【詩物語~うたものがたり~】抜刀/合戦
『抜刀』
端座したお前が じっと空を睨めつけている
双眸をぎらつかせ 息を殺し
お前は何を見つめているのか
突然
お前は立ち上がった
私は目を瞠った
穿たれた空間の向こうに
確かに世界が現れたのだ
『合戦』
山の向こうは戦場
周りを敵に囲まれた
あなたも戦に駆り出された男のひとり
はぐれた仲間は逃げ切ったろうか
眠れぬ夜を幾晩も過ごす
血臭の中で泥のように眠り
明日でちょうど二十日
一体 幾日たったのか
私の願いはただひとつ
諦めぬぞ俺は
生きていてくださいと
山の向こうであいつが待っている