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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第4章 夏の魔術祭
55/165

At55.後夜祭と忘れられた約束2

ここ最近文章の書き方を色々模索中ですのでもし読みにくい等あればご報告ください。

 後夜祭がはじまって少し時間が経った頃にやって来た村正一向。3人はその雰囲気に飲まれていた。ついさっきまで行われていた魔術祭の雰囲気とは一気に変わりお祭りムードが前面に出ている。

 

 「すげ・・・」


 思わず漏れる村正の声。そう思うのも仕方のないことだろう。この場に学園の殆どの学生に加え外部の人も来ている。そうなると人数は相当な数になる。


 「どうだい?驚いたかな?」


 そう訊ねるのは生徒会長のエレン。この場の警備兼案内人。


 「とても。」


 ユウキもこの雰囲気に圧倒されている。今までも熱い戦いの雰囲気から楽しい柔らかな雰囲気が競技場一帯を包む様子に言葉が出ない。


 「それはよかった。これが年に4回。各魔術祭の最終日ごとに行われるんだ。」

 「すごいですね。」

 「そうだね、それにこの街のお祭りも兼ねてるから余計に盛大だろ?」


 お祭りも兼ねてるっていうけど、当初の予定よりだいぶ早く終わったのにいいのかな?」


 「エレンさん。」

 「何かな?」

 「魔術祭って10日確保されていますよね?」

 「ああ、その事か。」


 エレンは笑いながら不思議そうな顔をする村正達に押してくれた。


 「10日って言っても実際は第1回戦の流れで大方の日数の予測が立てられるんだ。」

 「大方の日程ってどういう事ですか?」


 ユウキが訊ねる。


 「第1回戦で誰がどんな戦いをするのか。荒れたフィールド整備に掛ける時間の計算。そこから、大体この日に終わりますって報告が初日の後出されるんだ。」


 自分たちの知らない所でも色んな人たちが色んな仕事をしているのを知った村正。その話を聞くと、初日の夜に、あんな騒ぎを起こしてしまった事を申し訳なく思う。


 「さ、行きましょう紺野さん、ユウキ。」

 「そうね、今日はマサ君には私たちのお財布になってもらうんだから。」

 

 今ユウキから変な言葉が聞こえたような気がするが。


 「え?今なんて・・・」

 「今日はマサ君の奢り!」


 右手を上げて言い張るユウキ。それに動じてミラまでもが腕を上げる。ミラに関しては約束を忘れていた手前仕方がないかも知れないが、ユウキ君は別にいいよね?


 「さー、どんどん行こー!」


 2人は村正の手を引いて奥へと進む。村正は転ばないように気を付けながら人ごみの中を進む。少ししたところで人が若干少なくなった。そんな1年生を見送るとエレンは仕事に戻って行った。


 「何でさっきの所はあんなに混んでるんだよ。」

 「まあ、入り口だし人も多いわよ。」


 はぁ。


 村正はため息を吐きながら改めて周囲を見渡す。改めて見ると、それは後夜祭よりも縁日と言った方が良いのではないだろうか?店の数に種類も魔術祭中とは比べ物にならない。ただ、所々元の世界の縁日とは違った物もある。

 

 占いか。この世界の占いなら当たりそうで行く勇気が無いな。

 お、あれは・・・


 何やら見覚えのある様な店を見つけた村正は真っすぐその見せに向かって進んでいく。


 「これは、金魚、じゃない。」


 見た感じ金魚すくいの様にも見える店の水槽で泳いでいるのは金魚とは似ても似つかぬ生物。青い小さな体に赤い目。大きさは金魚より一回り大きいと行ったところ。さらにどの魚も片方の目が無い。


 「なんだ、紺野じゃないか?興味あんのか?」


 ヤンキー風な口調で話しかけてきた女性はクレア学園で3年1組の担当をしているスコット。村正の2日目の試合の時の審判を行った人物でもある。


 「これ、何ですか?」

 「なんだよ、知らないのか?こいつはセキガンっつーのよ。」

 「セキガン?」

 「そ、こいつらの赤い目と片方にしかない目を掛けてセキガン。」


 なるほど、上手い。


 「でも、目の様に見えんのはただの模様な。」

 「模様ですか?」

 「そ、右に付いてるのが雄。左に付いてるのが雌。」

 「へ~」


 それにしてもスコット先生この姿よく似合う。元の世界にもこういうお姉ちゃんの人いたな。

 この人噂じゃ昔はそこそこ荒れてたって聞くし普段からこんな感じなのかな?


