At79.報告と会議
何とか7日で更新出来た。
夜の8時から開かれた報告会。内容は今回の遺跡調査に関する結果報告。
村正達が戻って来たのが夕方。そこからの事を考えれば、その日の内に報告を行うのは少し早いとも感じられる。
今、報告会の席に着いているのは、イブ、アレン、インディアル・ルマニミ両国王、の4人。報告にも関わらず、これだけの人数しか居ないのには、それなりの理由がある。
「さて、早速だが、報告を受けようか。」
ルマニミ国王、ドルトリスが会議を始める。
「いい報告と、悪い報告。どっちから聞きたい?」
「え、なんか悪い報告あるの?」
イブから悪い報告がある事を聞かされ、その場が凍り付く。まさか、今日行われた遺跡調査の結果で何か悪い報告を受けるとは思っていなかった。せいぜい残念な報告ぐらいは覚悟していた。
「あるわよ。悪い知らせ。」
普段のイブの様に軽く言うのではなく、今回の知らせはそれなりに重い話であることがうかがい知ることが出来る。
「なら、先に良い話から聞こうか。」
「そうだな。悪い話は、長くなる。」
両国王は顔を見合わせ、報告会の流れを決める。それから、2人して天井を仰ぐと、
「「今夜は寝れんな・・・」」
会議が日付が変わっても終わらないことを察した2人。会議が本格的に始まる前に、徹夜の準備を始めると言い、一度席を離れる。いきなり席を立った2人に思わずイブとアレンはきょとんとする。
「何で出て行ったの?」
「さあ?」
男2人が出て行きその間やることのない、イブとアレンは仕方なく、のんびり座りながら出されたお茶をすする。そこで本日、お互いが収穫出来たことについての情報を交換することにした。
「イブさんは何か分かったの?」
「大きな収穫は無かったわ。よくよく考えてみればそれもそうなんだけど。」
「その先に街もありましたよね?そこでも何も得られなかったのですか?」
アレンも、神殿跡の近くに街が広がっていることは知っている。だからこそ、イブが街にまで足を広げている可能性を持った。
「あの場所にかつて何かあったって事を知っている人は居たけど、それが何かまで詳しく知っている人は。」
イブは首を横に振りながら話す。
1500年前にそこにあった物を証明するのは簡単な事ではない。消失してしまった原因が現段階不明である以上深いことを調べられない。それだけに、今回村正の見つけた可能性が貴重なのだ。
「じゃあ、あの子の発見がそうなら。」
「だと、良いのだけど。」
イブは、椅子に深く腰掛け直すと、腕を組んでため息を吐く。
「そっちはどうだったの?」
「こちらも、一応、物は出るのだけど、それが、直結するとは言い難くて。」
出土した物を鑑定した結果、価値の有無が判明しても、神殿に関係してるのか、そこまでの特定には至らない。それは、村正の指摘したことが大きかった。
村正の指摘した神殿の痕跡が一切見えない。消失したのだから何も無くて当然と思うかも知れないが、現に物が出ている以上、何もない方がおかしいのだ。
「私達が何も成果を出せてないの、何とも言えないわね。」
「そうかもしれませんが、紺野君は紺野君の感覚を信じていたのでしょう。」
上に報告できる良い情報を見たらしたのは他でもない村正。その事実に、息ぴったりにため息を吐くイブとアレン。
「私、感覚がなまって来たのかしら。」
「イブさん、そこまで専門ではないですよね?」
「あー、そうじゃないのよね。」
イブは今の発言をごまかすと、テーブルのカップに手を付ける。急に態度が変化する。そのイブの様子を見たアレンが――。
「1つ訊ねてもよいですか?」
「な、何?」
「あなた、今何歳なんですか?」
唐突にされた質問でイブが固まる。すぐに、何を聞かれたのか理解すると、アレンに向かって魔法をぶっ放す。
「次聞いたらその口封じるわよ?」
いつもの年齢確認されたときのイブに戻った。因みに、イブに年齢確認の質問を最後まで言えたのはアレンが初めてだ。普段は「年齢」のあたりで魔法が放たれるのだから。
怒るイブに背を逸らしながらもアレンは、イブに年齢の事を聞こうとするち本当にやばいことになるのだと実感した。
