これ右と左どっちの危険が高い扱い?」

「多分、ここの文字がそれを示していると思うんだけど」

「読めないんですね、わかります」


 じゃあもうどうしようもないな!

 イキアタリバッターリの呪文を唱えよう!


「どうする、これの並び替えはユッキーがやる?」

「やるやる! このミラクル・ユッキーに任せたまえ!」

「おー、ミラクルに期待してるぞ!」


 こっちは戦闘準備だ。

 ユッキーのミラクルはプラスとマイナスどっちも起こすからね!


 俺の警戒を余所に、ユッキーは左から順に、赤・紫・青とパズルを並べる。

 鼻歌なんかしちゃってご機嫌だ。緊張感がない。


「よっしゃ、オープン・ザ・ドア! いや、オープン・セサミの方が開きそうかな?」

「セサミとセロリって似てない?」

「うわ本当だ似てる!? ところでセサミってなんだっけ?」

「あれだよ、ほら。ええと、何十人かの盗賊のやつで出て来た呪文だろ? だから、ほら、砂漠地方の盗賊用語かなんか?」

「隠語ってやつだね!」

「業界用語も隠語って言うのかな? それでいったら芸能業界で真夜中に会ってもオハヨウって言うのも隠語なのか」

「えー、なんかそれは違うスメルを感じる……。今度先生に聞いてみようか?」

「国語の空田先生、こういう話題に食いつくよな。マジでいい先生。そりゃ俺の国語の成績も上がるよ」


 で、俺の国語の成績が上がり気味なのはいいとして、目の前のドアは開かなかった。

 謎解き失敗! そして罰ゲームだオラァンって感じのBGMと共に、左右の壁に埋め込まれていた熊の像が埃を上げながら動き出した。


「ほらほら、ユッキー! あの像動いた、やっぱり動いた!」

「ほんとだすげえ! 流石はマウス、ゲーマーセンスの大部分をバトルに注ぎこんだ男、的確に敵を当てていくー! じゃ、いってらっしゃい!」

「はい、いってきまーす!」


 というわけで、熊の石像、挨拶代わりの拳骨を食らえー!



****



 熊の石像を倒したら、ドアは開いた。


「普通に考えてさ、正しい鍵の開け方を知らないってことは、侵入者だ殺す! って流れは理解できるじゃん?」

「そうだね、防犯だね」

「侵入者だ殺す! あ、でもこれ殺せないや。防犯設備を上回る危険人物だけど先に進んでどうぞ~っていうのはどう考えてもおかしくね?」

「そうだね、ドア全開にしてやべー奴をお迎えしちゃってるね」


 つまり、目の前で開いたこのドアも罠なのだ!

 このマウス、見え見えの罠に引っかかるほど間抜けではないわ!


「でもさ、もしこのドア開かなかったら、他に別な入り口がどっかにあるってことで、それ探す必要あるよ。あたしが見たところそれっぽいのないけど、マウス、探せる?」

「世の中全てを疑うのはよくないよね。信じる者は救われるよ」

「で、本音は?」

「探すの面倒だから、とりあえず目の前にできた道を進もうぜ。罠だったらそん時はそん時よ。ぶち砕いて行く」


 俺の断言に、ユッキーもイエーイと手を上げて全面賛成のご様子。ハイタッチして俺達は目の前のドアを潜るのだった。

 その先に広がっていたのは――!


 長い、長い一本道の下り坂と、侵入者を踏み潰さんと全力で前転してくる巨大石球だった!


「まままマウスー! ぶち砕くって言ったよね! 言ったよねぇ!?」

「無理無理無理無理! 破壊不可オブジェクトを砕くのは無理無理無理無理!!」


 俺だって砕ける物なら砕きたいよ!

 魔法の言葉イキアタリバッターリと唱えながら粉砕してやりたい。

 でも、軽く石ころ投げてみたら、エフェクトが「これ絶対壊れないからね、無駄なことすんなよ、わかったな!?」っていうそれだったんだよ!


