At73.遺跡は大切に扱いましょう
遺跡調査が本格的に開始された。調査隊は2つに分けられる。魔法使いとして来ている村正は遺跡全体の調査に加わる。この場を仕切ってるイブ。横で立場を奪われたアレンはおどおどしている。
「あ、あの、今回の指揮は私の仕事なのですが・・・」
「堅い事言わないの。どっちが仕切ったって同じよ。」
「そうでしょうか?」
そんなことねーよ。あんたが仕切ったら間違いなく大変な事になるわ。
調査開始の合図が、遺跡を荒らすという馬鹿げたことを言い放ったイブに、村正は本当に遺跡を好き勝手に弄るのではと心配している。そこで、調査をしながら、イブが何も仕掛けていないかを出来る限りの範囲で探す。ひょっとしたら、この神殿の遺跡には地下が存在しており、イブがそのことをあえて隠している可能性を村正は捨てていない。
それを調べる方法はこの場で学ぶしかない。村正の持つ魔法の知識では正直どうにもならない。
「紺野君は遺跡のちゃんとした調査は初めてかな?」
「はい。ですので正直何をすれば良いのか迷ってて。」
持ち合わせの魔法ではどうにもならないことで悩んでる村正にアレンが声を掛ける。シロは早速発見された出土品の回収に当たってる。どこにしまってるのかシロが手を翳すと現れる魔法陣の中に出土品を回収している。
「良い、辺りを探索するときの詠唱は簡単よ。」
「レベルはどの程度ですか?」
村正は魔法のレベルを確かめる。中級魔法までなら、村正でもすぐに扱うことが出来るが、もし、レベルが上級魔法になるのなら、いくら村正と言えど容易な事ではない。
「うーん、初級魔法の上ってレベルね。」
「そんな簡単なんですか?」
「それは、そうでしょ。遺跡調査なんて一体何年前からやってると思ってるのよ。」
それはそうかもしれませんが、当然のごとく言われも困りますよ。
「で、肝心の詠唱だけどこうよ。」
アレンさんは地面に向けて手を向ける。
「ウル・エルム」
何が起きてるのか分からないが恐らくアレンさんには何が起きてるのか分かっているんだと思う。だけど、僕には何も分からない。
「うん、この辺には何にもない。」
「今何をしたんですか?」
「今のは、自分の半径5mの範囲を自身にのみ視覚化させるものよ。」
「視覚化?」
「文字通りよ。詠唱をしてから数分間自分には本来見えないはずの、地面、空中、背後と言った場所が目を閉じることで見えることよ。」
僕はこの魔法を便利と思う一方半径が5mと言われると強ち使い勝手が良いとは言えないなぁ。ただ、数分間持つのなら今後の何かで使えるかも知れないな。
「じゃあ試して見て。」
「はい。」
村正は杖を取り出し地面に向ける。呼吸を整え詠唱と、その魔法の効果をイメージする。自分に半径5mの風景が見える。そのことをしっかりとイメージする。そのイメージを明確にして詠唱を行う。
「ウル・エルム」
目を閉じて詠唱を行う。すると、目を閉じているにも関わらず、自分の頭の中に周辺の風景が流れ込んでくる。どこに何があり、どんな障害物があるのか。また、地面に埋まってる物の形までもがくっきりと識別できる。それ以上に驚くのは地中の地層の区切りも見えること。そこまではっきりと識別できる魔法が初級魔法で存在しているとは村正は知らなかった。と言うより、どの本にも載っていなかったと言える。
「あの。」
「なんかあった?」
「いえ、こんなに便利な魔法。どうしてどの参考書にも記載されてないんですか?」
「悪用防止のため。」
「悪用防止?」
「そ、もし、この魔法が簡単に習得できるような魔法だったら空き巣には持って来いだと思わない?」
確かに、そうかも。半径5mだと、家丸々とは言わないがある程度の情報は得られる。確かに、空き巣には持って来いかも。
「確かに、そうかもしれません。」
村正はアレンの意見を肯定する。
「でしょ。だから、この魔法は必要な時に必要な人にしか教えない。それも信用に値する人だけにね。」
アレンは最後にウィンクして村正に説明する。
で、僕はその信用できる人間に値するって訳か。
「他に何か聞きたいことは?」
「うーん、その都度何かあれば聞くって感じで良いですか?」
まだ何もしていないこの状況下では何か聞こうと思ってもまずその疑問が浮かんでこない。それなら作業を進めて行きながら分からない事を探した方が早いだろう。
「そうね。その方が早いし、作業も進むわね。」
アレンさんに指示を貰い、僕はまだ人の居ない遺跡の西側を調査する。まだ使ったことのない魔法だから、周囲にどんな影響を出すかもわからないし、人の居ない方が良いだろう。それに、一度イブさんがこの遺跡を調査をしているとは言え、もしかしたら何かある可能性もあるし、それがイブさんの仕掛けなら僕が対処した方が被害が小さくて済むだろう。後は、シロとの距離か・・・。
「ウル・エルム」
目を閉じると一気に視界が広がる。この感じ視界が広がるって言うよりも周りの物の形の線?が見えてるのかな。ただ、地面の地層がきちんと見えるとなるとやっぱり視界が広がってるのかな?
