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神々の遊戯盤  作者: ダンヴィル
目まぐるしく変化した日常
12/18

ダンジョン


 休憩をした場所から先はまだ足を踏み入れた事のない場所だ。

 神々がこの世界を作り上げた時から世界の一部として存在するダンジョン。

 その中でも簡単なものであるこの場所は神々が初心者向けと推奨している罠もほとんど無い場所だが神々と人間の感覚は違う。

 実際初心者向けと言われてはいるがミシシュの住人の半数は確実に、下手をすれば8割がダンジョンで入手できるスキルを習得できていないのだから。

 だからこそ本当に私達はダンジョン攻略なんてできるのかと不安を抱く。

 しかし、知らないからだろうけど明るく振る舞いつつ並外れた身体能力を見せつけるイチジクを見ていると本当にどうにかなりそうだという思いに包まれる。


「む?宝箱じゃな」


「それよりも行き止まりね、戻りましょ」


「開けんのか?伝説の剣が入っておるかもしれんぞ?」


「イチジクは伝説って言葉好きだよね」


「そこにロマンがあるのならどこへだって行くのがシーカーの性じゃからの」


「でも今は罠を探す余裕もスキルも無いから開けちゃダメだよ」


「むむ……それは仕方ないのぅ。術が使えん今罠をどうこうする手段を持っておらん」


「倒してドロップした宝箱は良いけどね」


「むむむむむ。益々ゲーム感が強くなったのぅ。神々の遊戯盤を作った神は絶対ローグライクとかアクションゲーム好きじゃろ」


「ローグ……?」


「あぁすまぬ。異世界の娯楽の事じゃ。気にせんで良い」


「元々神々の遊戯盤は神が下界の生き物と戯れたいが為に作った世界だし色々参考にしてるのかも」


「なるほどの~」


 道に迷っている状態でこんな風に雑談をする事は私とレネだけならあり得ない事であった。

 けれどイチジクの聴力で索敵できない敵はこのダンジョンにはいないだろう。

 いたとしたなら初心者向け等と推奨されておらず、飲んだくれてたアイツらが数にものを言わせていたとはいえクリアできるとは到底思えない。

 先ほどの分かれ道でこちら方が敵が多いからそちらに進んでいけばボスの部屋があるかもと考え進んだ結果あるのは宝箱だけだったがそれはそれで良い。

 とにかく確実に、それでいて怪我無く進み体力を温存する事が何よりも大事なのだから。


「右クリア、左クリア。右側の通路に大きな生き物がいる気配は無しじゃが、微かに風の流れる音がしておる。左側は聞き覚えのある這うような音……おそらくスライムか何かじゃろ。ただし音の発生源は天井じゃから注意すべし」


