At8.洞窟の中
「それにしても、この洞窟何なんだろうね?」
ユウキが聞いてきた。この洞窟は本来は存在しない可能性があるのだ。というのも、さっきそのにいるカロと連絡をとった際にこの山にはあ洞窟が麓のところにしかないと言っていた。ん、待てよ
「みんな、ここに来る前にこの山について説明なんて受けてないよな?」
「そうねぇ、確かに受けた覚えはないわね。それがどうしたの?」
「カロはどうやって知ったのかなって、この洞窟が存在しないって。」
「聞いてみたら?」
そう来る?いや、確かにごもっともな意見ではありますがね。
聞いてみますか。
「伝言魔法、カロ、カロ聞こえるか?」
「何誰?」
「僕だよ、紺野。」
「紺野君?どうしたの?」
「カロはどうやってこの洞窟がないことを知ったの?」
「私たちずっと山の下の方にいるんだけどね、そこに山の案内図があってそこを見たの。」
「この山って学園関係者以外も入れるの?」
「街道になってるからね。一部のエリアなら入れるよ。」
そうなんだ、だから結界とかもあったのかな。でも今僕らのいるエリアは外を含め学園の者しか入れないエリアだからそこまで気を使わなくてもいいと思うがな。
「カロ、何だって?」
「下の方にこの山の案内図があって、そこを見たって。」
「なるほど、でもここって一般人入れたんだね。」
ユウキが僕に耳打ちで聞いてい来た。後ろを歩くリリィとイルミアが付いてきているか確認しながら聞いた事を話す。
ユウキも一般人が入れる場所があったことは知らなかった様だ。
僕も学園の所有する山と聞いてたからてっきり立ち入り禁止なのかと思ったし。
「きゃあ!」
リリィが悲鳴を上げた。後ろを歩いてるリリィの方を見ると、リリィの周りに青白い光が幾つか漂ってる。あれは何だ。
「ちょちょちょちょ、何なのこれ?」
「リリチャン落ち着いて。これは害はないよ。これは洞窟とかによくいる子だから。」
「イルミアよく知ってるね。」
「ぅ、ぅん子供のころ色々教えられてたから。」
うーん、同じ女の子同士のユウキでもまだうまく話せないかな。難儀なもんだ。
「イルミア、お節介だったらごめん、よかったらもう少し楽に話せないかな?」
「な、なるべく頑張ります。」
あははと、苦笑いするユウキを横に僕も同じ顔をする。
それからすぐにまた開けたとこに出た。ただ、ここにはさっきまでのところとは違い何もない。
「ここは、また何もないところだね。」
「そうね、さっきのところは柱があったけどここはただの空間ね。」
あたりを見回しても何一つない。
「このまま奥へ進むか。それとも帰る?」
「進むー。」
みんなが頷いたので進むことにした。ここはさっきの変な光以降生き物1匹出くわさない。ここに住んでる生き物はあれだけなのだろうか?魔物くらい出てきて方が助かったりもする。
「何も出てこないと余計に不気味だよな。この際なんでもいいから出てこないかな。」
「はあ?ちょっとマサ君何言ってんのよ?」
ユウキが僕を睨み付けて来る。そんなに嫌?
「いやだって、なんか出てこないとこのまま進んだところで食料に困るだろう?」
「「「あ・・・」」」
みんな忘れてたんだ。今回はイルミアもか。一応10日間分の簡単な食料は支給されてるがあくまで最低限で、殆どこの試験中は自足自給となる。そのためさっきから一向に生き物と遭遇しないとなるとどっかで引き返さなくてはならない。とはいえかなり進んでいるので、今から引き返しても戻れるかどうか?
