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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第5章 ルマニミ王国
85/165

At85.下調べ

 イブ達幹部の皆様方が翌日行われる会談に向けての準備を行っている頃、村正は朝食を終えると、シロを連れて、王都の街へと出ていた。目的は明日、フェアリの自由行動に備えての下調べ。村正が先に1人で行動をしようと思ったのは、昨日の店での情報の影響。

 昨日、村正達が入った店で、この街が特殊であることを知りもっとこの街の事を知っておく必要がある。そう考えたから。

 村正はイブにも同行を求めようと思ったがこの時イブは既に明日に向けた準備の会議に入っており連絡さえつかなかった。シギーは学園の用事として朝早くから出掛けている。


 「こうして歩いてみると、特に気になる場所とかないよね?」

 「ここはまだ王城に近い区画でもありますし、もし昨日の事を気にしているのであればこれより先へは足を踏み入れないことをお勧めしますよ。」

 

 シロは分かってるんだ。僕が何を考えているのか。

 確かに、シロの言う事はよくわかる。危険な場所に分かっていて足を踏み入れるような事をしなければ、余計な警戒をしないで済む。しかし、僕はフェアリがそれをするとも思えなかった。彼女は光にだけ目を向けない。


 「流石にそれは失礼だな。」

  

 取りあえず、もっと情報を知りたいな。色んな事を含めて。


 村正の足は自然と昨日のリウンの店に足が向いた。たった1回訪れただけなのに、もう足が場所を覚えている。場所が分かりずらいだけに迷うことも想定していた村正だが、その心配は無用に終わった。

 

 「・・・」

 「閉まってますね。」

 「まあ、そうだよね。」


 まだ朝の10時前だし、店を開けるには早いか。そもそもリウンが1人で店を回しているからそんなに長い時間営業は難しいのか。

 しょうがない、出直すか。


 村正は頭をがくんと下げると来た道を戻る。リウンの店に来るまでは迷わない様に集中していたのか周りに何があるのかまでは確認していなかった。

 周りをよく見て見ると、インディアルにはないような物を売っている店もある。その中で村正がふと立ち止まった店がある。


 「シロ、ちょっと本屋寄って良い?」

 「構いませんが、どうしてこんないかにも怪しいお店に?」

 

 村正が足を止めた本屋の外見は他の街中にある店とは違った雰囲気を醸し出している。入り口には扉が1枚あるのみで店内の様子を知れる窓が何処にもない。建物は2階建てだがやはり窓はない。これだけ閉ざされていれば怪しいと思われても仕方がない。

 村正は戸惑うことなく店の扉を開ける。中に入ると、他に人は見当たらない。

 謎の禍々しい雰囲気が漂う店内に何かを感じたのかシロは村正に引っ付く。


 っ、シロ意外と力が強い。


 「・・・誰も居ないのかな?」

 「んなわけないじゃろ。」


 突然背後から低い声がする。


 「「わああっ!!」」


 大声を上げて振り返る村正とシロ。振り返るとそこには腰を曲げた老人が居た。


 「店ん中で声を上げるんじゃないよ。」


 恐らく店の人と思えるその老人に注意される村正達。しかし、突然背後から声を掛けられて冷静でいられる方がずっと少数派だ。村正は既に平静を取り戻しているが、シロは未だに村正にしがみついたままだ。


 「むむむむむ、無茶言わないでください。」

 「おや、わしゃなんかしたかね?」

 「しましたよ。」


 はて?と掛けている眼鏡を弄る店の老人。


 「まあ、大声出したのはこっちですし。」

 「あわわわわわわ。」

 「シロ、シロ、おーい・・・。」


 既に石みたいに固まり、直立不動。村正が肩をつんつんと突くが全くを持ってびくともしない。魂が抜けたみたいになっているシロの様子は剣の状態に戻るのを失敗してしまったかの様である。

 シロの状態をみて、店員の老人は小さくため息を吐くと、ひょいとシロを持ち上げた。


 「な、何を?」

 「ここへ老いておいたて邪魔だろ?奥で寝かせてやるさ。お前さんはゆっくりしてな。」

 「あなたはこの店の店主の方ですか?」

 「他に何があると言うんだい?」


 そう言い残すと、店主のお婆さんは店の奥へとシロを連れて消えて行った。


 村正は改めて店内を歩く。村正がなんとなく惹かれたこの本屋。店の名前は闇の書庫。突飛な名前だと思う反面、本当に何か魔法に関係のある書物があるのではないかと思い、村正は足を踏み入れた。

