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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第7章 専門分野の選択
153/165

At152.不自然な会談

今回何度か場面が切り替わるので、見づらかったら、申し訳ありません。

 中期期末試験期間に入ったクレア学園。1日に行われる試験は少数で、数日に分けて行われる。なので、1日、1日終わるのが早い。

 村正は、中学の時のテスト週間もこんな感じだったなと思いだしていた。


 「なんで実践の授業にペーパーテストがあるの?」


 前期から疑問だった魔法の実技科目の期末試験。何故か、技能ではだけではなく、ペーパーテストまで存在している。その疑問を持つのは村正だけではない。


 「分かるよ紺野君。私も同じ気持ち。」


 席が隣同士とあって、会話の多い村正とリリィ。実技科目にペーパーテストが無いと思ったら大間違いだ。技能だけでは判別できない知識もある。それが学園の言い分だ。

 昨夜、村正はユウキと、リリィはイルミアと、それぞれ試験勉強に励んだ。2人とも、完全に苦手、と言うわけでは無く、単純に面倒でやりたくないだけ。だが、成績に関わる以上、嘆いても居られない。

 本日の1限目に行われる実践授業のテスト。1組のみんなは今、昨日行われた試験対策講座のノートを見返している。

 昨日の試験終了後、ユウキとイルミアの2人による試験対策講座が1組にて開催された。学年の総合成績1位のユウキと5位のイルミア。前々から頼られることの多い2人が開いてくれたのだ。参加したのは1組以外に、話を聞きつけた他クラスの学生も居た程。そして、今日も明日の試験科目から1つ行われる予定。


 「2人とも昨日の夜も勉強したでしょ?」

 「頭に入ったかは別。」

 「もう・・・。」


 机にへばりつく様にして小さくなるリリィ。

 村正も昨日の講座に加え、夜はユウキとシロと試験勉強をしている。これで悪い結果を残せる訳が無い。もし、成績が悪いようなら、誰に何を言われるか分かったもんじゃない。今のところ、村正の成績は平均より少し上。主に、技能が足を引っ張っている。

 この中期になり、技能の授業で求められるレベルが少し上がった。それこそ、村正が苦手とする細かい作業だ。

 刻々と試験時間は迫って来る。


 「じゃあみんな、席ついて。」


 試験監督の先生がやって来た事により、タイムリミットになる。

 当たり前ではあるが、試験監督はレベッカとは限らない。それは、元の世界もこの世界も一緒。昨日はイブだった科目もある。

 試験監督の先生が、試験科目の説明を始め、諸注意を行っていく。


 「教室を試験モードに。」


 先生の一言で、教室が何かに包まれたように光が通る。これは、カンニング等の不正防止に使用される。魔法でのカンニングを主に防いでおり、他にも、魔法道具もこの状況では使用できない。

 例えばであるが、伝言魔法を使って、答えを言いあう、と言うのも、試験モードでは不可能だ。

 勿論、カンニングなど行えば謹慎処分になる。


 「それでは今から試験用紙を配布します。」


 なんと言おうが、この状況に来てしまえばもう後戻りは出来ない。あとはこれまで取り組んできた事を結果に残すだけ。

 暫しの静寂が周囲を包む。テスト前のこの静寂は、何年たっても慣れるものじゃない。変な緊張感が空間を占拠し、無用のプレッシャーが押し寄せる。

 時計をじっと見つめる先生。そして、


 「試験開始。」


 静かに試験開始を告げた。



=================================================



 ――この日の試験終了後。


 「マサ君。」

 

 期末試験は全て午前中で終る。なので、午後は各自試験勉強に宛がう。1年1組はこの後、ユウキとイルミアの試験対策講座。


 「うん?」

 「どうだった、今日の試験?」


 ユウキに今日の成果を問われる村正。幸い、昨日の試験勉強のおかげで結果は良好だと言える。


 「良く出来たと思う。」

 「なら良かった。」


 教室の窓際で話す村正とユウキ。今、教室には数名しか居ない。みんな、昼食に出ている。


 「すごいね、ユウキは。」

 「なにが?」

 「みんな残ってユウキやイルミアの講座に臨む。」


 ユウキやイルミアにメリットなんて無いんじゃないかって言ったら、2人ともそんなことないと返した。


 「だって、それで一番得するのは私達だし。」

 「1人じゃ無理だった?」

 「実際ね。私とイルミアで上手い具合に欠点がずれてるから、助かる。」


 学んだことを最大限に理解するには、誰かに教えるのが一番良いとされる。

 ただインプットするだけでなく、それをアウトプットすることで、ようやく内容を理解したと言えるのだ。ただ黙って授業の内容を聞いているだけでは実は殆ど理解出来てないとされている。しかし、学んだ内容を誰かに教えることで、内容の90%を理解出来るとも言われている。