村正はこの魔法の効果をどう捉えたら良いのかを考えながら目に映る?範囲をサーチする。そこにこの遺跡の消失したヒントが隠されていないか、まだ発見されていない何かが無いかなど。もし、何か見つかればその部分がわかる。ただし、それが何なのかまでは深く知ることは出来ない。なので、
「なにかあるけどガラクタか貴重なものかの区別がつかないなこれ。」
とは言えこの魔法の使い方がわかったし、その先はまた考えれば良いし、それに僕ら魔法使いはあくまで地質の調査メインだし。
そう言えばイブさんって今何してるんだろう。姿が見えないけど。
村正はイブを探すため、この遺跡の拠点を訪ねてみる。なんとなくだが、イブの事だから何もせずに拠点でのんびりしているように村正は考えたがその考えが珍しく外れた。
そこにイブの姿が無かった。
あれ?ここじゃないのか?
次に村正が向かったのは遺跡の発掘等を行ってる、主に魔法使いじゃない男性陣で構成されてるところ。そこでシロが出土品を預かってる。そこで出た出土品を漁っている可能性も無くはない。拠点の所からは少し離れてるが、村正とシロとの間の契約に反するほどの距離ではない。それが今回は大いに助かっている。でないと、村正はシロが出土品を預かると言い出した時点で、発掘組に付かなくてはならなくなる。
がやがやと声が聞えて来る。その場所が今発掘を行ってる場所になる。すぐにシロが村正の存在に気づき駆け寄って来る。
「どうしたのですか?」
「ああ、いやね、イブさんを探してるんだけど見なかった?」
「こちらには来ていませんが・・・」
あれ、ここにも居ないのか。他にあの人が行きそうなところってあるか?神殿の全体調査の方は、アレンさんが居るんだから、わざわざあの人が出る幕でもないし、まさか、真面目に調査してるのか?
村正は柄にもなくイブがまともに仕事をしているのかと考えるがそれはまずあり得ないと自分で否定する。
ここ最近ではないが、日に日に村正のイブへの考え方が出会った時以上に雑且つあくどい物へと変化しつつある。村正の中で特にそれが顕著に現れる様になったのは、魔術祭の後夜祭の時に、ユウキと2人であの空間に隔離されたことにあると言える。
「あの人、自分の仕事ほったらかして何してんだ?」
「それ、お兄ちゃんが言います?」
今まさに自分の仕事を置いてイブを探し回る村正もまたイブと同じと考えるシロ。
「あ、ああ。ほら、あの人に聞きたいことがあったし・・・」
「この遺跡調査の責任者はあのアレンさんですよ。」
「あぁ・・・」
呆れ顔で言うシロ。村正はと言うと返す言葉が無く、徐々に小さくなっていく。シロは基本は村正の事を肯定する立場にあるが、主が間違えればそれはちゃんと指摘する。出なければ精霊具は務まらないという程。
「あの方の姿が見えなくなって心配になるお兄ちゃんの気持ちも分かりますが、自分の仕事はきちんとこなしてくださいね。こうして私も皆さんから出土品を預かってますので。」
「そんなに出てるの?」
鑑定するのに時間が掛かる。その間にも出る物は出る。そのゴミかも知れないものを鑑定場所に持ってこられても対処しきれない。ならと、シロが鑑定の終わる前の物も一緒に回収している。そして、鑑定に余裕が出てきたら預かった物を渡してるらしい。
「まあ、中にはただの石もありましたよ。ほら。」
そう言ってシロは自分が回収した物に中から石を1つ取り出した。石が出るのは良いとして、何でそれおを預かった?
