At69.ルマニミ王国
ガルム丘にアジトを構える盗賊の集団を一度王城の地下牢にイブの転送魔法によって転送する。その旨は事前にギルディス自身によって王城で残ってる人間に伝えられている。なのでいきなり牢の監視に行ったら人が増えているなんてことにはならない。
勿論、そこでもギルディスは止める様に言われているが、そんなことで止まる様な男ではない。
「転送も終わったし、少し休憩したら出発するとしよう。」
「「はい!」」
出発の時間が30分後に決まり休むもの、軽食を取る者もいる。
「紺野君。」
「あ、はい。」
シギーに呼ばれた村正は立ち上がると、シギーの所へ駆け寄った。
「何ですか?」
「えっと、ちょっと聞きたいんだけど。」
「何でしょう?」
「紺野君、ひょっとして今回のこと知ってた?」
さて、どうしましょうか。ここは素直に「はい」と答えるべきか?しかしだ、もし、ここで正直に答えたとして恐らく何らかの形で怒られるに違いない。それもシギーさんだけじゃなく、イブさんにも。かと言って反対に嘘をついたところでシロに契約違反の判定を下され結局はばれてしまう。
上手く誤魔化すには、シロにもばれないように「嘘はついていない」状況に持ち込まなくてはならない。
そう考えた時何が一番最善策になるか。僕の出した結論はこうだ。
「ええ、まあ。」
素直に答える。それだけ。以上。勿論その結果、シギーさんに怒られた。「何で私にも教えてくれなかったのよ!」と。
「今度からは、きちんと私にも相談すること。いい?」
いい?と言われてもな。確かに、今回僕はシギーさんの使いのような感じだけど、もし、それがイブさんやギル殿からの指示で尚且つ他言無用とか言われたらどうすれば良い。別にイブさん位なら正直問題ないかと思ってる。けど、ギル殿相手なら流石に遠慮したい。
「なるべく出来る様には善処します。」
「そろそろ出発しまーす。」
出発の合図がかかり準備に取り掛かる。
「念のため聞くけど、もうここから先は何にもないわよね?」
「は、はい。僕もこれ以上のことは知りません。本当です。」
シギーにこれ以上の情報が無いことを伝え出発の準備に取り掛かる村正。ここからはルマニミ王国に到着するまで村正には余程のことが無い限り村正が前に出て戦うようなことはない。
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ガルム丘を出て以降、特にこれっと言った出来事は皆無に等しかった。
まず、あのガルム丘を出発した後はその日は何も無く終了。村正としてもこの日はもう何も起きて欲しくないという願いもあったので大きな問題はない。
行程3日目。
「何もなかったな。」
と言うくらいに何もなかった日だった。それはもう平和も平和。途中にある街も全てスルー。寄り道もすることなく国境目指して進む。物資の補給とかどうするのかなって気になってたけど翌日通る国境に接する都市アメズワンで行うことが決定していたらしい。どうも、2日目の盗賊討伐で時間を使いすぎたようで、途中で寄り道する時間が減ったらしい。結果としてアメズワンまでほぼノンストップで向かうことになった。
「アメズワンってどんなところなんだろう。」
「アメズワンはルマニミ王国との国境の街で多くの商人が集うインディアル王国有数の都市なんです。」
現在3日目の野営最中。
焚火の前で考え事をしていた村正にフェアリが声を掛けた。
「やっぱり国境の街っていうのは特別なの?」
「それはそうですよ。一番国同士のやり取りが活発なところなんです。当然じゃないですか。」
村正の元居た国ではどこであっても大体の都市は活発な方だった。それに、この世界と村正の世界の一番の違いはきっと国土の差にあるのだろう。
この世界ではやはり国1つの大きさが小さいというのが挙げられる。小さい、と言うのは普通に面積の問題だ。この世界でも最も大きい国でも元の世界で言えば北海道の大きさもない。言ってみれば、未開とされる場所がいまだ数多く残されてるのだ。
「やっぱり、その街の人はルマニミ側にもよく行くの?」
「うーん、一概にはそうとは言えませんね。国を出る際に一定の料金はかかります。」
「それは出入国関係なく?」
「はい、どこの国でも基本同じなので多くの国を旅しようと思うのであれば、それなりのお金が必要ですね。」
「それって結構高いの?」
国を渡るときに費用が掛かるというのはそれなりの負担になることは容易につく。だとしたら、今回の村正達の費用がどのくらいなのか気になったのも無理はない。
「そこまで、高くないかと。」
「それ、本当?」
自分とフェアリで金銭感覚の差があるのではと心配になる。そこまで料金がかからないという話を俄かに信じられない村正は凄く暗い重い顔になる。
「はい、大人だと銀貨今1枚。子供無料です。」
「何でそんなにすっごい微妙なの?」
まず、大人1人当たりの値段は個人的には若干高いかな?と思う。それは良い。僕が気になるのは、子供の値段が無料と言う点。何それ?ずるくない?
