At2.ようこそ「ネレラル」へ
うっ、眩しい。目を開けるとそこには広大な草原が広がっていた。どこまでも続く大きくて広大な草原が。ここは一体どこなんだろう。あたりを見回しても何にもない。ただ草原が永遠とのみ。そのど真ん中に立っている。なんでこんな辺鄙とこに落としたんだあの天使。
どすん。
「わっあなんだ?」
突然後ろから大きな音がした。そこには大きな荷物が落ちている。いま落ちてきたのか。危うく死ぬとこだった。
(ごめんなさーい。少しずれたみたい。)
うわなんだこれ、頭の中に声が響く。これが念話というやつか。てか、話しかけてくるの早すぎるだろ。
(なんだよ、びっくりさせんなよ。)
(あれ、紺野君さっきまでとはキャラが違くない?)
(あれは初対面の人にしかしないよ。それに、あんたはこの態度で十分だと判断した。)
(ひっどいなー。天使に向かって。)
その天使が、人のすぐ真後ろにこんな大きな荷物落とすなよ。
(聞こえてるよー。)
人の心のこえ聞くな。なんで、念話が盗聴に使われるんだよ。やめてほしいわ。
(わかったわよ。)
はいはいと、面倒くさがりながら返事をしてくる。
あんたもキャラ変わってんじゃねーか。
(それで、この大きな荷物は何なんだよ。)
(これは、この世界での君自身が身の振り方を決めるまでの暫定的な身分を保証するものがすべて入っているものよ。)
(え?何、僕の生き方に枠があるの?)
えーなにそれ。自由に生きられないってこと。普通異世界転生って言ったらもっと自由に生きるもんでしょ?なのに、暫定とはいえ決められてるのって。
(そうはいっても、紺野君、君アニメ好きでしょ?)
(ええまぁ。)
それとこれが一体何の関係があるというのさ。
(じゃ、質問。自由に放り出された異世界転生の物語の主人公たちはまず最初、何に困る?)
え?異世界に行った人が一番最初に困ること。そうだな、宿とか、当分の生活とかかな。
(ご明察。たいていの主人公は異世界に行くとみんながみんな宿とか、身の振り方に迷うでしょ?)
(でも、たいていは運よく誰かに拾われたりしてなんだかんだで何とかなりましたっていう風にはならないの?)
(世の中そんなに甘くないわよ。この世界ではそんなに都合の良いことは起きないわよ。余計な期待はしないことね。)
え~。そんなにうまくいかないの。なんか思い描いていた異世界生活はそう簡単にいかないんだな。せっかく異世界でのエンジョイライフを期待していたのに。
(それで、これから僕は一体どうすればいいの?)
(んっとね、まずはここから南に少し行ったところに街道があるから適当にネレラルという町に行く馬車に乗ってね。)
(ネレラル?)
なんとも言いづらい名前だな。その街の名前を付けた人はどんな人なんだ。今後みんなが使うんだから、こんな言いずらい名前にしなくてもいいのに。
(仕方ないでしょ、あきらめなさい。)
(そこで、僕はネレラルで一体何をすればいいの?)
(君は、まだ人生のほぼ全部を残してこっちに来ちゃったからね。せっかくなら、これからエンジョイ出来る筈だったことをやらせてあげようかなっと思ってね。君には、この国の魔法学校に通ってもらおうかな。)
(魔法学校?でも、僕魔法なんて使えないよ。)
学校か、確かに僕は高校に進学してすぐに死んだから、高校生活を満喫できなかったのは事実だからそれはありがたい。でも、魔法の学校なんて、言われても困るな。まずその魔法を一度も使ったことがないんだから。て言うか、さっきのクイズ、この魔法の問題も当てはまるのでは?たいていの異世界転生って魔法のある世界が殆どなんだから、魔法出来ない問題もあるんじゃないのか?最近は、転生しても魔法が最強なんてこともないし。
(うーん。君の魔法がどんなものかはそれこそ、学校で確かめたら良いんじゃないか?あそこは一流の学校だけど、でも皆初めての子が多いから一から学ぶには適しているかな。)
(そういうことなら、いいですけど。で、そこはどんなとこなんですか?)