 「なんか言いたそうだな。」 

 「いえ、別に。」


 まじまじと見ていた村正が気になたのかはっぱをかけるスコット。狼狽える村正を見て笑っている。


 「そう言えば、この後夜祭の店の人、学園関係者多いですね。学生じゃなくて。」

 「ああ、魔術祭が終わるとあたしら教師陣は総出でこの後夜祭の準備をするんだ。」


 この多くの物を一体どこから運んできたのやら。

 

 「んで、毎回誰が何処を担当するかは運次第。」

 「運なんですか?」

 「ああ、まあ、今回あたしは当たり。」

 「ハズレは?」

 「あそこ。」

 

 スコットが指さしたのはいつの間にか出現している野外ステージ。


 「あれが今回の一番のハズレ。」

 「うっそー・・・」


 村正の目に飛び込んできたのは衝撃の光景だった。


 「何ですあそこ。」

 「あそこは、この学園一の美女を決める場所さ。その司会が今回のハズレ。」


 その司会者の姿をみて一目で理解する村正。


 うん、わかるわ。


 司会者の姿はバニーの姿。それだけなら別に何とも思わなかっただろう。


 「ブハッ」

 「やっぱ笑う?」


 思わず噴き出した村正を見たスコットはやっぱり、と思った様だ。


 「え?」

 「いや、ほら、()()()があんな姿してると皆驚くだろ?」


 驚くなんてもんじゃないですよ。


 今回、そのハズレくじを引いたのは1年1組の担任、レベッカ。堂々としている姿がまたなんとも言えない。

 

 「あんまり笑うなよ。ばれたらきっとぶっ殺されるぞ。」

 「スコット先生だって笑ってるじゃないですか?」


 その後もステージを見ては笑い続ける2人。


 「ごふっ」


 僕の背後から高速の何かが横切った。そのなにかはスコット先生の顔面に命中するとそのまま後方へと吹っ飛んでった。僕はそれが何処からやって来たものかすぐに分かった。わかったが故に確認しようとしても恐怖で体が動かない。それでも、ゆっくりと体を回す。


 「あぁ・・・」


 予想通りだ。レベッカ先生が物凄い顔でこっちを睨んでいる。

 レベッカ先生がマイクで何かを言おうとしている。


 「そこの2人。次はないと思え。」


 低音ボイスでぼそっと言ったためか僕等だけじゃなくその言葉を聞いた全員が黙り込んだ。


 「返事は?」

 「はい。」

 