「風の音?外に繋がってるの?」


「そんな話は聞いてないけど……何か特別な仕掛けがあるという話も聞いてないし。

 気になるけど私としては後回しにしましょ」


 左側の通路を進み、程なくすると確かに天井に一匹のスライムがいた。

 しかしスライムが一匹いたところで索敵されていれば凍らせる必要すらない。


「よっ」


 助走の付けない軽い動作での跳躍だった。

 しかしその距離が異様なほど長く、空中で全身をひねるようにし回転しながら回し蹴りを放つ要領で木の棒を振るい的確にスライムのコアを砕いた。

 コアが砕かれただの液体となったスライムは天井から剥がれ落ちて床に広がりはじめ、遅れてようやくイチジクが着地する。


「む……この先行き止まりじゃな」


「え?」


「どうしてわかったの?」


「音の反響じゃ。コアを砕いた時に思いっきり天井にも叩き付けて音が響いたじゃろ。

 わりと近くから反射し音が帰って来たから扉があるとも言い切れんが……この音の感じじゃとたぶん行き止まりじゃな。宝箱もあるし。

 おそらくわらわの経験からそういう答えを出しておるのじゃが、如何せんわらわの記憶は曇っており曖昧な部分が多い。

 わらわの耳と経験が間違えてなければすぐ行き止まりと宝箱が見える筈じゃから技術力の確認のため見ておきたいのじゃが良いか?」


「えぇ、時間かからないなら構わないよ」


 経験による答えか。イチジクは戦闘に関しては本人が言うように血が怖いのか、殺すとなるとゴブリンですら躊躇し普段の機敏な動きが嘘みたいに鈍くなる。

 本来ならさっきのスライムみたいに呼吸でもするかのように自然体で流れるように、無慈悲なくらい敵に何もさせず倒すことだって容易なはず。

 全部が本当とは思ってないけど、沢山旅をして沢山発見をしてきた歴戦の冒険者……いや、シーカーだったわね。

 歴戦のシーカーといった風格を感じる事が多々あり、私達に夢を持てと語ったイチジクは正にそれだと思える。

 今から確認する一回では断定できないけれど、似たような事が5回10回と続けば判断材料として強い効力になるはず。


「ほれ行き止まりじゃ」


「本当だ。それじゃさっきの風音がしてた方が正解か」


「そうじゃの。では戻るとしよう」


 来た道を戻り今度は逆の方向へ足を進めていく。

 そこから先は何度か曲がりはするが一本道で特に敵が出る等という事もなく重々しい石の扉の前まで辿り着いた。

 扉の左右には松明が存在し、その扉はこれからコロシアムで戦う事になる剣闘士を向かい入れるよえな迫力を感じさせるものであった。


「……開けるぞ?心の準備は良いかの?では行くぞ!」


 全体に違和感がないか見渡し、匂いを嗅ぎ、耳をあて音を確認し終えたイチジクからの質問に頷くと勢い良く開かれ中に入る。

 扉の中は洞窟の中に作られた決闘場という雰囲気であった。

 洞窟の中ではあるが、過去に崩れたのか天井に大きな穴があり日の光が差し込まれる広い円形の空間であり、正に天然のコロシアムといった場所だ。

 その中心で愛剣を片手で抱くようにし眠るかのよう座っていたのは普通のゴブリンより倍程の大きさをした筋肉質で傷だらけの戦士そのものであった。

 その戦士を前にし誰が初めだっただろうか、その場から一歩近付けばゴブリンの戦士は目を開き、音もなく立ち上がり剣を構える。


「少しばかり様子見をしてくるから良く見ておれ。

 傷付けるとなればわらわは上手く動けん、十分に参考にするのじゃぞ?」


 そう言い終えるとイチジクは矢のように飛び出した。

 急接近し背中に付けた木の棒に手をかけ、ゴブリンの突きに合わせて手を振るうが木の棒は握られていない。

 イチジクは手で剣の平をなでるようにしたかと思えば一気に押し出し軌道を大きくずらし、ゴブリンはそれに反応し腕力に任せ無理矢理突きから斜めの凪ぎ払いへと変え、イチジクは手を流し込むようにゴブリンの剣を持つ手へ絡め片手ではじき上げる。


「ギギャアァアアッ!!!」


 武器を持つ腕を上げさせられ、がら空きになった胴体を攻撃されると思った故か強い焦りの表情を見せるゴブリンの戦士は全身全霊を込めたような叫びをあげながら、そんな無茶な体制からハイキックを放つ。

 しかしそれすらも読んでいたのかハイキックがイチジクの頭上を過ぎ去ると同時に放った足払いによりゴブリンは背中から転倒していく。

 トドメとばかりそのまま飛び掛かるような姿勢へ。

 しかし剣を放しゴブリンの向けた手の平から小さな火炎の玉が発生する。

 飛び掛かる姿勢をしていたイチジクの足下がいきなり砕けるような音がし、誰も居なくなった場所をゴブリンのファイヤーボールが通り過ぎ壁へ命中し破裂する。


「グギッ……」


 地面が砕けるほどの力でバックステップを行い着地したのとゴブリンが受け身も取らず背中から地面へ激突したのはほぼ同時だった。

 イチジクはそれほどの力で後ろに跳んだのだから勢いを殺しきれず着地してからも砂煙をあげながら距離を開く結果となり、ゴブリンは苦悶の表情を見せながらもその隙に剣を拾い構え直す。

