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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第5章 ルマニミ王国
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At96.夜のお話し5

 夜8時。フェアリとの街の散策を終え戻って来た村正。フェアリと別れた後シギーと共にイブの所へ向かった。


 「お帰り~。」

 「お母さん、どうだったの?」


 イブが村正達の向かう先で待っていた。シギーはイブに会談の結果を聞こうとする。


 「ここでは駄目よ。」 

 「・・・」


 村正が居るこの場で話すわけないは行かない。例え村正がこの場に居る事を許される人間だとしても、立場は他の付き人と変わらない。イブの口から村正に会談内容を伝えることは許されない。それが可能なのは国王であるギルディスかドルトリスだけ。

 シギーは、学園の責任者と言う立場上警備の問題もあるため、知ることが許される。

 シギーと綺麗に縦に並んでいる村正。そのため、村正にはイブが何処を見て居るのか、2人の僅かな会話の瞬間だけ見えなかった。それは、シギーが村正に見えないようにあえて取った行動。


 「それで紺野君達の方はどうだった?」

 「はい?」


 シギーの背中からひょこっと顔を覗かせる村正。


 「そうですね、特別な事は無かったですよ。」

 「普通?」

 「はい。いつもの生活と大きな変化はないですよ。」


 実際特別な事をして来たわけではない。ただ、2人してカムタスの街にただただ圧倒された程度。

 村正の話を聞いて満足げに頷くイブ。


 「なら良かったわ。」

 「なんか特別な事があった方が良かったですか?」

 「ううん。普通の方がむしろ良いのよ。これからの事を考えるとね。」


 来年にはフェアリはクレア学園への入学が決まっている。そうなれば、フェアリには新しい生活が待っている。そのためにも、普通のと言うのが一番効果的なのだ。()()と言うのが表現的に正しいのかは別にして。

 

 「僕はこれから彼女とどうかかわって行けば良いんですか?」

 「どう、とは?」

 「今はまだ、僕とフェアリとは明確な立場の違いがあります。ですけど、彼女はあまりそう言うのが苦手、と言うか、僕との間では望んでいないように思えるんです。」


 村正はフェアリの事を呼び捨てにしている。それは、彼女の事を知らない人の前や、2人だけの時。もし、学園内でもそう振る舞う事が必ずしも良しとは限らない。

 村正の質問にイブとシギーも村正と同じ表情をする。それは、フェアリの位置づけがどうなるのか。それが2人にも分からないから。フェアリに関する明確な指示は出ない。それは、学園には不干渉と言うのが位置付けられているのもある為。学園に入ればフェアリは国の干渉から遮断される。唯一可能となるのは、ギルディスがフェアリの父親として干渉することのみ。しかし、それさえ厳しくなる事が予想されてしまう。


 「今の段階でどうこう言うのは難しいかも知れないわ。」

 「シギーさん・・・。」


 来年入学して来る学生が殆ど決まってすらいな現段階では、どんな人物が来年クレア学園に入学して来るかなど誰にも想像できない。

 フェアリの入学に関しては別、と言うわけではない。フェアリも然るべき手順を踏んでの入学を決めている。ただ、結果がでるのが早かっただけに過ぎない。


 「紺野君、君はどうしたのかしら?」


 いつになく大人の顔を見せるイブ。


 「分からないです。」


 村正は肩をすくめながら答える。今の関係を学園内で取って良いのかどうか。周りの目もある。村正自身の立場もある。その立ち位置を間違えれば学園内の学生と大きな壁を作ってしまうのではないか。そう考えると安易に答えを出せないでいた。