 一説には、人に何かを教えるには、その人の3倍理解していないと駄目ともいうのだから。これなら、ユウキやイルミアが進んで講座を開くのも納得である。人に教えることで、自分が一番の試験勉強をしているのだから。


 「僕は誰かに教えるってのは、向かないかな~。」

 「マサ君の性格じゃ無理だね。」

 「っはっきり言うなー。」


 だけど、ユウキの言う通りだ。僕は教えるのが下手な部類だと思う。それは多分、きちんと理解出来てないから。

 人に教える努力も、そろそろ始めようかな。


 「マサ君も今日の私達の講座出るでしょ?」 

 「ああ、ごめん。」

 「来ないの?」


 少し驚いた表情を浮かべるユウキ。テスト前にこれ程有意義な時間が無いのは事実。だが、今日村正はどうしても行くべき場所があった。


 「どうしても外せない用事が出来ちゃって。」

 「試験期間なのに?」

 「それは僕も思ってる。」

 

 何か、やるせない様子の村正。村正とて、この試験期間中に、試験勉強の時間を削りたいわけではない。だが、それでも、断れない相手だった。その相手も、村正が今試験中だと言うのは重々承知している。


 「明日の科目、大丈夫?」

 「幸い、明日は魔法科目無いから、なんとか。」

 「成績下がって、レベッカ先生に何させられても知らないわよ。」


 それを言われるともう、何も出来ない。

 補習になれば、十中八九レベッカ先生は何か言ってくるだろう。特に魔法史。あれで補習になるとどうなるか。前期のリリィを知ってる身からすれば、なんとしても補習は避けたい。それでなくても、この冬休みは魔術祭を抱えていると言うのに。


 「ごめん。そろそろ行かなきゃ。」

 「戻って来るのは?」

 「夕方には戻ると思う。」

 「分かった。ご飯は?」 

 「戻って食べるよ。」


 この2人の会話を聞いて、この場に居た1組の全員が”夫婦”だと感じた。頑なに村正とユウキは否定するが、今の会話が全てを物語っていよう。

 村正を見送り、ユウキは午後の準備を始める。


 「ねえユウキ~。」 

 「うん?」

 「もう紺野君と結婚しちゃえば?」


 クラスの誰もが思っていることである。


 「誰があんな奴と。」

 

 やれやれと、首を振る1組の女子たち。この2人の事は、いつまでたっても分からないと思うばかりだ。


=================================================



 教室を出た村正は、一度寮に戻った。そこで、制服から私服に着替える。

 着替えた村正は一応勉強道具を持って寮を出る。そのまま街へと出た村正。目的の場所へと向かう。

 この日、村正を呼び出したのは他でもないイブだった。昨日のテスト終了後であった。久々にイブから念話での呼び出しが出たのだ。イブから念話を送られてくる事など、この数ヶ月無かったので、違和感が半端じゃなかった。

 村正は試験期間中だからと一度断ったが、イブが今日村正を呼んだのは、村正に用がある訳ではなく、シロの方だと言う。もっと言うと、シロがイブに予定の確保を取り付けたのだ。それも、学園の外、そして、なるべく人目につかない場所を。なんで、シロがそんな真似をしたのか、聞こうとしたが、ユウキと離れる機会が無かったので結局聞けずじまい。

 

 「隠れ家って。」


 揶揄っているのではない。店名がそうなのだ。

 どういうわけか、今朝机の中に入ってた地図を元に、目的の『隠れ家』を目指す。

 

 「え、この通り?」


 そこはネレラルでも有数の高級店が立ち並ぶ通り。学生の村正とは縁遠い場所だ。こんな場所を平日の昼間にで歩いていては変に目立つのではと思ってしまう程。

 少し歩いたところの路地を曲がった場所に、ひっそりとその『隠れ家』の入り口はあった。入り口には何も目印はなく、周囲のビルの裏口を思わせる。恐る恐る扉を開けると、下へ通じる階段がる。