「マウスの嘘吐きー!」

「嘘じゃありませんー! 誇大広告ですー! 出来もしないこと出来るって大口叩きましたー! ゴメンナサイ!」

「素直に謝れるの偉い! 許す!」

「やったー、許されたー!」

「でも後ろの石球は許すかなー!? ふはははははは――ああああもうやだぁああああ!」


 ゴロンゴロンと唸りを上げる石球の効果音を切り裂いて、涙目でユッキーが叫ぶ。

 待て待て待て慌てるようなことは何もないぞ、ユッキー。これはゲームだ。

 後ろを振り返らなければただの短距離走だぞ。例え、すぐ後ろに迫るものが明らかな即死トラップだとしても、やることは変わらない。

 ゴールラインまで走るのだ。


 ゴールラインが百メートル先か一キロ先かわからんし、ひょっとしたらラインは三途の川の形をしているかもしれないが。


「ぎゃー! マウスー! スタミナゲージ、スタミナゲージがオレンジゾーンに突入! 間もなくレッドゾーンに入りまーす!」

「ぐわー! 低レベル後衛寄りステータスぅ!」


 そうだよね、俺より先にユッキーのステータスの方が限界に来るよね!

 そしてこの長い一本道はガッデムなことにまだまだ先が見えない。つまり、ユッキーのスタミナゲージは燃え尽きて、鈍亀化することは確定である。


 ええい、どうするどうする。

 馬鹿者、考えるな、砕くのだ!

 元よりこのマウスに出来ることは、この五体で殴る蹴る投げる極める以上四つ!

 追加で突くと引っ掻くも出来るけどまあ省略して、とにかく四つも出来たらすごいでしょ!


 破壊不可オブジェクト?

 ぺっ、破壊出来なくたってすごいマウスの五体にかかればなんかこうあるだろ!


 こちとら打撃がメイン属性の格闘使い。

 そしてこのゲームの石属性は打撃が弱点。

 突進攻撃をクリティカルで相殺するのは俺の趣味!


 速度を落としてユッキーを先行させ、ゴロゴロ唸る石球君との距離を自ら詰める。

 手が届く距離で発動させるスキルは、ノックバック効果がある『スマッシュ』の上位派生『ブルスマッシュ』だ。


 唸れ俺のゲーマーセンス。

 ありとあらゆる問題をぶち砕いて(こじあけて)来た暴力という万能鍵、この程度の石ころに通用しないわけがない!

 拳を振り上げて足を止める俺に、ユッキーが「へあ!?」と間抜けな声でびっくりしている。


 あれだ、風車に騎馬突撃をする勇者を見るような反応だ。

 なにしてんだオメエ、頭ダイジョーブか!? って感じのやつ。

 安心したまえ、ユッキー!

 ヘキサが前に言っていた、風車をドラゴンと思い込んで突撃した男とこのマウスは違うぞ!


 マウスは数多のゲームでドラゴンを相手取って来た本物のドラゴンスレイヤーだ!


「ゴロゴロ転がってんだから破壊不可でも移動不可オブジェクトじゃないんだろ! オブジェクトをどうこうして地形を有利に整えるのは知的な戦闘行動には必須のスキルよ!」


 一人で多数を相手取る時、出入り口や通路を狭めて一度に襲ってくる人数を絞るのは常套手段よ。

 勢い余って壁を壊しちゃって、逆に出入り口が増えたせいで大乱闘なんてお茶目はしょっちゅうやっている。


「オラァ、ブルスマッシュパーンチ!」


 巨石に激突する鉄拳。出た判定は、デス――ではなく、クリティカル。

 実は段ボールと発砲スチロールで作られていた文化祭の展示品だったのでは? と訝しむような軽さで石ころがノックバックした。


 ふはははー!

 当たり前だ、石ころと鉄拳だぞ。

 鉄の方が圧倒的優位であるのは歴史的に見ても明らか。石斧に鉄槍が負けるわけないだろうがぁ!

 我こそヒッタイトの後継者、歴史を勉強してから出直して来い!


 俺は優雅に石ころに背を向けて、再び走り出す。

 背中を追いかけて来るゴロンゴロンという音から逃げるために。


「そりゃあ破壊不能オブジェクトだから、坂道をまた転がっては来るよねー!?」


 出直しが早いんだよ石ころぉ!

 畜生、人類の最大の武器である知力、それを暴力的な質量でねじ伏せようとして来るとか恥ずかしくないのか!

 その大きな体の中に恥とか敬意とか高度な精神活動の産物は入ってないのか石材野郎めぇ!

 知っているか、そういうのを木偶の坊って言うんだぞ。

 まあ、木じゃなくて石だけど。


「マウスー! マウスー!」


 おっと、ノックバック中に先に進んだユッキーからのコールだ。

 松明の灯りからするに、ユッキーはもう走っていないようだ。ひょっとしてゴールラインという名の横道に着いたのかもしれない。

 石ころ君は頭の中までガッチガチの脳筋野郎なので直進しかできないのだ。

 可哀そうな石ころ君。顔で笑って心で笑って見送ってあげるからね!