 このままでは一方的に殺されると判断し受け身を取る事を諦めイチジクに距離を取るという決断をさせたこのゴブリンは見た目通りの凄腕戦士なのだろう。

 しかしもうゴブリンにはイチジクの事しか見えていない。


「……初心者向けとは何だったかの?ちと強過ぎではないか?」


 距離を取ったイチジクが木の棒を握り引っ張る事で固定してた布が外れてその場に落ちた。

 木の棒を片手で回し、ゴブリンの意識をさらに強く向けさせつつそんな事を口にしたがそれは私達も思っている。

 反応速度も剣の扱いも見た目の威圧感相応だ。

 あそこまで物理も魔法もバランス良く最適なタイミングで使えるとは。

 何でゴブリンの戦士がダンジョンボスなのに組織の奴らは半数もスキルを所持してないのかと疑問に思ってたけどこれは納得だ。

 こんなに強いのは想定外。

 もう何度目かわからないけど本当にイチジクがいてくれて良かった。


「想定よりだいぶ強いね」


「いける?」


「大丈夫。リーチに差はあるけど反応できるしイチジクの方が警戒されている」


 魔法を使って先制攻撃もできるし当てられるが一撃で倒せるとは思えないしイチジクに向いてる意識をこちらに向けるのは愚作だ。

 あの攻撃を反応し防ぐ事はできるけど、イチジク程危なげなく回避するなんて真似私にはできないのだからこのままイチジクに向いてて貰おう。


「ゆくぞッ!!!」


 出会ってからそれほど長い時間過ごしてないが、その中で一度も聞いたことの無いような気合いの籠った力強く大きな声を発しイチジクが距離をつめる。

 こちらの動きに合わせての行動なのでその速度は私より若干遅い。

 しかしコレから注意を外すなんて真似はできない。

 高速で木の棒を回しながら突進してくるイチジクの迫力は正面から見ている訳でもない私ですら怯んでしまうほどの強い殺気を感じるものであり、何よりも回転している棒の音が当たれば致命傷になると思わせるのに十分なモノとなっている。


「ギ……ギィ!」


 その恐怖はいくら歴戦の戦士でも焦らせるのには十分だったようだ。

 近寄らせるなんて真似はさせぬとファイヤーボールを放つ。

 そのファイヤーボールはイチジクの跳躍1つで回避され、ゴブリンを飛び越え反対側へと着地しようとする姿を目で追っている様子が私の目に映る。


「ふっ……」


 小さく、けれど一度に沢山の息を吐きながら力を込めゴブリンの腹部へとナイフを突き入れる。


「ギィ!?」


 イチジクを目で追う時偶然視界に入ったのかこれ以上無く焦った様子で剣を盾に私のナイフを防いできたが甘い。


「貰った」


 ナイフを離し、左手をゴブリンの剣の持ち手に添え、右手の指を左目に突き刺し潰した。


「ギィアアアアアッ!?」


 叫び声を上げるゴブリンの足を払いし転倒させ、さらに有利な状況へ持ち込む。


「ファイヤーボール!」


 世界への宣言と共に至近距離でファイヤーボールをぶち当てそして……


「ッ!?」


 何かが脇腹に当たり吹き飛んだ私は数回転げ壁にぶつかって止まった。


「ゲホッ……ゴホッ………」


「ヒーリング!」


 血を吐き出し何が起きたか混乱しながらも立ち上がろうとする私にレネがヒーリングを使う。


「はっ……はっ……何が起きた?」


 吐血が収まり痛みも無くなった私は口元を拭い状況確認を急ぐ。


「脇腹を殴られて吹っ飛んでた。立てる?」


「立てる……」


 まさかがむしゃらに放った裏拳が偶然私の脇腹に当たってそんなにも吹き飛んだって言うの?

