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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第8章 1年生冬の戦い
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At164.1人の想定外は1人の想定内

 村正とリリィが戦闘に入る直前、1組本陣では、ユウキによって、誰が何処に居るか正確に情報が収集されている。

 彼女は、攻撃組全員の位置を把握すると、地図と照らし合わせる。その上で、守備組に指示を出して行く。

 

 「みんなこれを見て。」


 ユウキに集められた、面々は地図を覗き込む。


 「これが、今前に居る攻撃担当それぞれの位置。」

 

 攻撃組は穴を作ることなく2組側へ進めている。その上で、2組が罠を仕掛けそうなポイントをチェックしたユウキ。攻撃組には、罠の事を伝えてない。それは、これからの作戦の為。

 ステージに存在する建物の高さなどを把握し、そこからどこに誰を配置するのが適切かを考える。


 「みんな、合宿後に伝えた魔法、使える?」


 ユウキは、ここに守備組を担うクラスメイト達に、ある魔法の習得を頼んでいた。レベルは初級も初級。魔法使用可能年齢に満たない子供が練習でも使える至って簡単な魔法。だが、その魔法は、ちょっと手を加えるだけで大きな威力と射撃性能を発揮する。

 ユウキは、初級魔法にする事で、少ない魔力で長距離から狙えることや、連発出来る事に目を付けた。

 ユウキに言われた方も、魔法自体はとても簡単なので、数分で物にした。みんな自信満々と、杖を振っている。


 「問題ないよ、ユウキ。私達を誰だと思ってんのよ。」

 「そうそう。あの先生にしごかれてるんだよ。この程度の魔法、どうってことないって。」


 自信満々上等。やる気満々大いに結構。これだけみんなが自身に満ちていれば、どうって事はない。

 ユウキは守備を預かるみんなに指示を出し、配置を伝えていく。


 「本陣であるここは私が預かるわ」

 「ひ、1人で大丈夫なの?」

 「ああ、問題ないわよ。ここが落ちても何もないし。」


 魔術祭に、旗を動かしてはならない、と言うルールがあればこんな真似は出来ない。来年以降、もしかしたら出来るかも知れない。


 「じゃあみんな、攻撃組の守りは任せたわよ。」

 「仮にこっちに2組が抜けたらどうするの?」 

 「そうなったら、全力で叩くわよ。ここへ来たことを後悔させてあげる。」


 ここは魔王の城か、と思わせるユウキの発言。

 その言葉が嘘にならないのが、ユウキの怖い所でもある。魔法と言う物を、恐らく1年生の中で最も追及してる人物だ。それは、村正でも及ばない程。

 ユウキがこの場所を1人で預かる事が出来るのは、イルミアの存在も大きい。2人が組めばもはや敵なしと言っても良いとさえ言わせるほど。

 

 「まあ、ユウキは最後の砦。そこまで行かせないよ。」

 「期待してるわよ。なんせ、みんなが必死になることで、これの意味がでるんだもの。」

 

 そう言ってユウキは地面に刺さってる旗を指さす。勿論、そこにあるのは偽物。偽物が偽物の役割りを果たすには、知ってる者が本物であると見せる必要がある。

 偽物だからと、適当な事をやれば簡単に見破られる。


 「もし、旗を使ってかく乱する必要が出たら連絡するわ。」

 「それでいいよ。状況こっちで判断するのも疲れるし。」

 「あっはは・・・。」


 周りに頼られ過ぎるのも、疲れるな。そう思った瞬間だった。

 守備担当が、狙撃担当へと変わり、その事をユウキはイルミアとリリィに伝える。他のクラスメイトには、あえて伏せる。


 「リリィとイルミアちょっと良い?」

 「私は、大丈夫だよ。」

 「ユウキ、戦闘始まった。」


 イルミアは問題ないが、タイミング悪く、リリィが2組との戦闘に入ってしまった。


 「どうする?」

 「う~ん。」


 今の状況について説明するだけなら、イルミアだけでも問題ないと判断する。


 「まあ、イルミアだけでも問題なさそうだし、このまま伝えるわ。」

 「分かった。」

 「2組も動きだした事だし、こっちも色々動いて行こうと思う。」

 「基本は崩してない?」

 「守り中心って部分では大元は崩れてないと思う。」


 あくまでも、守りの姿勢は崩さない。そのスタンスは守って作戦を練ったつもり。もし、それがずれてれば、イルミアに却下されかねない。

 