(うーん、ひ・み・つ。)
なんとなく甘い声で言われた。何が待ってるんだろう。楽しみにするとしよう。
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南に向かって少しじゃねーのかよ?かれこれ一時間は歩いたぞ。いったいどこに街道があるんだよ。あのくそ天使、まさか嘘ついたんじゃないだろうな?
(失礼ね、嘘はついてないわよ。ほら、もう少しだから頑張れ。)
嘘つけー。どうせまだなんでしょ。本当にこんなところに街道なんてあんのか?
村正は疑いながら歩き続けることさらにもう十五分・・・
あった。やっと着いた。全然少しの距離じゃないじゃん。なんだかんだで、4km以上歩いたぞ。一体どんな感覚だとあれが、少しになるんだ?
(おかしいわね、上から見たらそうでもないのに。)
そっから見たらそう見えるわな。だって上と下では全然違うにきまってんでしょうが。くっそー、この天使まさか天然なのか?素なのか?この天使ほんとに大丈夫か?
街道に着いた。ここからどこに行けばいいんだ?
(こっから右へまっすぐに行くんだよ。そうすれば、時期に着く。)
(へいへい。わかりましたよ。)
あの天使ことイブに言われるままに動いている。こんなに僕に干渉してくるとは思わなかった。あの雲海の間での会話の流れからしたら、滅多に干渉しないような口ぶりだったのに。
(私が君にここまで干渉するのは単なる興味本位よ。)
だといいな。これ以上変な干渉されませんように。
後ろから、一台の馬車がやってきた。
(おっ、あの馬車に乗って。あれは、ネレラルに行くやつだからこれから自分が何処へ行くのか伝えれば多分、乗せてくれるはずだから。)
「あの、すみませーん。ちょっといいですかあー。」
「なんだい、兄ちゃん。」
「僕をネレラルという町まで乗せてってもらいたいんですけど、いいですか?」
「ああ、乗ってきな。運賃は、町までの俺の手伝い。いいか?」
「それでよければ喜んで。」
よかった、まだお金を持ってなかったから助かった。とりあえず、第一コンタクトは成功かな。
「ここから、ネレラルまでは、どのくらいですか?」
「ここからだと、大体三日ってところかな。」
そんなもんか、もっとかかるかと思っていたから。よかった。
それから三日間は、馬車のおじさんと一緒に街を目指した。この人は、商売で世界中を旅をしているらしい。なんでも、旅をすることで、いろんな人や物出会えるのが楽しいんだとか。いいなぁ。
「あ、僕、紺野村正って言います。短い間ですがよろしくお願いします。」
「おお、こっちこそよろしくな。俺はガゼルだ。ガゼル商業のオーナーだ。」
「オーナー自ら旅をするんですか?」
「遠くの街や国で珍しいものが見つかれば俺自ら見に行く。それが俺のポリシーなんでね。」
うわーかっけ。
「でもそれだと、ガゼルさんが留守にしている間は会社はどうしてるんですか?」
「うん、俺の嫁さんが店を仕切ってる。これが俺より回すのがうまくってな、向こうじゃ頭上がんねーよ。おまえさんも、女には気ー付つけなよ。」
わかるわー。女の人って、どうしてああも、見た目とは中身が違うんだろ。たとえば、見た目超いい感じなのに、中身があれな天使様とか。
(ちょっと、誰のこと言ってんのよ。)
(自覚あるんじゃん。)
ガゼルのおじさんに拾われてしばらく進むと小さな村が見えてきた。ここは、コロラ村と言って、僕の目指す、ネレラルは、この先にあるらしい。今日は、ここで軽く商売をしていくらしい。
「ここで、さっき仕入れたものの試し売りをすんだ。ここで、売れれば、向こうでもたいていはうまくいく。逆に不評だと、要検討ってことになって、俺が嫁さんに怒られる。」
「なんか、重要っすね。」
「ああ、重要だよ。だから、なるべく売らねーとな。おまえさんの働きぶり期待してるぜ。」
「な、なるべく頑張りまーす・・・。」
ここは、二つ返事にしておいた。今までのバイト経験ゼロ。接客なんてやったことがないからどうすればいいかわかんないしな。
「ガゼルさん、今から売る物ってどんな物なんですか?」
「今日売るのは、黒竜バゼルハイジャンの鱗。こいつは、厄除けの効果があって、畑なんかを荒らす、小さな魔物の対策になるらしい。北方ではすでに普及してるらしいが、この辺はまだあんまり流通してねーから、今ならまだ売れる。」
「なるほど。」
「そんじゃ、始めるぜ。おまえが稼いだ分は、お前の持ち分だから、しっかり稼げよ。」
「えっ、いいの?」
「ああ、だから頑張んなよ。」
(よかったじゃん。これで、小遣いが入れば少しは楽になるよ。)
(ん、そういえばさ、僕学校に通うって言ってたけど、学費なんてさすがに払えないよ。)
(そこは問題ない。私が工作したから。)
おい、そんなことしていいのかよ。ていうか、さっきから、僕に対して随分と甘くないか。他にもやることあるんじゃないのか?
