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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第8章 1年生冬の戦い
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At161.動いて結果を出す

 「じゃあ、作戦を伝えるわね」

 

 予選が終わった日の夜。寮の会議室に集められた1年1組。レベッカと大まかな作戦を取り決め、まずはその中身を伝える。そこで、意見が出ればこの場で修正して最終決定を行う。

 その中で浮かび上がった物をユウキ達が伝えていく。


 「まず、今日の2組の試合なんだけどかなり動きが早い。」

 

 ユウキはみんなに配った資料を基に話して行く。


 「攻撃にかなりの人数を割いて、左右から攻め込んでるのが分かる?」


 ユウキの問いにみんな頷く。分かりやすく、資料には矢印が引かれてる。

 2組は攻撃を二手に分け、それぞれ左右から同時に攻撃を仕掛けることで、相手側の戦力も分散させた。そうすることで、大勢で突入する際のリスクを軽減した。

 

 「但し、この作戦が上手く行ってるのっは、ステージが森林だったってのもあるわ。」

 「ん、どういう事?」


 村正が手を挙げて質問する。


 「簡単に言うと、必要以上に回り込む必要が無いのよ。これだと。」

 「詳しく言うとね、市街地ステージだと、建物があるでしょ。」


 村正以下難しい表情を浮かべる1組面々。


 「簡単に言うとね、道がある。それは、道に沿って進むと言う絶対的な制約が生まれる。みんな、ここまでは分かる?」


 ユウキの説明に、イルミアが捕捉をして行く。村正だけじゃなく、他のみんなも、イルミアの説明に頷いていく。


 「反対に、森林ステージって、その気になればどこまでも直線上に進めるのも分かる?」


 イルミアは、会議室にあったボードに簡単は見取り図を描いていく。


 「んっと、森林ステージの場合、多少の起伏はあっても、こんな感じで・・・。」


 さらに、ボードの見取り図に、行動する際の動きを描き足していく。


 「行動班を複数に分けても、同時に開始することが出来る。でも、市街地ステージの場合、そうは行かない。この理由、分かる?」


 イルミアの質問に、首を横に振る子が多い。

 両方、合宿で経験してる1組。だが、森林ステージで行った摸擬戦では、あっさり負かされてしまったので、イメージが湧かない。市街地戦だと、今日2組の取った行動が出来ない理由。それは、進路が左右対称でない点だ。そして、狙った攻撃を確実に遂行出来るわけではない。それが、大きな特徴になる。


 「建物が規則的に並んでないって事?」

 「そうだね。碁盤の目状の街、もっと言うと左右対称の街はそうそうないからね。どこかで、必ずズレは生じるよ。」

 「なるほど。それでなのか。」


 市街地ステージのもう一つの特徴として、街の建物の配置が試合毎変化すると言う。森林ステージの時は、植物の配置や、地形の起伏の形状が変化する。

 街の形が変化する以上、事前に地形を考慮した作戦を練るのはかなり難しい。事前情報ゼロ、それが作戦の立案にかなり影響を与えている。


 「明日の作戦は、守り中心の作戦にするつもり。どうせ、2組もそうするだろうし。」

 「その根拠は?」

 

 村正がユウキに問う。その問いに、ユウキは指を立てながら説明する。

 

 「まず、第一に同じ手を使って来ない。第二に、私達を警戒してくれる。」


 一体どこに根拠があるのか?と聞きたくなる。

 でも、同じ手を何度も使わない、という考えは納得できる。今日の予選で2度、同じ手法で勝ったのであれば、もう使わないと思う。

 う~ん、でもなぁ。


 「・・・。」

 「マサ君何か気になるの?」


 考え込む村正に、ユウキは意見を求める。何かあるのであれば、ここで潰しておく必要がある。明日の作戦に関しては、あらゆる可能性を想定する。その全てをフォローできるほどユウキ達は完璧超人ではない。どこかに見落としがあっても不思議はない。