 今の村正の周りに居る人たちは彼の決断に対して真っ向から対立する人は居ないだろう。が、それ以外となると話は全く別だ。


 「今の学園での関係を守ろうとしたら、多分、フェアリと今みたいにはいかないかもしれませんし。」

 「なら、いっそのことあの子を紺野君達の周りの1人にする?」


 イブの提案も一理ある。しかし、それをしてしまっては、今度はフェアリの周りが彼女を遠ざける。


 「なるべくそれは避けたいですね。フェアリが他の子と一緒なら話は別かもしれませんが。」

 「今の状況では無理?」


 無理・・・。多分それは違うと思う。きっと、僕は今怖いんだと思う。フェアリに今後学園内で頼りにされるのが。

 いや、これも違うな。彼女との関係が学園内で変わってしまう事を、恐れてるのかも知れない。今ある人達との関係が大きく変動してしまう。それを一番恐れているんだと思う。


 「うーん、ちょっと違うと思います。」

 「今すぐに決めなくちゃならない訳ではないわ。」


 イブの言う通りまだ8月。即決が反って仇となるかもしれない。そう思うと少しばかり肩の力を抜くことが出来た。

 

 「もし、紺野君が希望するなら、繋ぐことは出来るよ。」


 どこと、は言わなかったが僕はこの場では保留にした。まだ、フェアリと話せる機会は残ってる。決めるのは、その後でも良い。


 「ありがとうございます。」

 「良いのよ別に。」


 何故か分からないけど、今日のイブさんはいつもより大人に見えた。普段の感じとは全く違う。


 「私とシギーちゃんこの後、ちょっと話があるからそろそろ良い?」

 「あ、はい。大丈夫です。」


 僕も、この後予定あるので。

 なんて言える訳もないので。


 「じゃあ、僕はこれで、失礼します。」

 

 村正は背を向けると、自室に向かって歩き出した。

 リウンとの約束の時間までは1時間半程残っている。この時間で夕食を済ませても良いが、村正は自室に戻る事を選択した。それは、シロとの話をするためでもあった。

 部屋に入った村正はカーテンを閉めると部屋の明かりを灯す。


 「お兄ちゃん、どうしました?」

 「うん、この後のリウンとの話の事でちょっとね。」


 シロと村正はベッドに座る。落ち着いて話をするのに、そこが一番安心できた。


 「そう言えば、何かリウンさんとお話しする約束をしていましたね。」

 「うん。僕が今考えている事とかね。」

 「1つ、警告をします。」


 シロは村正の前に立つと真剣な眼差しで見つめる。


 「もし、()()の事をリウンさんにお話しすると言うのであれば、私は反対です。」

 

 冷たく鋭い言葉が村正に刺さる。それは、シロが主である村正の身を案じての事。


 「あれは、私以上にお兄ちゃんの身を危険に晒すんです。」

 「分かってる。けど、リウンが僕にもたらす情報より大きくないと意味がない。」

 「ですが、対価にしては大きすぎます。既に、私の事を知っているんですよ。」


 そう、既にリウンはシロのことを知っている。それは、村正にとって大きな誤算だ。しかし、それは村正自身の不注意が招いたこと。今更どうにもできない。リウンは適当な誤魔化しが通用する相手ではないことも村正は理解している。

 ただし、村正は1つ大きな勘違いをしていることにまだ気付いていない。そしてそれはシロもまた同様であった。


 「けど、リウンはそれを悪用しないと信じてる。」

 「まだ、信用するには早すぎませんか?」


 シロの感じる事は当然だ。今日の感覚でリウンに僕の秘密全てを話すのはリスクが余りにも大きすぎる。だから、話の中から判断しようと思う。

 

 「だから、シロにも一緒に居てもらいたいんだよ。」

 「一緒に、ですかか?」

 「万が一の事が起きた時のために。」


 シロ1人で対処できるか不明。かと言って、その時のための布石など打てるはずもない。村正達はこれから内密に外出しようとしている。その事をイブやシギーに伝えればその時点で止められる。

 リウンの事、そして、フェアリやシロの事がバレている状況も村正は報告していない。それがどういう結果をもたらすのかさえ不透明な現状でイブ達に話しをすることが出来なかった。