 「ふう。」

 「え、シ、シロ!?」


 外でいきなり実体化するのはかなり珍しいシロ。だがすぐに分かった。本当にシロが今回の場を用意したんだと。

 

 「申し訳ありません。黙っていて。」

 「あ、うん。」

 

 しゅん、とした表情のシロ。この表情を見せるのはかなり久しぶりに思える。


 「どうしても、あの人と話したいことがありまして。」

 「学園じゃ駄目だったの?」

 「その、やっぱり人が多いので。」


 シロの言い分は分からなくもない。いつ誰が訪れるか分からない学園よりかは、確実性が高いだろう。

 シロは、村正を連れて行く様に階段を降りて行く。


 「お、来たわね。」

 「イブさん。もう来てたんですか?」

 「今日は試験監督の仕事無かったから、早めの昼食ついでにね。」


 そこは、とても落ち着いた喫茶店の様だ。御客は僕ら以外に誰も見当たらない。席はカウンターとテーブル。奥には、なんだろう、個室、かな?

 店員のおじいさんが静かに食器を拭いている。ドラマなんかに出て来る喫茶店みたいだ。


 「では、申し訳ありませんがお兄ちゃんはここでお待ち願えますか?」

 「え、僕は、待つの?」


 イブは奥の個室へと姿を消す。何故駄目なのかシロに訊ねると、彼女は、右手で服の裾を掴んで、左手を顔に持って来る。


 「その、女の子の事のお話しなので、その、お兄ちゃんには・・・。」


 顔を赤らめながら、恥ずかしそうに伝えるシロ。こんなシロを見るのは一体いつぶりか。

 久々に見た、シロのその表情につい返す言葉を失った村正。


 「うん。分かった。待ってる。」

 「その。ありがとうございます。」


 お互い赤面しながら黙ると言う、微妙な時間が流れる。

 

 「シロちゃ~ん。いらっしゃい。」

 「ひゃ、ひゃい。」


 ひゃい・・・。


 シロは慌てる様に個室へと姿を消す。その際シロは店員に軽くお辞儀をする。その店員は村正に軽く微笑み、カウンターに座るように促す。


 今のシロ、めっちゃ可愛かったんだけど。


 「どうぞ。」

 「ありがとうございます。」


 既に用意してあったのだろうか。水とおしぼりが流れる様に出て来た。それだけでは無い。


 「テスト勉強をなさるとか。ゆっくりして行くと言い。」

 「あ、ありがとうございます。」


 一体何の話をしているのか?

 水を一口飲んだ村正はシロが消えた個室の扉を眺めていた。



=================================================



 「お待たせいたしました。」


 シロの表情がガラリと変わる。


 「シロちゃん、女優の才能あるじゃないの?」

 「いえ。これでもかつて王に仕えた身です。」

 「ふ~ん。今の言葉、君のご主人様が聞いたらどう思うだろうね。」


 奥の部屋に居たのは、イブともう1人。こちらも、今日シロが呼んだ人物。その人物は先程の村正とのやり取りが、演技であったのを見抜いている。

 その人物に言われた言葉に、不用意に乗らない様、自分に冷静になるように言い聞かせる。

 

 「その事について、どうこう言われる覚えはありませんよ。リウンさん。」


 今、この場に居るのは、イブ・エレニアル、シロ、そしてリウンの3人だ。

 今日、この場にシロがこの2人を呼んだ理由は、確かめたいことがあったから。そして、今月がリウンがインディアルに来る月だから。


 「私達、お互い面識ないんだけど?」

 「私は知ってるけど。イブ・エレニアル。知らない名前ではない。ちょっと前まで、ルマニミに居た人物でもある。」


 あくまで初対面を貫こうとするイブとリウン。勿論、そんな話がシロに通じる訳がない。


 「それは無いですね。」

 「なぜそう言える?」

 「私に話しかける直前。御2人の間で僅かなやり取りがあったのを、私が見逃すとでも?」


 黙ってお互いを見つめるリウンとシロ。10秒程時間が経過したところでリウンが折れる。

 

 「参った。降参だ。シロちゃんの言う通り、私達は面識がある。」


 リウンが折れた事で、イブも肩の力を抜く。シロの前では、これ以上の隠し事は難しいと理解した。

 