「でも、この先に何もないとは限らないでしょ?」
「と言いますと?」
ユウキの意見にリリィが返す。
「ここに入ってからずっと下りの道だったでしょ。」
「うんうん。」
「大分下ったはずだからそろそろ何かあるとは思ってるんだよね。」
「そうなの?」
「あくまでも、私の勘よ。」
「まぁ、いざとなったら帰ればいいか。」
そうだな。いざとなれば帰ればいい。と思ったとき最悪の連絡が入った。
「紺野君聞こえる。カロだよ。」
「聞こえてるよ。」
「よかったー。いま紺野君たちが入ったっていう洞窟を探して上がって来たんだけど入り口って大きな気が倒れてそのすぐそばに葉っぱがたくさんあるところ?」
「そう、そうだよ。入り口があるだろ?」
「うーん、無いよそんなの。」
「嘘だろ。だって、そこから入ったんだぞ僕らは。」
「そうなんだけどないんだよ、入り口。」
そんな馬鹿な、じゃあ僕たちは戻ろとしても戻れないのか。最悪だ、この状況はかなりまずいな。このまま進んだところでこの先が行き止まりだった場合、僕らはここに閉じ込められる。
「みんな、いいか。」
「なに、マサ君。」
「今、カロから連絡があって、どうやら僕らの入って来た入り口がないらしい。」
「え、それって単に場所が違うとかじゃないの?」
「いや、場所は合ってるんだ。」
「それじゃあ私達閉じ込められちゃった?」
「そう、なりますね。」
リリィとイルミアが今の現状を言葉にする。
「カロ、戻れない以上僕らは先へ進むしかないいと思う。だから先生に伝えてくれないか?」
「え、私が?」
「ああ、そろそろ外との連絡ができなくなりそうなんだ。」
「どういうことなの?」
「多分だけど、この先外部とは連絡が取れない気がするんだ。僕の嫌な予感はよく当たるんでね。」
「わかったわ。気を付けてね。」
「みんな、もう進むしかない。だからこれからはしっかりと周りに注意して行こう。」
そうして僕らはさらにこの洞窟の奥へと進んでいった。正直今この先へ進むのはよくないのかもしれない。ただ、この先に出口があるとするなら、何かあるとするなら行く価値はあると思う。
「みんなはどう思うこの洞窟について。」
この問いに対してみんなの答えは何故か1つにまとまっていた。それは、ここに何かが隠されている。それが学園によるものなのか、違うのかは分からないがここに何かが隠されているとみんなは思っているみたいだ。僕もその意見に賛成だ。ここには何かある。僕らが入った後に入り口が消えたのが気になるが、それが偶然か必然か。もし後者なら僕らはまんまと罠に掛かったことになるが・・・。
「あ、あれは。」
「ユウキが何かを見つけたらしい。」
そこには、奇妙な台座があった。特に何が乗ってるわけでもなければ何かが書いてあるわけでもない。ただ形が歪なだけで。
「これなんだろうな。」
「台座でしょ。」
「・・・」
それは見たらわかるだろユウキ。この台座が何なんだろうなって話だよ。
「ぁ、ぁの、ここ、なんか書いてます。」
イルミアが台座の下の方に文字が書いてあるのを見つけた。
「えっとないなに、英雄に間違って倒された聖の竜、ここにその亡骸なし。代わりに英雄ここにあり。」
ユウキが読んだが全く意味が分からない。英雄に間違って倒されたとあるが英雄が間違えるか?
「この意味わかる?」
「これ、多分赤の英雄の話じゃないかな。」
「赤の英雄?」
「ここじゃあまり聞かないかな、私とイルミーの故郷にあるお話なんだけどね。あるところに、赤の英雄がいたんだって。」
そう言ってリリィが語ったのは赤の英雄の物語。
その昔、火をつかさどる赤の竜、”炎皇ヒドレッド”から自身の力の元である、竜の血を受け取れと言われた若者がいた。色の名前を持つ竜は神にも等しい存在とされ、その竜の力を受けることは英雄の証であった。英雄の力はとてもすさまじく通常の魔法よりも遥かに強い魔法を使えた、と同時に無尽蔵の魔力を手にしたことになる。それは、世界に仇をなす者たちを止めるための者であった。そのため時には人にその力を使わなくてはならないこともある。それが英雄には耐えがたいものであった。人はそんなに簡単に仇をなすことはしないと英雄は常に思っていた。
英雄が力を手にしてから数年後のこと、英雄の故郷の村が何者かに襲われる事件が発生。村人の殆どが死に絶え家々は燃え続けた。英雄は絶望にかられた。そしてそこにあった1枚の竜の鱗を見つけたことによたって、よって英雄は、この竜のことを探し始めた。その結果、これが聖竜”オルケス”の物であると突き止めた。そして、そのオルケスが村を襲ったと、白いローブを着た人物に聞かされた。そのことを聞いた英雄はオルケスを倒すため、オルケスの住み家へと足を運んだ。そして、英雄はオルケスを問いただした、「何故村を襲ったのか」と。しかしオルケスはそんなことはしてないと答えた。むしろ自分はあの村を救おうとしたと。けれども、英雄は聞き入れなかった。自分はお前が村を襲ったところを見た人から聞いたから間違いないと。しかし、それこそが間違いであった。英雄に嘘を教えたのは白いローブを来た人物。その人物の嘘に騙された英雄はそのまま、聖竜オルケスを殺してしまう。
英雄は、無実の竜を殺したことにより、自身に力を与えた赤の竜により、罪の代償として焼き殺されることになる。無実の罪で殺されてしまったオルケスはその後国に引き取られ、王城の地下で祀られる形で今も眠っている。代わりにここには、真実を見極められなかった赤の英雄が、愚者の証として永遠にオルケスの住み家に残された。
「これが、私達の故郷に伝わる今から数百年前にあったとされる物語。今とは国の名前とか違うからかな。ここであんまり聞かないね。」
「その、オルケスの住み家が住み家ということなのか?」
「どうだろ、ここがオルケスの住み家かどうかなんて今となってはわからないんじゃないかな。」
だが、実際に今目の前にはそのことを示すような台座が存在する。ここに英雄がいるのか?ということは、ここはその英雄を封印するための場所か?