 高笑いを吐き出してやろうと唇を釣り上げて――


「マウスー! 行き止まりー!」


 ユッキーの言葉の台詞で盛大に引きつった。

 思わず後ろの石ころ君を振り返ると、ゴロンゴロンという回転音が高笑いに聞こえる気がする。

 破壊不可だからって人のこと嘲笑っていいとでも思ってんのか騎士道インストールさせんぞ!


 むしゃくしゃしたのでマウス式騎士道に乗っ取ってブルスマッシュでもう一発殴ってやった。時間稼ぎだよ!


 素早くユッキーに駆け寄って、行き止まりとはなんぞや、と確認する。


「見てマウス! 謎解きギミック!」


 ユッキーが指さしたのは、これ見よがしにここ通路が解放されるよ、と言わんばかりの壁だった。いやもう、壁と床と天井の色合いの違いとかから、すぐにわかる。

 あと、さっき危険度順に色を並べろとあったドアと同じ古代語が書いてあるもんね。

 そうか、さっきのはチュートリアルでもあったわけだ。


「そうだね、見るからに謎解きギミックだね! 早く解こう!?」

「それが、また読めない字が多くて! なんか、なんかの倒し方? それを答えよとか書いてあるんだけど、マウスわかんない!?」

「はあ!? なんかの倒し方だぁ!?」


 〝なんか〟がなんのことだかさっぱりわからないが、倒し方と聞かれたら答えは一つしかない!


「殴ればドラゴンだって倒せるって石器時代の前から決まってるだろうがぁ!」

「なるほどぉ!?」


 ユッキーの感心の声を効果音として、壁に鉄拳を叩きつける。

 おっしゃ大正解だ、破壊可能オブジェクトの手応え!

 やっぱり暴力は最高の万能鍵だって証明されたなぁ!


 行き止まりの壁野郎をボッコボコのボコにして、無事開通。

 ユッキーの背中を押してダッシュ、ダーッシュ!

 石ころ君は、俺が砕き残した行き止まりの壁を完全に粉砕して、まだまだ続くよと後を追いかけて来る。


 そこで止まらないのかよ!

 石ころ君はそこまでなんじゃないかってちょっと期待したよ!


「ユッキー、スタミナゲージは!?」

「さっきの謎解きの間で割と回復した! でも、またすぐ減っていくー! マウスは!?」

「行き止まりへのラッシュでも消耗したから実は結構ヤバイ!」

「だよねー!?」


 どうする。まだスタミナが残っているうちに、石ころ君を殴ってノックバックしておくか?

 いやでも、また行き止まりが出て来たらスタミナは残しておいた方が……でも、その時まで残っているかどうか不安だな。


 ゴールラインはまだか?

 本当に三途の川がゴールラインになりそうじゃね?


 どうしようか。このままデスるのはムカつくから、とりあえず石ころ君を一発殴るか。

 ちらちらと後ろを振り返っていると、真っ直ぐ前を向いて必死に走るユッキーが叫ぶ。


「あーっ!? 灯り、灯り! マウス!」


 なるほど、ユッキーの言葉通り、先の方にユッキーの持つ松明とは別の光がある。

 さてはゴールか。

 そう予想するのと、スタミナゲージの残量の確認と、石ころ君への怒りを爆発炎上させるのはほぼ同時だ。


「ゴール前にもう一発殴ってやるぁ!」


 反転して石ころ君に殴りかかる。

 ふははは、三発目のブルスマッシュだ! 破壊不可でよかったな、石器野郎!

 あばよ!


 石ころ君に別れを告げて走り出す。

 先の方でなんか声が聞こえていたから、ユッキーのことが心配だったけど、どうやら無事らしい。ユッキーの松明の灯りが、もうゴールらしき灯りと混じっている。


「マウスー! マウスー!」

「おう、今行くー!」

「足元! 気をつけて! ジャンプ!」


 は? なんて?


 首を傾げるスタミナゲージほぼほぼ枯渇状態のマウス君に向かって、ユッキーが怪しい儀式を行っている。

 松明を下段で振り回しているのだ。

 はてな、と自然と視線は下段に向く。


 床は、灯りが届いていないので暗い。真っ暗だ。何も見えない。

 まるで床がないみたいだ。

 あれ、おかしいな。さっきまでの通路でも、流石に足元くらいはぼんやり見えていた。今はゴールの灯りとユッキーの松明でも床が見えない。

 まるで大穴が空いているかのようだけど、ははは、まさかそんな馬鹿な!


