At92.お姫様の素顔
ちょいと、今回内容薄目です。
「まずは、どこから行くん?」
「私、ちょっと行きたい場所があるんですが、良いですか?」
城を出て街を巡り始めるフェアリ一行。この時間、ルマニミ王城では、国王の会談が行われており、フェアリはその間の時間を利用して街の見学へ出る事になった。
フェアリの隣をシロが歩き、その後ろを村正とシギーが歩く。
「良いけど、どこへ?」
「少し、気になる書店がありまして。」
「書店?」
フェアリって本に興味あったんだ。
「はい。この街に魔術系の生物に関する書物がありましてね。」
「それって、魔獣とか、魔物とか?」
「はい。それ以外にも、生命魔法で変化を遂げる方法も含みます。」
村正が前を歩くフェアリに訊ね、フェアリは振り返りながら答える。
前がおろそかにならないように、シロがさりげなく、道を作る。
「フェアリって生き物に興味あるの?」
「興味と言うよりも、私の持つ能力について別の支点から見て見ようと思いまして。」
魔法とは違う力を有しているフェアリ。本来ならば修復不能に陥った状態に草花を元の状態に戻すことが出来ると言う物。その能力について、魔法使いのテンははっきりと魔法とは違うと断定している。
フェアリにとってもいまだ謎の力は、彼女の周りの人間よりも、持っている本人が最も不安である事に変わりはない。それでも、周りが知れば、フェアリにどんな事が起こるか分からないという観点から、その事は公にはなっていない。
「別視点って言うのは、生物とかが再生できる可能性とかで良いのかな?」
フェアリは頷き、
「はい。魔法である程度の治癒は出来ても、そこから先は難しいと思います。ですが、何らかの方法で完全に戻すことが出来るのだとしたら、それは何か?もし、その答えが分かれば私の能力を知る方法の1つになると思いまして。」
「フェアリは自分の能力、どうしたいと思ってるの?」
村正の質問は声が低く、重かった。それは、フェアリの事が心配だと言う事、さらに、フェアリの進もうとしている道の先に、何か危険がある様に思えたから。
フェアリ自身にはそんな事が無くとも、村正の心の中で、嫌な胸騒ぎがした。この先、彼女を中心に何かが起きるのではないかと。
勿論、それが村正の個人的な考えであるのであれば何ら問題はない。
「・・・」
フェアリは顔を前に向けると、そのまま黙ってしまった。
村正は焦った。今の質問は触れてはならない内容だったのかも知れない。フェアリもまだどうした以下を分かっていない状況下で聞くような物でも無かったと反省する。
「ご、ごめん。変な意味はないんだ。」
フェアリは、少し村正に顔を向けると、
「分かっています。私はこの能力を上手く使わなくてはなりません。出来るならば、この力は使わない方が良いのです。」
「・・・」
「もし、私の能力の事が分かっても、それを使わなければ何も起きません。」
フェアリはずっと先の事まで見て居た。自分の持つ能力の大きさ。そして、その特別性までも。この世界では、村正の持つ常識や、考えが通用しない、若しくは非常識になる事だって多々ある。その事は、この世界に来てから嫌という程見てきたが、今でも、その中の考えを簡単に変える事が出来ない部分はある。
「フェアリ様は、学園に入学して、その後自身の能力をどうしたいとお考えなのですか?」
シギーのその質問に対し、フェアリはすぐに答えを出した。
「学園に入学したら、私は少し、能力から距離を置くことも考えています。」
そのことに村正は驚いた。てっきり、能力最優先になると思っていたからだ。
「どういう事なの?」
村正の質問にフェアリは立ち止まる。僅かな間に風が吹き、彼女の薄い水色の髪を揺らす。
「下手に、動いて他の方々に私の能力の事を悟られるわけにもいきませんしね。」
なるほど、とは素直に思えなかった。
フェアリの言う事は尤もだと思う。だけど、なんだか、僕にはその奥に秘められたような何かが凄く気になった。その中へ入るのは決して行ってはならない事だと理解している。
今の僕では、まだ、彼女の深層へは触れる事は許されてないのだろう。
「そうですか。もし、何かあったら遠慮なく相談してくださいね。私達も可能な限りでは協力しますので。」
「必要な範囲で大丈夫ですよ。私も、この能力の事について知りたいのは変わりないいのですから。」
あくまでシギーは、フェアリの考えを尊重する立場。シギーの立場からすれば、フェアリの件は厄介なはず。必要以上にフェアリと関われば、他の学生との間に溝を生んでしまい、彼女が孤立してしまう。
今の時点で、フェアリが学園に入学することを知っているのは、シギーやイブ、村正などごく限られた人物のみ。学園の教師陣でさえ、まだ知らされていない。
「その辺は心配無用ですよ。」
「?」
「学園に入られたら、フェアリ様も一学生。それ以上もそれ以下もありませんから。」
要は僕等一般学生と同じ扱いになるって事ね。
