表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第8話 『怒』


「リオ~、待ったか?」

アルニがルイと手をつないで戻ってきた

「あの・・・・・・恥ずかしいんですけど」

よく見るとルイは顔を真っ赤にしている

握っている手は震えていた

「私はあなたの様な美人と手をつなぐことができて幸せです」

「イヤ・・・・あの・・・・・そんな」

ルイは顔をますます赤くしていく

「冗談はいい、早くこの街を出よう」

リオは2人の肩を叩いて小走りに道を進む

アルニとルイもリオを追いかけて走った

「どうしたんだよ、まだ速くないか?」

「アドレアが来たんだ、アイツのことだから多分この街は爆撃される」

リオは手でジェスチャーをしながら言う

しかしそれは決して大げさなことではなかった

「アドレアって・・・・・お前の姉貴の?」

「そう、さっき出てきた」

「リオさんってお姉さんいたんですか!?」

「今訊くことじゃなくね!?」

そんな緊張感のない会話を続けながら3人は街の外に出た

「取りあえずここからできるだけ・・・・・・」

リオは途中で言葉を切った

「どうし・・・・・・」

喋りかけたルイも気付いた

続いてアルニもそれに気付く


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


明らかに自然物の出す音とは違う音

そして『それ』はすぐにやってきた

ヤシの実型の物体が6つ、後方からエンジンを吹かせて飛んできた

「また能力者か・・・・!!」

リオは腰の日本刀を抜いた

「鋭神弐式」

その言葉に反応する様に日本刀の形が崩れていく

そして壁のようにリオ達の前に面ができた

「伏せろっ!」

直後、リオの柄を持つ手に衝撃が走り轟音が響く

「便利だな、それどうしたんだ?」

「善良な若者にもらったんだよ」

リオはそっぽを向いていった

(嘘だな・・・・・)

そしてリオが刀の能力を解き、鞘に収めた時

「あれ?」

リオはすぐに違和感を感じた

アルニはリオの体を引っぱって近くに寄せた

「離れるなよ、まだ敵の能力も解ってないんだ」

しかしリオはアルニの言葉には耳を貸さず地面をしきりに見回していた

「どうかしたんですか?」

リオの異変にいち早く気付いたのはルイだった

それにリオは少々申し訳なさそうに答える

「刀が・・・・・・消えた」

つい先ほど鞘に収めたばかりの刀が消えたのだ

だがアルニは「そんなのいいから、こんな時に冗談よせよ」と言った目をしている

「本当なんだって!消えたんだって!」

しかし2人ともリオの言葉を信じようとはしない

どちらかと言うとルイはこの現象が信じられないようだったが

アルニはリオの言葉そのものが信じられなかった

これも日頃の行いのおかげである


「探し物はコレかい?」


唐突に声が聞こえてきた

声は前方の木の横に立っている男から発せられていた

その男の手には先ほどまでリオが握っていた刀があった

「オイ、それ返せよ」

リオは男の方に歩み寄っていく

そしてリオの手が刀に触れようとしたその瞬間


ゴッ


「痛っ」

リオは木にデコをぶつけた

さっきまで確かに居たはずの男の姿は消えている

ルイもアルニも消える瞬間を見ていた

高速で移動したとかじゃなく、本当に消えたのだ

「ちゃんと人の質問に答えなきゃ、『探し物はこれかい?』」

男はいつの間にかリオの横に居た

(こいつ・・・・・・・いつの間に・・・・・)

男はもう一度先ほどの質問を繰り返す

「・・・・・それだ」

リオの顔はみるみる内に不機嫌になっていく

他人におちょくられるのがよほど嫌いなようだ

「よくできました♪でもこれは返さないよ」

男はなおもリオの神経を逆なでする言動を続けた

結果、リオは手加減をしないと誓った

「解った、返さなくて良い」

「あれ?この刀諦めちゃうの?」

「俺はお前に返してもらわなくても良いと言った、だけど諦めるとは言ってない」

「じゃあどうする?」

「お前を殺す」

リオは手の平を正面の男に突き出した、掌底と言う奴だ

しかしまた男の姿は消え、今度はリオの背後に姿を現した

そこで男は異変に気付く

(俺を見ていない・・・・?気付いてないはずはない・・・・何故・・・)