「じゃ、ここにはその英雄が?」
「少なくとも、この台座の下ではないと思うよ。この洞窟まだ先があるし、これは、この洞窟がそうであると示すものじゃないかな?」
「だとして、入り口の柱は?」
くっ、確かに、今の話を聞いても入り口の柱が何なのかは分からない。あれは、ただの柱なのだろうか。それとも何か別の意味があるんだろうか?
「た、多分、ここは神殿なんだと思います。さっきのは入り口であることを示していたのでは?」
「なるほど、イルミア頭いい。」
「リリチャン、大袈裟、だよ。」
神殿の入り口か。その可能性はなくはないか。
このとき僕らは想像していなかった。この単なるお伽噺が、これからずっと僕らについて回るとは。
この神殿?を進んでそろそろ4時間位経つ。実はあれ以降、外部との連絡が本当に取れなくなってしまった。僕らの体力も限界に近付いてきて、リリィがさっきから、「もう無理~」と嘆いている。それを、何とかイルミアが励ましている形だ。ユウキはというとそんなことは全然なく、リリィのことを揶揄っている。
「しっかし、そろそろ食料の確保をしないと、僕ら飢え死にするぞ。」
「その可能性は否めないわね。」
「どうするか、ここいらで今日は休む?」
「そうね、正直どこでも同じだと思うわよ。」
この洞窟、通路は無駄に広いので、ここで休んでも問題はないと言える。それにここは閉ざされた空間。誰も来やしないしね。
てなわけで、今日はここでキャンプすることになった。僕とユウキで何か食料を確保しに行くことにした。リリィ1人おいて3人が離れては万が一が起こったら洒落にならないということで、イルミアが残ることになった。
僕と、ユウキは、攻撃系の魔法の使い方を一度本を読みながら確認をした。これが初めての実戦となるからだ。
「それじゃあ、行ってくる、イルミア、リリィのこと頼んだ。」
こくこく、と頷いた彼女はリリィにくっついたままだ。
僕とユウキは一緒に行動することにした、何が起きるかわからないので、別行動よりは安全だろうと。僕らは、この先のルート確認も兼ねて先の道を進んでいる。ただ、あまり奥に進んでも何もなさそうなので、幅が広い、この通路の端や天井にも注目してみたがなにもないし、生き物の形跡1つ見つからない。おいおお、やばいぞ、このままだと、ほんとに飢え死にコースに突っ込むぞ。
僕は、内心かなり焦っていた。
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「イルミー、そろそろいいんじゃないかな、あの2人には話しても。」
「ごめん、まだ駄目。」
「そーお、まぁ、まだそんなに関係深くないか。」
「さっきの物語、あれ、なんで嘘ついたの?」
「え?何のこと?」
「あれは、つい最近のお話し。村を襲ったのは、彼ら。」
「そうだね、でも英雄の話は事実だよ?」
「でも、それは、私!」
「イルミーそれは言っちゃ駄目だよ。」
「でもそのせいで、リリちゃんの、お姉ちゃんが、」
彼女たちはそんな自分たちの家族のことを話していた。
次回At9.食料確保、再出発
赤の英雄の物語とは?そして明らかになる、この国の名前。