 小さく返事を返す村正。


 「声が小さい!」

 「はい!」


 村正がすぐに返事を返す。それに掛かった時間1秒ない。


 「スコット!貴様は?」

 「はい!」


 レベッカの攻撃で伸びていたスコットもヒュンと起き上り返事をする。周りはただただ、2人の様子を見ているだけっだった。


 「やっべ、あたし多分明日死んでるかも・・・」

 「それは比喩でいいんですよね?」


 本当になりそうで怖かったので確認を取っておく。


 「んー、半分正解、半分ハズレ。」

 「それって・・・」


 それってつまり半分は何かあるんじゃないか。


 「はぁー、この歳になってまであの人の説教食らうとかマジ勘弁だわ・・・」


 大きなため息を吐くスコット先生。何やらレベッカ先生と何かありそうなので昔何かあったのか聞いた。


 「あたしが荒れてた時何度も捕まったんだよ。」

 「それで?」

 「知らねーのかよ?あたしが荒れてた時はな、軍その他に捕まってもあの人にだけは捕まるな、って言葉があったくらいさ。」

 「そんなに恐ろしいんですか?」


 レベッカ先生だからっと言うと失礼だが何があってもおかしくないと思ってしまう自分が居る。


 「いいか、ここだけの話、」


 スコットが手でちょいちょいと村正を引き寄せる。村正はスコットに合わせるように顔を近づける。


 「かつて、この国にいた巨大組織を一夜で落としてさらに、1週間後には全員別人のようになっていたと。」

 「別人?」

 「まるで恐ろしい目にでもあったかのように。」

 「それは普通の拷問とかではなくて?」

 「そんなもんじゃないと思う。そこは拷問対策までやってる徹底ぶりだったそうだし。」


 スコット先生の話を聞いた以上、今後レベッカ先生の逆鱗に触れることだけは決して避けなくてはと思った。でないと、きっと恐ろしいめに遭う。


 「あー、いないと思ったらこんなところにいた。」


 突然やかましい声がしたと思い僕は振り返る。そこには手に沢山の食の戦利品を持ったユウキとミラがいた。


 「君たち、いつの間に?」

 「マサ君がどっか言っちゃうから私達自腹切ったじゃない。」

 

 勝手なこと言うなよ・・・


 「まだ、奢るとは一言も言ってないけど?」

 「いや、普通男子はこういう場では女子に奢るもんでしょ?」


 じゃあ、僕とエレンさんは一体何人に払えばいいんだ?


 「はいはい、わかったよ。」

 「じゃあ、ミラ次どうする?」


 まだまだやる気満々のユウキとミラ。その様子を見た村正は自分の財布を心配する。


 「ところでさ、紺野とメアリって出来てんのか?」


 藪から棒に言い出すスコットに村正とユウキの顔が一気に赤くなる。


 「「なななな何ですか急に。」」

 「ああ、いや、あちこちでその話聞くからてっきりそうなのかと。」

 「誰かが、誰がそんなこと?」

 「そいつとか。」


 村正がスコットに話の出どこを訊ねるとスコットはミラを指さす。2人をよそに黙々と食べているミラは自分が指さされていることに気付いていない。


 こいつか。


 「ミラ、あんた一体どれだけの人に話したの?」

 「べ、別に私1人じゃないよ~。」


 ユウキに責められ小さくなっていくミラ。


 「でも、私もそいつがいろんな奴に話してるの見たぞ。」

 「ほらー!」


 スコットに明かされるミラが話して回っていた事実。


 「で、でもー2人のことは1年生なら殆ど知ってるよ?」

 「全くもう。どこからこんな話が出るのよ・・・」

 「本当に、どうせこの元凶は間違いなくあいつだよな。」

 「あれよね。」


 村正とユウキは互いに顔を合わせ同じ人物が浮かんでることを確認する。


 「じゃあ、そこら辺のことを含めてしっかりとお話し聞かせてもらいましょうか?」


 ミラの目的はあくまでも村正への取材。後夜祭など二の次。


 「私も?」

 「当然、この場に居るんだし。」


 突如ミラの取材に巻き込まれたユウキはかなり迷惑そうだった。


 「ユウキすごい嫌そうだね・・・」

 「いや、もうこれ以上訳の分からない話を聞きたくないだけ。」


 その気持ちは分からなくもないが、その訳が分からない話が出た時僕の潔白を証明してくれる人物がいないと困るし。ユウキなら全力で答えそうだし。


 「もー、この際だから逃げずに、さ。」

 「なーにが、さ、よ。」


 村正はユウキの肩を掴み「離さないよ?」という笑顔を浮かべる。その笑顔がユウキにはとても恐ろしく感じた。


 「絶対何か企んでるわよね?」

 「ううん、何も。」

 

 素で返され本当に何か企んでるのではないかと疑心暗鬼に走るユウキ。余計にこの場から立ち去りたい思いが強くなっていく。


 「それじゃ、場所を変えましょうか。ここで話すのもあれですし。」

 「「当然でしょ。」だろ。」


 こんなに大勢の人の居るところで話なんかされたら余計に面倒なことになりかねない。この数ヶ月でいろんな話が大きくなりすぎている。

 入学当初はこんなこと考えてなかったんだが。だが、これも別にあり得ないことではなかったと思う。


 村正達は場所を後夜祭の休憩所へと移す。やや人がいるのが村正とユウキには気になって仕方ないが、それでも先ほどの場所に比べればましだ。


 「それでは早速お2人の関係についてですが。」


 本当に早速だな。

 

