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神々の遊戯盤  作者: ダンヴィル
目まぐるしく変化した日常
3/18

逃げられた


 銀色の狐の獣人だろうか。

 ハーフエルフである為身体的成長が遅く同年代の男と比べてかなり身長の低いレネと比らべても小さいのだが、この人はおそらく歳上であろう。

 もう一目見ただけでわかる程で、跡が残るほど泣いた事が伺えると言うのにそれでも尚崩れる事のない貫禄はもはや幼い子供が出せるものではない。

 身長から幼さを感じると言うのに、同姓である私ですら引き付けられるような色気を感じる。

 正に人を引き付け上に立つ者だと理解できてしまい驚いた。

 彼女を一目見て思わず行動してしまう事に。

 遅れてあれだけの環境で何年も生きてきたのに過去に教育された事がまだ染み付いていたのかとまた驚いた。


「ッ!…………癒しよ」


 ほら、今確実に気付いて反応したよ。

 こういう事には疎いレネですら気付ける程となると益々異質な存在である裏付けになってしまっていて逃げられない。

 獣人の上流階級のお貴族かお姫様だろうか?

 あるいはさっきの現象からして神の落とし子か何かだろうか?

 後者も嫌だが人為的工作か無いだけまだそっちの方がマシだ。


「お……おぉ?」


「立てる?」


「うむ、ありがとう。お主らは命の恩人じゃ」


 お姫様だとしたら何でこんな山の中で1人で、しかも何故か見計らったかのように火事が起きていて森が炎に飲まれて火の海になるだろう状況で……こんなの関わった時点でもう責任も何もかもでっち上げられて都合の良い生け贄として吊るされる!

 どうする?一応ミシシュにダンジョン化してて危険極まりないが地下水道という最後の逃走経路もあるにはあるけどそもそも人為的ならばミシシュに戻る事を許してくれるか……


「……ッ!?」


 いきなり発生した膨大な魔力反応に驚き考えるのを区切り真上を確認すればまるで晴天の空に暗雲がまるで生き物のように侵食していきあっという間に空を埋め尽くす。

 その魔力反応からして人為的に発生したものだとはわかるが膨大すぎる魔力量から個人でできるものだとはとても思えない。

 だが、複数人で行うならもっと違う…こんな一色で構築されたかのようにはならない。

 それこそ神のみわざと言われれば信じてしまう現象だ。


「岩よ!」


 少し離れた位置から二人の様子を見ていたので飛び込むくらいの勢いで距離を縮め魔法により岩の壁を斜めに発生させ屋根を作る。


「……えぇ?何じゃこれ、凄いのぅ」


「来る」


 この人が何に驚いたかはわからないがそんな事はどうでも良い。

 私の一言後に雨が1粒。それを認識した次の瞬間には数歩先が全く見えなくなる程強いスコールが降り注ぎ、連続して雷の落ちる音が鳴り響く。

 これは私達だけでなく、ワイバーンにとってもただ事ではないようで今まで聞いた事のない情けない、正に何かに恐怖し今にも逃げ出す者特有の声を複数のワイバーンが発している。

 それが徐々に遠退き、数を減らしていく。


「これは……」


「静かに、大丈夫……大丈夫ですから」


 言ってから気づいたが、2回目の大丈夫に関しては完全に自分自身に言い聞かせる為口にしていた。

 ふざけるな。こんなところで死んでたまるかと思い直し、痛くなるほど強く握り拳をつくり弱くなっている心を奮い起たせる。

 しかし……どうしても目の前の光景には無力さを強く感じてしまう。

 やがてスコールが止み、先程の雲は一瞬にして消え去り日の光で視界が眩む。


「すまないね、確認不足で巻き込んでしまったよ」


 日の光を影にし、上空から世間話でもするかのような軽い口調の言葉が投げられかける。

 神である可能性を持つこのお方ならともかく、立て続けに魔法貴族の試作品であり最高傑作であるこの指輪の効力を掻い潜る現実を受け入れられず誰にも聞き取れないくらい小さな声で「何故?」と口にしてしまった。

