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神々の遊戯盤  作者: ダンヴィル
目まぐるしく変化した日常
10/18

異常


 騒ぎの方向へ足を進めていた。

 時の神と契約した魔人という化け物だと知った事で我先にと逃走するゴミクズどもを避けながら流れに逆らい進んでいくとやはり見覚えのある紫色の長髪をした魔人フレイヤの姿があった。


「そんなに物騒な魔人には見えないんだが失礼な奴らだとは思わねぇか?」


「まあ時の神に触れられれば風化するのは常識だしこれも魔人の宿命だって。悪いことしている自覚しかないから逃げるんだよ。ああいうのは」


「よお。よくも押し付けてくれたな。会いたかったぜ。」


「やあ。こないだぶりだね。私も会いたかったよ。なんせ名前を聞き忘れちゃったからねぇ~。他の二人はいないのかい?」


「今は俺一人だけだぜ。名前はノエルだ。よろしく」


「よろしくね。前に言ったけど私はフレイヤだ。

 それで、あの子何だったかわかったかい?」


「さぁ?便利で良い奴だが甘過ぎるなんだかよくわからん奴って事しかな。そもそも獣人なのかすら怪しい」


「獣人のハーフじゃあそこまで人間に近くないしクォーターでもああは……無くも無いがあんな水と油みたいに綺麗に判れるものかねぇ……」


 おっと、獣人に出会った経験全然無いから知らなかったが良い情報を得られた。だとしたらイチジクは何なんだ?

 ……まぁ、そんな事関係無く側にいてほしい存在ではあるが。


「やっぱり混沌の神かなぁ」

「混沌に属する神関係だよなぁ……」


 沈黙。

 あぁ、時の神に関連と契約して不老不死になった魔人でも混沌に属する神は避けたいのか。それはそうか。うん。


「……………おもちゃ箱に連れてってみたら?」


「……は?」


「だからおもちゃ箱だけど。もしかして知らない?」


「いや知ってはいるが……やっぱり行かなきゃ不味いか?」


「本当に関係してるなら行かない事も想定されてるでしょ」


「……ところでアンタは行った事あるか?」


「あるよ~。脳ミソ壊れそうになるくらい愉快なところだよ。2度と行かないけど。1度は行ってみなさいな。価値観変わるよ」


 価値観というか存在そのものが変わる可能性があるんだよなぁ……

 おもちゃ箱は魔族と人類の領土の丁度ど真ん中に存在するという迷惑極まりない場所に構えている場所で魔族と人類の争いの際は必ずおもちゃ箱を迂回していたと読んだ事がある。

 おもちゃ箱は中立だからどちらも手を出さない。出したくないのだ。

 というか賢者に並ぶ知恵者筆頭の魔人が頭壊れそうになるってどんなとこだよ。

 いやまあ混沌に属する神が作った町だという事は知っているけれどさ……


「まあ……一応検討してみるぜ」


「そうした方が良い」


 何事もなく魔人すら闊歩する魔境であるワイバーンの餌袋から脱出できた後の話になるけどな。


「ところで、ずいぶんと気に入られたみたいだね」


「……なんの話だろうな」


「見ればわかるよ。私は神だけど……いや、いいや。

 こういうのは本人同士で見つけた方が良いだろうからね。

 さて、私は冒険者ギルドの隅の方によくいるから用事があるならそこに来ておくれ。できれば次は皆で」


「は?まさかこんなとこに住むつもり……って、用がなければこんなとこいねぇか」


「ちょっと実験がしたくてね。何故か道が広くなったから今のうちに何個か済ませようかね」


 そう言いとアルケミストが使いそうなフラスコを数本取り出し見せびらかしてくる。


「……魔力生命体を解き放つとかやめろよ」


「もしかしてショゴス事件の事を言ってる?物知りだね君。

 えっと……名前なんだったっけ?」


「は?……ノエルだ」


「ノエル。……うん、覚えた。もう忘れたりしないから怒らないでおくれ。

 それじゃまたね~」


 手をヒラヒラと振って去る姿を見送り、私の方も今の会話で外に出た時の事を意識した訳で、外に行ってからどう生活するか考え直す事にした。



 魔人フレイヤに出会ってから2日が過ぎた。

 話し合いの結果3日後ダンジョンに行こうと決め、ダンジョンボスが強かった時の為に今日は火炎瓶等を作ろうという話になってミシシュの路地を歩いている時の事だ。


「む?甘い匂い……」

「そこはっ!……あ~あ、見ちまったか。死体でもあったかぜ?」


 ほんの少しイチジクとの距離があって止めるのが遅れてしまいミシシュ死体放置スポットに目を向けてしまった。

 立地とかの関係でミシシュの中でも特に死体が放置されている事の多い場所というのが存在しており、イチジクが覗いた路地はミシシュで一番細い路地であり1人通るのがやっとなのだが、その路地の中心辺りに部屋のように少しだけ広い空間がある。