リオは男の存在に気付いているにも拘らず後ろを振り向こうとはせず

ただ一直線に掌を木に向けて押し当てた

そしてリオが木に触れた瞬間


ザァァァァ・・・・・・パキキキキキキ


木が粒子のように散らばっていき、ある形を形成していく

(弾丸・・・・・いや・・・・槍・・・でもない・・・)

その形は長方形の形から流れるように形が変わっていく

最終的に固定された形は・・・・

(メス・・・いや、ナイフか!!)

木を基本素材とし、能力と言う研磨剤で磨かれた天然のナイフは男の方に飛んでいく

「能力は悪くない、使い方も良い、けどもう少し早く使うべきだったな」

男は『パン』と手を叩いた

その瞬間、世界は男以外の時間を止めた


ナイフも


リオも


アルニも


ルイも


落ちた木の葉も


跳ねた水も


舞い上がった埃も


世界の全ては止まっている

「もう少し速かったら当たってかもな」

男は時の止まった中で空中のナイフを手に取る

そしてリオに向かって投げた

しかしナイフは命中する寸前で停止する

男は再び手を叩く


世界に時間が戻った


ナイフがリオに反旗をひるがえ

「なっ!?」

ナイフはすでにリオの眼前まで迫っていた

(弾く・・・無理だ・・・・避け・・・)


ズドドドッ


「カハッ・・・・・」

避ける努力も虚しくナイフは腹部、胸部、二の腕、額、全て命中した

命中したナイフは再び粒子となって空中に消えた

(また・・・・・消えた)

男の姿は忽然と消えていた

(どうして・・・・・)

リオは完全に男の姿を見失った

そして四方八方から石が飛んでくる

(小石・・・?何で・・・)

大した痛みはない

しかしリオはこれが敵のメッセージではないのかと思う

『いつでもどこからでもお前を攻撃できる』と

そしてリオが反撃を試みようと姿勢を低くした時

意表を疲れた

男はリオの目の前に出現していた

「よくもノコノコとっ・・・・!そのにやけたつらぶっ潰してやるよ」

リオは男に歩み寄る

「おいおい、落ち着けよ」

「黙れっ!!」

リオは自分のマントを剥ぎ取り、分解する

(勘弁してくれよ・・・・・コレだから覇族は・・・・)

マントは布としての性質を完全に変え、金属に変化する

今度は長剣だった

リオの手は長剣を握り、それを男の喉下に向けて突進する

「死ねよ!!!」

だがそれも男に当たることはなく虚しく空を突いた

そしてどこからか声が聞こえてくる

「この刀はアドレア様にお返ししておくよ、それじゃあね」

男の気配は消えた

「待てよ!オイ!!」

しかしそれでもリオは止まらない

地面に手を置き、地面を分解する

「草の根分けてでも探して殺してやる・・・・絶対殺す」

その目は常軌をいっしていた

「ヤバイな・・・・・あいつキレてるよ・・・」

「えぇ!?」

アルニは木の陰に身を潜めつつルイを見た

ルイはリオの顔を見た

確かに、目が血走っている

「キレたら止まんねーぞ、あいつ」

「どうしたらいいんですか!?知ってるんでしょ?」

「そりゃぁ・・・・奴とは何百年前からの付き合いだし・・・・知ってますけど・・」

「教えて下さい!早く!」

アルニはルイの唇を人差し指で軽く突く

そして少し苦味を含んだ笑顔で言った



「昔から正気を失った悪魔を鎮めるのは、姫のキスと決まっているでしょう?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