 冷静に考えれば指輪を使っていない獣人の女性がいるからとかいくらでも理由は思いついただろうに。


「よっと。いや~さっき君ら走って行っただろう?あの速度ならもっと遠くまで行ってると思って派手にやったんだけど、まだこんなところにいるとは思わなくてさ。何かあったのかい?」


 降り立ったのは紫色の長髪を持つ長身の女性の目を見て戦慄する。

 その女性は魔人であった。

 魔人とは時の神と契約し不老不死へとなった存在であり、その瞳には契約を交わした時に特殊な模様が浮かんでいる。

 正真正銘の化物だと確定している存在が目の前に現れてしまった。

 何故同じ日に、しかも体感数分の差すらも無い短い時間にこんなにもありえない事が重なる!?

 なんなんだコレは……いや、もしかしたらこの獣人の関係者?

 その家系に長年仕えている護衛か何か?

 いや、だがそんな事……あり得るのか?

 恐怖もあるだろう、様々な憶測が頭を駆け巡り完全に混乱してしまい無意識に私の足は一歩後退っていた。


「のぅ……今のを聞く限り火事から助けてくれたのであろう?

 であればお主にも感謝を、ありがとう」

 

 後退った私の横を通り抜け助けた獣人が軽やかな足取りで前に出る。

 厄災である時の神と契約を交わした存在に近寄るなど命が要らないのか、寿命を吸われるぞと心が叫ぶ。

 しかし何もできない。

 神とは人が生物の枠組みに有る限りどうこうできる存在ではない。

 嵐が過ぎ去るのと同じように、どうかその力がこちらに向きませんようにと祈り過ぎ去るのを待つしかない。


「ところでお主の名は?わらわの名は薬袋九(みないいちじく)。薬袋は家名じゃが役職みたいなものでの、気軽に九と呼んでおくれ」


「ご丁寧にどうも。私の名前は~………」


 数秒の沈黙。

 魔女は顎に手を当て考え込む。


「森……フォレイス?炎……フレイム……フレイ……火災……

 うん。フレイヤ。ここいらの土地ではフレイヤと名乗ることにするよ」


「露骨なまでの偽名で清々しいのぅ」


「ほら、名前って言うのは普通は親から貰うものだろう?私は捨て子で名前が無いんだ。

 名前を今決めたのはね、私は冒険者をしていて旅をし様々な発見をするのが生き甲斐だから。

 だいたい数百年くらい一ヶ所に留まって調べてた事が一区切りついたら海を渡って次の場所へ飛んで行く。

 場所を変え気分を一新させ、その時ついでに名前も変えてるんだよ。だから今決めたんだよ」


「ほぉ~…冒険者が実在するとはこの世界は凄いのぅ」


 ………なんというか、この二人随分と柔らかいというか、気の抜けた口調で会話をする。

 それよりも話の内容的にイチジク様の護衛ではない?

 だとすれば火事と魔女フレイヤは関係無く、イチジク様関係だとしたらやっぱりイチジク様を暗殺しようとした国家に影響してくるとかだろうか?

 そう思考している間も2人は初対面とは思えない気軽さで会話を続け、それもあって私の考えは迷走していく。


「……と、まあそんなところ」


「ほぇ~、凄いのぅ。男の子が好みそうで格好いいのじゃ」


「あ~……確かにこの手の話しても男の子にしか受けないからイチジクの楽しそうな顔見ててつい話が弾んでしまったよ。

 ところでまだ二人の名前聞いてないのだけど、ご主人様に名乗らせて護衛の二人は挨拶も無しかい?」


「え?いえ、私達はただの冒険者で護衛ではありませんよ?」


「ん?」


 フレイヤが私達とイチジク様の顔を交互に見比べ、「あっ…」と、何かを察したような表情をしてそそくさと杖に腰掛け体を浮かせる。


「ごめんね。急ぎの用事があったのを思い出したから私はこれで失礼させてもらうよ」

「えっ!?待っ……てほしいのじゃああああッ!!!」


 イチジク様の制止など聞こえぬとばかりに高速で魔女フレイヤは大空へと飛び立ち、負けずと音量を上げ最後には必死な叫びも空しく魔女はイチジク様の叫びと共に空の彼方へ消えていった。