「子供って何歳まで?」
「12歳です。」
やっぱりそうか。この世界でも、12歳になったら大人料金か。一体どこの誰だよ12歳から料金は大人というルール決めたの。出てこい!
村正はどこにぶつけたら良いのか分からない気持ちを心の中で叫ぶ。心の中で叫んでもその表情までは隠せない。
「村正君すごい顔ですよ。」
「あ、ごめん。気にしないで良いよ。」
「はあ。」
3日目。これにて終了。
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4日目は朝から雨に降られた。昨日の夜の時点で気温が下がり始めていたのと風が冷たかったからなんとなくではあるが雨が降る予感はあった。
魔法で天候を弄っても良いが、イブさんに止められた。
「天候を魔法でコントロールするのは確かに便利だけど、自然だけは自然の摂理に任せるのが鉄則よ。」
「自然の操るとどうなるんですか?」
「いろんな生き物の生態系に影響が出るわね。」
生態系への影響は避けなくてはならない。人類に無関係と思っていても最終的には人類にだって、周って来る。だた、その順番が遅いだけ。
「この世界にもそう言うのはあるんですね。」
「ええ、普通の生き物に、魔物がプラスされた程度の考えで十分よ。私達にとっては害悪でしかなくても、他からすれば悪とは言えないもの。」
邪魔に思っているのは人類だけ、か。そうだな、確かに人類はどこか自然を甘く見ている気がする。普段は守られた中に居るから本来の恐怖を知らないのだ。1歩外に出れば守ってくれるものはなに1つ無い。それを理解していないから自然の脅威に押しつぶされてしまう。
「ほんと、自分勝手すぎますよね。」
「そうね。魔法だって、人類が作ったくせに、使い方1つでどうとでもなるんだから、面倒よね。」
以前シロが言っていた、かつて魔法の戦争で滅んだと。魔法を戦争の道具にした。それは決してやってはならないことだと知っていても目の前にあれば容赦なく使用する。
今となってはもう遠い昔か。
どんな出来事も記憶から歴史へと姿を変えればそこで終わってしまう。悲劇の歴史を繰り返してはならないとよく言うが、大抵は繰り返される。それは、その歴史を知らないから。知っている人が、その場にいないから。知っていれば自分の意志でそこへ行かないだろう。
だが、この世界の人々はそのとこをきちんと理解している。村正はそう感じている。
「でも、この世界の人たちの殆どは、そのことを分かっているではないですか。」
「そお?」
「だって、魔法はもう自衛でしか使わないんでしょ?」
「自衛でも使わなくなったら上出来よ。」
まだ、自衛では使う。イブにはそれさえ危険だと村正に言う。自衛がいずれ自衛でなくなった時、世界は歴史に飲み込まれると。
「イブさん、怒らずに聞いてもらえますか?」
「何を改まって。」
村正はイブにどうしても聞きたいことがあった。
「イブさんって、今本当に何歳何ですか?」
「・・・」
暫くの無言が続き、
「うわあ」
イブが村正に目つぶしをしようとする。それをギリギリで躱す。
「何でいきなり目つぶししようとするんです?」
「いや、つい条件反射で。」
「僕そこまでイブさんに年齢の話してませんよね?」
イブはそっと村正の顔から指をどかす。
「いや~、ついついやっちゃうのよね。」
「やめてください。」
「そう言うなら、聞かなきゃいいのに。」
確かにイブの言う通りだが、村正には前から持っている疑問をイブにぶつけたかった。イブはこの世界のあらゆることに詳しすぎる。
「イブさんの語ることはまるで全部見て来たように聞こえるんです。」
「・・・」
その無言は肯定と捉えていいのか、それとも否定か。どっちにしろ、ずるいことに変わらない。
「もし、見て来たとしたのであれば、一体何が目的で長生きしてるんですか?」
「・・・」
村正には目を併せずにただ、前だけを向いているイブ。
「別に話せるような内容でないのであればいいですけど。」
「いずれ紺野君には話すわよ。君には、知っておいて貰わないと困るもの。」
僕が知らないと困る?また、この人は何を言い出すんだ。
イブはただ、無表情で前を見ていた。その顔からはイブの考えを見抜くことは出来なかった。
「もうすぐ、アメズワンよ。」
