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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第8章 1年生冬の戦い
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At160.PDCA

 冬の魔術祭、1年生予選日。1年1組は、第1試合の3組との試合に勝利すると、その勢いのまま4組との試合も勝利。明日へと繋げた。

 4組との試合は、一番最初に考えた形を崩さずに試合を行った。ユウキは後方で指示出しと守りを固め、リリィが前を率いる。完璧に統率された動きを見せた1組に、4組はその場その場の対処を迫られた。

 3組との試合を見ていた4組は、守りを重点的に固めた。その結果、目的である旗のすぐ傍まで1組の侵入を許してしまった。勿論、道中には無数に罠が仕掛けられている。しかし、罠など気休めでしかない。

 中距離~遠距離の魔法を遠慮なく使用する1組に翻弄され、抵抗が弱まったところを一斉攻撃された形だ。1組が離れた場所から攻撃をしたのは、リリィが疲れて動くのを拒否したから。そんな裏があったなど、4組は知らない。結果的に、上手く言った形だった。それでも、明日へ繋げられたことは大きい。

 3組と4組で作戦を変えたのにはしっかり理由がある。まず、同じ手を使わないのは当然としてもう1つ。明日への対策だ。もとより、優勝を狙ってる1レベッカは今日の予選は確認の意味合いを持たせた。


 予選終了後の1組の教室にて。


 「さて、貴様等。まずは予選お疲れ。」


 予選突破で上機嫌のレベッカ。口角が上がっているのが見て取れる。

 そんなレベッカ、教室に呼び出したのは、ユウキ、イルミア、リリィの3人。やっているのは、今日の反省会。


 「疲れましたよ。あんなに、神経を使ったの初めてですよ。」


 リリィが言っているのは、文字通りの言葉。3組との試合、石柱を飛び渡りながら、魔法を使用し、目標を見つける。体に掛かる負荷に耐えながら魔法を使用する。なんとも、馬鹿げた方法だ。だが、この方法を立案したのは、他でもないリリィ本人だ。

 明らかにメリットよりデメリットの方が大きい。博打要素満載の作戦で良く3組に勝てたと、感心するイルミアとユウキ。


 「自業自得でしょ。」

 「もっと労ってよ~。」


 軽くあしらうユウキにもたれ掛かるリリィを引き寄せるイルミア。リリィに回復魔法をかけ、明日も問題なく動けるように回復させる。リリィは、イルミアがそんな真意で回復してくれるとは露知らず、「ああ~」とだらしない声を上げる。

 レベッカが3人を教室に集めたのは、今日の反省と、明日の作戦会議の為だ。今日の予選、突破は出来ても、反省点がゼロだったわけでは無い。改善点を洗い出して、少しでも精度を高めようと言うのが、この反省会の目的。

 レベッカが直ぐに、改善点を列挙することも出来るが、それでは意味がない。成長を促すには、自分達に気付かせる。本当は、クラス全員で反省会を行いたかったが、時間の都合もあったので、中心の3人だけになった。


 「よっし、反省会兼明日の作戦会議はじめっぞ。」


 レベッカの声一つで空気の流れが変わる。萎んでいたリリィも、空気を入れられたみたいに、シャキッとする。

 

 「じゃあ、3組との試合から。まずは、良かった点から、適当に上げてみろ。」


 ボードの前に立つレベッカ。考える時間を与えるより、思いついたら出す。その方が効率が良いからだ。

 レベッカに言われ、思いついた事1つ1つ出して行く。

 

 「相手にミスリードさせられた。」

 「他は?」

 「本命の行動開始から、終わるまで早かった?」


 ユウキリリィが答えて行く。


 「全体の把握は出来てたと、思います。」

 「なるほど。」

 「後は、あれかな。その場で思いつた作戦が成功した。」

 「ヒュンゲルのそれは、一旦置いておこう。他は?」


 5分程で、ある程度だし尽くした。大きな評価点は相手の意表をつけたこと。リリィの即席作戦が功を奏した形になる。元々、自分達が合宿で食らった手を応用した。一度くらいなら通じる。

 イルミアの全体把握が出来たのも、3組戦勝利の鍵だった。イルミアの探索魔法で周辺を探る他、揺動部隊が、今どうなってるかも把握していた。イルミアの仕事は本来、そこに力を注ぐはずだった。


 「そうだな。3組が想像してない方法を採れたのは実にいい結果と言えるだろう。」


 レベッカも、この結果に文句はない。実際、これで勝てたのだ。

 但し、文句と、評価は別物だ。


 「それに、ネオラオティが状況把握を担う事で、素早い判断が下せる。他のメンツも、概ねやるべきことは出来たと言って良いだろうな。」


 与えられた役割をしっかり果たした。基本となる部分ではレベッカの気になる点は無い。基本が出来たら、その先だ。

 この3組戦は、試合の中で作戦変更が行われた。作戦変更で大事なのは、そこに割く時間だ。今回は、リリィの頭に浮かんでから、準備まで1分掛かって無い。それは、リリィの考えを瞬時にイルミアが理解した、と言う点が大きい。そしてすぐに、ユウキに判断を仰いだ。ここに時間を掛けなかったのが、勝利に繋がった要因の一つだ。

 

 「さて、じゃあ、次。思いが、反省点上げてみろ。」

 「リリィが作戦変更した。」

 「リリちゃんがいきなり作戦変更しだした。」


 レベッカを正面に、ユウキ、リリィ、イルミアの順に座ってる3人。

 レベッカの問いに、ユウキとイルミアは、リリィを指して即答する。


 「・・・あれ~。」


 あれ~、じゃねーよ!

