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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第2章 クレア学園サバイバル試験
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At5.情報の意味

 「これからは、入るときに必ずノックをすること。いい?」

 「はい、了解しました。」


 僕は正座をしながら、ユウキのお説教を聞いている。かれこれ30分程この状況が続いている。何があったかというと、僕の不手際により、ユウキの着替えを覗いてしまったのである。その時に、言った言葉がマズかった。今考えればどう考えてもあの発言はおかしかった。


 「聞いてんの?」

 「は、はい聞いてます。」


 村正は慌てて顔を上げて返事を返す。


 「ほんとか?マサ君うちのクラス唯一の男の子なんだからちょっとしたことがすぐ命取りになるよ。」

 

 クラスというか、学年全体で見てもそうなんだが・・・

さらにお説教は続き終わったのはその5分後。ようやく彼女の許しを得て自分もゆっくりできる。


 「ねぇユウキ、君は今度の試験についてどう思う?」

 「試験?試験って何のこと?」

 「来週からのサバイバルのこと。」

 「え、あれって試験なの?」

 「レベッカ先生が試験官をするって言ってたじゃんか。」

 「そうだっけ?」


 やっぱり気づいてなかったか。まあ、無理もないが。だとすると、他のクラスにもこの件が試験であること自体伏せられているのかもしれない。もしくわ・・・


 村正は顎に手を当てて何やら考え込む。そして、


 「ユウキ、君は他クラスには誰か知り合いはいるか?」 

 「ううん、いないなー私の知り合いはみんな地元のところにいるから。」

 「そうか、なら仕方ないか。」


 もしかしたら、各クラスごとに開示されている情報に差があるかもしれないと思ったんだが。それならそれで別の対策を講じればいいだけ。ま、ただ先生の言った通り本を読むだけなんだけどね。


 「よっと、重いなぁこいつ。」


 今日配られたこの本は、様々な魔法に関する記述があり、この本の内容を理解しろというのがレベッカ先生の言ったことなのでひたすら読み込むのみ。

 

 「教室で一度読んだけど、殆どなにが書いてるのかさっぱりだ。」

 「そうねー、私も見たけどさっぱり。」


 とはいえ、最初の方は簡単だ。ほんとに最初のページだが。例えば、火を灯す魔法で言えば、


 「ユウキ、部屋の明かりを消してもらっていい?」

 「いいけど、何すんの?」


 ユウキが胸を隠しながら言ってくる。別に変なことはしないよ。


 「ちょっと実験してみたいんだ。」

 「いいよー、ちょっと待ってて。」


 初級?魔法はただ詠唱するだけでいいらしい。

 火を灯すには、


 「ラン・フロール。」


 すると、小さな火の玉が現れた。それが天井付近に昇り部屋を照らした。よしよし、できはまぁまぁかな。


 「おっ、出来た。なるほど、こういう感じか。」

 「おお、マサ君やるね。でも、もう少し周囲も明るくなるといいかな。」

 「そうは、言ってもこれは周囲を明るくするだけだからね。部屋全体は厳しいかな。」


 それでも、この程度なら初めてでも失敗しないで出来たからまずは、簡単な物から出来るようにすれば来週の試験は幾分か楽に臨めるだろう。


 「ユウキは何かできそうなものあった?」

 「うーん・・・あ、これかな。」


 ユウキが僕に手を向けて本を持ちながら詠唱を始めた。


 「ストーム。」


 うわっ、何だ?急にドアの前まで一気に飛ばされた。

 

 「何今の?」

 「対象を思いっきり吹き飛ばす、ストームだって。」

 「何で、それを選んだの?」

 「だって、今後もマサ君が私が着替えてる最中に入ってくるかもしれないし。」

 

 あのなぁ、だからって、いきなりそんなもの向けないでよ。もう少しで、ドアに頭をぶつけるところだったし。結構衝撃強かったよ。


 「でも、このくらいなら私にも使えるんだ。もっと難しいのもできるかな?」

 「どうだろ、どっちにしろこの部屋じゃ、そこまで大した魔法は使えないしな。」


 初級の魔法なら練習なしでもできることが分かったのは大きいな。試験の内容が分かればもう少し色々と対策とかが打てるんだがな。


 コンコン・・・ん?誰か来たぞ。


 「はーい、開いてるよ。」

 