 「うん。分かった。これからどうすつもり?」

 「2組が丁度、半分の距離の所に罠を複数仕掛けてる可能性があるわ。」

 「うん。それは、昨日の段階で私達が考慮した点だし、予定通り、かな?」

 「まぁーね。」

 「みんなにはそのこと言ってないけど。」


 考え全部先出しすると、修正が困難になる。だから、あえて後出しにした。ユウキのこのやり方に、不満は無い。一番混乱が少ない方法でもある。

 構造に欠陥が見つかった時、それが後になればなるほど、事態は大きく、面倒になる。

 ユウキの考えを全体から見て、突かれそうな隙を探す。その隙が、用意された物なのか、それとも違うのか。その差を考えるのがイルミアの仕事でもある。

 今、イルミアはただじっとしてるのではない。ユウキから行動について聞き、それをシミュレートしている。そうすれば、ユウキにとって想定外でも、イルミアには想定内になる。

 

 「2組を操るには、ある程度のリスクは背負わないと、でしょ。」

 「あとで、みんなに何言われても知らないよ。」

 「その時は、思いっきり謝るわ。」


 それでも、きっとみんなはユウキを信じた事を後悔しないだろう。そう感じるイルミア。


 「とりあえず、今やろうとしてること教えて。」

 「今、マサ君リリィ以外のみんなの現在地を把握してるのよ。」

 「囮作戦?」

 「さっすがイルミア。話が早い。」


 今回の囮は、二重になってる。その2つ目が今回の作戦。囮の囮と言っても、前回に物とはまた違った形だ。

 攻撃組が2組の仕掛けた罠にかかる。そこへやって来た2組を撃破しようと言うのが、今回の作戦。


 「――つまり、出てきたところを、守備組のみんなが遠距離から撃つと。」

 「そっ。そうすれば、かなりの人数を減らせる。その分、相手陣地に攻めやすくなる。」

 「肝心なこっちの守りは?」

 「私が一手に引き受ける。」


 イルミアはユウキの提案を受け入れる。イルミアの心配する守りの部分も、最悪の場合蜥蜴のしっぽ切の要領でどうにか出来る。それに、ユウキの魔法のレパートリーなら、2組全員を相手に出来る。無傷とは言わないが。


 「もしも、大勢に囲まれたら素直に逃げること。」

 「そうならないように、やってもらうつもりよ。安心して。」

 「・・・。」


 イルミアは、若干の危機感を覚えた。この試合、もしかしたら1組もある程度人員が削られるかも知れないと。そうなった場合、かなりマズい事になることも分かっている。


 「ユウキ、念のため2組の動きには注視して。」

 「――分かった。」


 最後のイルミアの言葉が忠告のように聞こえた。その忠告は嘘にならない。そんな気がした。

 その直後に村正からも連絡が入る。


 「あっ、ユウキ。」

 「マサ君?」

 「今こっちで2組を2人倒したよ。」

 「了解。そのままリリィと2組の陣地へ向かって。」


 村正とリリィはそのまま前に進ませるのがベストと判断。2人の実力なら数人相手で、大袈裟な立ち回りすることなく対応できる。それに、こういう時は、村正よりもリリィの方が頼りになる。それも、合宿や昨日の試合で見ていて分かった。


 「あそうだ、ユウキ。」

 「うーん?」

 「2組の子と戦い終わった後なんだけどさ。」

 「うん。」

 「向こうも一筋縄じゃないかも。」


 イルミアの忠告は、現実味を帯びた。それだけだ。

 ユウキはみんなの居る位置を今一度地図で確認する。


 「マサ君達は、罠を避けながら2組本陣へ。その際、戦闘はなるべく避けて。」

 「はいはい。」

 「はいは一回。」

 

 村正との連絡を終えると、今一度ユウキは地図を見返す。

 

 「検証するには、ちょっとダメージが大きいなぁ。」

 

