ガイドの仕事
魔王は倒された、それによってモンスターは減少。
大半の冒険者は廃業となる。
だが俺はついていた、その後に起こったモンスター保護の動き。
一部のモンスターは可愛らしく、人に従順なので隔離した森で飼われる事となる。
それは見世物化され、観光地として賑わう事になった。
俺はそのガイド役に収る。
「このモンスター触っていい?」
「お姉さん可愛いね、後でお茶しない?」
「ぼくが倒してやるー!」
俺はついてる、今日もマナーの悪い客に囲まれて仕事が出来るのだ。
冒険者冥利に尽きると言ってもいい。
俺は本当についている──。
こんな俺がマシだと言えるのは事情があった。
冒険者の廃業は社会問題となっていた。
一部は武芸を売りにして職を手にしたが、そのほとんどは犯罪者になるか物乞いになるか。
元々気性の荒い人間の集まりだ、敵をなくして暴徒化するのは目に見えていた。
悪い噂では国家転覆や新たな魔王を作ろうとする動きまであるらしい、余り信じたくはない話だ。
「もうどっちがモンスターだか分かんない!」
相棒の女戦士が言う。
ガイドの仕事はモンスターから観光客を守るものだ。それが最近ではマナーの悪い客からモンスターを守るような状況だった。
「まぁ客も入ってるし、ボーナスが出るかもよ?」
「そんな事の為にこの仕事に就いたんじゃない!」
女戦士はそう言い捨てると帰って行った。
冒険者としての誇り、形だけでも剣を持てるこの仕事に憧れる人間は少なくない。
それでもこの仕事を三日も続ければ考えは変わるだろう。
観光客よりモンスターの方が可愛く思えて来る、それほど酷い状況なのだ。
ある日、俺は職場に忘れ物をして深夜にも関わらず取りに戻った。
夜は凶暴化するモンスターも多く一帯は厳重に封鎖されている。
俺は抜け道を使って従業員の小屋へと急いでいた。
その時だ、
「明かりが……」
闇夜の中に薄い光が泳いでいる。
直ぐ頭に浮かんだのは例の悪い噂だった。
魔王の復活、何者かがモンスターを凶暴化して再び冒険者の世界を作ろうとしている。
俺にそれを止める義理はないが、それでも見てしまった以上仕方がない。
久し振りに感じる高揚感と共に俺は光へと近づいて行った。
すると、
「……何やってんだ?」
「あっ、べ、別にいいじゃない! モンスターと戯れて何が悪いのよ!」
居たのは女戦士だった。
俺はガッカリするような気持ちを抱え、一緒にモンスターを撫で回す事にした。
翌日、辞表を出したのは俺の方だった。