「それ、どうするの?」
「形が気にったので持って帰ります。」
持って帰るの?これ、どう見てもただの石じゃん。
「持って帰るんだ・・・」
「駄目ですか?」
「ま、まぁ良いけど。」
別に持って帰って何か害がある物でもないだろうし、それにシロが気に入ったなら拒否する理由もないし。
僕が許可を出すと、シロはその石を自分の服のポケットに入れた。どうやら本気で持って帰るらしい。
「それでは私は戻りますね。」
「あ、うん。」
シロが戻っていき、イブの行方も負えない村正は取りあえず自分の仕事へと戻った。他の人はどうやって調査しているのかも気になって見て見るが、皆同じような感じなのだ。元々、調査に使う魔法が目を閉じた状態で使う。そも効果は数分間保てるのでくまなく探すことが出来る。
「そう言えば――」
村正は1つ疑問が沸いたのでアレンを探す。アレンの姿はすぐに見つかった。何やら紙に書いている。
「アレンさん。」
「どうしたの?」
「聞きたいことが出来まして。」
「それは何かな?」
アレンは村正の持ってきた疑問に興味津々の様子。
「えっと、もし地面に何か埋まってたり、仕掛けが見つかったらその時ってどうしたら良いんですか?」
始める前にそのことを聞いていなかった村正。アレンも村正に聞かれて思い出したように手を叩く。
「オウ、そう言えば説明してなかったね。」
「すみません、僕も聞き忘れていたので。」
「もし、地中に何か埋まってたり、仕掛けその他、それからこの神殿が消失した原因が分かりそうな事が分かったら取りあえずそれを私に報告してもらえればそれで良いかな。」
「分かりました。」
魔法使いの調査の目的が遺跡の消失を探ることが基本なので広範囲に散っている。地中に埋まってるものも一応は把握しているらしいがそれが何かまでは深追いしていない。それは、また別の人の仕事。但し、埋まってるのが罠の類の可能性があるのなら、それはきちんと調べる。もし、罠ならこの先の調査に支障をきたす。
「紺野君ちょっと頼まれてもらって良いかな?」
「調査の件でですか?」
「そう、もうすぐ夜明けが来るじゃない。あとちょっとでここの遺跡の全体像が一応完成しそうなの。」
「はい。」
アレンは村正に自分が描いていた紙を見せる。そこには、この暗い時間のみ出現しているホログラムにを模写したものが描かれていた。
アレンの絵は普通に上手だった。ホログラムで現されたものを細かく綺麗に模写できている。
「この図が完成したら、ここから離れてるんだけど、この遺跡の北の端の方を見てきて欲しいの。そこだけまだ行ったことがなくてね。」
「行ったことが無い?」
「ええ、一応先行調査の段階で見ては居るんだけど、何かありそうなのよ。」
「罠とかですか?」
イブさんが先行調査の段階で危険は確認してるよな。それに、何か埋まっていたとしてもそれを確認するのは別に僕らの仕事じゃないし。
それなら何を見に行くんだろ。ここに来た時、一応この遺跡の周り見て回ったけど、特別何かがあるわけでもなかったと思うんだよな。別に、祠とかがあったわけでもないし、墓の1つ立ってなかった。
それとも、このホログラムとは反対に日が昇ってるときにしか見えない物があるなら話は別だけど。
村正はアレンに遺跡の北側を確認して来るように言われた訳を思考する。
「それは見てきてからのお楽しみ。」
「お、お楽しみですか。」
急に怖くなる村正。もしかしたらこれはイブによる罠ではないかと。この話を聞いた村正がホイホイやって来たところを罠にかけるための陽動なのではないかと。
「別に警戒しなくても本当に何もないから。」
自然と村正のアレンを見る目が疑惑の目になっていた。アレンは村正に心配することはないと言うが、それが余計に村正を疑念へと導いた。焦って村正を安心させようとしたのだろう。それが反って裏目に出てしまった。だが、アレンも悪気があったわけではない。
「本当ですか?」
「本当だよ。私達はあんまり自由に動くことが出来ないからその分を君にカバーしてもらいたいんだよ。」
「その理屈は理解できますが。」
確かに、ルマニミ王国の人たちよりも、ただの同行人である僕の方が自由は利く。そこを見込んでと言うのはありがたいが、姿の見えないあの人が頭から離れないんだよな。