 ユウキが応答すると入って来たのは、リリィ・ヒュンゲルだった。


 「おお、ここが紺野君とユウキの部屋か。あんまり私のとこと変わんないんだね。」

 「リリィじゃないかどうしたんだ、急に。」


 もったいぶった顔でニマニマするリリィ。 


 「んっとね~、今度のサバイバルについて一つ面白い情報を持ってきたよ。」


 今度の試験の情報?一体どこからもってきたんだ。


 「一体どんな情報を持ってきたの?」


 ユウキがリリィに訊ねる。


 「なんと、聞いて驚くなかれ今度のサバイバル実は試験らしいんだよ~。」


 ・・・なんだよそんなことかよ。とっくに知ってるわ。てかまさかそれだけじゃないよね?


 「ごめんリリィ、それ私たち、もう知ってる。」

 「えっウソ?なんでなんで。この情報絶対ビックニュースだと思ったのに。」

 

 ユウキのすでに知ってる発言に膝から崩れ落ちるリリィ。そんなにショックか?先生の話を聞いてたらわかったろ。

  

 「リリィ、君先生の話聞いてた?」

 「え?どんな話?」

 「先生が、あのサバイバルの試験官をするって言ってただろ?ということは、これは試験であると言ってるようなもんじゃん。」

 「えーー、そんなこといってないよう。」


 言ってたよ。なんでみんな話を聞いたないんだよ。


 「他のみんなはどうなの?これが試験であること知らないの?」 

 「うん。みんな知らないみたいだよ。私が行ったときみんな驚いてたから。」


 ということは、やはりこの試験は隠されたものか。何が目的なんだ?

 

 「このこと他のクラスはどうなの?」

 「わかんない、でも私たちのクラスでは言ってなかったことを言ってたよ。」

 「それってどんな?」

 「なんかね、各クラス4人か5人でチームを組むみたいなことは言ってたよ。」

 「そんなことは言ってなかったわよね?」


 なるほど、読みはあたりか。

 ――この試験は各クラスごとに開示されている情報が違う。つまり、このサバイバルが試験であることの情報を持っているのが1組ということ。


 「リリィ、そのチームの話どこで聞いた?」

 「おお、紺野君急にどうしたの?」

 「いいから、これを知ればかなり有利になる。」

 「チームの話は3組の子だよ。私の知り合いがいるから聞いたんだ。」

 「その時、試験の事とかは?」

 

 これがどのくらいの情報かはわからないが恐らく漏らさない方がいいだろう。いや、それとも全クラスで共有した方がいいのか?どちらが正解かはわからない。


 「まだだよ、私が試験のことを知ったのはその後だし。」

 「そもそもリリィはどうやって知ったの?これが試験だって。」


 ユウキがリリィに試験と言う事を知った経緯を聞く。

 確かにどうやって知ったんだ?この試験は開示される内容がクラスごとに違う。てことは、情報がそう簡単に漏れることはないような気がするが。

 ユウキの質問に「えっとね」と人差し指を顎に当てながらリリィは答えた。


 「私が教室から帰るときに、レベッカ先生とシギー学長が話してるのが聞こえたの。」

 

 シギーさんと?てことはあの人も一枚噛んでんのか。てことはもしかして。


 (イブさん、イブさーん。聞こえる?)

 

 ・・・返答がない。まぁ仕方ないか。ここじゃ安易に念話なんてできないだろうし直接訪ねてみるか。


 「ねぇ、そういえば普段先生たちってどこにいるの?」 

 「唐突にどうしたのよ?」 

 「いや、ちょっと気になって。」


 村正の質問に答えたのはユウキ。


 「そうね、普段なら自分の研究室かな。寮長をしてる先生なら寮かもしれないけど。」


 研究室か、普段から教壇に立たないと聞くし研究室なんて持ってるのか?寮長は・・・ないな論外。


 (しっつれいね、 何で論外なのよ。)

 (わっ、急に話しかけないでくださいよ。さっき出なかったくせに。)