「本当に、聞かれるの嫌なんですね。」
「あなたはどうなのよ?」
「私ですか?私は、まあどっちでも良いって感じです。」
アレンは自分の考えを述べる。イブもアレンの話に耳を傾けるが、機嫌が悪いのか、左足の貧乏ゆすりが激しい。
「すまん、待たせたな。」
「本当よ~。2人して何してたのよ。」
「見ての通り、服装を軽くしてきた。」
ようやく両国王が戻って来る。ドルトリスの言う通り、2人の服装がかなりラフになっている。この姿を見ると、国王そしての威厳が半減している。国王たちの服装は元から大袈裟なものであるため、着替えに時間を要してしまうのは致し方ない。だが、この姿はもはや一般人と大差ない。下手をすれば、国王と気付かずに話しかけてしまいかねない程。
「随分と、気を抜いたわね。」
「出ないと、体が持たんよ。あの服、結構重いんだから。」
「本当な。一体誰だろうな、身分のある物の服装をあそこまで派手にするような慣習を作ったのは。」
「国王様たちがそれを言ってしまうのですか・・・」
普段は周囲の目も合って威厳があるように振る舞わないとならない国王たち。だから、イブやアレンのいうにお互い気を許し話せる者同士の前では楽をしたいという思いも出てしまう。今回はあくまで報告が主なメイン。この場に他の関係者が同席してないのがその証拠。きちんとした公の場での報告となると、時間に関係なく正装が求められる。
「我々だけなんだ、許せ。」
「じゃあ、貸し1つね。」
「「・・・」」
どんな状況でも自分が優位に立ち回れると判断したら行動に移る。それがイブと言う女性だ。
イブに貸しが出来ることのになってしまい、ギルディスは顔が引きつったままだ。その様子を隣に座って見て居るドルトリスは何を要求されるのかと、耳打ちで訊ねる。それに対し、ギルディスはただ、「覚悟は必要」とだけ、答えた。
「さて、ではそろそろ話しを始めましょうか。」
アレンが椅子から立ち上がると、室内に用意されていたボードを持ってくる。そこに、今回の遺跡調査で得られたことを列挙していく。その内容に、2人の声が漏れる。
「まず、私達が一番初めに調べ始めた例の神殿の跡地ですが、未だ、確証の持てる遺産は発見できていません。」
「その確証と言うのは?」
「はい、これは紺野君の指摘なのですが。」
「彼の?」
村正の着眼点が面白い点に向くことは、ドルトリスも事前に聞いている。その事もあってか、村正が気づいたことには少なからず興味がある模様。
「彼は、あの場に本当に神殿があったか、確証が持てない。そう言っていました。」
「して、その根拠は?」
「彼は、あまりに証拠が無さすぎる。そう言ってました。」
「証拠がない、と言うのはどういう意味だ?」
ドルトリスから出た質問にアレンはボードに絵を描いて説明を始める。
「まず、紺野君が一番初めに抱いた疑問が、あの場が神殿の跡地であると判明したところから始まります。」
「ほう。」
「この辺はあまり関係ないので今回は割愛させていただきます。で、紺野君が言うには、かつてこの場に本当に神殿があったのであれば目に付く場所に何かしらの痕跡はあって然るべきだと。」
「だが、消失したのは1500年も昔なのだろう?なら、痕跡が無くても不思議はないのでは?」
「はい。そこが出土している遺産の話に繋がるのです。」
「ん、どういう事だ?」
今一、話の内容が飲み込めていない様子のドルトリス。だが、ギルディスの方は、ほぼ理解しているように見える。
「つまり、」
「つまり村正は本当に神殿があったなら、そのことを証明する何かが出ても良い。そう言いたいんだろ?」
「はい。神殿の柱の1つ見つからなのは変だと。」
アレンが言い終える前にギルディスが先に言う。ギルディスは頬杖をつきながら、村正が何を言ったのか全てが分かっているようだった。
「村正の指摘することは理解できる。だが、その村正の考えを覆す何かが見つかった。」
不敵な笑みを浮かべるギルディス。その先まで知っていたことにアレンばかりか、イブまでもが驚きの表情を浮かべている。ドルトリスはと言うと、話に付いて行くので必死なご様子。ギルディスに何故話の先まで読むことが出来たのか訊ねた。