前方に石造りの門が見えた。アメズワンの入り口の関所だ。
ここでは普通に商隊という名目で街中に入った。勿論関所の人は、これが国王の一行だとは夢にも思っていない。まず、この街に来ること自体も伏せてある。ここでは物資の補給が目的。不用意に騒ぎを起こすわけにもいかない。
アメズワンの街は不思議な街だった。建物が岩の崖に埋まっているように見える。実際、埋まっている。
「どうなってんの、ここ?」
「面白い街でしょ。」
イブが驚く村正を面白がりながら話しかける。
「変な感じです。」
「ここはね、ずっと昔魔法石のとれる鉱山だったのよ。」
「魔法石?」
「そ、魔法研究の大事なアイテムよ。」
魔法石。ゲームみたいだな。
「どういった物なんですか?」
「魔法石は、自分が魔法を新たに考案した時、どの基礎分野に属すかを見分けるのに結構重宝するのよ。」
基礎分野を調べる。そう言えば、前に似たような物をネレラルで見た。
「イブさん。」
「何かしら?」
「魔術香とは違うんですか?」
「簡単に言うと、魔法石はその魔法が何で出来ているのかを確認するのに使って、魔術香はその用途を確認するのに使うわね。」
村正は石の壁に開けられた大穴を見ながら聞いていた。この穴の数だけその石が使われてい来たんだなと。
「研究の他に使い道は?」
「お守り程度ね。」
魔法石のお守り、すっごい効果でそうだな。多分、どんなパワーストーンよりも効果あるな。
「じゃあ、この穴はその時の。」
「そう、ここはその時の穴を再活用してるの。だから、道も広いでしょ。」
「確かに。」
アメズワンの通りはネレラルとは比較にならないくらいに広かった。馬車の通る車道と、人の歩く歩道が綺麗に分かれてる他、車道は片側2車線と言う広さ。かつてはこの道を埋め尽くすほどの人と、馬車で溢れていたが、今は、露店と、家と、人があふれる。この街の用途が変わったのだ。
「あのおっきな建物は何ですか?」
村正が気にしたのは通りの左側の白い大きな建物。そこだけ明らかに造りが違う。
「あれはですね、ルマニミ王国の大使館です。」
「びっくりした。」
横からフェアリが村正の目の前に顔をのぞかせる。今までずっと眠っていただけに村正もびっくり。
「大使館なんてものもあるのか。」
「はい、国境を接する国は、国境の街に、そうでない、仲のよい国はネレラルにそれぞれ大使館が存在します。」
「ネレラルにそんなのあった?」
村正はネレラルの街はあらかた回ったつもりでいるが、大使館のような建物は見た記憶が無い。
「ありますよ。王城の中に。」
「王城の中?」
「別に不思議ではないですよ。図書館も王城の敷地にありますでしょ。」
言われてみれば、確かにそうだったな。
「ネレラルでは騒ぎが起きると大事になるますし、王城であれば警備は万全ですからね。さらに、大使館の人もインディアル王国の人に扮しているので不用意に狙われる心配もゼロです。」
「それ、ここのルマニミの大使館の人たちは大丈夫じゃないんじゃ・・・」
ここは堂々と自分達がそうですよと、言ってうようなもんだよね。危なくないのかな。
「勿論、ここの人も最新の注意は払ってますよ。」
「例えば?」
「まず、入り口に結界が施されています。」
「結界?」
「はい。あそこに入るには、特殊な鍵が必要になるます。」
「鍵?」
「はい。そして、その鍵はその人の国でしか作れません。よって、こちらの国の人間は簡単に入ることは出来ません。インディアルの人間が入るには、事前に許可と大使館の人間と一緒に入ることが義務づけられてますので、入るにはそれ相応の信頼もいります。」
なるほどな。襲撃の対策はばっちりか。鍵か。確かに、自国でしか作れないのであれば襲撃されたとしても、こちらが下手に疑われる心配は減る、か。
「鍵なしだと、どうなるの?」
「入り口手前で壁にぶつかる感覚になります。」
「それは魔法か何か?」
「はい。ルマニミとインディアルの双方が最も信頼する魔法使いの魔法で動いています。その人物のことを知ってるのは、双方の国王だけです。」
「じゃあ、フェアリも。」
フェアリも知らないと聞くと、彼女は頷いた。まあ、まだフェアリが知るには早いか。
「ああ、それ私よ。」
それを聞いた村正とフェアリは言葉を失った。そして思った。
「「何でこの人に任せた?」」