 「本当に付き合ってないんですか?」

 「そうだって何度言わせんのよ。」

 「そうだよ。別にただの友達。それだけ。」


 2人して頷きあう。その姿を見せてまで付き合ってないと言われても無理があると思うミラ。


 「ですけど、実際の声を聴くと付き合っていると言うよりもはや夫婦とまで言われてますよ。」

 「「その話は前にないと言った!」」

 

 2人が詰め寄り、ミラは反対に仰け反る。


 「でも、紺野さんはお世話になってる自覚あるんですよね?」

 「それは、まぁ確かに・・・」


 実際掃除、料理と結構ユウキにはお世話になってる気がする。ユウキが部屋を掃除したいという時、僕は決まって外出するし、帰ると僕の所まで綺麗に整理されている。


 「でないと、マサ君何にもしないもん。」

 「ほうほう、それは駄目男としてですか?」

 「ミラの中の僕って何?」

 

 ミラの中では一体僕の表かはどうなってるんだ?まさか聞いた話だけで僕の評価が?


 「女子に頼ってばっかしの残念さん。」

 「っざけんなこらー!てか、頼ってばっかしじゃねーし。」


 反抗する村正を宥めてるユウキ。普段とは反対の光景が起こる。


 「他にどんな話があるの?」

 「どんなとは?」

 「僕のこの学園での評価。この際だから全部知っておきたい。」

 

 でないとこれからは自分の行動に制限を付ける必要とかあるかもしれないし。


 「例えば、紺野さんには幼女趣味の噂がありますね。」

 「おい、誰がそんなことを?」

 「これは昨日私の地獄耳で。」

 

 それってつまり誰かにシロといるところを見られた?


 「あだ、」


 村正が内心焦っていると突然腰をつままれ痛みが走る。


 「何?」


 腰を抓ったのはユウキ。ユウキも村正とシロが目撃されたと思っている。だからだろう、ユウキの目がこんなにも村正に対し痛々しいのは。


 「マサ君、どうすんのよ?」

 「べつに、まだ今ならどうとでもなる。」


 こっそりユウキに耳打ちする。ミラに聞こえてはさらに大きく広がりかねない。


 「どうって、どう?」

 

 それなー。初対面の人なら別に「妹です」って言ってもいいかもしれんがクラスに皆となるとな。「親戚の子」で、一体どこまで通じるかわかったもんじゃないし。


 「身内とかかな。」

 「身内、なら確かに大丈夫かも知れないけど・・・」


 今のところ、僕とシロとの関係について深く知っているじんぶつはそう多くはない。だだ、シロが居るってことだけならもう少しいるが。


 「先ほどから何をひそひそと?」


 耳打ちで会話をする2人の様子を不審に思うミラ。村正とユウキは慌ててその会話を止める。


 「なんでもないよ。」

 「本当に~?」


 疑い深いミラに対し愛想笑いで返す村正。


 「本当、本当。」


 なんとしても押し切らねばと言う使命感のようなものが村正にのしかかる。


 「言っとくが、僕に幼女趣味はないよ。」

 「このまま否定しないかと思ったのに。」

 「否定するに決まってるでしょ。」

 

 何でわざわざ自分からロリコンだという必要がある?


 「因みに紺野さん、年下は幾つまで許容範囲ですか?」

 「唐突何?」

 「いえ、参考までに。」


 ここで村正は一つの岐路に立たされた。ここは正直に答えるべきかそれとも年下は眼中にないと宣言するか?