「穴! ジャンプ! ジャンプ!」


 そんな馬鹿な話が目の前に迫っていることを、ユッキーの必死の叫びが教えてくれる。


 やっべえ、ジャンプ必要なの!?

 スタミナゲージ足りるかなぁ!?

 いやそれ以前にどこからが穴だ。踏み切り位置がわかりづらい。


 ああああ、ユッキーのすぐ後ろにくっついていれば、ユッキーの灯りでわかりやすかったのに!


「もーっ、なんですぐ後ろにいなかったの!?」


 お言葉はごもっとも。

 主人公からこっそり離れて単独行動とか、物語ならがっつりやられるパターンだわ。

 だけど、石ころ君のムカつく頭をもう一回小突きたかったの!


「ごめーん、ユッキー!」

「なにー!?」

「ジャンプは厳しいかもー!」


 スタミナの残量的に走り幅跳びで大した数字は出せそうにない。

 踏み切り位置がわからないのも痛い。


「えーっ!? ちょっ、待って!?」


 ユッキーが悲鳴を上げるが、待てと言われても後ろから石ころ君がね。

 犬とマウスは待てても石ころ君には待てるほどの知力がないのだ。


 このまま座してデストラップに踏み潰されて死ぬよりだったら奈落の底にダイブを選ぶ。

 ひょっとしたら穴を飛び越えられるかもしれないし、落下したところでユッキーとはぐれて合流するイベントが発生するだけかもしれない。


「いくぞぉ!」

「うわああマウス早い!?」


 そりゃあ速いよ! 助走つけて飛びたいからね!


「いざ! あい、きゃん、ふらーい!」


 信じれば空だって飛べるさ! 信じる者は救われる!

 が、すくわれるのは足元だった!


「あっ、やっぱり無理っていうか穴でかくねえ!?」


 ワンフロア一つが穴じゃん!

 四角い部屋の入口と出口にしか床がないじゃん!? いかにゲームキャラとはいえ、この距離飛ぶのは無理でしょ!

 ユッキーよく飛べたねここ!?


「んもう! マウス、掴まって!」


 なんて!?


 もう言葉で確認する暇もない。

 穴の向こうに、魔法鞭を振りかぶったユッキーがいる。


 なにそれユッキー!?


 目を剥いて視線で訴えるが、マウスは覆面キャラだ。伝わるわけもなく、容赦なく鞭は振るわれた。

 それは、空中で回避行動も覚束ないマウスの胴体をびしゃりと打ち据え――


「へぶべばばっ!?」


 電気ショックを与えてスタンの状態異常を発生させる。

 ああ、掴めってこの鞭をってこと? いやあ、スタンさせられたら掴む動作もできませんけど?

 もしもし、召使いを鞭でしばいていたユッキー男爵令嬢?

 全くの予想外である。


「よし、捕まえた!」


 しかし、ユッキーにとっては計算通りであったようだ。

 掴めと言っておいて、捕まえたという発言はどういうことなの。


 鞭は胴体に絡みついており、そのまま落下しようとしたマウスの体を繋ぎ留める。

 スタン状態だからやばい角度でガックン吊るされたよね。これが生身だったら腰がへし折れているアクションだよ。

 しかも、落下しなかったとはいえ、物理エンジンに従って遠心力たっぷりで崖に激突、そのままユッキーに引き上げられる過程では、顔面を崖でゴリゴリ削る羽目になった。


 ゲームじゃなかったら本当にひどい目に遭っているぞ。

 まあ、ゲームじゃなかったらそもそも古代遺跡で巨大石球に追いかけられることなんてないだろうけどさ。


「無事で良かったね、マウス!」


 輝く笑顔の男爵令嬢は、ひょっとすると悪役なのかもしれない。

 まあ、あれだ。いかにズタボロになろうとも、特定のゲームでは無傷として扱われる魔法の呪文がある。


「死ななきゃ安い……」

「うん、いい言葉だよね!」


 俺の数多ある座右の銘の一つだよ。

 でもユッキー、一つだけ質問いい?

 俺が尋ねると、ユッキーは可愛く笑いながら首を傾げた。


「なんで電気鞭だったの?」


 電気である必要はなかったよね?

 いや、炎や氷が良かったって意味じゃなく、男爵邸脱出の時みたいな、非戦闘アクション用の鞭があったのでは?


「ああ、ごめんね! 咄嗟だったから一番使い慣れた電気鞭が出ちゃって……でも助かったよね? 感謝してくれていいんだよ!」


 えへへ、と笑うユッキーは、乱世の徒花に相応しい貫禄のサイコパスっぷりであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後から報告聞いたメンバー大爆笑だよね。
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