(ま。細かいことは気にしない気にしない。)
さって、人生『二回目』でようやくか・・・。
初のバイト頑張りますか。
「さーさー見てってくださーい。あ、これですか、これはですね・・・」
三時間後・・・
「よー、よく頑張ったんじゃないか。たったの三時間でこんだけ売るとは村正、お前中々見込みあるじゃねーか。どうだ、うちで働くか?」
「うーん、今回は遠慮します。」
「そうか?ま、気が変わったら言ってくれや。」
(なんで、断ったの?)
(せっかくなんだから、スクールライフ楽しみたいもん。)
(あ、そうだ、私もそろそろ用事があるから今度こそ、本当にしばらくは念話できないから。)
(はーい。)
(寂しくて泣いちゃだめだよ。)
泣くか。子供じゃないんだから。これで少しは、静かになった。目的のネレラルまであと二日。ガゼルさんを手伝いながら行くとしますか。
「おーい、村正ー。」
「はーい。」
さらに、コロラ村を出て、二日。ようやく目的の町ネレラルに到着。そこは、異世界お約束、中世のヨーロッパ並みの街並みになっていて、道路の両サイドに露店が立ち並ぶ。しっかし、本当にこうなってるのか不思議だったけど、まさか本当だったとはね。
ガゼルさんとは、彼の店の前で別れた。『アンティークショップガゼル』それが店の名前だ。
あれ、アンティークなのかな?
さて、目的の場所を目指しますか。えっと僕の入学するのは、国立クレア学園。街のほぼ中心か。そして全寮制。よし、数年分の宿確保。えっと、入学予定者は、式の前には学園に入ることか。
「広い。」
思わず、そんなことが漏れてしまうくらいに広大な敷地である。どこへ行けばいいんだ。
「あの、すみません。今度入学する者なんですけど、どこへ行けばいいんですか?」
「あら、新入生?君、名前は?」
「えっと、紺野村正です。」
「え?君があの紺野君?へー意外と可愛い顔してんのね。君の行先ははあそこの塔の中よ。そこへ行けば担当の人が案内してくれるわ。」
「ありがとうございます。」
でも、なんで僕のこと知っているんだ?そんなことを不思議に思いながら、学園内の塔を目指した。えーと、塔ってここだよね。
「すみませーん。誰かいますか?」
「もしかして紺野君?」
「あ、はいそうですー。」
塔の上の方から声がした。すると、
「ちょっと待っててもらえるかなー。」
上から、声が響いてきた。しばらくすると、上から、ゆっくりと一人の男性が下りてきた。ここの生徒みたいだ。
「やあ、待たせてしまったね。それじゃ、話は上で。」
「はぁ、あの入学前の手続きだけじゃないんですか。」
「まぁね、ここに来たことを後悔しないでくれ。」
え?どゆこと。僕これからどうなるの?
村正は訳が分からないまま目の前に現れた男性に付いていく。年齢は20歳前後。
「紺野、と言う子が来たらここに案内するように学園中に指示が出ていてね。」
「え、何でです?」
「それは、この上に待つ人に直接聞いてほしい。」
益々不安が増す村正。連れられるまま階段を昇り、1つの部屋の前に着く。
「さ、ここだ、入ってくれ。」
「失礼します。」
「やあ、紺野村正君、待ってたよ。」
・・・・・
何を言えばいいのか全くわからない。目の前にいる筈のない人物がいる。
「学長、彼でいいんですよね?」
「ええ、ありがとうエレン。」
目の前にいるのは間違いなくイブだ。え?偶然?それとも本物?
「ふふ、三日ぶりかな。ようこそネレラルへ、そして、我がクレア学園へ。」
はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?
次回At3.こんなことあるかー