 これ完全にお互いがお互いにイチジク様の護衛だと勘違いし、それが解消した事で生じた面倒事から逃げたよね。

 おそらく魔女フレイヤなら解決させる力もあるにはあるのだろうけど、面倒臭い事は面倒臭いから当然の行動か。国家なんて粘着質で話の内容から自由を愛してそうな彼女なら尚更。


「うぅ……行ってしもうた……」


「あのイチジク様?」


 不安で仕方ないという表情で魔女が消えた先を眺めていたイチジク様に声をかける。

 するとイチジク様は背を向け黒の長手袋で目元を拭うと元気良くこちらに向き直った。


「うむ!わらわは九じゃ!別に偉い人でもなんでもないから呼び捨てで構わぬ!それと普段敬語を使ってないなら使わないでいてくれるとわらわとしては嬉しいぞ?二人ともさっきは本当にありがとう!もう助からないと思ったぞ。ところで二人の名を教えて貰えるの嬉しいのじゃが、良いか?」


「はい。私はノエル、冒険者です。こっちが……」


「レネ」


「おお、冒険者か!ノエルにレネ。覚えやすい名じゃな!しっかりと恩人の名を覚えたぞ」


 ニッっととても友好的な笑みを浮かべるイチジク。

 ここら辺でイチジクのような全体的に生き生きとした感じの人物は居ない為レネに関しては若干引いてる。

 けど私は知っている。たぶんこの人は純粋な人だ。汚い部分を知っていても、最底辺の世界を知らない。

 この短いやり取りでイチジクは昔の私のようだという印象を持った。

 となるとこの後の展開は……


「ところで、わらわが言うのも変だとわかっておるが、助けられついでにノエルとレネにお願いがあるのじゃが……」


 ほら来たよと思い体に力が入るのがわかる。


「わらわは二日前気が付いたらこの森におってそれからずっとサバイバルをしていたのじゃ!毒の効かない体じゃが名前もわからなぬ茸を食べるのも火を起こすのももう沢山じゃ!頼む!二人とも冒険者をしているのであろう!?わらわを側に置いておくれ!火お越しは失敗したが家事全般できるしきっと役に立つ筈じゃ!お願いじゃ!こんな全く知らない土地にわらわを置いてかないでほしいのじゃ!」


 私の手を握り、じっと私の目を綺麗な赤い瞳で見つめながら捲し立てるよう必死に口にするが、そんな事より今のは聞き捨てならないぞ。 


「……つまりさっきの火事はイチジクが起こした?」


「……そ、そうじゃ。じゃが消そうと努力はしたぞ?