 もしも、自分達の戦力を2組側が削ごうとしてる場合、かなり面倒な事になると考えるユウキ。

 打てる手は打って損はない。少し早い気もするが、ユウキは守備組に指示を追加する。


 「守備組のみんなに連絡。2組がもしかしたらみんなの位置の割り出しを行うかも知れない。だから、罠にかかった攻撃組を見つけてもすぐに手を出さないで。」


 リスクを背負うよりも、現実的に。向こうが何を考えてるか分からない段階で、多くの事はすべきでない。少なくとも、2組はそういう相手だと判断する。

 判断1つとっても、すぐに切り替えが出来るのもユウキの長所。その場その場になる前に、状況を先読みし、多くの布石を並べ替える。

 少しして、攻撃組の後ろについた守備組から連絡が入る。


 「ユウキ、東側のルイスとリナが罠に捕まった。」

 「状況は?」

 「檻に囚われた感じ。魔法攻撃を受けたみたいだけど、防御魔法を即座に開いたから堪えてるよ。」

 「そのまま警戒を続けて。」


 罠にかかっても冷静なあたり流石だと言える。普通は、防御魔法を展開することを忘れがちになる。


 「ユウキ、中央部のアシュリカが罠に嵌ったみたい。それと、少し離れた場所を2組の子が1人通って行った。」

 「アンナ、その子、罠には気づいていた?」

 「多分、気づいてたと思うよ。」

 「りょーかい。」


 なるほど、向こうはそう動くのか。

 アーヤとユウキで駆け引きが続いている。全部を出させたいアーヤと、小出しを貫くユウキ。どちらが先に相手の土俵に乗っかるか。勝負はそこで決まると言ってもいいだろう。

 罠にかかった1組を無視して先へ進む。気付かないのと、無視するのは大きな違いだ。前者は単純にミスだが、後者は違う。明らかに人の意思が入っている。そして、それが出来るのは後ろで指示を出す人物。


 「けど、ここの状況までは分からないはず。まさか、この場所を守るのが私1人だと分かったら、どんんな顔するのかしらね。」


 自分の元へ進む2組への対策を始めながら、罠に捕まってるルイスとリナに指示を送る。


 「ルイスとリナ、聞こえる?」

 「聞こえるー。」

 「聞こえるよー。」


 まだ大丈夫そうだ。


 「今二人を後方からアテナが守ってる。もし2組が2人の元へ来ても暫くはそのまま待機で。」

 「もしも攻撃されたら?」

 「2人以上で来たら応戦。1人なら、アテナが攻撃する。」


 その二人の身の安全を預かるアテナに緊張の汗が流れる。どこから罠にかかった2人を襲いに来るのか不明。2人の傍まで出てくれば、今居る位置から狙撃の要領で攻撃可能。だがもし、相手が離れたところから攻撃を行った場合、見つけるのはほぼ無理だ。

 望遠魔法で2人の周辺を見て行く。周囲の建物から道まで。人が隠れられたり、狙えたりする場所を重点的に探して行く。2人の囚われた位置は、建物内から狙おうとした場合、確実に身を乗り出す必要がある。その状態になれば、確実に見つけられる。


 「――いた。」


 アテナの視界に、周囲を警戒しながらルイスとリナに近付く少女が1人。


 「ユウキ、居たよ。1人。」

 「1人?」

 「間違いないよ。2人を狙える建物に入って行った。」

 「狙撃か・・・。」

 「うん。身を乗り出したら狙えるよ。」


 ユウキに相手を攻撃する許可を取り付ける。ユウキもタイミングが合えば攻撃して良いと許可する。その後2人の罠を破壊する流れになった。

 魔法発動の準備を始めるアテナ。使用するのは初級魔法。ミスはない。


 「っ、あの距離から中級魔法!?」


 2人を攻撃しようとする2組の子が使用したのは、中級魔法。それも、それなりに離れた場所から的確に。驚いたアテナは、狙いを定め魔法を放つ。

 放たれた魔法は2組の少女目掛けて真っすぐ飛んで行く。当たれば確実に撃破出来るもの。


 「当たった。」


 廃墟がが舞台の為、魔法の衝撃で一瞬視界が悪くなる。視界が良くなるまで10秒と無かっただろう。


 「っ、いない!?」


 倒れて見えなくなった。そう言う類でない事は直ぐに分かる。


 「っぁ。」


 ガキーーン・・・。


 咄嗟に展開した防御魔法。その障壁には、鋭利な氷柱がぶつかっている。一体どこから。アテナ

は飛んで来たと思われる方向に目を向ける。


 ガキーーン。


 2発目の魔法が激突する。

 狙われてる。すぐに分かった。それと同時に、もう1つ分かった事もある。

 今が攻めのチャンスだと。



 

次回At165.勝負の時

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