 丁度5人くらいで一人を囲んで袋だたきにしやすそうな広さの空間が。

 酒場も近いし組織の縄張りの境界線に程近い場所というのも重なって死体放置頻度が他と比べて圧倒的に高い。


「……?どうしたの?」


「ん?ああすまぬ……コホン………いや死体ではない?……の………子供?」


「子供?…本当だ。だから何?…………ねえイチジク?」


 イチジクは物凄く怪訝な表情でその路地を眺めており、流石に気になったのかレネがイチジクの背後に立ち上から覗く感じに確認して子供がいる事を認識する。

 ちなみにわざとらしい咳払いはここらじゃ聞かない変わった口調で話しかけたのを誤魔化すためのもので時々やらかす。


「そう……けど……子供?」


「どう見てもガキでしょ。ほら早く行くよ」


「そうでない。子供とかでなく……何か変………」


 そこで私の位置からでも見えるところまで話題の子供が出て来た。

 どこからどう見てもそこら辺にいるガリガリの子供であり、イチジクに「自分の事優先だから絶対助けようなんて考えない」と約束させた対象に入りそうな容姿をしている。


「レネの言うとおりだぜ。さっさと行こうぜ」


「………あっ……………わかった」


「何が……」


 何がわかった?と聞こうとした時だった。

 その子供がイチジクに襲いかかったのは。

 不意打ちであり、イチジクの甘さだろう。

 イチジクは子供の両手を掴み、避ければ転び怪我をするだろう体制と勢いだったのを考慮して自分から倒れる事でその子供への負担を最小限にした。

 

「ガアァアアアアアッ!!!」

「グッ……」


「ちょっと……」「お、おい……」


 イチジクを覆い被さるようになったその子供は両手を捕まれているためか大口を開け首を噛み切ろうとし、イチジクは片手を離し子供の額を押すようにして噛まれないようにしつつここまでされて怪我をさせまいとする。

 空いた筈の手で攻撃しないのは見えていないだけでイチジクの尻尾で固定されているのだろう。

 そんな光景に流石に加勢するかとレネと目配せしナイフを抜こうとした時だ。


「やはり……心臓が動いておらん!こやつゾンビじゃ!」


 子供の胸に耳を当て気付きが確信に変わった事で無理矢理引き剥がしイチジクの鋭い蹴りがおそらく子供のゾンビに……当たらなかった。

 蹴りは子供の頭部をスレスレで過ぎ去り、一瞬驚いた顔をしたイチジクはバックステップで大きく二歩下がり私の横に来た時には顔色が青かった。


「……大丈夫?」


「あ、いや……すまぬ。怒らないでほしいのじゃが、蹴る瞬間ゾンビがこんなにも綺麗ならノエル達が万が一そうなったら同じ感じなのかとよぎって当てられんかった………すまぬ………」


「縁起でもない事考えんなよテメェ……」


「わかっとる!じゃから先謝った!」


 しかしその気持ちもわかなくはない。

 目の前のアンデッドはとても腐ってるようには見えず、汚れてはいるが死んでるように見えないほど損傷もなく、赤みもあり温度の感じさせる顔色をしている。


「俺がやろうか?」


「いや、わらわがやる」


 そう言ってからは早かった。

 背中から取り出した木の棒を起き上がった推定ゾンビの腹部へとすれ違い様にフルスイングで命中させ、打ち飛ばされた推定ゾンビは二階の屋根に当たってなお勢いが収まる事無く回転しながら空中へ投げ出され家何個分か離れた場所へ自由落下していった。


「ホームラーン…………はあぁぁぁぁ……………ぁぁ…………」


 推定ゾンビをかっ飛ばしたイチジクは木の棒をこぼしてその場で座り込んでしまった。


「……頑張ったね」


「もっと慰めて……思った以上にキツイのじゃ………」


 レネが慰めている様子なので私はイチジクのフルスイングで吹き飛んだ推定ゾンビから飛び散った血に触れ匂いを嗅いでみる。

 普通に液体で硬直している事も無く、鉄臭い匂いをしており腐っているような腐敗臭はしない。


「…………」


 腐ってないのに動いていた?

 アンデッドとして動くのに腐る事が絶対条件だなんて言わない。

 ただしそれは十分に腐らない状況を満たした場合に限る。

 アンデッドだから腐ってるのではなく、アンデッドになるのに必要な時間が経過した時には自然と肉体が腐ってるからアンデッドのほぼ全てが腐ってるのであって、あんな弱い子供の死体を綺麗に残すのは余程の金持ちが子供に先立たれたとかそんな理由しか思い付かない。

 もちろんここがワイバーンの餌袋である時点で100%その可能性も無いわけで、それはもしかしてもしかしなくても……


「二人とも、ダンジョン攻略明日にして明後日には町を出るぞ」

「え?」

「同感じゃな。何か起きておるじゃろ。わらわが初めて見ただけでゾンビが珍しくなくとも、あんな綺麗なゾンビが町中で自然発生するのかのぅ……」


 イチジクは気付くよなぁ。

 レネは育った環境的にそういうの察する力が弱いのは仕方ないとして、イチジクは起きた事柄から結び付けて考える力が強い。

 最初にあのアンデッドを見たときも違和感を感じ、それが確信に変わるまで様子見に徹した辺り私とイチジクは似たタイプかもしれない。

 ……それはちょっと嬉しいかも。


「まあ安心しろ。俺らも町中でアンデッドを見たのは初めてだぜ」


「安心できる要素を教えてほしいのぅ……」


 軽口を叩けるだけの余裕は残っていると確認できたところで当初の予定通り火炎瓶や毒針なんかを作り明日へ備える事となった。

 ただ、この火炎瓶はダンジョンボスが予定通りゴブリンの戦士だった場合できる限り使わない方が良いだろう。

 なんせ火炎瓶は人やアンデッドに対しても高い効果が期待できるからね。

 もしそうなった場合、焼かれる人間なんかを見てイチジクが行動不能になってしまうとかが起きないよう祈るしかない。


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