 何その馬鹿げた怪力。

 こんなの人間が一対一で勝てる相手じゃないでしょ……


「あぁああああ!!!」


 顔を上げ、声のした方を見る。

 そして目にしたのはイチジクが私の手放したナイフを深々とゴブリンに突き刺した状態で硬直している光景だった。

 ゆっくりと抜け落ちるようにナイフから手を離したイチジクはこの距離でも見てとれるくらい全身が震えており、先程の強者といった雰囲気が感じられない弱々しい気配を漂わせていた。


「ノエル……ノエル無事かい!?」


 だがそんな気配も私の名を呟いた途端吹き飛び、私へと心配の言葉を投げ掛けながら近づいてくる。


「大丈夫。見ての通りピンピンしてるよ」


「本当か!?直撃であったではないか!痛むところは無いのじゃな!?」


 そう言いながら私の脇腹を少々強い力で揉み、肩を、腕を、足を同じようにして痛むところが無いか確認してくれる。

 こんなにも心配された事が無いから少し気恥ずかしい。


「大丈夫。痛くないよ。ありがとう」


「そうか……ふぅ、旅をしろ、夢を持てなんて言いはしたが主らは弱すぎてまだまだ心配で目が離せん。

 旧友だったのなら吹っ飛んだのを見て笑ってやったものを。

 わらわも過保護になったものじゃのぉ……」


 大事なものを抱き締めるように、私に抱き付きそんな事を口にする。

 弱いと言われた事を否定したいところだけど、イチジクの危なげの無さを見て、実際にトドメをさしたのもイチジクなので否定する権利は私には無いと思い何も言えなかった。


「あのさ、この後どうすれば良いの?」


「ん?あぁ、いつも通り生命の源を吸収すればスキルが刻まれる筈だよ」


「む、そうなのか?それは楽しみじゃの。何が手にはいるのかの」


 ようやく離してくれたイチジクは元気良くそう言いゴブリンの方へと歩いていくが、抱き締められていたからこそどれ程震えていたか理解し、やせ我慢をしていて私達に不安を与えないように振る舞っているイチジクの姿が、その身長とは裏腹にとても大きく見えた。


「もっと強くならなくちゃね……」


 誰にも聞こえないくらい小さく呟いた。

 どうして口にしたのか、なぜ誰にも聞こえないくらい小さく呟いたのかは自分でも良くわからないけれど、とにかくそう思ったからそう呟く。


「さて、スキルだけど……げっ、フォースアーマー」


 淡い光を放つゴブリンに触れて入手したスキルはフォースアーマーであった。

 強いけど……強いけども………


「僕はリフレクトパリィ」


「ここまでゲーム的じゃと頭が混乱してくるのぅ……

 あ、わらわはショックというスキルのようじゃな」


「物凄く交換してほしい……」


「僕とノエルのスキルが逆だったら良かったよね」


 フォースアーマーは防御力を上げるスキルで下手な攻撃スキルをも弾いてしまう程に強力なスキルだが私の戦闘スタイルと合わず使いどころが少ない。

 対してリフレクトパリィは魔法攻撃すらも受け流せるようになるスキルで私との相性は最高であった。

 さらに言うならイチジクがリフレクトパリィを習得していたら最強なのではと思えるがショックなんて汎用性高過ぎるスキルを習得してる時点で一人勝ちなんだから文句言うな。

 言ってないけど言ったら怒る。


「まあスキルを得られたのであろう。ここは1つ勝利のファンファーレを。

 テレッテレッテレッテレテテー♪……む?」


「え?」


「ん?……ねえ、戦いが終わってから強化魔法を使うのどうかと思うんだけど?」


 レネの言うように強化魔法が使われたのか体が信じられないくらい軽い。

 それも能力の上昇具合がワイバーンの生命の源を吸収した時の比ではないと感じられ、その辺に落ちてた石を拾って強く握ると砂みたいになった。

 これ使ってたらナイフで剣を叩き割れたんじゃないかな?