この学園は国からの介入を一切受け付けない。それは、フェアリが王女様と言う肩書が無くなる事を意味している。
「私個人的にはその方が助かったりもします。」
「――そうですか。」
シギーはフェアリを追い抜くと、
「では、紺野君。」
「はい?」
「私、少し用事を済ませてきますので、フェアリ様の事、頼みましたよ。」
そういうと、シギーは路地に入ってどこかへ行ってしまう。
村正は任されると言われたが、シギーの方が気になった。シギーも今回フェアリについていなくてはならないのではないかと。
「行ってしまいましたね・・・。」
「うん・・・。」
シロとシギーの入って行った路地を眺める村正。特に何か起こるとは思っていないものの、シギーの言う、用事と言うのが少し、気になる。
「取りあえず、僕等も行こうか。」
「はい。」
村正達は再び歩き始め、フェアリの目的の書店へと到着する。そこは、昨日村正達が訪れたような場所とは全く違い、明るい雰囲気に、多くの人で溢れていた。
その店は、フェアリの目的の種類以外にも多くの本を扱っており、情報誌や、趣味趣向の物まで揃っている。
「すごいな。」
「本当にすごいですね。」
内装はとても綺麗で、木をふんだんに使用していて、村正の居た元の世界にもある様な感じの店だ。
「こっちですね。」
中に入るとフェアリは目的の場所へと向かう。
「生物学か。」
「はい。やはり、まずはここから探ってみるのが一番かと思いまして。」
生物学を専門に扱う書物が数多く並んでいる。普通の動物に焦点を当てた物から、魔物や魔獣に関するものまで。さらに、こんなものまである。
「生物学の観点から見た召術?」
「お兄ちゃん、どうしました?」
シロも気になり、背伸びをして村正の手に取った本を除き込む。村正はシロが見やすいようにとしゃがむ。
「魔法使いの召喚術によって、強制的に呼び出された生き物に与える影響はどのような物か?」
「意外な視点から見ましたね。」
「意外な視点?」
魔法使いが召喚を行う場合、召喚される側の生物の事はあまり念頭に無い事が殆ど。召喚して、用事が済めば、そこでお終い。呼び出された生物に与える影響と言うものは全く考慮されていない。
この本は、そんな当たり前の事に関して掘り進めて見た物。
「お兄ちゃんは、違う場所からいきなり、連れて来られたら、どうなりますか?」
「どうって、」
まあ、始めは混乱するだろうな。僕も似たような感じだったし。転生だから、ある程度説明は受けていたけど、実際はほぼゼロからのスタート?なのかな。
まあ、人間が召喚されでもしたら、そりゃあたまったもんじゃないだろうな。いきなり、訳も分からず、呼び出されて、戦えなんて言われたら。
「まず、混乱するかな。」
「この本は、今は禁止された人間を召喚することに触れています。」
「人間の召喚?」
以前イブさんに軽く聞いたことがあったっけ。
「何を読んでいるのですか?」
フェアリも、村正の読む本に興味がある模様。
「これだよ。」
村正は本の表紙を見せた。そのタイトルに、フェアリも興味を示した。
「面白そうな本ですね。」
「だろ?」
村正は、本の内容が気になって仕方が無くなったので、フェアリをシロに任せると、本を買いに店員の元まで持って行った。
「村正君て意外と、本能的なの?」
「本能的、と言うより、自分に正直なんだと思います。」
シロの村正に対する評価は悪くはない。自分が仕える主として、何一つ文句はない。シロと村正には少し似た部分があるのも、シロが村正を高く評価できる理由の1つかも知れない。
フェアリは、村正の事を、まだ、魔術祭で見た部分しか知らない。このルマニミ王国に来ている間にさらに村正の事を知れたらと思ってる。
「それでも、どこか鈍感で、大切な物に気付かず、怒られていますけどね。」
「そうなの?」
「はい。学園の寮ではいつでもそうですよ。」
シロが村正のそう言った一面を人に話すのは、それだけ、村正の事を信頼しているからと言える。
「それに、お兄ちゃん、学園では1人で居ることも少ないですね。」
「誰かと一緒が多いの?」
「相部屋のユウキさんと一緒です。」
シロが評価しているのは何も村正だけではない。彼の周りの人物もその対象に含まれている。
今のところ、シロが村正にとって害となる人物に出会っていない為、シロの評価が村正の人間関係に直結するような事態には陥っていない。
「村正君の周りは、女性が多いのですか?」
「それは、まあ、仕方ありませんが・・・。」
シロは、フェアリから視線をそっとそらした。村正の周囲に女性が多いのは自然なことだが、それに対する、村正のあまりの反応の薄さに皆手を焼いていることを、村正本人に自覚させなくてはならない。
「もしかして、村正君、その事に気づいてないのですか?」
「ええ、まあ。」
フェアリは、村正を取り巻く女性環境をまだ、知らないが、シロから聞いたことで、村正が鈍感の天然の可能性を知り、少しばかり、先行きが不安になった。
次回At93.カムタスと言う街




