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白桜高校ゲーム部2

 〝エタソン〟――正式名称、『悠久の詩 ソング・オブ・エターナル・ワールド』。

 大手ゲーム会社が、フルダイブカスタムシナリオロールプレイングゲームと銘打って発表した大作である。


 このジャンル名、何を言ってるかわかんないよね。

 今も公式ページの紹介トップに、このジャンル名はデカデカと掲げられている辺り、会社側としては重要な点なのだろう。

 開発部のこだわり、広報部の苦労、お察しいたす。


 でも、ゲーム業界のジャンル分けというのは、昔から雨後のタケノコの如く乱立して、誰も伐採管理しようとしなかったせいで、今やバンブージャングルとなって久しい。

 さらに、フルダイブというプレイ方式が確立してからは、プレイヤーの行動自由度と、それに対応するゲームAIの監督領域が広がったこともあって、ゲームジャンルという概念を破壊するプレイヤーが誕生した。


 例えば、戦争シミュレーションゲームで、潜入暗殺プレイで軍団育成せずにクリアするとか。勇者の魔王討伐ゲームで、軍団育成して勇者が居城から指揮してクリアするとか。

 流石にこれはゲームの自由度とプレイヤースキルが高次元で両立した極端な例で、開発スタッフのシナリオ担当が、別ゲーでやれ、とインタビューで泣き崩れたとかいう伝説が残っている。

(なお、プレイヤーは言われるまでもなく別ゲーでやっていて、むしろそっちが専門。プレイが極まり過ぎて、プレイ動画の視聴が芸術鑑賞などと呼ばれる方々である。)


 とにかく、フルダイブというプレイ方式は、ジャンルのバンブージャングルを更地にするような爆発力のあるプレイヤーを生んだのだ。

 そんな中、エタソンは大手が作った大作である。

 細部まで作りこまれている上に、高度なAIを組みこんだシステムが用意された。プレイヤーの発想に、行動力が伴えば、大抵のことができてしまう。


 そこで、製作陣は開き直った。

 「なんでもできるようにしてしまえ」と。


 カスタム・シナリオ――このジャンル名は、「プレイヤーの行動次第で、ゲームAIがシナリオを即興で作っていきます!」という宣言である。


 冒険者として魔物と戦うのが好きかな?

 オーケー! そんな君には魔王をプレゼントしよう! 君は今日から勇者だ!


 街の住人と話が弾んでいるね?

 オーケー! 日の当たる喫茶店を用意したよ! 店員になって人々の憩いの場を作ろう!


 商売が好きなのかい?

 オーケー! 腕は良いけど売れない職人が工房にいるよ! 君が売り出して大商人を目指そう!


 貴族生活に興味があるんだ?

 オーケー! 貴族の血筋を注入だ! ご落胤だったことを盾にして、貴族社会に殴りこんでみよう!


 (AI)によるダイナミックな運命操作である。

 しかもこれ、プレイヤーやNPCだけでなく、土地や国家にも及ぶ。


 ある朝目が覚めると隣国(初耳)を滅ぼした魔王領(初耳)が生えたり、宿屋の看板娘(初見)が誰もが知る公爵家(初耳)の噂について突然話し始める(尋ねてない)とか。


 ちょっと無理矢理なところもあるが、そこは「ゲームだし」の一言で済む。

 あるいは、「多神教系の神々よりマシ」で納得しよう。


 まあ、つまり、今日の部活ミーティングで誘われたゲーム〝エタソン〟は、そういう自由度の高いゲームであり、国盗りプレイも当然可能というわけだ。


 俺は基本、ゲームに求めるのは戦闘なので、前回ソロでプレイした時は、英雄になるか、俺より強い奴に会いに行くことになっていた。

 スラム街のスターダムを駆け上がるべく、目につくゴロツキを片っ端から殴り倒して行くのは楽しかった。

 おかげで、そっち系の別ゲーに流れてエタソンを卒業したんだけどね。


 マルチでやると、他人のプレイ内容に引っ張られることになるし、どういうプレイになるものやら。


 フルダイブ用のヘッドギアから、エタソンが再インストールされた通知音が鳴った。

 なお、白桜ゲーム部の電脳ゲームプレイヤーは、部活ミーティング以外は自宅での活動がメインである。

 TRPGプレイヤーとかは学校で活動するんだけどね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] カスタムシナリオの説明が全部パワーワードで笑える初耳の公爵やら魔王領って
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