 焼いてもいない茸なんてもう食べたくなかったのじゃ。

 虫を食べるなんてもっと嫌じゃったし……」


『これ?嘘ついてるように見える?』


『見えない。というか簡単に騙せそう』


『今回は騙すのは当然として売り飛ばすのも無しだ』


 気付かれないようレネにサインを送り会話するがレネも私も同意見。

 おそらくイチジクの様子から嘘はついてない。


「わかった。良いですけど何が……」


 ゴトン!と大きな物を落とした時特有の音が鳴り全員でそちらを向く。


「木箱?」


 誰よりも先に口にしたのはレネだった。

 ミシシュのような例外を除いて普通の民家なら必ず1つは置いてそうなサイズの物入れ用の木箱が降ってきた。

 木箱にはご丁寧にフレイヤとあの魔女の名が大きく記されていた。

 アイコンタクトにより一番近いレネがその木箱を開け、真っ先に紙を取り出したので受け取り読み上げていく。

 レネは文字を少ししか読めないからね。


「『イチジクちゃんが綺麗すぎて困ると思ったからせめてもの気持ちとしてコレをあげるよ。

 その指輪を付ければよほどの事がない限り誤魔化せるだろう。

 それ以外は特に変わった物も無いし好きにしてくれて良いからね』……」


「そっか……」


 それなら逃げるなよクソがって言いたいが無駄だとわかってるから何も言わないが用紙は握りつぶす勢いで握った。

 不味いな、心を落ち着かせろ。こういう時に感情で動く奴から死んでいくのを見てきただろ。

 冷静に、とにかく冷静に物事を見極めよう。


「綺麗か……」


 気を取り直してじっとイチジクの姿を見直す。

 足の裏だけを補強する目的だろう殆ど紐の靴で、紐には魔石が何個か付いていて膝程度の高さまで紐で固定する作りになっている。

 太ももを隠す程度の短いスカートをした袖の無い白いワンピースのような服で、腰には星空を思わせるスカーフを巻いている。

 両手には黒の長手袋を付けていて指先の部分は布が無く、手の甲付近などにメリケンサックのように薄水色の見覚えの無い金属が付けられている。

 獣人には自由に爪を伸ばし敵を切り裂く事ができる種類もいるので布を無くしてると思われる、切る事が難しい敵用の打撃武器として金属が付いているのだろう。

 同じ理由で靴も紐みたいになっているのだろう。

 獣人の優れた身体能力を生かすのに実に効率的な格好だという事が伺え、邪魔な筈のスカーフを巻いてるのは何らかのマジックアイテムなのだと知恵のある者なら一目で思い付き、スカーフだけでなく何かしらのエンチャントが施されただているであろう魔石が宝飾として全身に複数取り付けられている。

 そのような格好に少し変わった形状をした十字架のネックレスと髪飾り、金の装飾がされたフード付き黒のローブを纏っていてそのどれもが赤い瞳と光を反射するかのような白銀の髪を引き立てている。

 そして最後に特徴的な3本の尻尾……


「確かに綺麗すぎるね……」


 緊急事態ですらその美しさに躊躇したというのに落ち着いたこの段階で再度確認した事でイチジクがそれはもう底無しに美しい存在だという事を理解させられる。

 もう記憶があやふやだが、私の知る王族だってここまでのオーラは無いと思う。

 唯一ダメ出しできるとすれば戦闘と夜襲に特化した服だからこそ露出が多く、どこの民族的衣装だと人間の貴族なら鼻で笑いその美しさから無理矢理目を背けるだろうところだろうか?

 うん……ダメ出しになってないか……

 頭のてっぺんから足の先まで身に付けている物の質が良すぎてコレを違和感無く身に付けているイチジクを軽く見れる奴はよっぽど見る目のないか大馬鹿としか………ん?


「………あの、イチジク?その服なんか変な動きしてない?」


「む?どこがじゃ?」


「ほらそのローブの先の部分……」


 泥で汚れているローブが……いや、これ動いてるんじゃない。

 火事で微かに焦げ付いたであろう部分がまるで布に飲み込まれているかのように小さくなっていき、私が指摘して十秒もかからずに消えた。


「さ、再生した?」


「おぉ、本当じゃ。ちゃんと機能しておるのう。

 ……バレてしまったし隠す必要も無さそうじゃの。

 この服もそうじゃが身に付けている物全てがコアになっておる魔石が無事である限り時間と共に再生するようになっておるから多少の損傷など気にしなくても良いのじゃ」


 思わずレネと顔を見合わす。

 なるほど。なるほどなるほどなるほどね。

 これは駄目だ。こんな物知ったらミシシュが血の海になる。

 私達二人とも実を言うとドカンと金を稼げる手段は持っていたがそれをしなかった。

 そんな事をすれば目を付けられるということがわかっていたからで危険を回避するために冒険者としてコツコツモンスターを狩り実力を付け足元を見られぼったくられながらも貯金していた訳で、こんなのを奴らが知ったその日にはどれだけ出血しようとも生き物を憎むアンデッドが如く奪おうとしてくる。


「イチジク、この指輪付けてみて」


「うむ。お主らと同じ感じになれると良いのじゃが……」


 私達の反応からイチジクも何がどう不味いか理解してくれたのか木箱から取り出した錆びだらけでボロボロの指輪に少し躊躇したものの付けてくれた。

 イチジクは私と同じで適応力が高いのかもしれない。


「ん…?特に何も変わらんように見えるが……どうじゃ?」


「ボロボロだね。耳も尻尾も無くて人間に見える。

 一番目に付くのは顔の火傷の跡が凄くて痛々しい。あと髪が灰色になってなんか茶色い」


 彼女からしてみたら変わらないように見えるようだが指輪を付けたとたん別人ではないかと疑うほど汚くなっている。

 レネの言葉はなんとも雑だけどオブラートに包まずストレートに伝えると正にそうだなという感想しか出てこない。更に言うなら一目でこんな傷物なんて高く売れないと思えるのが実に良い。