 村正は天井まで届いている高い本棚を隅々まで見てく。


 「!」


 村正の目に留まる1冊の本があった。


 「――13の伝説。」


 著者は不明。タイトルもただ、黒い色の表紙に白い文字で書かれただけの、良く言えばシンプルな本。だが、その本からは何か、良からぬ物を村正は感じ取った。手に取った瞬間本が急に重くなった。実感があったわけではない。そんな気がしただけだ。

 タイトルの13の伝説。村正はこの本がシロを含めた精霊具に関係している物ではないか。そう考えた。

 本を読み進めていく村正。静かな店の中で時間の流れをわすれて村正は読み進めていく。


 「――ふう。」


 思わず全部読んじゃった。


 約1時間程立ったままの状態で読み続けていた為、体のあちこちが痛む。村正は、肩や首を回して解していく。なんとも言い難い力が抜けていく感じが体に奥底から伝わって来た。

 本に書かれていた内容は村正が期待していた内容とは違った。本の内容は、ごく普通のファンタジーだった。英雄譚とも言える内容だった。

 本の内容は、この世に生を受けたとある国の少年が旅に出て、1つ1つの出会いや別れ、出来事を紡いで最後に国の王様になるまでの話。その途中で起こす13の出来事を書いた内容だ。


 「挿絵が無かったから、目が疲れた。」


 目頭を押さえながら村正は深呼吸をする。薄暗い店内で本を読む行為は目に少なからずダメージを与えた様だ。


 「そう簡単に欲しがる物は手に入らんよ。」

 「うわっ。」


 村正の右隣りに現れた店主の老婆。村正はその場で転倒する。転倒した村正に手を差し伸べ、引き上げる店主。村正は、店主に今の言葉の意味を訊ねた。


 「欲しがってるものってどういう意味ですか?」

 「それはお前さんがようわかっとるんじゃろ?」

 「僕が何を求めているのか知っているんですか?」


 誘導尋問かも知れない。ここは冷静に相手の言葉に誘導されない意様にしないと。


 自分から墓穴を掘る様な真似をしない様に気を張る村正。そんな彼に様子は思いっきり表情に現れており、彼の考えは、店主にモロバレだった。なので、


 「やはり、何か求めておる様じゃの。」

 「え?」

 「顔に出とるで。」

 

 えっと言う表情で村正は自分の顔を触る。その村正の様子を見て楽しんでいる店主。顔がニマニマしている。


 「お前さん、中々面白いの。」

 「面白い、ですか?」

 「揶揄いがいがあると言う事じゃよ。」


 そう言い残すと店主は笑いながらまた、店お奥へと姿を消した。


 一体、何だったんだ。


 店主の姿が見えなくなった後、村正は肝心な事を聞くのを忘れていたことを思いだした。


 「シロの事、聞きそびれたな。」


 村正はシロの事が気になり、店主の進んだ方向へと足を進める。奥へ進むにつれ、村正は奇妙な事に気が付いた。


 「あれ、この店こんなに奥行とれるっけ?」


 どこまで進んでも、店の突き当りにならない。この辺りは色んな店や家々が立ち並んでいる。建物の大きさも考えても、明らかに不自然ではあった。

 村正は不安になり、店主を呼ぶ。


 「すみませーん。」


 しかし、誰1人として村正に反応する人は現れない。村正はもう一度、店の店主を呼ぶ。


 「あのー、すみませーん!」


 店内中に響かせるつもりで大声で呼ぶ村正。


 「聞こえとるよ。ちょと待ってな。」


 村正の大声に対し、店主の声は低く頭の中に直接響き渡って来た。伝言魔法の類なのか、それとも念話か。ただ、確率的には伝言魔法の方が高いと村正は考えた。

 暫くすると、どこまで進んでも突き当りのない店の通路の空間上に、裂け目が現れ始めた。その裂け目が徐々に大きくなり、奥が見えて来た。


 「・・・」


 まさかの出来事に村正が立ち尽くして居ると、


 「早く、おはいり。」


 急かされた村正は入り口の前で、一瞬躊躇するが、思い切って飛びこむ。 

 中に入ると暫く何もない真っ白な空間が続く。本当にこの先に何かあるのか不安になって来る村正。ひょっとして自分は罠に嵌ってしまったのではないか。そう考え始めて来た。

 