「な、何故そこまで分かる?」
「うん?」
ギルディスは一間置き、
「単なる勘だよ、勘。大した根拠は持ち合わせてないさ。」
ギルディスは笑いながら答えた。本人もまさか、ここまでドンピシャで当たるとは思ってなかっただけに、笑いが止まらないのだ。だが、例え勘であったとしても、そこまで言い当てたギルディスに対しイブとアレンは互いに顔を見合わせる。さらに、イブはと言うと、今までの自分の行動が全て読まれていてあえてスルーされているだけでは、とまで思い込むほど。
「その勘でここまで分かるのなら、十分よ。」
しかし、突然態度を変えても不自然なので、いつも通りの行動を取るイブ。それに対し、アレンは少言動が無理に固くなった感が否めなくなっている。
「で、そろそろ聞かせてくれないか。良い情報とは一体何なんだね?」
早く本題に入りたいドルトリス。焦る理由は色々あるが、最大の理由は寝る時間が無くなってしまうため。ギルディス達インディアル組が来ている間、ルマニミ国王としての公務をほぼ全て断っている。表向きは多忙のため、となっているが、実際は休みを取りたいため。
インディアルからギルディス達が来るまで、ドルトリスは様々な公務に追われていた。だが、今回、ギルディスがルマニミ王城へくることが内密になっている。これなら、休めると思ったのだ。そんな真似ができるのはドルトリスにとっても、ギルディス相手だけである。気の知れた友人同士だからこそできることなのだ。
「紺野君が、新たな遺跡の発見をした可能性があるわ。それも、歴史がひっくり返る様な。」
「歴史がひっくり返る?」
それはいくらなんでも大袈裟じゃないかとドルトリスは言う。その意見にギルディスも同調する。だが、イブとアレンの無言の眼差しにより、それが真実の可能性だと察する2人の国王。
「歴史がひっくり返ると言っていたが、それほどまでに価値があるのか?」
「ええ、もしかしたらそれだけで神殿の件も片付くかも知れないわね。」
顎に手を当て、うなるドルトリス。さらにイブは話を続ける。
「場所は神殿の跡地と近くの街の間に広がってる森の、この辺よ。」
イブはボードに簡単ではあるが周辺図を書き記す。大した出来でなく、本当に簡単な図だ。何なら、子供の絵と間違われても文句は言えないほど。イブの絵が通じなくても、決して国王たちの理解力が足らないわけではない。
「森の中、何だな。紺野君の発見したというのは一体何なのだ?」
ドルトリスは早く何が見つかったのか知りたい様子が隠しきれていない。椅子から立ち上がり、イブとアレンの元へと歩み寄る。
「彼が見つけたのは街よ。」
「「街?」」
声が重なるギルディスとドルトリス。
「えぇ、紺野君は、神殿消失の原因が神殿から見ることの出来る火山が本当に影響しているのあれば、そのことを証明する十分な証拠になるって、言ってたわ。」
「何故、そこまで言い切れる?」
「もしも、紺野君の見つけた物が本物の遺跡で、尚且つ地面に埋まったのが火山の影響によるものだったとしたら、この問題はそれこそ一瞬で解決するかも知れない。」
結果次第ではすべてが解決する。それは、この世界の遺跡調査においてはとても重要なことを意味していた。
遺跡調査が短い期間で終了すると言う事は、それだけ費用が掛からずに済む。今回の遺跡調査の場合、ルマニミ王国の国家事業として成り立っているので無駄に時間と費用を掛けることは出来ないのだ。さらに、遺跡調査が早い段階で終らせることが出来ると言う事は、指揮者の手腕のすごさを伝えることもできる。
かと言って、じゃあ、全てが早ければいいのか、と言えばそんなことは無い。国家事業であると言う事は、国の予算、国民のお金で調査を行っている。そのため、無駄に時間を掛けると、国民の信頼を損なうかも知れないのだ。この問題はルマニミに限った話ではない。インディアル王国の場合、その問題を避けるため、イブの研究と言う名目で調査を行っている。但し、あくまでイブがトップであることになっている。勿論、イブの研究なので、多くは資金援助されていない。
