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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第5章 ルマニミ王国
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At83.一日の終わり

 壁に耳あり障子に目あり、という言葉を知っているだろか。何処で誰が聞いているかにかかわらず、秘密は漏れやすいと言うことだ。だが実際は壁に耳が無ければ障子に目もない。(ホラーを除く。ホラーでも壁に耳は無いが。)

 話を戻そう。大事な話を何故か店の中で行う様子を見る。まず疑問に思うのは何故そんな場所でそういう大事な話をするのかと言うこと。本当に秘密を保持したいのなら、本当に誰も居ないところでするのが当たり前。

 だが、それは当事者でないから言えたこと。実際に自分がその立場に立つと、そんなこと等二度と言えなくなる。


 「君たち、もう少し自分の事を守った方が良いよ。」

 「全くおっしゃる通りで・・・」


 自分達の会話が蛇だ漏れだった個とを指摘されて村正達は一気にテンションが急降下する。


 「まあ、今聞いたことは口外する気もないけど。」


 店の少女は他の机にあった椅子も持ち出すと村正達の所に一緒に座る。


 「お、お姉さん?」

 「んっ!」


 村正の目の前に人差し指を突き出す少女。村正は思わず、息を飲む。


 「お姉さんじゃくて、リウン。それが私の名前だよ。」


 リウンと名乗ったこの店の看板娘兼店長。


 「私はフェアリと申します。」

 「私はシロと言います。」


 えっ、普通に名乗っちゃうの?


 「3人はどんな関係なの?聞く限り普通じゃなさそうだけど。」


 そこまで聞いてたんならあえて聞く必要ないでしょ。


 「「・・・」」


 流石に詳しい事までは話そうとしないところを見ると、大丈夫そうだな。


 「うん。合格かな。」


 黙り込む村正達を見て納得した様子のリウン。彼女の謎の言葉に3人は顔を合わせる。


 「リウン、合格って何?」

 「良い?」


 リウンは椅子から立ち上がる。


 「仮に自分たちの事がばれたとして、そのことをさらに追及されたとき、口を割らずに居れたでしょ。」

 「それが合格なの?」

 「ええ、普通話を聞かれたって言えばあなたたちくらいの人ならあっけなく吐いちゃうよ。」


 下手であっても誤魔化しが効いたとしたらきっと村正が咄嗟に誤魔化しただろう。しかし、それが無意味であると言う状況が生まれた時、その先に待つのは自白が無言か。どっちにしてもそれは相手の意見を肯定しているのと何1つ変わらない。そもそも、話が聞かれているこの状況でどう、誤魔化せと言うのか。他に人でも居たのであれば別かも知れないが。


 「でも、無言は肯定とも言うし・・・」

 「確かにそんな意見もあるけど、だからと言ってそれをイコールで結ぶのは早計。人違いだったらそれで良し。でも、私の方から下手に突っ込むのはそれはただの馬鹿だよ。」

 

 リウンの言いたいことをなんとなく察せた村正。彼女は人を見る目が凄い。そう思ったのである。


 「じゃあ、どうして私達に声を掛けたのですか?」


 当然の様にフェアリが訊ねた。フェアリの言う通り、僕らの立場を知った上で話しかけるのはそれなりのリスクはある。それを承知の上で声を掛けるのはそれこそ早計だと思う。


 「でないと、君たち他の場所でも同じ事するでしょ?」


 ごもっともです。

 僕らは全員顔が赤くなった。


 「いや、ちょっとは否定しようよ。」


 呆れて力が抜けるリウン。しかし、これまでの自分たちを振り返ると否定することなど出来る筈もなかった。特に村正とシロに関していえばそこそこ心当たりがあり、これから先、自分たちの秘密をきちんと保持出来る確証がない。

 フェアリはこれから先気を付けて行けばいいだけなのだが、一度起こることは二度、三度、起こり得ることを知っている。


 「否定の仕様が無いんで。」


 村正は苦笑いを浮かべながら頬を掻く。そんな村正をリウンはじっと見つめる。


 「もう、君がそれじゃ、駄目でしょ!」

 「いって!」


 リウンに背中を叩かれた村正は、背中をさすりながら背中に立つリウンを見上げる。


 「全く君がそんなんだと、あの2人を守れないでしょ。」

 「守るって、どういう・・・」

 「これは忠告と言うよりアドバイスとして受け取って欲しんだけど。」


 リウンは前置きすると、1つの可能性をだした。これから先起こる可能性の1つとして、村正達の危険について話し出した。


 「この店は立地が立地なだけにいろんな輩が出入りする時もある。今日はたまたま誰も居ないから大丈夫だけど、ここの店は表には出来ないようなことも行われる場所になってるのよ。」

 「表に出来ないようなことって?」

 「裏取引とか。」

 