 「――ん!?」


 進む道の先に光る何かがあった。それが何なのか今の距離では把握できない。村正はそこが恐らく目的地であると思い駆け出す。

 徐々に近づいてくる光源。近づくにつれ眩しくて見えなかったものがはっきりと見えて来る。


 「何だ?何か、見えて。」


 ――。視界がクリアになり、ずっと光に包まれていたものが見えて来る。そこには、さらに多くの本棚が天高くまで聳え立っていた。天高く、と言うのは文字通りで、屋根のない、空間に天高くだ。場所の雰囲気としては村正が初めてイブと出会った天空の間に似ている。

 その空間は四方八方を本棚で囲まれていて、異様な空気さえ感じる。その異様な空気の正体は恐らく、本棚の影響であると、村正は結論づける。

 

 やっぱり、ここはただの本屋じゃない、か。

 シロの言う通り怪しい店なのかな?でも、異様な感じはしても、嫌な空気ではないんだよな。なんと言えば良いんだ、これ。


 ふと、上を見上げると、宙に浮く椅子があり、その椅子にシロが座っている。


 「シロー、そこで何してんのー?」


 宙に浮く椅子に座り本を読むシロに村正が声を掛ける。シロは村正に気付くと本を、棚に戻してゆっくりと村正の下に降りて来る。

 スゥ~と降りて来る謎の椅子。魔法が掛かっているのかと村正は考えた。


 「お兄ちゃんもここに来たんですね。」 

 「それより、気が付いたんなら教えてくれないと。」

 

 椅子からぴょんと飛び降りたシロにデコピンする村正。シロは「あいて」と言いながら、おでこを抑える。


 「申し訳ありません。この書庫に収められた数々の書籍の内容に思わず惹かれてしまいました。」

 

 全く、と言いたいところだが、僕も普通に一時間ほど時間を費やして本を読んでたし、ここはお互いさまかな?


 「良いよ、良いよ。僕も同じだったし。」 

 「わあ、酷ーい。私の事忘れてたんですか?」

 「んなわけないだろ。シロが気絶して、奥へ連れていかれたから、シロが目覚めるまでの間の時間を潰していただけだよ。」


 この店に入った直後の、店の店主に驚いて、気を失った事を思い出したのか、その場にしゃがみこみ、頭を抱える。シロにとっては、相当恥ずかしかった様だ。

 

 「正直、シロが剣の状態に戻らなくてホッとしたよ。」

 「すみません、心配かけて。」


 シロが何らかの拍子で少女の姿から剣の状態にでもなってしまえば、それだけでシロの正体に疑問を持つ者が現れる。そして、シロの正体に辿り着こうものなら、十中八九シロは他国や、多くの組織、人物から狙われる。伝説とされる精霊具の一角を担う存在だ。手中に収めるだけで十分、権力を示す効果を持つ。

 無論、村正はそんな事をしないし、シギーを始めとする、学園の人やインディアル国王のギルディスはそれをだしに使ったりもしない。それだけに、今のところ、外部に露見する可能性が最も高いのは、シロの事を誰かに見られるより他ない。


 「別にこの姿のままで良かったよ。今回に限っては、シロはこの姿で居ることが定位だから。」


 村正とシロが話をしてると、店主の老婆がやって来た。


 「茶でも飲むかい?」


 お盆にお茶を乗せてやって来た店主。なぜか、お盆に乗っていたのは村正には馴染み深い湯呑だった。この世界にも湯のみがある事に村正は感動した。


 「珍しい形、ですね。」

 

 村正は何気なく湯呑の事を指摘した。


 「そうじゃろ、これはこの辺りでは数百年の歴史を持つ伝統工芸品じゃよ。」

 「へー、そうなんですか。」


 村正は湯呑を回しながらゆっくりと観察する。ひょっとしたら、自分以外にもこの世界に来た先人が残した物かも知れないと言う僅かな希望を持って。

 しかし、何も無く、村正は小さく肩を落とした。イブ曰く村正が初めての例と言う事なのでイブのような事が出来ない限り、この世界に元の世界に住人は来ないだろう。最も、村正の場合一度死んでいるため、生者としてこの世界に誘われた者が居たのなら話は別。だが、今のところそんな人物が居たという歴史、今は、無い。


 「お前さん、この国の人間ではないんじゃろ?」

 

 一発で村正が外国人だと見抜く店主に村正は目つきを鋭くする。


 「別にそう警戒することでも無かろうに。」 

 「ですが。」

 「その制服じゃよ。」


 店主に指摘する通り、今日、村正は学園の制服を着用している。


 「その制服、インディアルの魔法学校のじゃろ?」

 「・・・ご存じ、なんですね?」

 「そりゃそうとも。わしだってそうじゃし。」


 意外な場所で卒業生に出くわした村正。思わず息を飲む。それと同時に今来ている制服の歴史の長さを感じつつも、自分の素性が簡単に分かるこの世界のことを改めて思い知らされた。