 「ユウキの言う、同じ手を使わないのは僕もそう思う。でも、こっちを警戒するとしたら、僕らが考える事は向こうも気付くんじゃない?」

 

 ユウキは、納得した様に頷く。


 「確かに、その可能性は捨ててないわよ。そこはしっかり考えてあるし。それは、後でしっかり伝える。」

 「分かった。」


 矛盾が生じた場所は対策を考える。気になった箇所もしっかり考える。自分達で気付いた場所は全てカバーする。それくらいは出来る。


 「みんなも、マサ君みたいに、何か腑に落ちない点があったら教えて欲しい。その方が、勝率は上がるから。」


 そして、ユウキが具体的な作戦について話し始める。


 「さっきも伝えたけど、明日、私達は守り主体の作戦を基本とするよ。」


 プランは大きく分けて2つ。2組が守りに入った時と、攻撃に入った時。1組は、向こうの動きに合わせる形を取ってる。


 「こっちから積極的にって、訳じゃないんだね。」

 「そう。最初はそれも考えたんだけど、今回はのんびりやろうと思ってね。」

 「のんびり?」


 短期決戦が必ずも良いとは限らない。1組が優位に動けるのは、時間がある程度経過してから。

 さっさと実力行使で相手を疲弊させるのも手の1つではあるが、それは、1組自身も同じ状況に追い込まれる危険性をはらんでいる。

 

 「私達は旗も狙うけど、ある程度2組の人員を減らそうと考えてるの。」

 「それは、文字通り各個撃破を狙ってるって事?」

 「うん。無理して旗を狙いに行ってもメリットは無いと思うから、だったら。」


 魔術祭の勝敗のルールの1つ、全員が戦闘不能になる事。このルールがあるのなら、使うのも手。

 この作戦を立てたのはイルミア。けど、実際に作戦を思いついたのはリリィ。遠距離魔法が得意で、守り主体の1組の力を活かすなら、この方法はどうかと。


 「それに、合宿でかなり効果のあった方法を活かせるし。」

 「囮作戦?」

 

 ユウキが頷く。


 「偽物の旗をあちこちに置いて、本物はどこかに隠す。」

 「偽物を狙って現れた2組の子を狙うと。」

 「そういうこと。」


 なるほど。確かに確実性は増す、か。

 でも、やってること暗殺者じゃん。陰からずっと獲物を狙って、現れたところをズドンとか。


 「マサ君、なにか不満でも?」

 「いえ、なんでもありません。」


 考えが一方的に伝わると言う、面倒な現象が度々訪れる村正とユウキ。この現象で迷惑を受けるのは村正だけだ。ユウキにしてみれば、村正が余計な事を考えていればすぐに分かるので便利だと思ってる。