 (あら、せっかく君の欲しがってる情報を上げようと思ったのにやっぱりやめようかな。)

 (わかりました、謝りますから。)


 くっそ、この天使いや、今は先生か。どっちにしろ碌でもない人物に変わりない。


 「マサ君、どうしちゃったの?急に黙り込んで?」

 「へ?ああごめんなんでもないよ。」


 ヤバイヤバイ、黙り込んじゃった。誰かと話してるときは念話はしない方がいいな。


 「ごめん、僕ちょっと出てくるわ。」 

 「う、うん。」


 とりあえず今は、少しでも試験関連の情報が欲しいからイブさんとの話を優先させないと。


 村正は部屋を出ると、イブに声を掛けながら走り出す。


 (イブさん、今どこにいます?)

 「君の後ろだよ。」

 「わああああ、なんでここにいるんですか?」 

 

 びっくりしたー。いきなり出てこないでよ。冗談でも「君の後ろ」とかは言わないでほしいわ。心臓に悪すぎる。


 「はぁ、寿命が縮んだ。」

 「そんなに驚くこと?」


 誰だって今のをやられたら驚くよ。趣味悪いなこの人。今はそんなことよりも、


 「それで、僕が欲しがってる情報っていうことは今度の試験のことでいいんですよね?」

 「そっ、とはいえ私もあんまり教えて上げれることはないんだよね。」

 「なんだよ。」

 

 ぬか喜びさせないでよ。こっちはせっかく出てきたのに。

 

 「まぁ聞きなさい。今度の試験に関する情報は各クラスごとに違う情報が与えられている。」

 

 !やっぱりそうだったのか、3組の子が試験のことを知らなかったのはそういうことか。逆に3組以外にはチームのことは開示されてない。


 「1組には1組だけに開示された情報がね。他にもいろんな情報があって、それらをすべて手にすると、この試験大分楽に進むよ。」

 「その情報を他クラスに漏らす問題は?」

 「それは個人の力量によるかな。」

 「有利に進めるには、自分たちは手に入れて、隠すか・・・」

 

 言葉にするのは簡単だが、実際はそうはいかないだろう。他のクラスにもこの考えに至った人がいればすでに動いてるはずだし、1つ何かしらの情報を得たのなら、一気にこの情報戦は加速する。早めに手を打たないとな。


 「サンキュー、助かった。」

 「まぁ、がんばんな。」 

 「ところでイブさん、天使の仕事って今どうしてるんですか?」

 「えっ、ああ、うんやってるよ、やってる。」


 絶対にやってないだろ。普段はそっちで忙しいと思ったのに違うんかい。普段何してんだこの人。

 イブさんと別れた僕は部屋に戻った。このことを早く二人にも伝えたかったからだ。


 「ただいまー。」


 あれ、静かだな。さっき僕が出てからそんなに時間は立ってないと思うけど。


 「ユウキ?リリィ?」


 返事がない。どこかへ出ているみたいだ。せっかく重要な情報を持ってきたというのにどこへ行ったんだあの二人は。

 5分ほどして二人が戻ってきた。どうやら飲み物を買いに行ってたらしい。


 「あ、帰ってたんだ。ごめんね、マサ君のもあるよ。」

 「紺野君はどこ行ってたの?」


 そこで僕はイブさんから得た情報を二人に話した。ただしあくまで、イブさんから聞いた事は内密にした。もしばれると厄介になりそうなのと、まだ、あの人の情報がどこまで正しいかがわかってないからだ。


 「なるほどね、各クラスで持ってる情報が違う、か。リリィはどう思う。」

 「私は難しいことはわかんないな。」 

 「マサ君はどう考えてる?」


 リリィのいうことがわからなくもないがもう少し考えようよ。


 「僕は、この情報はなるべく持ってたほうがいいと思う。但し、こちらの情報は開示せずにね。」

 「ええっなんで教えてあげないの?みんなで教えあったほうがいいのに?」

 「リリィ、落ち着いて。恐らくだが、このサバイバルが試験だとわかれば確実に混乱が起きる。ましてやその情報を持ってるのは僕たちだけだ。そんな情報安易に漏らすのはよくない。」

