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ツインズ・テイル ━━妹探して異世界流離  作者: 西園兵
第一章 プリスニッツ村篇
8/10

使命

 女長老アルガラグタの家は村落の中心地にあった。しかし、だからといって家のつくりは周りの家とさして変わりなく、落ち着いた色合いの質素な木造二階建てで、とりたてて権力を誇示するような派手さはなかった。まあ、俺の前世の山梨病院や山梨家の、周囲から隔離し威圧する、田舎下卑た造りとは全然違った。


 日も暮れかかり、女長老の家の中で話を聞くことになった。


「ほうほう、そなたはショーム君とおっしゃるのじゃな。もうすっかり元気になられたようじゃが、村を見られてどうじゃったかね?」


「はい、カルカさんたちのおかげで元気です」俺はカルカの名前を口にして感謝したくて、そのように答えた。「ストルという植物には驚きました。お料理……お料理も、すごく美味しかったです!」


「ほっほっほ、ストルとストルを守り育むこの山間の環境と伝統こそが、この村を支えておるのだからの」


「それと、狭い田舎だからか、あ、えーと、山間の親密なコミュニティだからか」俺は慌てて言い直した。


「ほあっほあっほあっ、かまわんよ、狭い田舎なのは事実じゃからな」


「すみません。あの、良い意味で、狭い田舎だからか、みなさん、似ている方が多いような。姉弟が似てるのは当然なんでしょうが」俺はカルカとルカルの方を見る。「ご夫婦でもあんなに似るものなんですね?」


「ほー、ほっほっほ、それは当然じゃろう」女長老アルガラグタはそこで一息おいた。「なにしろ皆双子なのじゃから」


「は?」俺はこの村に来てから無意識に感じていた違和感の正体をようやく知ることになった。「ということは、カルカとルカルも、そのご両親のナラさんとラナさんも、果樹園で会ったリベリさんとベリベさんも、みんな双子だったんですか? 」


「ほっほ、さよう。さらに言えば、このアルガラグタにも、バババッドという双子の兄がおったのじゃ、いまはもう亡くなってしもうたがな。じゃから、わしのお迎えもそう遠くはないのじゃろうの」女長老は背中を丸めて目を細めた。


「でも待ってください」ここで俺にある重大な疑問が浮かんだ。「ということは、この村のご夫婦は、双子の兄と妹とか、姉と弟とかで結婚して、それで子どももいる、ということですか?!」


「ほほほいほい、当然そういうことじゃが?」


「でもそれって、大丈夫なんですか? つまりその、いわゆる、近親婚というやつなのでは?」


「ほっほっほ、わが村では先祖代々そのように暮らしてきた。双子の男女が生まれ、ストルの下で育ち、結婚し、メイトする。そしてまた双子が産まれるのじゃ。2人の親から、2人の子が生まれ、その2人がまた2人の孫を生む。村の人口が増えすぎることもなければ、減りすぎることもない。それで何も困ることはないのじゃ」


「つーことは」驚きのせいでついつい言葉使いがぞんざいになってしまった。「カルカとルカルも?」


「いずれは結婚することになります」カルカは迷いなく言い切った。


 えー、そ、そんな……俺の、カルカへのこの好意、というか、恋心、の、芽生え、のようなものは……


「ほーほー、2人はまだ若いから、結婚とか、メイトとかはもう少し先のことじゃ。ただ、いずれはそうなる定めなのじゃ」


 メイトという言葉が気になるが、それは置いといて。


「例外はないのですか? つまりその、双子同士ではなく、別の人と、その、結婚するというか……」


「ほあほあ、基本的に例外は認められんな、この村では。ただ、そうは言っても、ときおり例外的なことは予期せず起こるものじゃ、ショーム、そなたの存在のようにな」


「俺が、ですか?」


「ほっほっほ、そうじゃ、この村とて時にそういう不測の事態が起こりうる。突然、果樹園の中に、そなたが現れ、カルカが見つけた。そのことに何か意味があるのやもしれぬ」


「長老! 別にこのことに特別な意味などなにもないと思われますが?」 弟のルカルはいささか不服そうな強い語調で言った。


「村の言い伝えによると」カルカがなだめるような穏やかな声色で言う。「これまでにもショームのようなことはあったようですね」


「ほっほっほ、そうじゃ、カルカ。われわれはそれを、転人、と呼んでおる。百年に一度くらいの頻度じゃろうか、ここではない異世界から、ある使命をもって転じてくるのじゃ」


「使命?」


「ほああーっ!! ほあーっ!!、ここは双子の村プリスニッツ、転人は、おそらく前世の双子、生き別れとなった双子を探し出す使命を帯びて、ここに転じてくることになっておるのじゃろうて」


「たしかショームさんは……」カルカは記憶を辿るように、いつもよりペースを落としてしゃべっている。「アケノミヤさんとおっしゃる妹さんがおられるとか。きっとそのアケノミヤさんが、この世界のどこかで、ショームを待っているんですわ」


 カルカは、俺のことをさん付けしたり、呼び捨てにしたりしている。きっと、俺と同じように、お互いの関係性の適切な距離感をはかりかねているのだろう。


「たしかにアケノミヤは妹だけど、別に双子ってわけじゃないよ。2つ違いの妹だし、それ言ったら、俺には2つ上の兄だっているし。ダイゴとかぬかす奴なんだけどね」


「ほほほいほい、いやいや、カルカの言う通りじゃて。意味も目的もなく、この村に転じてくるものなどおらん。ショームよ、そなたは生き別れの双子の妹アケノミヤを探し出すためにこの地に転じて来たのじゃ!」


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