あっさりと告白するイブ。その発言は国際問題に発展しかねない発言ではなかろうか。流石の発言だけに驚いたのは村正とフェアリだけじゃない。この会話が耳に入った人物全員が顔を青くした。しかし、それを聞いても騒ぎ立てないのは流石と言えよう。
「イブさんを信用したのは絶対に間違いだと思うよ。」
「私もそう思いました。私はてっきりテンだとばかり。」
フェアリはそう言って、テンの顔を見る。テンは慌てて首を振った。
「わ、私にそんな大きな仕事む、無理ですよ~。」
「そうそう、普段は大口叩く癖に、大きな仕事は腰が引けて全部私に回すんだから。」
自分の方が優位に立っていることを良い事にテンを虐めるイブ。テンは隅でいじけてる。そのいじけているテンのことをフェアリが慰めてる。
「もう、テンを虐めないでください。こう見えて結構傷付きやすいんですから。」
「ええ、最初のイメージがあると、とても同じ人物とは。」
村正が初めてテンと出会ったとき村正はテンに、男の魔法使い珍しさに村正のことを襲おうとしていた。その時の興奮しきった目を見ている村正にしてみれば、今のテンの状況は俄かには信じられないのだ。
ただ、あのテンを見たから、今のテンが信じられないのが、イコールで結んでいいものか些か疑問ではあるが。
「これからどう行動するんですか?」
「今日は、ここで必要な物を補給して、ここで1泊。翌朝ルマニミ入りよ。」
「じゃあ今日は?」
「紺野君達は、宿に着いたら休んで良いわよ。必要な物の買い出しは私たちの役目だし。」
こうして、4日目はアメズワンの街で必要物資の補給となり、街の宿で宿泊した。以上。
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5日目。いよいよルマニミ王国へ入国するときがやって来た。
この日村正はまだ日が昇りかけの時間に目が覚めた。何か特別な理由があったわけでもない。ただ、なんとなく目が覚めてしまった。
「ここ、東に面してたのか。」
朝日が、村正の居る部屋に真っすぐ差し込み、村正を照らす。あまりの眩しさに、村正はカーテンを閉めた。
「流石に、寝起きすぐで太陽直視は無理。目がやられる。」
「お兄ちゃん、おはようございます。」
「うん、おはよう。」
シロは人の姿でずっと過ごしている。部屋割りは、勿論村正と同じ。それは主従の関係と言う以前に、村正がシロから離れたら大変なことになるのを防ぐため。
しかし、村正の部屋に用意された寝台は1つしかないため、自然と2人で使うことになった。なったが、特に何も起こらなかった。
村正もシロも別に何も期待はしていなかったが、どこか2人とも、何か忘れ物をしたようにそわそわしていた。
「シロ。」
「お兄ちゃん。」
「「ど、どぞ。」」
声が重なり、互いに譲ろうとしてまた声が重なる。
「じゃあ、じゃあ僕から。」
村正が先に話を始める。
「よかったちょっと散歩に付き合ってもらってもいい?」
「お散歩ですか?」
「うん、ちょっとこの街を見て見たいんだ。許可は取ってあるよ。」
昨日のうちに村正は朝食までの時間を自由時間にしてもらっていた。その時間を使ってこのアメズワンの街並みを見たかったのだ。
アメズワンの街並みは村正の興味を大いに引いた。その独特な建築様式に加え、街自体のインフラの整いようなどが古代のローマに似ているように村正は感じていた。
「お兄ちゃん、なんだか楽しそうですね。」
「そう見える?」
「はい。いつもとは違う顔です。」
「そう?確かに少しワクワクしてるかも知れないな。この街は取っても面白い。」
面白いというのは、見ているだけで楽しいということだ。まず、この世界にこんなにも幅の広い道が整備されているとすら思わなかった。街道も、ここみたいに舗装されているわけじゃない。別に、そこには驚かなった。それが異世界と言うものなんだと村正は理解していた。勿論、ネレラルの街中はきちんと道が整備されているが、ここみたいに幅は広くない。馬車が1台通過できると言うくらいの幅しかない。
「あれは・・・」
村正の目に飛び込んできたのは、道の真ん中に飛び石が等間隔で並んでいる物。飛び石の幅は馬車の車輪より幾分か広い。
「これ、横断歩道なんだ。」
これだけ道が広いところでしかも、多くの馬車が通っていれば自然とできて来るんだろうな、こういうの。