 「そうかな。」


 試験までの日数があるのが引っかかってたが最初は魔法の練習のためかとも思ったが違う。この試験に関する情報戦を行うためでもあると僕は考える。問題はそれがわかったところでどうするか。選択肢は2つ。

 1つは直接先生に聞く。もう一つは地道に他クラスに聞きに行く。どちらもリスクはある。先生だと教えてもらえないかもしれないし、他クラスなら嘘を教えられる可能性がある。どちらを取るか。


 「確か、この寮って会議室あったよね、学生用の。」

 「ああ、あるけどマサ君何するの?」

 「今夜みんなと相談しよう。」


 会議室は、一階の一番左奥にある。そこで、僕は今日得た情報についてどうするかの会議を開いた。そこで今の僕の考えと、可能性についてみんなに話した。

 てかよく集まってくれたな皆。


 「以上が今ある情報なんだがみんなはどう思う?」

 

 僕の質問にみんなが周りと相談する。初めにこれが試験であることを知っている人がほんとにいなかった。正確には一人いたんだが、あまり積極的な子ではないなと思った。


 「私は、教えたほうがいいと思う。」

 「私は、聞かれたら教えるかな。」


 等々様々な意見が出た。やはり明かす明かさないで意見が割れる。中々妥協点が見当たらないのがこういう面倒な議論のネックな部分だ。


 「因みに他のクラスから何か聞いてる人っている?」

 「あ、なんか危険生物がいるってのは聞いたよ。」

 「ほんとか?」


 「え、危険な生物がいるの?」


 蒼い顔をしたリリィが顔を引きつらせながら言った。

 危険生物っていうと魔物とかかな?こりゃ攻撃系の魔法を覚えんといかんな。


 「因みにどんな生き物がいるの?」

 「そうね、危険生物だから魔獣クラスもいるんじゃない?」


 魔獣クラスってなんだよ。ここの生物は魔物だけじゃないのかよ。魔獣クラスってどんなん?


 「それってかなりヤバいやつ?」

 「そこそこね、見かけたらすぐに逃げるのがお利口さんかな。」


 まじかよ、そんな危険地帯に行くのかよ。そんなとこにずぶの素人ぶっこんで大丈夫かよ。僕生きて帰れんのかな。


 「話がそれたね、みんなは情報どうするのがいいと思う?」


 んん~


 みんながうなる。やっぱりいきなりこんな話をしたところで結論なんて出せないよな。いきなりこんな話をしたのもまずかったかな。

 そこをリリィが無茶のことを言い出した。

 

 「ねーねみんな、私は紺野君のこと信用してるから、ここは紺野君に任せてみない。今後どうするか。」

 「え、ちょっそれはちょっと。」

 

 「そうね、元はといえばマサ君が言い出したことだし、ここはきちんとやってもらいましょう。」


 ユウキまで、今の二人の発言にクラスのみんなが納得してしまった。なんで今日あったばかりの男にそこまで信用を置けるんだよ。みんな怖いもの知らずにもほどがあるよ。


 「「じゃあ、紺野君あとよろしくね。」」


 そういうとみんな会議室を後にしていった。残ったのは僕とユウキのみ。リリィは、眠いと言ってとっとと部屋に帰って行った。薄情なやつめ。明日会ったらジュースでも奢ってもらおう。


 「はぁ、こうなったらやるしかないか。」

 「まあまあ、気にやまないの。私も手伝ってあげるから。」


 そういってユウキが僕の肩に手を置く。そんな可哀想な人を見る目で見ないで。

 クラスのみんなによって、今後の情報の扱いは僕に一任されることとなった。そのため、僕は情報を明かさない方針を取ってるが本当にそれでいいのかがわからないのが本音だ。一歩間違えば学年で大きな溝ができるかもしれない。

 でも、やるしかない。試験までにできるだけの情報を集めないとな。


 「ユウキ、頼みがあるんだ。」

 

 会議室から帰る祭、僕はユウキに1つ、頼みごとをした。

 翌日僕はある人の研究室に向かった。これが正解かはわからないがやらないよりかはましだろう。




次回、At6.得た情報の意味

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