「ああ、駄目だ。集中しないと。」
なんでもかんでもイブさんのことに結べ付けるのは良くない。むしろ逆効果だ。
村正はなるべく自分に降りかかる良くない事=イブの仕業と言うのを止めようと考える。村正がイブの事を考えるのは、それこそイブに思う壺だと考えた。
「それじゃあ、お願い出来る?」
「分かりました。夜が明けてからで良いんですか?」
「ええ、出ないとこれが気になって仕方ないでしょ。」
確かにこんな大きなホログラムがあると集中はしにくいかな。
「それまでに、他に役に立ちそうな魔法をレクチャーするね。」
「あ、それ助かります。」
現在午前4時過ぎ。季節が夏なのもあってか遠くで薄っすらではあるが明るくなり始めている。この程度ならまだホログラムは見えている。
残されたわずかな時間を使って、村正はアレンから魔法のレクチャーを受ける。
アレンから受ける魔法のレクチャーは村正の好奇心を大いに駆り立てた。
「紺野君防御魔法は得意?」
「得意な方ではあります。守りに徹するのであれば。」
「ふむ。では少し見せてもらえるかな?」
「今ここで、ですか?」
「そう、君の全力の鉄壁の防御魔法を。」
何をするつもりなんだろう?傍では今も普通に調査が行われているのに。もし、僕が失敗でもしたら多分周りに迷惑がかかるだろうし。
村正は、自分の魔力の流れを全て防御魔法のシールドに集中させる。そうすることで文字通り鉄壁の防御魔法が完成する。特にその先を求められているわけでもなので、一点に集中させることが出来る。
「じゃあ、紺野君準備は良い?」
「はい、大丈夫です。」
アレンは村正から10m程離れたところで魔法を放つ準備を始める。アレンが何をするか分かったのか他の人たちは作業を一旦止め避難し始める。
「え?アレンさん、何する気なの?」
「良いから、集中してー。」
村正は杖をシールドに向け自身で魔力の流れをしっかりとイメージし、防御魔法を保つ体制に入る。
「貫きなさい」
「へ?」
ベキッ!
それは本当に刹那の出来事だった。
アレンが言葉を言ったと思ったら村正の防御魔法に何かが当たる音がした。当たったのではない、防御魔法が貫かれそうになったのだ。村正は自信の防御魔法に光の槍のようなものが刺さっているのに目が行く。
「何、これ・・・」
驚く村正にアレンが寄って来る。
「危なかったわね。一瞬とは言っても気を抜いたでしょ?」
「いや、あの一瞬でこんなことになるなんて思いませんよ。」
「でも、もし、この先にこういう罠があったらどうする?」
村正はアレンが何をしようとしていたのかを理解する。今のは、何等かの罠で村正に物が飛んできても大丈夫かを確かめるための事だったんだと。
「それは・・・」
最もな事を言われて何も言えなくなる村正。
「少し意地悪だったね。まあ、大昔に仕掛けられた罠だし、今の私の全力を気を抜いていたとは言ってもどうにか止めたんだし、大丈夫かなあ?」
「常に防御魔法を張ってないとあんまり意味ないですよね?」
「だからもし、不安があるなら防御魔法をを張っとくと良いよ。紺野君の物なら生き物に襲われても問題ないだろうしね。」
気を付けるとしたら生き物よりも罠だよな。北側か。そこに行くまでにもこまめに調べた方が良さそだな。
「次、行くよ。」
「はい。お願いします。」
「次に教えるのはもし遺跡にとって何か重要な物、若しくは仕掛け等を見つけた時の対処。」
アレンは2つの物を持ってきた。1つは何やら皿のようなもので、もう1つはどう見てもただ石。
「こっちのお皿はついさっき鑑定が終わって価値のあるものと判明した物。こっちの石はただの石。」
「はあ。」
「じゃあ紺野君探索魔法を唱えて見て。」
あれ、探索魔法って言うんだ。
「ウル・エルム」
村正は詠唱をして目を閉じる。
「今紺野君にはこの2つの外見のような線が見えてるはず。」
「はい、確かに見えてます。」
「その状況でどっちが大事なものか判別できる?」
この状況だと以外にも分からない物だな。むしろただの石の方が価値のありそうな物に見えて来る。
「いえ、何にも。」
「じゃあ、ここからが本題。目は閉じたまま耳だけ動かして。」
「はい。」
「その状態でマーキングをするから。」
マーキング?