 ええこの店そんな場所になってるのかよ。


 「え、怖くないのですか?」

 

 フェアリが恐る恐るリウンに訊ねる。


 「別に何とも。私の方から口を挟みさえしなければ向こうは何もしてこないし、それにここはもう何年もそうした事をしてるから。私は小さい時から店に出ているから色んな人が色んな事を教えてくれるの。」

 「ある意味一目置かれている存在だったんだ。このお店。」

 「うん。まあ、お店を私1人で切り盛りするようになってからは皆遠慮し出したのか来る回数が減っちゃって。そんな事気にするような人たちじゃないのに。」


 村正はこのお店が独特の発展をしてきているのだと感じた。多くの人が出入りして、多くの事が起こったであろうこのお店が。

 様々な出来事があったのにも関わらず、こうして今もリウンが店を出来ているのは、きっと彼女の両親が信頼されていたからだろう。それに、ここを信頼してたのは別の人たちも居ると村正は考えた。


 「もしかして、このお店って国の人も来たりしてたんじゃない?」


 村正の言葉にリウンが固まり、フェアリが慌てて左右を見回している。フェアリの場合、自分の事を監視されているのではないか、と言う焦りから。


 フェアリ、安心して良いぞ。誰も監視してないから。


 「分かる、やっぱり。」

 「話を聞いていればね。だって、普通に考えたら1回くらいは調査に来るでしょ。」

 「詳しく話すとかなり長くなるから端折るけど、このお店がずっと残っているのはこの国の司法制度に関係するの。」


 何となくの状況を理解する3人。この店では裏社会の人間と国の人間が何らかの形で情報の交換を行うのに使う場所の1つになっていたのだろう。


 「因みに、今でも国の上層部の人が来たりして色んな事話していくよ。」

 「それ、聞いちゃって良いの?」

 「かれこれそんな生活を十何年もやってれば、何とも思わないわよ。この店は口の堅さは有名だしね。」

  

 う~ん・・・今こうして僕らにあれこれ話してくれているのを見ると、とてもそんな風には。


 「何か、言いたそうね。」

 「ううん。そんな事無いよ。」

 「そう?」


 自分の考えている事がすぐに顔に出る性分をどうにかしなくてはと思う村正。本当に何か重要な、大きな事を隠す時は顔に出ないが、そうでもないような場合はとことん出てしまう。それが原因でユウキにどやされることも一度や二度ではない。

 

 「リウンさん。」

 「何かな、インディアルのお姫様。」

 「――っ!?」


 自分の地位がばれたことは仕方ないとしても、どこの国の人間かまでは知られてないと思っていただけに、フェアリの顔は驚きを隠しきれていない。

 フェアリは笑みを浮かべている。


 「そこまで驚く事でもないんじゃいない?」

 「で、ですが・・・」

 「ぶっちゃけ言うと、今この国に居る他国の王族はインディアルの人だけだからね。すぐに分かるさ。」

 「でも、そのことはあまり公になってないんじゃ。」


 今回の村正達インディアル王国から国王たちが来ることは殆どが内密にされている。それは、今回インディアル王国の国王がルマニミ王国へやって来る内容が内容なだけにだ。

 今、インディアル王国では今尚ギルディスが国内にいるものだと思われている。まさか、国外へ出ているなど、夢にも思っていない。知っているのは本当にごくわずかの人間だけだ。

 それだけに、このリウンと言うごく普通の一般人が知っていることは本来、あり得ない事でもあった。


 「私は、念には念を入れられた隠れ蓑の役割を与えられていたのよ。」

 「隠れ蓑?」

 「そう。別にその対象は王族の君に限った話じゃないよ。」


 リウンはフェアリに向かってウィンクをする。


 「どういう事なの?」

 「君たちインディアル王国と違い、このルマニミ王国は情報が想像以上に出回るんだ。あくまでも、表には出ない範囲で、だけどね。」

 「でも、どうしてそんなに情報が?」


 最もな疑問であった。極秘なはずの情報を誰が何の意図をもって流出させるのか。そのメリットは一体何なのか。村正にはそれが理解できなかった。情報の流出によって命が危険に晒されるのを知った上でまでそれを行う価値があるのか。そして、この店の事が公にでもなれば、ここが隠れ蓑としての機能を失う可能性だってある。


 「それはこの国の歴史が背景にあるの。」

 「歴史?」

 「この国は地方とかに行くといくつかの少数民族が居るの。彼らはこの国が出来る以前からその土地に住んでいて、今は自治権を持って生活しているわ。」

 

 なんとなく合点がいく村正。


 「要は、その人たちとの情報のやり取りを?」

 「そう。彼らの中にはこの国に属しているのを良しとしない考えを持っている人たちも少なからず居るみたいでね。でも、殆どの人は今の現状にかなり満足しているの。だから、彼らの仲間がこっちで何か企んでるとの情報があればすぐに連絡をくれるの。」