「おぉ~これは凄いね」


「いやいや、わざとじゃないぞ?そうか、こんな感じなのか。

 これがたぶん魔力……かの?ふむ……ふむ?」


 魔力を指先に集めようとしているのか魔力が垂れ流しになって溜まっていない。


「まあよい!イチジクちゃんは栄光の唄を思い出した!」


「今のが栄光の唄なの?」


「いや、違うのじゃが効力が栄光の唄であったから栄光の唄で……

 まあよい!予想以上に時間が掛かったから今日はもう拠点に戻るしか無いと思っておるが相違あるかの?」


 空を見上げて明るいが星が見えている事を認識する。


「そうね。まだまだ明るいけど町に戻る頃には夕暮れ近くになりそうな感じね。

 はぁ……何も暗い時間の長いこんな時期に面倒事の気配がしなくたって良いのに……」


「暗い時間が長いからこそやりやすいのであろう?」


「わかってるけど言いたくもなるでしょ」


 そんなやり取りをしているとゴブリンが光となり消え去り、その場に宝箱が落ちる。

 その中身は黒い魔石でありなんとも反応に困る加工しなければ使い物にならない物がドロップした。

 持ち帰って必要か考えてみる事にするが、もし証明書を貰って直行するのであったのなら迷わず棄てていた。

 価値はあるが重量があるので不安要素になりかねない為棄てるしか選択肢は無かっただろう。



 ダンジョンを抜け出し、森で身を潜め夜を待つ。

 試験を受けてすぐに飛び出すとした場合、現在の時間を考えるとあまりミシシュから離れる事ができずに夜を迎えるだろうと判断して入り口だけにはなるけど町に変化がないかすぐに確認が取れる位置で待機することにした。

 やがて周囲は暗くなり、人がいなくなったところでミシシュの町に入り拠点へと戻る。

 その途中での出来事だった。


「……なに?イチジク?」


 先頭を歩いていた私の視界の端で、足が生えた。

 振り向けばハイキックの体制で硬直し下着が丸見えになっていて、当の本人であるイチジクも何故自分がそんな体制になっているのか混乱している様子だった。


「ん?む?いや、わからんが……感触……ッ!?」


 イチジクは私の声で意識を戻したのか足を下げて何かを確めるように呟いた次の瞬間、落雷のような早さで背後を向き構えを取る。

 私にはその動作が早すぎて、まるで時間でも止められ気が付いたらイチジクが構えを取っているように思えた。


「……ッテェーなぁ!?ふざけんな割りに合わねぇぞクソがぁッ!!!」


 イチジクの向く先には男がいて、その男は何故か地面に伏していて、痛みを誤魔化すよう叫びながら這うように立ち上がり大きな何かを担いで暗闇へと高速で消えていく。


「レネッ!?……ノエル?」


 その男を追いかけようとしたイチジクの手を私は掴んだ。

 目の見える範囲にレネの姿が無い。

 血の気が引いていくのがわかる。

 何が起きたか理解していながらも理解しないようにする自分がいる。

 そんな奇妙な感覚。

 どう考えても冷静じゃないのに私は冷たく思考する。

 いつかこういう事が起こると想定しレネと決めていた事がある。

 それを行わなければならない。レネは捨て石なのだから。


「ノエル……今ならまだ追い付ける……離して、離してくれぬか?」


「お願い…お願いだからこっち来て…………」


「ノエル………」


 普通の人なら折れるくらいの力でイチジクの事を掴んでしまっていたが気付く余裕なんて今の私には無かった。

 混乱した時の私はどうもマニュアル馬鹿みたいだ。

 レネが捨て石?そんな訳がない事くらいわかっている。

 なのにイチジクを引っ張りながら拠点へと戻る足を止められず、イチジクもそんな私を振り払う事ができずにいた。


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