 この答えようによっては大きな問題になる可能性だってある。特に年下の許容範囲がロリコン認定されればもう言い逃れはできない。かと言ってここで年下は論外とか言うと後々面倒なことになるだろう。


 「何で、そんなに難しい顔をしてまで悩むのよ・・・」


 ユウキの呆れた声が村正に届く。ユウキの指摘を受けて村正は自分が想像以上に深く考えていたことに気付かされる。

 

 「いや、ほら、だってこれ男からしたら大きな問題なんだよ?」

 「どんなよ。」 

 「例えば答えようによっては僕は噂通りの幼女趣味有りの存在になるし。」

 「くだらないこと気にしてるわね~。」


 自分のことじゃないからってそこまで言わなくてもいいのに。

 ユウキが左手を後頭部に置いて目を閉じて物事を言う時は本当にくだらないと思っている証拠。本人は気付いていない。


 「で、紺野さん、どうなんです?」

 「え、えっと3つ下までなら・・・」


 思わず出てしまった言葉がなんだたのか僕は覚えていなかった。ただ、墓穴を掘ったことは確かに思えた。


 「微妙なところで来ましたね。」

 「ええ、ミラ、こいつ策士かもよ。」


 今度はユウキとミラでひそひそ話始める。村正は何を話してるのか一気に不安が増す。ひょっとして今自分はとんでもないことを口走ってしまったかも知れない。

 ミラの目が完全に痛い。彼女の中での僕の評価、否僕と言う人間性が変わって行っている気がする。


 「別に変なこと言ってないよね?」


 2人のことが気になりどんどん心の中での不安が大きくなる。


 「ユウキユウキ、紺野さんってこういう人なの?」

 「そんなことな・・・・くもないわね。」

 「ええ、そうなの?」

 「ええ、私が着替えてるときに毎回のように部屋に入るのよ。」


 おい、

 

 「しかも、それも何度も。これは出会ってすぐのころからね。」

 「うっそー!?」

 

 ユウキ・・・、


 「さらにさらに、私との約束で部屋に入るときはノックするというのもしないし。」

 「うわぁ・・・」


 ユウキさーん・・・


 「ひょっとしたら他にも余罪があるかもよ。」

 「まだあるんですか?この人見かけによらずとんでもない人なんですね。」


 ここで村正が限界を迎えた。だが、怒りに走ったのではない。


 「う、うう、グスッ。」

 「ああ、あれ?マサ君?」


 村正は部屋の隅で泣き始めた。


 「泣いちゃった?」

 「うう、う、うう・・・」

 「・・・・・えぇ~。」


 まさかの展開に声も出ないユウキ。ミラは固まってる。

 ユウキは「やれやれ」とため息を1つ吐き出す。


 「ああ、もうわかったわよ。謝るから泣くのは止めなさい。」

 「ユウキ、僕のことそんな風に思ってたんだね。」


 村正はユウキをチラッと見てから再び顔を伏せる。


 「半分ね。」

 

 ユウキの正直過ぎる回答が余計に響きさらに村正は小さくなる。


 「少なくともそこは落ち込まないでよ。」


 ユウキは村正の肩をさする。だが、その様子はなんだか残念な人を世話するようにも見えなくない。そんなユウキと村正の光景にミラは笑うのをこらえながら見ている。


 「もー、ミラも笑わないの。でないとマサ君面倒になるから。」

 「め、面、倒、って?」

 

 村正は普段はこのようなことにはなることはないが、今回は違った。普段とどこが違うのかは村正自身にも上手く説明できない。

 ユウキは笑った拍子に出て来た涙を払うミラに説明する。


 「愚痴聞かされるから。」

 「ああ、お疲れ様です。」


 深々とお辞儀をするミラにイラっとしたユウキだがここは抑えた。


 「マサ君もいい加減もとに戻んなさいよ。」

 「だって、君ら僕のことそんな風に見てるんでしょ?」

 

 余計に面倒になっていく村正に危機感を覚えたユウキは村正に一発ぶち込む。


 「マサ君。」

 「な、ゴフ!」


 ユウキの魔法で村正の体が吹き飛ぶ。

 何事かと混乱している村正にユウキが詰め寄る。


 「いい加減にしないと、次はもっときついわよ?」


 完全に脅しで村正をどうにかしようとするユウキ。いざとなれば何でもするユウキの姿にミラは開いた口が塞がらない。


 「なに呆けてんのよ?」

 「いや、だってユウキ普段そんなんじゃないよね?」

 「いや、普段からこうだよ。」


 ようやく立ち上がった村正の一言が気に食わなかったユウキは、村正が完全に立ち上がる前に頭上に拳骨を無言で落とす。

 

 「余計なこと言わない。」

 「はい・・・」


 ユウキからおまけの一発ももらった村正はこれ以上ユウキの機嫌を損ねるととんでもないことになると思い、余計なことは言わないよう心に決めた。

 

 後夜祭の会場に戻ると先ほどよりもまた人の数が増えていることが見て取れる。


 「また随分と増えて来たわね。」

 「本当だね。」


 みんなは何が目的でこんなに集まるんだろう?