 レベッカから飛ばされえる目は、そう言っていた。


 「他にはー?」

 「西側に回した部隊を少し、放置気味になった。」

 「一瞬とはいえ、守りが手薄になった。」


 ユウキは元から前に出ていた。他の部隊を気にするには、距離があった。イルミアも、守りの要とはいえ、リリィを相手側まで届ける準備と、村正の補佐があった。この辺りは、仕方ないと言える。それに、この2人の役割りは、十分変わりが利く。

 

 「囮役が上手く囮出来なかった。」

 「でも、それは、しょうがないと思うよ。向こうも、ユウキの事は警戒するし。」


 ユウキが作戦変更を了承したのは、3組がユウキと村正のペアに動きを見せなかったから。

 作戦変更時、村正はユウキがまた何か、考えてると思っていたが、実際はこの時、作戦変更については、イルミアと協議中でもあった。村正に直前まで伝えなかったのは、自分達が3組の誰かに監視されてる可能性を考慮して。少しでも、動きを自然なままにしたいと言う、ユウキの思惑があった。

 

 「ああ、西側に回した子達と上手く連絡取れなかったかも。」

 「出して終わりになったってことか。」

 「はい――。」


 西側に回したカロ達の部隊と連携が取れてれば、もし、リリィの突撃作戦が失敗しても、立て直しが聞いたかも知れないと、反省した。あの時の作戦は一発勝負だった。失敗した時の事は何も考えてなかった。それは、作戦とはあまり呼べない。

 あらかた、反省点が出たところで、振り返りだ。


 「まず、最大の反省点だが・・・。」


 レベッカの、言わなくても分かるな?と言う圧がリリィを襲う。レベッカからそっと視線を逸らすリリィ。その彼女の首をむりやり、イルミアがレベッカに向ける。


 「あだだだ。」 

 「ちゃんと前向く。」

 「はい。」


 グリッと言う、鳴ってはいけないような音が聞えたが、ユウキとレベッカはあえて無視した。


 「はい。私が勝手しました。すいません。」


 結果オーライ、と言うに訳には行かない。しっかり、そこは反省しなくてはいけない。そうで無ければ、事前に作戦を立てる意味がなくなってしまう。

 イルミアが探索魔法で周辺を探ってる間、リリィもまた別の方法で周辺を見ていた。その過程で、村正とユウキが様子見を行ってると分かった。


 「その割には、かなり肉付け早かったな。」


 リリィが西側に回した部隊とユウキ達の役割りを入れ替えると言う物。リリィが咄嗟に考えたのは、実際そこまで。その後の、石柱を飛び越えると言うのは、ユウキとイルミアの考えだ。

 西方にある程度人数を出す事で、実際3組を動かす事には成功した。


 「すぐに形にしないと、ただ人数を割いただけになってしまんで。さっさと作戦として成り立つようにしました。丁度、横にマサ君居たし。」

 「実際ユウキ一人だったら、私も許可しなかったよ。」

 

 イルミアがユウキに判断を仰ぐ段階で、具体的な作戦内容も決めた。石柱を移動する案を挙げたのはイルミア。ユウキは、議論してる時間が長いと、デメリットしかないと判断すると、彼女の案に乗った。


 「ふむ。良いだろう。では、即席で立てた作戦。何が一番危険だと思う?」


 レベッカの質問に頭を回す3人。即席だからこそ、ついて来る危険がある。それは何か?


 「1組が事前に作戦を立てる場合、起こりうるほぼ全てを念頭に置くだろ?」


 3人が首を縦に振る。


 「良いか?即席の場合、メリットのみを考え、デメリットは殆ど無視される。実際、そうだったんじゃないか?」


 レベッカの言う通りだ。あの作戦も、リリィが集中攻撃を受けた場合の対処を考えてない。その場でリリィが自分で対処するしかなかった。それは、動いている彼女を守るように攻撃を落すのは、かなり難しい。そもそも、あの状態のリリィに攻撃を当てられると言うのは、相当腕がたつと見て良い。