「最初の議題はその紺野君が見つけた遺跡についてなの。」
「なるほど、許可申請か。」
ドルトリスも、森に埋まる遺跡の話を聞いて、イブ達が何を言いたいか察した。
「話しが早くて助かるわ。」
「まだ、彼は何もいっとらんぞおー。」
1人フライングをしようとするイブの手綱を握るギルディス。若干緊張感に欠けるイブとギルディスのやり取り。一見すると、あり得ないような光景かも知れない。だが、これが2人の関係性。
「分かってるわよ。だから、こうしてお願いしてるんじゃない。」
「それが人に物を頼む時の態度かね?」
「あら、私にそれを言う?」
「せめて、他国では止めてくれ。」
ギルディスに苦言を呈されようともその信念は曲げないイブ。
ギルディスは、自由人、イブがこの国で何か厄介事を起こさないか心配で仕方がない。が、そんなギルディスの心配を他所に好き勝手するのがイブ。
「出来る限り善処するけど、あまり期待しない方が吉よ。」
「そう言う事を、私の前で言うなよ。」
「で、ルマニミ国王さん。許可出るの?出ないの?」
「聞いてないし。」
アレンはギルディスとイブのやり取りを終始苦笑いで眺めていた。その内心、自分にはこんなこと絶対に出来ないと。
「規模を知りたい。もし、その遺跡を発掘するとなったらどれだけの森が失われる?」
「紺野君の作成した地図をもとに考えますと、約10%失われることになるかと。」
「――10か。」
その数字の大きさにドルトリスはうなり始める。土地を所有しているのがいくら国と言えど、これだけ大きな緑をいきなり奪うとなれば、近隣の街に住人が黙っていないはずだ。
10%と言われると大した事無いように聞こえるが、森の生態系の事を冷静に考えるなら、この世界では10%でも大きいとされている。
「その数字は最大か?最低か?」
「最大と考えて良いと思いますよ。」
「アレン、その根拠を聞こう。」
ギルディスはアレンに話を聞く。
「まず、この街が森に中でみ比較的道に近い場所で発見された事、さらに、紺野君が短時間で地図作製出来たことを考えると、そこまで大きくないと考えてもおかしくないかと。」
「うんうん。なるほど。」
ギルディスは机に広げられた、遺跡の周辺の地図と、村正の作成した遺跡の地図を見比べる。
「紺野君の話に乗る価値は?」
「私は乗る価値があると思います。」
「現場では他の皆はどんな様子だ?」
「遺跡調査は大体いつも通りだと思います。」
「紺野君の意見に対して君はどのくらい信用できると思っている?」
「私は、十分に信頼できる子だと思います。」
アレンとドルトリスのやり取りは暫く続く。それは、現場に出向いていない、ドルトリスが現場の意見を聞こうとするため。実際に発掘調査に同行するのとしないのでは価値観も変わる。そう思っている。なにより尊重されるべきは現場の声。王城で何もしていないに等しい自分が口を挟むよりは、現場の直の声を参考に今後の方針を決める。それが、ドルトリスのやり方だ。だから、彼について行く人物も多い。
ドルトリスはアレンとのやり取りが終わると、1人、黙って机の地図2枚とにらめっこを続ける。それは、これからどうすれば事が円滑に進むかをしっかりと計算している。そして、ドルトリスは何かを決めた、確信した。そんな顔をしている。
「森の地中に埋まってる可能性の遺跡については、周辺の森の生態系の細かい調査、及び、近隣の街の住人への説明をしっかり行い、同意がとれたら許可を出そう。」
「本当ですか?」
アレンの表情が一気に明るくなる。
「その代り、しっかりと事前の準備は怠らない事。出ないと、我々のあずかり知らぬところで何が起きるか分からない。そうなっては遅い。」
「心得ております。最大限の準備を行います。」
「良かろう。」
森へ発掘調査の居かが下りたことで、一応一段落したと言っても良いかも知れない。だが、村正の関わったのは、一瞬の事。これから先は村正抜きで調査をする必要がある。その事は肝に銘じておかなくてはならない。と言う事をアレンは頭の引き出しの中に入れた。
次回At80.報告と会議2