 細く美しかった髪は荒れ放題で土の付いたのを面倒でそのまま放置したかのような汚さであり、髪に留まらず全体的にボロボロだ。

 これで獣人としての尻尾と耳が出てたら多少話が変わってくるのだけど、そこもしっかり無くなっていて数の多い人間にしか見えない。


「灰色?茶色……?そう見えるかの?」


「うん。真っ白だった服がボロボロで穴が空いてて茶色かったり黒かったり」


「これなら平気じゃな」


「うん。大丈夫だよね」


「そうだな。これなら目立たないぜ」


「ぜ?」


 まあ気になるよね。

 あまりつついてほしくないけど必要だからなぁ……


「町では男として振る舞ってから気にするな」


「そうなのか、何か訳がありそうじゃな……

 どうしたものか。わらわはこの口調意外どうにも上手く話せん。なるべく人のいるところでは喋らないよう意識しよう」


 その口調でしか話せない?混沌に属する神の祝福だろうか?


「ならそうしてくれると助かる」


「ところで指輪の他にナイフが3本、ポーションみたいなのも入ってるけどどうする?」


「貸して」


 レネから木箱を受け取りナイフを調べる。

 魔力感知等も駆使して調べた結果は表面的な内容と変わらず、付与されているのは認識を誤認させる魔法だ。

 ナイフに触れている人意外には使い物にならない程劣化して見えるだけのものなのだが、今の私達には新品同然の丈夫で扱いやすい武器というだけでとても有難い。

 別に鑑定のプロではないがレネと違い知識をある程度持っていて使える魔法も多い私が確認するのは当然の事。

 もちろん普通よりは優れた程度の私では魔女が全力で隠蔽した魔法など暴けるはずもないが、あの魔女がそんな事をする意味など無く、今後の出費などを考えれば使う意外無い。


「ポーションは魔力に反応する辺り本物だが、万が一強力すぎた時の副作用もわからないから保留するが売ることのなると思う。

 ナイフは……とりあえず一人一本で」


「わかった」


「おぉ……こんな大きなナイフ初めてじゃ。

 ありがとう!こういうのをシースナイフと言うのであろう?」


 正直イチジクに渡すのは迷ったが何にしても友好的に振る舞っておこう。

 本人の言うように偉くないのだとしても普通ではない。

 重要なのは私達に危害が及ばず使い物になるかどうかというだろう。


「さて、気になっていると思うしわらわの話を……」

「そんな事今はどうでも良い」


 おっと、レネに言うときみたいに強い口調で言ってしまった。

 キョトンとした顔をしたイチジクが何か言う前に誤解をとかなくては。


「それも気になるけど順番が違う。

 これから最高にクソッタレな町について説明しながらその町へ向かう。

 私達の言うことを聞かないで馬鹿な真似したら奴隷にされ売られたりひん剥かれレ○プされ心が壊れたら体をバラバラにされて埋められるか棄てられるか……まあ何にしてもどんな残酷な事をされても何ら不思議じゃない場所だぜ?」


「な……なんじゃその世紀末のような世界……本当に実在するのか?」


「実在する。それととてつもなく臭いからその変も覚悟して」


 ミシシュには冒険者ギルドを除いて3つの大組織が存在しそれぞれがどんな事をしているかというところから説明し、次に町の有り様と憶測の範囲に過ぎないが今後町で起こりそうな出来事を説明していく。

 イチジクはかなり頭が良いのか何故そうなったのか、どうしてそうなると思ったか等質問をし、一度聞いた内容の要点をしっかりと理解していた。

 昔レネに教えてた時は先に名前なんかを覚えようとしていて大変だったからこそ余計に頭の良さが目立つ。

 そしてわからない事をハッキリとわからないと言うため、やはりイチジクは私と同じように裕福な温室で育てられてきたのだろう。

 わからない事があってもすぐにわからないと言ってしまうと叩かれたり拳骨を食らうのが普通だから、レネがすぐに言えるようになるまで大変だったからなぁ……


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