 「そこまでする必要が本当にあるのですか?」

 「リウンに聞きたいことが1つじゃないんだ。」


 村正がリウンに聞きたいことの大半は1つの内容で占めらている。だが、他にも村正は彼女に訊ねたいことがある。

 あくまでも、今夜の目的はあの店の事。リウンの言う、敵に回すと厄介、と言うのが何を示しているのか。そして、どうなるのか。


 「何を訊ねるのですか?」

 「禁忌書庫の書士。」


 村正の言葉にシロは固まった。それは、今回の会談内容を村正があっさりと情報漏洩の元になろうとしているから。もし、村正経由で露見した事が知れれば、村正は確実に捕まる。それは、国が不干渉とかが全く通用しなくなる。そうなれば、シロ含め、誰も彼を守る事は不可能になる。


 「お兄ちゃん、本気で言っているのですか?」

 「冗談で言って良い事じゃない事はシロも分かるだろ。」

 「だったら、何ですか。お兄ちゃんは死にたいんですか?」


 シロが村正の肩を強く掴みながら大声で詰め寄る。

 王城の廊下にシロの声が響き渡る。

 シロの表情は切迫していた。本気で今の村正を止めようと。渡る橋にしては危険すぎる。このまま村正を行かせるわけにはいかない。


 「そんなわけないだろ。」

 「分かっているんですか?今私達は本来この国には居ない団体なんです。最悪、私とお兄ちゃんは旅行と言う事で外部には誤魔化しが効きます。ですが、その話は別です。」

 「だから、リウンの店で話すんだよ。」

 

 さらに村正を掴むシロの手が強くなる。


 「そうじゃありません。その問題はインディアル王国の名誉に関わるほどの問題であることを理解していますか?」

 「それも理解している。会談の事が秘密な理由もそれだし。」


 村正とて考えなしに禁忌書庫の書士についてリウンに相談を持ち掛けようとしてるのではない。リウンがその情報を持っている可能性を見せたから。


 「そこまで分かっているのであれば、その話は引っ込めてください。」

 「――。」


 シロに言われた事が村正から言葉を奪う。これ以上シロに反抗すれば、シロは本気で怒る。村正を止めるために。

 村正が足を踏み入れようとしている場所にしては危険が多すぎると言うのもある。しかし、それ以前にシロには村正を止めなくてはならなかった。それは、彼が余りのも無知だから。足を踏み入れるには知識も、経験の何1つ無い。そんな村正をみすみす危険な場所に行かせることは出来ない。


 「それに禁忌書庫の書士はお兄ちゃんが関わるべき相手ではありません。大人のすべきことです。学生であるお兄ちゃんが必要上に出る幕ではありません。」


 落ち着いた雰囲気を取り戻すシロ。シロは村正に向かって笑みを浮かべて言う。


 「お兄ちゃんはこれが終わったら少し、休んだ方が良いですね。」

 「休む・・・。」

 「ずっと、私は傍に居ますよ。」


 ずっと傍に居る事はシロとの契約で結ばれた事項。それを違う事は出来ない。シロが村正の傍に居なくてはならないのではなく、村正がシロの傍に居なくてはならないのだが・・・。

 

 「はいはい。」

 「む~。」


 村正にあっさりと受け流されたことに機嫌を悪くするシロ。しかし、村正がそう言う行動を取るときは、ほぼ聞いていない証拠。それだけに、シロの心の不安は払拭できなかった。

 

 「話しの本題は別さ。今日はその話だけで終ることも十分にあり得る。」

 「本当ですか?」 

 「多分。」


 多分と言う村正にシロは村正に背を向け小さく溜息を吐く。自分の村正に対する気持ちを整える為だ。


 「私はお兄ちゃんには本当に要らぬことには首を突っ込んで欲しくないんですよ。」

 「分かってるよ。」

 「ただでさえ、お兄ちゃんは自分の抱えている厄介事が桁外れなんです。興味本位であちこちに首を出さないで下さい。それは、結果的に多くの人に迷惑を掛ける事だけは忘れないで下さい。」


 

次回At97.密会と言う名の・・・

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