 「それはチクられた方からしてみれば裏切りにあった。そう言う事なのかな?」

 「うん。そして、こっち側にも自治権を持つことを良しとしない考えをもって居る派閥もある。」


 情報の交換はそう言う事か。確かに、こんなやり取りが行われているなんて表には出来ないな。


 「まあ、これは本当に滅多にない例だけど。普段はその辺の輩のやり取りが主だけど。」

 「その辺の輩って・・・」


 簡単に言い張るリウンに関心する村正。


 「でも、その人たちの持つ情報って色々あって役立つのよ。特に、危険な情報はすぐに手に入る。」

 「危険な情報?」

 「そ。魔物関連や魔獣関連。そして、不穏な連中のこと。そう言うのは国内だけでは中々手に入らないし。私がここで聞いた情報を別の時に来た国の人に上げる。そんなこともしてるわ。」

 

 

 ますますこの店の重要性が見えて来る村正達。何気なく入った店が実は、重要な施設を兼ねていた。しかし、表だって出来ない事がある以上、そう言う施設がどこかしらで必要になるのは致し方ないのかも知れない。

 しかし、今、この店にはリウン1人しかいない。それが、最近人が減少した原因に結びつくのだと理解した。


 「リウンさん。」

 「うん?」


 水を飲むシロがリウンに声を掛けた。


 「その、ぱったり自分の元を訪ねて来る人が居なくなったときどう感じました?」

 「どう、感じた、ね。」


 かつての自分と同じ境遇。そう感じたのシロは、リウンに自分との考えの差を求めた。状況は違えど、いつも近くに居た存在が急にいなくなる。その時現れる感情に違いはない。


 「やっぱり焦りましたか?」

 「焦り、か。」


 腕を組んで考えるリウン。暫くうなった後に出した答えは。


 「違うな。」

 「では・・・」

 「心配、かな。」


 苦笑いを浮かべるリウンを見たシロは、はっとした。


 「――そうですよね。」

 「・・・――。」


 窓の外を見るシロのは表情は今は見ることの出来ない遠い過去を見て居る様だった。事実、今のシロはそうであった。そんなシロの事をリウンはただ、黙って眺めていた。

 シロはもう、戻ることのない景色を。リウンはいつか戻るかも知れない景色を。それぞれがかつて見て居た景色と、今の景色。それぞれ違えど、心は同じなのだ。

 村正は、シロとリウンの2人に今話しかけるのは無粋な気がしてならなかった。

 村正は、自分の中にある何かが今回のこの、リウンとの出会いが偶然引き起こされた物だったとしても、彼女との関係が今日限りで終るとは、どうしても思えなかった。リウンがこの店で聞いた情報はいつか村正にとって大きな意味を持つ。確証はないが、そう感じた。

 フェアリは席を離れ、壁に掛けられている1枚の絵を眺めていた。


 「気になるの?」 

 「この絵、色の竜ですよね。」

 

 っ!?


 色の竜と言う単語に咄嗟に首を回す村正。その勢いの良さにフェアリとリウンはギョッとしている。


 「どうしたん、いきなり。」

 「ああ、いや、ちょっとね。」

 「ふ~ん。」


 リウンは絵に目を戻すと、話を始めた。


 「この絵、私のおじいちゃんが何処からか貰って来たらしくってさ。なんか、馴染んじゃってるし捨てられなくてさ。」 

 

 その絵に描かれているのは初めて目にする伝説の竜。選ばれたものは英雄となる色の竜。


 「――緑。」

 「そう、植物と、草原、風を司る竜。」


 青々としたその体は雄大で、絵の中であっても今にも動き出しそうであった。

 この世界で触れた3つ目の竜。


 「もし、この話が聞きたかったらまた今度来なよ。ゆっくり話すからさ。」

 「良いのですか?」

 「ええ、久しぶりに賑やかで私も楽しかったし。」


 リウンは村正達にお礼と言うと今晩の食事代をただにしてくれた。流石に、それはまずいと村正が慌てて払おうとするが、リウンに必死に止められた。

 フェアリにここは素直に相手の好意を受けるのが礼儀と耳打ちされたことで、村正はリウンに頭を下げた。その代りと言って、また、来ることを約束させらるのであった。


 「今日は来てくれてどうも。」

 「そんな。こっちは何もしてないのに。」

 「そう思っていても、私が違うのよ。」


 店の出口でリウンが手を振って見送ってくれた。

 外は街の明かりが少し落ちていて、一日が終わりを迎える雰囲気が出ていた。

 夜の街でも、その街の特色がある。それを感じることが出来たのは、村正だけでなく、フェアリやシロにとっても良い経験になったに違いない。

 3人は夜の道を真っすぐ、王城へと向かって行った。



次回At84.水面下の動き

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