 「シロちゃん、私と彼女を一緒に呼んだって事は。」

 「はい。件の闇の書についてです。」


 イブが言い終える前に、シロが本題を提示する。

 

 「その前に1つ聞いてもいいかしら?」

 「何でしょう?」

 「どうして私達に面識があると思ったの?」


 イブの質問に同じ言葉を乗せるリウン。ルマニミ王国滞在から今日に至るまで、2人ともお互いの存在を直接口にした事はない。だが、断片的な物は、リウンの方から得られた。


 「理由は複数ありますが、決定的になったのは2ヶ月前。リウンさんが私と話した時です。」


 2ヶ月前。その言葉に驚くのはイブだ。当然だ、自分が知らない間にリウンがインディアル王国に出入りした。本来なら、何が何でも、話し合いの場を設けたかった。だが、イブは彼女の存在を感知できなかった。それは、ある種、リウンの行動が成功した事になる。


 「あの時、リウンさん言いましたよね。あの女より恐ろしい存在に会うとはって。」

 「どうしてそれが、そいつだと?」

 「あの女。つまり、それを口にすると言う事は、私も面識のある人物に限定されます。その上で、私達がルマニミを離れた後で、リウンさんに接触可能な人物。それは、もうイブさんしかあり得ません。」


 だが、それだけではまだ、根拠には至らない。もっと直接的な何かがあるはずだと、リウンはシロに食いつく。


 「お2人の間でどこまでお話しが済んでいるか存じ上げません。ですので、今は・・・。」

 「全部済んでると思ってもらって良い。」


 即答で返すリウン。

 リウンの言葉にシロはイブに目を向ける。イブは黙って頷く。つまり、リウンの言う通りだ。


 「私達がフェアリさんと街を巡った時、一時的にシギーさんが私達を離れました。その前と後で、感じる魔力に違いがありました。そして、その欠落した魔力をその夜、リウンさんの店で感知しました。」


 あの日、シギーによって仕掛けられた盗聴・盗撮目的の石。実際は魔法道具だ。

 その説明を聞き、2人は精霊具のすごさを身で感じた。そして、これ以上は何言っても無理だと、改めて実感する。


 「わかった。シロちゃんの言通り、私達は見知った間柄だ。」

 「けど意外ね。」


 イブは1つ、分からない事があった。村正を除外したことだ。シロが村正に同席させなかったのは、イブにしてみれば、意外だった。

 反対に、リウンは過去2回のやり取りから納得している。シロが、この件に関しては、村正の事を全く信用して居ない事を。それどころか、シロ個人で動いている事も知っている。


 「もう、事前に私が知っておく必要があります。」

 「あいつは、この問題に関していば、完全に外野になったってことさ。」


 シロとリウンの言葉を聞いて、イブは部屋の扉に顔を向ける。今、店で待たされている村正に。

 そして、同時に、精霊具の存在を、自分は甘く見て居た事を反省する。


 「シロちゃん1つ確認させて。」

 「何でしょう。」

 「シロちゃんは紺野君の事、どう思ってるの?」


 一瞬空気が凍った。シロの目つきが険しくなり、冷たくなる。入ってはいけない、彼女の何か大事な部分に土足で入り込んだかも知れない。イブは一歩下がる。

 しかし直ぐにその表情は和らぐ。それだけ、シロが村正に抱く感情は、他人には理解出来ないのかも知れない。

 今回の事も、村正を危険から遠ざけるためなのか、それとも別か。


 「お兄ちゃんは私にとって、何よりも大切な存在です。」


 その仕草は、愛情よりももっと深い物に満ち溢れている。


 「そのお兄ちゃんをあえて危険に誘うと言うのであれば、私はそれを全力で阻止致します。」

 「彼が、自ら飛び込んだり、偶発的な時は?」

 「その時は全身全霊で支えるのみです。」


 シロの表情は間違いなく、喜びに溢れている。間違いなく、シロは村正の味方だ。村正だけの。紺野村正だけの、精霊具なのだ。

 イブの懸念はある種解かれた。と、同時に新たな懸念が生まれてしまった。シロは村正を絶対に傷つけない。傷つけることを許さない。その為なら、何でもするんじゃないかと。

 シロが、普段の村正と笑っている時のシロのままで居て欲しい。心の奥でそっと願うイブだった。



次回At153.女と少女と見た目幼女

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