  

 勿論ただ純粋に後夜祭を楽しむだけ、と言う人も中にはいるだろうが、村正の気にする理由はここに居る大勢の人はもっと別の理由があるように思えた。

 別に後夜祭と言えどこの祭りは学園内部だけの物ではない。それだけに祭りの内容は色々ある。きっとそれが目当てで来ている人もいる。

 そしてすぐにそのみんなの目当てがわかる。


 「皆もしかしてあれ目当てなの?」

 「そのようですよ。ほら!」

 

 ミラが指さす方向にはこの学園の女子の他にも男性の姿がちらほら見える。その訳は今ステージで行われている物に大きく関係していた。


 「ああ、皆これを見に来たのね。」

 「はは、どこに行ってもこういうのはあるんだな。」

 「マサ君他でもこういうの見たことあるの?」

 「ううん、実際に見るのは初めてだよ。」


 僕の居た高校も文化祭でこういうのをやるらしいが実際に見る前にこの世界にやってきてしまった。なのでせっかくの機会を失ってしまったのだが、こうしてこの世界でも拝めたので良しとしようではないか。


 「ええ、それでは只今よりクレア学園の最も可愛い女の子を決めまーす。」


 レベッカのやる気のない声とは裏腹に一気に会場は盛り上がりに包まれる。

 周りを包む歓声は男性より女性の方が多い。これがこの学園だと思うと自然なことである。


 「うわ~、レベッカ先生だるそー。」

 「そりゃあの格好だものね。そうなるわよ。」


 村正のレベッカに対する意見にユウキも頷く。レベッカは自分の姿とは似ても似つかない声と表情である。進行の原稿なども全てが棒読み。それなのに周りは一切興奮を沈めない。一切と言うのは語弊があるかも知れない。興奮が一部沈んでいる人もいる。


 「うちら(1組)のクラスは沈んでるわね。」

 「レベッカ先生のことよく知ってるからだろ。」

 「そうなんですか?」

 

 1組の村正とユウキは他の1組のメンツがレベッカの態度を見て沈んでるのが納得できるが、他クラスの存在であるミラには不思議である様子。

 この1組のクラスのみんなもレベッカと言う人物がどんな人物か大方わかるようになってきた。それは、


 「「授業以外はやる気が殆どない。」」


 授業に関係のあることはとことん真面目で厳しい存在になるが、一旦そこを離れると全くの別人になる。そう、やる気のない人物に。


 「でも、魔術祭関連は真面目だったよな。」

 「それはあの人がこの魔術祭を楽しんでるからよ。」


 前言を訂正。興味のないことには関心を示さない。レベッカ先生はそういう人です。


 村正はそう予想しているが、実際はちょっと違う。下手に盛り上がると後日自分達にトバッチリが飛んでくる可能性があるから。これが1組の皆が沈んでる理由。


 「でもねー御3方、よーく見て見な。」


 突如背後から甲高い声がし3人は小さく悲鳴を上げて後ろに振り返る。


 「リ、リリィ?」

 「やあ、珍し組み合わせだね。」


 いつものあか抜けたリリィが手を振っている。


 「今日は何なのよ急に。」

 「よく見て見ろって何?」

 

 村正の質問にリリィは真っすぐ指をさす。


 「どこ?」

 「ほら、先生の口元。」


 リリィの指さすレベッカの口元を見る村正達3人。


 「緩んでる?」

 「そう、なんでだと思う?」


 リリィが楽しそうに村正達に質問をする。


 「何でって、何で?」

 「何でよ?」 

 「何でですか?」

 