 「でもさユウキ。」

 「どうした?」

 「そんなに上手く行く?」


 村正以外からも意見は上がった。

 上手く行く筈ないからこうして、みんなの意見を求めてると、ユウキは話す。何より、自分達1組はあらゆる幸運を味方に付けてきたと思ってるユウキ。

 そろそろ、貧乏クジ引いても、良い頃合いだ。


 「偽物を掴ます、この1点に関して言うのであれば、私は上手く行くと確信してる」

 「なんで?」

 「目の前に獲物が現れたら、普通に飛びつくのよ。こういう時程。」


 どれだけ警戒していても、目的の物が現れた時はその警戒が薄れる。それは、警戒を強めると言う意味でも同じだ。1つの事に意識を奪われると言う点で・・・。

 故にその隙は必ず生まれる。それは、単純に経験の差から来る物。


 「だから、私達も気は抜かないわよ。もしかしたら、向こう側も、こっちとは違った手段で崩しに来る事もあるんだからね。」


 最後にユウキの言葉でしめる。何が油断に繋がるか分からない。完璧に備えたと思う時ほど、思わぬところに隙は生まれる。その事を伝えることで、個々の意識を高める。



=================================================


 ――翌日。

 決勝戦のステージは予想通りの市街地ステージ。その詳細は、荒れ果てた、廃墟の集まりとの事。


 「市街地っていうより、遺跡だよねこれだと。」

 「そうね。でも、やる事は変わらないわよ。」


 1組の陣地として置かれた場所で話す村正とユウキ。

 試合が始まり、ユウキが指示出しに動く。与えられた地図を見ながらユウキは配置を指示して行く。


 「まず、攻撃組が周辺の警戒と、探索。」

 「りょーかい。」


 警戒は勿論だが、探索も求めたユウキ。こういう場所だ。平面上の地図だけかどうかも気になった。もしかしたら、隠れられそうな場所、それこそ地下に道でもあればそこも警戒したい。

 守備組の配置は最初から考えてあり、大きな変更が出来ない。その点、警戒要員に回した攻撃組なら、それも可能。


 「守備組は予め決めた通りの動きで。今回は攻撃よりも、守りが要だからね。」

 「うん!!」


 動きを確認すると、ユウキがみんなに、今回の作戦の肝になる物を渡して行く。


 「はい、これ。」


 それはユウキが作った偽物の旗。それを複数渡して行く。


 「数は多くないから使う時は慎重に。一番良いのは、中距離以上の魔法を放ったときか、相手から逃げる時。使う時は必ずみんなに共有すること。」

 

 みんなに旗を配った後、ユウキは1組の陣地にも、偽物の旗を刺した。つまり、もう本物はどこか別の場所にあるのだ。

 本物の場所を知ってるのは今回1人だけ。


 「本物はイルミアが持ってる。けど、イルミアが何処に居るかは、私も知らない。これで、本物の場所を悟られる心配もない。」

 「分かってたけど、よくやるよね。ユウキ。」

 「隠し事をするとき、人は自然と隠した場所を気にしちゃうのよ。万が一向こうに、生命分野の魔法に長けた子が居たらそれだけでピンチだからね。」


 イルミアの居場所は分からずとも、彼女とは常時連絡を取りあう。既に、隠れるのに適した場所があると報告も出ている。そこが何処かは勿論明かされない。

 決勝戦が始まって数分が経過するが、いまだに両者とも動きを見せていない。その状況は、この場に居ない人から見れば不思議な光景に見えるだろう。だが、今ここに居る学生達には狙い通りの状況。

 周辺探索に出ていた数名が戻ってくる。長時間うろつくのも、あまり良しとしないユウキ。でないと格好の的になる。


 「お帰りー。どうだった?」

 「多分、地下水みたいな移動に使える物は無いね。けど、隠れられそうなものは幾つかあったよ。」

 「後警戒した方が良いのがここかも。」

 「どこ?」


 ユウキは地図を広げて警戒ヵ所を訊ねる。そこは、何もない広場の様な場所だった。


 「何もないから、魔法は仕掛けやすいと思うんだけど、どう?」

 「この辺りはかなり開けてはいるのよね~。」

 「そうなんだよね。だから、何かしようとすると分かるとは思うんだけど・・・。」


 気をつけなくてはならないのは、遠距離からの魔法接地。攻撃魔法が遠距離から飛んで来るのは当たり前に警戒する。これが設置型の魔法となると、話しは変わってくる。

 普通、設置型の魔法は、使用者がその場で設置するのが一般的。個人競技である、夏や秋の魔術祭では良く使用される。


 「リリィとマサ君。どっちにしよっかな。」


 設置型の魔法を見つけたとして対処するのは変わらない。ただ、その後の行動に変化が生じる。


 「マサ君だと、解除に時間かかるし、リリィだと動けないのよね~。」

 「どうする?」

 

 一番良いのは感知系の魔法が含まれる波分野を得意とする人を使う事。最も得意とするのはリリィ。それは、昨日の試合でよくわかった。恐らく彼女なら設置された罠を魔法ごと破壊出来る。だが問題がある。

 仮に罠を見つけたとして、馬鹿正直に破壊・解除をして良いのか、と言う事だ。これが、単純な相手なら問題はない。だが、そうじゃなかったら。1組に勝つために、あらゆる手段を講じているよしたらどうだろうか。

