白桜高校ゲーム部1
白桜高校ゲーム部は、今日も楽しく活動している。
最近リフォームに成功した伝統ある部室で、次はどんな活動をメインにしようか、なんてテーブルを囲んで仲良く話し合う。
元気ありあまる高校生が、ああでもないこうでもない、それいいねと活気に満ちた会話を咲かせるのだ。
実に青春的な放課後に、また一輪の花が咲いた。
「はい! あたし、国盗りしてみたいでっす!」
だから手伝ってー、と笑顔でのたまうのは、現役女子高生。
まさしくお花だが、うーん、徒花ってやつか。
こやつ、生まれて来る世が世なら梟雄になれたかもしれぬ。
とはいえ、我等ゲーム部、テーブルを囲めば「募:魔神討伐」「ちょっと世界大戦したいから誰か相手して」「我が魔王軍、順調に世界を滅ぼし中」「地獄を攻め落としたから次は天界を落とすよ」などがカフェイン飲料越しに飛び交うような狂人である。
戦国に咲き損なった徒花にも、「いいぞいいぞやったれ」と拍手と口笛が湧き起こる。
全員が戦乱賛成派の模様。平和さんが草葉の陰で泣いているぞ。
ここは、伏魔殿か何かか。
世界征服を企む悪魔の集会ですと言ったら、いくつかの宗教組織が勇者を派遣して来そうだ。
まあ、その宗教組織もゲーム内の連中だから、電源オフで悪が大勝利するわけだが。
目の前の会話に適当なゲーム観を当てはめて遊んでいたら、徒花がこちらを見つめていることに気づいた。
え? 俺も?
首を傾げて疑問を呈すると、徒花はにっこり笑顔でサムズアップだ。
戦国の徒花殿は、国盗りのお供に俺までご所望らしい。
おいおい、俺は平和をこよなく愛する一般人だぞ。
世界平和のため、地獄の悪魔どもがいつ攻めて来ても良いようにゲーム内で修行に励む身だから、国盗りなんて物騒なお話、もちろん嫌いじゃない。
「何のゲームで国盗りするつもりなんだ? 俺がシミュ系は苦手なの知ってるよな?」
戦国か? 三国か? 中世か? それともファンタジー……ああ、宇宙って可能性もあるね。
こうして考えると、国盗りと一口に言っても色んなジャンルがあるものだ。史実に架空、和洋中、地上と宇宙、魔法と科学……うーん、混沌!
「シミュ系の腕前は期待してないから、大丈夫! 今回あたしが国盗りを目指すゲームは、〝エタソン〟だよ!」
「中世欧風ファンタジーでの国盗りでござったか」
「お、なんで今の会話の流れで侍になっているでござるかぁ~? 欧風だって言ったべ? 会話バグかな?」
徒花殿もノリノリで返してくれるからでござるよ。バグってはいない、ふざけているんだ。
「まあ、とりあえず手伝い程度ならよかろう。お受けいたそう」
ざわりと、カフェイン飲料各種が並んだテーブルが騒然となった。
中でもとびきり大きな騒ぎを起こしたのは、国盗りに誘って来た梟雄候補だ。
「マジで!?」
おお、静まり給え徒花殿。テーブルを叩いて身を乗り出すでない。
飲み物が倒れそう。
揺れたコーヒー缶を慌てて掴んで、俺はもう一度頷く。
「お、おう。エタソン、クオリティは良かったけど、ソロだとイベント規模が膨らまなくてもったいない感じがしてたから、たまにはマルチプレイに乗っかるのも良いかなって?」
俺の答えに、徒花殿はキラキラお目々を大きく見開いて飛び上がった。
「やったー! ソロのネズミをマルチに引っ張り出したぞーい! これは撮れ高ですわ!」
全身を使って喜ぶ徒花殿に、他の部員もやんやと手を叩いて喝さいを送る。
「流石だぜ、ミラクル・ユッキー!」「あのゲーム的引きこもりをよくぞ引きずり出した!」「お見事、お見事ぉ!」「白桜ゲーム部のアマノウズメの称号を授けよう!」「女神様、こちらお供え物でございまーっす!」
いやまあ、確かに普段の俺はソロプレイ中心だけど、ゲームの誘いを受けただけで神話的事件扱いするのおかしくない? 誘ったのそっちじゃん?
ゲームプレイ以外、俺はそこまで付き合い悪いわけじゃないよね。ほら、今だってちゃんと部活に出て、それなりにコミュニケーション取ってるでしょ?
ていうかゲームプレイでも手伝ったことあるよ!
真実を多分に含んだ俺の訴えなぞ、宗教的熱狂に包まれた人々には通じなかった。
最終的に、「ミッラクル! ミッラクル!」と白桜ゲーム部のアマノウズメを崇め始める始末。
主神アマテラス役なのに放置された俺は、神話に忠実に引きこもってやろうと、携帯端末を取り出して、電子式天岩戸を閉めるのであった。
折角だし、エタソンの情報集めて、プレイ動画でも見ようかな。
あっ、俺がやってた頃よりカスタム要素がめっちゃ増えてるじゃん。でも、マルチ推奨っぽいのが多い。
マルチプレイヤーを狙った方が、ソロプレイ狙いより収益が出やすいらしいから、致し方なし。
運営はお仕事だからね。