 学園のOGでもある店主は空間魔法を得意としており、今村正達の居る空間は店主の魔法によるもの。ここは本来店主以外入れないのだが、学園の後輩と言う事で、招き入れた。


 「この本棚は一体なんですか?」


 村正は用意された椅子に座り、囲まれている本棚を見回す。天高く聳え立つその本棚は何度見ても異様だ。

 村正の質問に店主は本棚に触れながら答える。


 「本棚が何かと問われてもね。本棚は本棚じゃよ。」

 

 村正の質問の仕方が悪かったのかはたまた店主の天然か。ただ、この本棚が何かと問われたらそれは本棚、としか答えようがない。

 村正が聞きたかったのは、この隠された様に聳え立つ本棚の役割を知りたかった。店には出されていない数々の蔵書。


 「シロはさっき何か読んでたみたいだけど、何を読んでたの?」

 「私が先ほど読んでいたのはこの世界の神話です。」

 「神話?」

 「はい。丁度あの遺跡に繋がりそうな神話を見つけたので。」


 昨日ルマニミ遺跡の調査に向かった村正。その地で大発見になる可能性の物を発見した。残念ながらその現場に村正が立ち会う事は叶わなかったが、今後、ルマニミ王国が徐々に村正が見つけた物を解明してくであろう。

 ルマニミ遺跡はかつて火山の噴火で地中へと姿を消した古代の都市。


 「あの遺跡とは何のことかね?」

 「えっと、ルマニミ王国にかつて火山の噴火で消えた遺跡があるのはご存じですか?」

 「ああ、勿論知っとるよ、それが最近みっかったと、ちょっとした話題じゃったしの。そうかい、それに関する文献がこの本棚にね~。」


 正座で話をする店主。店主は村正や白みたいに椅子に座るでなく、何故か座布団に座っていた。この世界に座布団があることに驚く村正。だが、クッションは存在しているので、この国ではただ単に薄いクッションとして普通に存在している可能性も無くは無かった。

 

 「それで、どんな内容だったんだい?」


 シロに本の内容について感想を求める村正。シロは先程まで自身が読んでいた本を取りに行くため、宙に上がる。

 スィ~と宙に上がり、本があった場所まで向かう。シロが本を取りに向かうと店主は村正に顔を向けた。


 「お前さん。男の子なのに魔法が使えるんだね。」

 「え、ええまあ。正直自分でもびっくりというか、なんと言うか。」

 

 そうじゃろ、そうじゃろ、と首を縦に振る店主。


 「まあ、ずっと遠い昔は男子も魔法が使えたらしいがの。」

 「え?そうなんですか?」


 意外な事実に村正は手にしていた湯呑を落しかける。魔法は女性にしか適性地を見出さない。僅かな反応であればごく稀に男子でも出るとのことだが、それでも、本当に僅か。一握りどころか一つまみかも知れない。それ以前に、女子でさえ適性が出ない人も居る。しかし、今のクレア学園には村正とエレンと言うイレギュラーが2人も居る。

 村正は例外としてもエレンの場合はその名残があるのかも知れない。


 「何故魔法は女性だけの物になったんでしょうね。」

 「さあな。今となっては誰にも分からんよ。じゃが・・・。」


 店主は少し、言葉を詰まらせた。


 「一説には、かつての魔法の使用法が原因とされておるのじゃよ。」

 「かつての使用法・・・。」


 それには村正にも心当たりがあった。魔法史の講義で教わった魔法の歴史。かつて、魔法と言う力は国に取って重要な戦の戦力であった。そのため、戦争では常に最前線に立たされ多くの魔法使いが犠牲になり散って行った。

 そんな魔法使いの扱いに大きな変化があったのは今から300年ほど前の事。ある戦いで魔法使いの使用した魔法が暴走を起こし、甚大な被害を招いた。この事態は戦争に関わっていなかった国までもが介入を行う事態にまで発展。戦争どころではなくなってしまった。これを境に魔法の戦争での使用が国際的に禁止された。以来、魔法使いの在り方が変わったという。