 色々と策を考える中でユウキの中で1つの案が浮かんだ。


 「うん。取りあえず今は無視で良いわ。」

 「い、いいの?」

 「うん。何かあったらその時指示するわ。」


 その彼女のイタズラな笑みは、偶然にも誰の目にも入らなかった。


 「ユウキ!」

 「うん?」


 周囲の見回りに出ていた攻撃組数人が戻ってくる。


 「向こうが動きだしたかも知れない。」

 

 時間的にも、お互い我慢の限界が近づいてい来る。膠着状態を続けるなら、一度アクションを起こして様子を見るのも悪い手ではない。

 恐らく、まだ大胆な行動にまでは出てこないと予想を立てる。ユウキは少し考えてから、攻撃組全員を集めた。


 「さって、2組が動きだしたみたいなので、私達も動こうと思う。」

 「で、具体的にはどうするん?」

 「基本は事前に伝えた通り、向こうの動きに合わせる。あっちが交戦を仕掛けて来たら応戦して。反対に、戻ったらそのままで良いわ。」

 「深追いは無しって事だね。」

 「ええ。ただ、こちら側に引き込むのは有りよ。そこを私達守り組が狙うから。」


 つまり、僕たちは餌と言うわけか。

 いよいよ、囮作戦開始と言うわけですか。

 どこまでユウキが考えてるのか凄い気になる。さっきからずっと何かを考えてるから、聞かされた以上の何かがあるんだろうけどさ。


 「2組の子は、倒して行って良いんだよな?」

 「うんそれでいいわよ。どうせ、マサ君出て行ったらみんな寄ってくるでしょ。」

 「そうかな~。」

 「反対に、無視されたらそれで良い。そのままマサ君が本陣行っても良いと思ってるしね。」


 それだと、立案した作戦が成り立たないのでは?と思った。今回は、徐々に相手戦力を削いていくんだし。

 やっぱりまだ何か考えてるんだ。


 「どう動くかはリリィ、あんたに任せる。」

 「良いの?」

 「あんたが攻撃組束ねてんだから、それくらいはやって。」


 面倒くさい、そう言いながらも、すぐに行動指針を示す。

 

 「何人で動くかは皆に任せようと思う。」

 

 その理由を、他の誰かが問う前に、リリィ自身が説明を始めた。


 「決まった数で動くのはマズい。かと言ってみんなが単独で動くのも同じくらい不自然。最も自然に動くには・・・。」

 「決まった数で動かない方が良い。」


 村正がリリィの考えに辿り着く。村正の呟いた言葉にリリィも満足げ。


 「そっ。あ、使用する魔法はなるべく初級に留めて欲しいかな?」

 「理由を聞いても良い?」

 

 メンバーに聞かれて答える。


 「中級以上になると、魔法がどうしても派手になって、場所を特定されやすくなっちゃうからね。こっそり狙い撃ちするんなら、初級が一番なんだ。」


 付け加えるなら、発動までに一定時間を要する。その隙を狙われる可能性も捨てきれない。

 初級魔法であれば、発動に1秒も要らない。1組の実力ならその程度、朝飯前。今更初級魔法で時間を掛けているとなると、レベッカの雷が物理的に落ちてくる。


 「ユウキ、私も前に出て良いんだよね?」

 「ええ、構わないわ。何かあるようならその都度指示は送るわ。」

 「りょーかい。」


 リリィは持っていた杖を空中に向かって放る。その間に体の向きを2組の陣地に向ける。

 クルクルと回転しながら落ちて来た杖を手に取ると自分の後ろに控える攻撃組のみんなに声を掛ける。


 「じゃあみんな、作戦開始!」


 彼女の掛け声に従って一斉に散らばる。いよいよ、決勝戦が動きだす。


 

 

次回At162.罠の罠


もしかしたら次回のタイトル変更あるかもしれません。

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