 「そうなると、仮に作戦が失敗し、一度元の状態に戻そうとしても、手遅れになる事が多い。そうなると、せっかく立てた他の作戦までパーだ。」


 両手を挙げてジェスチャーで示すレベッカ。

 リリィの機転は褒めつつも、まずは、他に出来ることはあったと話す。ユウキと村正の囮が失敗した時のこともしっかり、練られていた。


 「とはいえ、状況に応じて臨機応変に対応した、と言う点で今回の事は評価しよう。」


 レベッカ自身、彼女達があそこまでやってのけるとは思ってなかった。予想を上回る結果を出した事は素直に評価する。


 「3組は以上で良いだろう。次は4組戦だ。」


 4組戦は、3組戦と違い、形に則った戦法をとった。それは、元から決まってた事だ。


 「実際どうだ。決まった通りに動くのは?」


 レベッカが4組戦で気にしてるのはこの点。ある種、自由に動ける3組戦と違い、どんな状況でも、必ず、それに対する事が準備されている。

 これ、常に指示で動き回る攻撃組が大変そうに見えるが、最も大変なのはイルミア1人と言って良い。常に状況を把握し、それに対し、的確な作戦と指示を引っ張り出す。それは、事前に立てた作戦全てを頭に叩き込んでおく必要がある。


 「私達は結局後方の指示に従っただけで、何とも。中距離から遠距離で魔法放つだけだったし、そこまで負担は無かったよ。」


 リリィが率いていた攻撃組全員、特に、問題はない。離れた場所から、元気よく魔法を放った。


 「一応、守備組も問題なかったわよ。一応、形として幾つか行動はしたけど、大きな事は何も。」

 

 守りを見ていたユウキも同意見。


 「私は、ちょっと疲れるかな。」

 

 参謀として、攻撃組を見ながら、自分達の置かれた状況も確認する。そこから、最適な手段を選び、リリィに伝える。作戦を考えてる間も、周りに気を配らなくてはならない。ここは、少し、ユウキが引き受けた。

 ただ、イルミアとしては、もう1人、人手が欲しいと感じた。


 「見かけによらず、やってることは大きいもんね。」

 「でも、全体を通してってなら、やりやすかったよ。」


 完全に作戦を立てている方が、不測の事態と呼ばれる状況が少ない。それは、作戦を立てる段階で、俗に言う不測の事態も、ほぼ全て想定内に入るから。


 「なら、明日の試合。基本方針は、作戦通りで良いんだな?」

 

 レベッカの確認がかなり早い段階で訪れる。4組の戦の振り返りを殆どしていない。にも関わらず、この段階で次へ進む。その事に、誰も異論は唱えなかった。異論を唱える者が居なかったのは、自分達の力量を知ってるから。幾重もの事柄を処理できるほど、場慣れをしてるわけでは無い。なら、マニュアルとまでは言わずとも、それに準ずる物があった方が、ミスは小さく出来る。


 「では、これから作戦を立てよう。まずは、今日の2組の試合についてだ。」


 レベッカは、今日2組がどんな試合運びをしたのかを資料に纏めた物を手渡す。

 まず最初に気になるのは、試合時間。どちらも比較的短い事が目立つ。

 2組の特徴は、すぐに大勢で旗を取りに行くと言う事に特化してる。数名で守りを固め、残り全員で一気に駆け抜ける。魔法の使用も最低限に抑えられており、相手の目くらましが良い所。不要な行動が殆ど見られない。ある種、攻撃面だけ見れば1組以上と言える。

 反対に、防御はかなり手薄。攻撃を凌げれば、一気に崩せる。


 「2組が攻撃に割く人数と、私達が攻撃に割く人数では、相対した時難しいですね。」

 「そうだね。向こうから出向いてくれるのが分かってるんなら、待ってれば?」


 リリィの案が一番無難なところ。


 「それは、明日も2組が同じ事をやってくれるのが前提でしょ?」

 「うん。」

 「リリちゃん、今日失敗した事、あしたやる?」

 「やらない。」

 「でしょ。」

 「でも、それは失敗の時でしょ?」


 同じミスをしないのは、当たり前として、一度上手く行った手段を何度も使用するのが正しいとは限らない。これは、試合がパターン化しやすい魔術祭全体にも言える事だ。


 「明日の試合、高確率で市街地ステージになる。それも念頭に置いて作戦を立てるべきだろう。」

 「そうですね。ただ、私達のクラスの魔法からして、そっちの方が助かる。」

 「どういう事、ユウキ?」

 

 イルミアからの質問に、ユウキは1組のみんなが使う魔法の相性だと話す。


 「意外とこのクラス、魔法は遠距離系が得意な子多いのよ。そして、1組の戦法を、攻撃と守り。そのどちらかに振り分けるとしたら、守りになる。そうなると、森林ステージよりやりやすい。」

 「確かにそうだけど。他には?」

 「あとは、囮作戦の幅が広がる。」

 「と言う事は、あれをやるつもりでいる?」


 「勿論」と答えるユウキ。まだ、一度も使ってない手段があり、相手を翻弄させられるのなら、使わない理由が無い。何より、実績がある。リスク回避と言う点で言えば、右に出る物は無い。

 

 「でも、具体的にどうするの?」

 「そうね~。」


 腕を組みながら考えるユウキ。その隣に居るリリィが手を挙げる。


 「はい!」

 「はい、リリィ。」

 「こういうのはどうかな?」





次回At161.動いて結果を出す


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