 村正は魔法史を受ける前のイメージで居たため、シロのかつての主が女性だと思い込んだ。実際女性だったわけだが。


 「あくまで、これは一説。絶対的な正解ではないので、信用してはならん。」

 「分かってます。今はそんな事にはなりませんよ。」


 村正は表では表情を作ったが、内心は違った。今、村正の居るインディアル国王は大きな危機に陥ろうとしている。そして、それを解決できる唯一の手段が魔法使い。禁忌書庫の書士に対峙出来る存在が今は同じ魔法使いしか居ない。大きな戦いになれば、かつての惨状が再現されてしまう。勿論、それは最終的な手段になるだろうが、もしかしたらそれはもっと早まる可能性も残されている。


 「いいかい、お前さん。」 

 「はい?」

 「魔法、魔法だけでないな。何か力を得たらその力に責任を持ちなさい。力は自身が思っているより遥かに大きな力を内に秘めている。それは世界をも滅ぼしかねない。」


 世界を滅ぼしかねない。闇の書が僕の手にある。それは、闇の書の責任を僕が追うと言う事。今の僕にそれが出来るのか?シロの事さえ僕はきっと完全には理解できていない。そんな自分が闇の書を理解し、責任を持てるのか?実際、僕は闇の書の力の大きさを知らずに力を行使した。その時はどうにかなったけど、次もそなると言う保障など何処にもない。

 

 村正は今一度自分が持ってる力について考えた。自分は少なくともクレア学園内の他のどの学生よりも大きな力を有している。それが、いずれ破滅へ誘わない様に、彼自身が管理しなくてはならない。今の村正にそれは重すぎる。しかし、それで投げ出すことは誰にでも出来る。受け入れることの難しさ。それを村正は数ヶ月経った今でも思い知らされる。


 「お持たせしました。」


 シロが本を手にして戻って来る。


 「そもそもここにある本は全て貴女が?」

 「ああ、わしが学生の頃に使っていた物や色んな場所の本もあるぞ。恐らく今は外部に持ち出すのを禁じられた書もあるんじゃないかの。」


 そんな危険な本が眠っとんのかい、この本棚。


 「持ち出し禁止って、そんな。」

 「まあ、それもこの国じゃから出来る事じゃよ。お前さん、この国の情報の流れは知っとるんじゃろ?」

 「ど、どうしてそれを?」


 したり顔の店主。村正が昨日の店でリウンに会った事さえも知っている店主に一気に警戒する。それは、絶対に表になってはならない、フェアリの事があるから。ひょっとしたら、この空間はどこかで監視または盗聴されているかもしれない。自分の発言1つ1つが大きな危険を呼びかねない。


 「警戒せんでも大丈夫じゃよ。わしがその辺の輩にペラペラ話すと思うかい?」


 思います。とは流石に言えなかった。

 シロは村正と店主の顔を交互に見ていた。


 「これが、君が熱心に読んでいた物か。」

 「はい。とても面白かったですよ。」


 シロは本を店主に手渡す。受け取った店主は、「ああ、これか」と言うとシロに本を返した。村正はシロの上から本のタイトルを見た。


 ――姿を消した都市、オピウコス


 オピウコス。それがかつてルマニミの地にあったとされ、火山の噴火で消え去った都市。シロが読んでいた神話はそのオピウコスが消える原因となった火山の噴火を起こしたとされる魔法使いの話だった。内容的には英雄譚ではない。


 「伝説には色々あるもんな。」

 「都市を消すのもまた、伝説の役割かもしれんな。」


 伝説なんて、後から人が勝手に造り出した産物に過ぎない。昔、そんな夢のない事を親が言っていた。まだ僕が小学生の時だ。その時は小学生ながら子供の夢を壊すなよ、と思った物だ。因みに、これと似た話で僕は小学校入ってすぐに、サンタの真実を聞かされ、味気ないクリスマスを過ごしていた。

 なるべく思い出したくない過去だ。他の事に関してはとことんファンタジー脳の両親だが妙に変なところで現実になるから困った物だ。


 「お婆さんは詳しいのですか?伝説。」

 「わしはそこまで詳しくないわい。わしの専門は文学ではなく、この、空間じゃったしの。」

 

 店主は天井を仰ぎながら話を進める。


 「どうしてこんな場所を?」

 「聞きたいか?」

 

 急に目つきが悪くなる店主。こういう場合、大抵碌な理由でないことは確かだ。それを悟った村正は首を横に振った。ここで聞いたら命を取られそうな気がしたから。

 

 「遠慮しときます。」

 「そうかい。残念じゃの。」


 絶対残念とは思ってないよね。多分だけど、楽しんでるでしょ。


 「そういや、お前さん。まだこの店に来た理由を聞いとらんかったの。」


 今さらの質問に村正もシロも呆然としていた。


 別に今更聞く必要ないよね?



次回At86下調べ2

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