「マーキングっていうのはこの後発掘組が調べるのに参考にするのに使うの。魔法使いが付けたマーキング全てを見る訳じゃないけど、マーキングされた物の重要度が高いほど優先して調査を行うから気になったらつけるのよ。」
「分かりました。」
「詠唱は、マーキングをしたい物に意識を集中して、サインと唱えるの。やってみて。」
「サイン」
村正は取りあえず、お皿の方に意識を集中して詠唱を行う。すると、お皿の方が小さな星が付いたように輝き始める。
「なんか小さく光出しました。」
「じゃ、一旦目を開けて。」
村正はアレンに言われる通り、目を開ける。
「今、どっちにマーキングした?」
「えっと、こっちのお皿です。」
特に現物には影響は表れていない様に見える。
「何にも変わりありませんが・・・」
「じゃあ、マーキングしたことを忘れずに、もう1度探索魔法を唱えて見て。」
「もう1度ですか?」
村正はアレンの指示に従い再度探索魔法を唱えて見てみる。
「ウル・エルム」
目を閉じ意識を集中させる。だが、さっきと特に変わったことは何もない。普通に皿と石の線があり、マーキングをした皿が光ってる。
「ん?」
「どう、何か気付いた?」
村正は自分に見えている?光景に驚く。自分がさっき行たマーキングがまだしっかりと生きてるのだ。
「何で?」
「今紺野君にはこのお皿が光って見えてるでしょ?」
「はい。」
「それは紺野君がお皿にマーキングしたことを覚えていたから。」
「じゃあ、もし忘れていたら?」
「何も起きていない。」
つまり、僕が仮に重要だと思ってマーキングしたとしても後でその事を忘れたらすべてがパーか。
「だから、むやみやたらにマーキングはしない事。安易にマーキングするとどれが本当に大事なものだったか思い出せなくなるからね。」
「どれが大事か見分けるのって結構重要ですね。」
「そう、でもそう簡単に埋まってるものなんて見つかんないから、そこはむしろ肩の力を抜いても良いよ。」
ホットして良いのか、それとも村正の気を紛らわすために言った事なのか。
「下手に力んで調査してもつまらないし、気が滅入るだけだからね。」
「それはどういう意味でしょうか?」
村正の質問にアレンは笑顔で答える。
「遺跡調査なんて楽しくないと何の価値もないのよ。そんな場所に来てまで堅くなるとすぐに疲れちゃうよ?」
「ストレス対策的な事ですか?」
「ま、その考えでも良いよ。」
アレンは村正の肩に手を載せると、
「君は自由にやれば良いよ。それが一番紺野君の為になるかも知れないし、その方がやりやすいんじゃない?」
その言葉に村正は腕を組んで考える。
「う~ん、まだ何も出来ていないのでそれは未知数ですね。」
「なら、まずはやってみるところからだね。」
アレンは終始笑顔で村正に接していた。それは村正に対してだけでない。この場に居る人みんなに対してだ。だからきっとアレンは周りの人からの信頼もあるのだろう。それが村正の安心感も取ったともいえる。
アレンは村正に必要となる魔法を日の出の時刻までレクチャーを続ける。その時間がホログラムのタイムオーバーであり、次の段階のスタートでもある。
日が出たことで発掘組が休憩を始める。暗い中でずっと地面に向かって調査を行っていた。日が昇れば目を休ませたくもなる。
太陽が昇り始めると、神殿のホログラムは一瞬で消えてしまう。村正はそのことをちょっと残念に思う。もう少し見て居たかったという思いもあった。だが、また日が沈めば見ることは出来る。
「じゃあ、紺野君お願いね。」
「わっかりました。」
村正はアレンに向かって元気よく敬礼した。
次回At74.周辺調査




