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天使を埋めよう!  作者: 後見 ナイ
6/9

初めての経験。

第6話です。

 僕とお父様は今、龍化したオートメータの背中に乗り、フォーミ山脈を目指している。

なかなかの速度で、ついさっきまでいた城がもうあんなに小さくなってしまった。龍化したいオートメータの皮膚は硬く頑丈だったが、やはり暖かかった。その温もりに触れるだけで何故か僕の心拍数は上がってしまう。


 初めて来た外の世界は知らないものだらけだった。分からない物を指さすとお父様に聞くと丁寧に教えてくれた。


まさか、外の世界がこんなにも色とりどりで広いだなんて知らなかった。

僕は初めて見る、川やたくさんの木々や岩山を眺めては、感動した。


暫くすると、右手に、大きな建物が見えた。

僕は、ワクワクしてあれは何か尋ねた。


「あれが、人間の国だ。」お父様が言った。


聳え立ったその建物はとても荘厳な物であったが、敵の物だとわかると、一気に不気味なものに見えてしまう。


あれが、我らの国を脅かしている国なのだ。


30分後、フォーミ山脈を目前に一度休憩を挟むことになった。


「長い時間、ありがとう。疲れただろう?」僕は、水が入ったコップを彼女に手渡す。


オートメータが、それを受け取ると、「うん、でもまだいけるよっ!…ん?その格好いけてるね」

と僕の変装した姿を見てそう言った。


「ああ、これね。」僕は、苦笑いを浮かべる。


お父様がいうには、オートメータにお父さんを殺した種族のことは、伏せた方が良いと言われた。それには、賛成だ。僕とそいつらが、同じ種族だとバレたら、僕が嫌われかねない。


作戦はとしては、ここで、オートメータが休んでいる間にフォーミ山脈の防衛戦に参加するのだ。


 キャンプの準備をしていると、あっという間に日が暮れてしまった。

僕と、オートメータは、お父様が、大きな鍋で、スープをかき混ぜているのを座って眺めていた。

 

「魔王様って料理できたんですねっ!」オートメータは、グツグツと煮えたった鍋を嬉しそうに眺めながら言った。


「む、まあな、昔つくっていたことがあったからな」お父様は顔色ひとつかえず鍋の様子を見ている。


その様子を、見ていると、何故か少し複雑な気分になってしまった。帰ったら僕もお父様に料理の仕方も学ぼう。


 夕食を取り終え、夜も深くなってくると、お父様とフォーミ山脈への侵攻を開始した。

オートメータは、お腹いっぱい食べるとすぐ眠ってしまった。


「あれをみろ」とお父様に言われ崖の下を覗いてみると、僕と同じ角も尻尾も持たない種族が、無警戒にも騒ぎ散らかしていた。


僕が、降りて行こうとすると、首根っこを掴まれた。


「何するんですか?」僕が小声で不満を言うと、お父様は、「お前は知らなすぎる」と言った。


「いいか、こういった基地には敵感知魔法が張られている。それを解除してからだ。」


さすが、お父様だ。戦い慣れている。この状況をとても冷静に分析している。


「結界は、破壊しておいた、私は上にいる部隊を殲滅してくる。ここはお前1人でもなんとかなるだろう。」と言い残すと、消えるように飛んでいった。


 僕は、魔法を使い、光を起こした。そして、その光に紛れて、突撃した。

敵は突然の出来事に混乱している。その隙に、土魔法で作った短剣で1人ずつ、確実に殺していく。


生き物をそれも自分と同じ種族を殺すのは、初めてのことだったが、トマトを握りつぶすようなものだった。何も考えず、感じななかった。


特に、苦戦することもなく、あっという間もなく、残りひとつだけが残った。


「ひっ、い、命だけは…。」鎧を纏ったそれは、無様にも尻餅をつきながら命乞いをしてきた。

散々、ドラゴンを殺しておいて殺される覚悟なんてしていなかったのだ。


「なぜ、ドラゴンを襲った?」僕は感情を殺してあくまで淡々とそういった。


「ド、ドラゴンの素材がぁ、対魔装備に使用できたからだよっ」ぼろぼろと涙を流しながらそう言った。


僕は何も言わずナイフを構えた。こいつにとっては龍は素材にしか見えないのだ。僕がこいつがものにしか見えないように。


「くそう、よりによって魔族なんかに…、クソッタレがああああ人間様を舐めるなああああ」

いきなり男は発狂し、ピストルを発砲した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈魔王視点〉


 山頂近くの部隊を潰し終えた私は、シューターの元へ戻った。

そこには、全身返り血を浴びたシューターが、立ち尽くしていた。


「無事に、終わったようだな」と私が声をかけたが、何も言わずに、ふらふらとキャンプへ戻っていった。


 きっと、同じ種族を殺してしまったことを、気に病んでいるのだろう。やはり、連れてくるべきではなあかったのかもしれない。9歳の彼には衝撃が大きかっただろう。


にしても、人間の愚かさは測りきれない。山頂部隊が持っていた対魔弾は魔族に当たっていたら致命傷になりかねない代物だった。

これからの戦争は、さらに厳しいものになりそうだ。

 

 そして、シューターが、10歳になった時、本当のことを打ち明けよう。


彼が人間であると言うことを。

そして私のことも。


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