 村正達はリリィにそれぞれの疑問をぶつける。

 リリィはその質問を「待ってました。」と言わんばかりに得意げな顔になる。

 

 「それはね。」

 

 村正達が話に聞きいると、


 「「「キャーーーー!!!!」」」


 黄色い声援とはこのことなのだろう。


 作られたステージが一気に明かりに照らされる。勿論照明器具と言う大層な物ではない。否、ひょっとしたら照明器具の方が貧粗かもしれないと村正は思う。この魔法が圧倒的に発展を遂げたこの世界に置いて、村正の世界の技術はようやく産声を上げた程度。

 ステージにはクレア学園の選りすぐりの女子が集められている。その中に僕らの見知った顔が1人、居た。その人物を目にした村正とユウキは驚きを隠せない。だが、他の1組のメンバーはそうでもない。恐らく知っていたのだろう。

 

 「何で、イルミアが?」

 「それはね・・・」


 もったいぶるリリィにユウキが早く説明するように求める。


 「・・・私が勝手に推薦したらここまで残っちゃった。」


 最後にてへっ、と舌を出すリリィ。リリィは昨日からイルミアが今日のこのステージに出てくることを予め1組の全員に伝えていた。村正達はイブによって別の所にいたため、その話が届かなかった。

 レベッカはイルミアを見るとそっと目線を逸らす。今回の司会進行であるため予めイルミアがこの場に居ることは事前に知っていた。

 まさか自分のクラスの人物がこの場に出るとは思わなかったのか、それともリリィに勝手に推薦されたことに同情してるのかどちらだろう・・・。


 「イルミアこういうの絶対嫌がるよね?」

 「うん、話したら今までにないくらいショック受けてた。」


 笑顔で答えるリリィを見て村正とユウキはイルミアに向かって手を併せる。


 「でもいいの?この後絶対何か言われるわよ?」

 「大丈夫大丈夫、逃げるから。」


 逃げる気満々のリリィを見た村正は拘束魔法を使う。

 

 「な、何するの?」

 「ん?、リリィが逃げない様にって。」

 「あら、良いわね。」

 

 村正とユウキの意見があったの見たミラはやはりこの2人はできているのではないか?と再度思う。


 「それに、私達も色々と用はあるのよ?」


 ミラに余計なことを吹き込まれた村正とユウキもリリィには言いたいことは沢山ある。


 「そんなことより、あっち見なよ。」

 

 ミラに促され少し離れたところではあるが村正達はステージに目を送る。既にこの数日間に行われていた投票で結果は決まっている。今日はその結果がわかるとき。今、()()()イブから手紙を受け取るレベッカ。そこに結果がある。

 

 「ねえ、ミラ聞いてもいい?」

 「何ですか紺野さん?」

 「あれ、考えたのってひょっとしてあの人?」

 

 村正はスススと下がるイブを指さす。

 

 「私は知らないわね。これはもう何年も前からやってるらしいし。」

 「私も知らないですね。」

 

 ミラとユウキは知らないと答える。

 

 「紺野君の考えであってるよ。」

 

 やっぱりと思う反面何でリリィが知ってるのかと言う疑問にも同時に当たったが、リリィの持つ情報筋はミラ以上に侮れない。

 

 「いつも思うけど、リリィってどうやって情報持ってくんの?」


 村正はここでリリィに持っていた疑問を投げかける。だが、これはリリィに上手くはぐらかされてしまう。下手に食い下がるとここにいるミラに何描かれるかと言うこともあった。

 

 「それより、そろそろ発表。」


 イルミアはステージに顔を向け話題を変える。ちょうどレベッカや他の先生の話も終わったところ。


 「やっぱりこういう催しって男性が目立つわね。この学園内でも。」

 「そうだね。普段は2人しかいないからちょっと新鮮かも。」

 「まあ、魔術祭自体は前からあるし、後夜祭だってそうだからね。それに男性が出入りすることは時々あるから私はあんまりかな。」

 「あれ、こういうのってさ普通逆だよね?」

 「・・・そうね。」

 