他にも朝早くから営業をしているお店など。朝早い理由は、昔の名残だそう。ここが鉱山の街推して発展していた時は、皆朝が早かったので、自然と店の営業の開始時間をそれに合わせていたという。
「昔の名残って聞くと良いね。」
「はい。歴史を感じます。」
1時間ほど街を散策してから宿に戻った村正は制服に着替え今日の準備を始める。朝食と身支度を済ませ、宿の前に出る。既に何名かの人が外で待機していた。
「おはようございます。」
村正は挨拶をして、他の人たちが出て来るのを待つ。
15分程度で全員が集まった。時刻は午前9時。
「よし、では、今日はルマニミ王国内に入る。我々はあくまで商隊としてルマニミに入る。よって、王都到着までは目立った行動は控えるように。」
「はい。」
ケベックの指示に全員が頷く。ギルディスはその横で佇んでいた。
アメズワンの街の関所を抜けて国境を目指す一行。ここから国境までは街道を5分もいかないところにある。
「国境ってどんなところなんですか?」
「何にもないわよ。不法入国者を見つけやすいようにしてるから。」
実際、今馬車から見える景色は特に何もない、平原が永遠と続く。これなら、何処に居ても丸見えだ。
徐々に国境の門が見え始める。街道の道は真っすぐ国境の門に向かって伸びている。
「これが、国境か。」
国境は何か大きな関所と村正は感じていたがそんなことは無く、普通にアメズワンに入るときの手続きに料金が乗っかる程度の簡単な物だった。それは国を出るときだけではなくて、ルマニミに入国するときもそうだった。出国する際に受け取った手形を渡す。ただ、それだけ。
国境を超えるからと、ワクワクしていた村正だがあまりに何も起きなかったので少しテンションが下がった。
「なんか思ってたのと違う。」
「何を想像していたのよ。」
イブに問われ村正は、横になりながら、
「何だかんだで出入国の際に色々揉めて最終的にギル殿が仕方なく事情を説明する、みたいな流れを期待していたのに。」
「そこまで私達は間抜けじゃないわよ。」
「そうかもしれませんが。」
他にもなにか面白いイベントが起きることも期待したがゼロ。何にも発生しなかった。ただ、門の間の道を渡ってルマニミ王国内に入る。以上。
それが村正には予想外過ぎた。
「せっかくの国境越えですし、何かしらのイベントはあってもいいかと思いますが。」
「紺野君、君はこの世界に何を期待してきたの・・・」
村正がイブに宥められる姿は少しレアだった。そのためフェアリとシロはその光景を忘れまいと、絵に描き止めるのに必死だった。
君たち、その紙とペンはどこから出て来た?
ルマニミ王国の王都まではまだ後1日残っている。が、ここはもうルマニミ王国内の領土。
「村正君見てください。」
フェアリが窓の外を見ながら村正のことを呼んだ。村正はフェアリの横から窓の外を見る。
「――っ。」
目の前に広がる光景に村正は息を飲んだ。
目の前には大きな滝が見えた。落差数百mはあろうかと言う大瀑布だ。驚くのはそれだけでは無い。
「滝つぼが無い?」
「はい。あの滝、途中でなくなってるんですよ。」
見ると、滝の周りには川や湖などの水辺が見当たらない。滝の落差が大きすぎて水としては落下せずに霧の状態になっている様だ。だから、こういう滝つぼのない滝が完成する。
その美しさに村正とフェアリは感動した。それだけではない。
「村正君あちらを。」
フェアリは次に村正に空を見るようにと指で上を指す。
「――嘘。」
崖一面に花が咲いている。崖に花が咲くこと自体は決して珍しくはない。が、このように、びっしりと崖が埋め尽くされるまでの花が咲くだろうか。
「2人とも驚いてるようね。」
「イブさん。」
「ルマニミ王国の別称知ってる?」
別称、何だそれ?
「自然の楽園。ですね。」
「流石に知ってるわね。そう、これらがその別称の所以よ。」
自然の楽園。確かにまだこの2つしか見てないが、その感じはよくわかる。
「まだまだ、驚いちゃ駄目よ。この先もっとすごいことが待ってるから。」
自然の楽園、ルマニミ王国。村正達はついに、その国へと入ったのだ。
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