 村正とユウキは談笑する。その様子を見るミラとリリィの目はお腹いっぱいだと言っている。

 そんな4人を思いっきり飲み込むような歓声が響き渡る。そう、この学園で行われていたミスコンの結果がでたのだ。その直後に人が押し寄せ4人は近づくことが出来ない。


 「わあ、一気に来た。」

 「皆何だかんだこれが気になって仕方ないのね。」

 

 「何だかんだ、皆考えることは同じなのよ。」


 村正達に声を掛けてきたのは学園長であるシギー。突然の登場にミラだけが固まる。

 

 「シギーさんもここにいたんですね。」

 「まあ、お母さんには困ったものだけど、始めにあれをやると言い出した時は正直驚いたわ。」

 「そんなにですか?」

 「まあね、この学園で初めてだもの。初めから男性客を想定したイベントなんて。」

 

 村正はそれならばと、魔術祭もそうではないかと考えるが、そもそも魔術祭に出る人すべてが今まで女性。こういう場面にはどうしても男性より女性の方が多い。

 戦う女性に引かれるのは同じ女性と言うのがこの世界。


 「でも、よく許可出しましたね。」

 「んまあ、その方が面白いかなって。」

 「そう言うあたりやっぱり親子ですね。」

 

 村正の言うことにシギーは顔を赤らめる。


 「それじゃ、私はもう戻るわね。」 

 「え、もうですか?」

 「学園長は忙しいのよ。」


 そう言って華麗に立ち去るシギー。その姿はいつものシギーとは若干違うように見えた。それが後夜祭のせいなのかは分からない。


 「ああ、残念。」

 「でまた、リリィはどうしたのさ。」

 「イルミーが惜しいところで負けちゃった。」

 

 思わず、そんなことかと、言いそうになったのをこらえる。だが、当人はステージ上でほっとしているようにも見えなくない。元々リリィによって本人の知らぬ間に行われていたこともあってか、イルミアはあまり乗り気ではなかったのだろう。

 レベッカのイルミアを見る目だけは少し残念そうになっていた。それを見た村正はレベッカもあんな表情をするのだと、ちょっとだけ驚く。

 

 後夜祭。もはやただのお祭りと言っても変わらないこの雰囲気に村正はしみじみする。


 「どうしたの、マサ君?」


 ユウキが訊ねる。村正の顔が面白かったのだろう。少し楽しそうだ。


 「この学園、改めて変なところだよなって。」

 「うーん、私はこういうのも好きよ。普段とは違うみんなを見ることが出来て。」

 「それはそうだね。1組の皆なんてイルミアにすごい声援送ってる。」


 今までクラスの人と関わることの少なかったイルミアが今はクラスの中心の存在になっている。これは当分(ほとぼり)が冷めないだろうな。


 ミスコンも終わりさらに祭りは加速していく。周りを巻き込みながら熱を帯びていく。その雰囲気に村正達も飲み込まれずにはいられない。


 「さって、僕らも行く?」

 「当然、マサ君に奢りでしょ?」

 「え、紺野君奢ってくれるの?イルミー呼んでこよっ。」

 「あ、ちょっと!」


 村正は慌ててリリィを止めようとするが、今日くらいはとリリィを止める手を収める。


 これが年に4回か。思ったより大変かもな。

 お財布の問題で。でも、僕はこの魔術祭の期間中は今までで一番良い時だったな。


 村正がこの数日を振り返り余韻に浸るところに、一気に雰囲気を壊す言葉が告げられる。


 「よーし、聞け貴様等!」


 突然レベッカが声を張り上げる。何事かと皆凍り付く。


 「今日は思いっきり楽しめ、ただし、」

 

 その長い間に全員が、ごくり、と息をのむ。


 「来週から期末試験あるの忘れんじゃねーぞ?」

 「・・・今言わないで欲しかった。」


 そう、村正は心の中でつぶやいた。



 

次回At56.期末試験勉強


と、言うわけで今回で第4章終了となります。本当は3月中に終わらせたかったんですが・・・

この魔術祭、次本格的に章で書くのは冬の団体戦の物です。秋は軽くになります。

次回から新章開幕です。

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