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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第7章 専門分野の選択
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At149.生徒会選挙

 クレア学園生徒会。学園を代表する存在だけではなく、この学園に存在している、各委員会等の統括的存在でもある。その為、その仕事はどの役職も非常に多岐にわたる。これまでも、生徒会の仕事の量の多さは、学年を上がる度、代が変わるごとに学生に伝わっていく。その為か、生徒会の顔ぶれが綺麗に一新されることは、この10年程起きてない。

 毎回、抜ける5年生分の補充の意味合いが強い。後は、仕事のきつさを知った3年生が抜けるくらい。

 告知段階で、現在務めている生徒会のメンバーは、来期も継続することが分かっている。現在の3年生と、4年生はそれぞれ候補となっている役職での信任投票になっている。と言うのも、現生徒会のメンバーと誰もかぶらなかった。そもそも、いきなり会長職に就こうと考える学生は居ない。

 現在、信任になって居る役職は次の通り。


 会長:4年2組 ユリ・ホークランド(現副)

 副会長:4年1組 シューイ・フォウル(現副)

 会計:3年1組 アンジェ・ステン(現計)

 会計:3年1組 ルーシィ・オウリン(現計)

 会計:3年3組 スオミ・イングラム(現計)

 会計:3年4組 ミオ・ファントム(現計)


 そして、空席となった副会長1枠と、書記2枠は次の通りになった。 


 副会長:4年2組 サラ・アスキー(新推薦)

 書記:2年2組:ケルト・ローラン(新立候補)

 書記:2年4組:キャロル・ストラディル(新立候補)


 結果的に、全ての役職で被りがなく、信任投票になった。これも、また珍しい。毎年、2年生はもの見たさや、将来の事を考えて5人程が立候補してくる。

 なんだかんだ、みんな分かっている。生徒会は地獄だと。多少の恩恵はあれど、面倒事の方が大きいと。最も大きな恩恵は、学費だが、学費目当ての学生は居ない。生徒会になると、その仕事に割かれる時間が増え、学園生活の醍醐味が減る。

 学園の掲示板に張り出された、生徒会選挙のポスター前には多くの学生が集まっていた。


 「シューちゃんの裏切り者ーーーー。」


 掲示板の前で涙目で、副会長候補のシューイの肩を強く揺さぶる女子が居た。今回会長候補になった、いや、なってしまった、ユリ・ホークランド。

 生徒会選に興味があるのは、自然と3年生と4年生になる。なので掲示板に集まるのも、この2学年。1年生はまだ、生徒会の仕事についての知識は殆ど無い。また、直接関わることも滅多に無いので、興味が沸かない。

 

 「私も一緒に会長選争うって言ったよねーーー?」

 「アハハ・・・。」

 「どーすんのー。私会長なんて無理だよーーーー。」


 選挙告示前、当然の様に、ユリとシューイは会長候補として推薦された。もう、避けられない事だと分かっていた2人は、互いに選挙で争って、負けた方が副会長になると決めて居た。

 が、その後で、シューイが、ユリを生徒会長に確実に就かせるから、自分を副会長で推薦して欲しいと、頼み込んだのだ。担当の教員も、シューイであれば、それも可能だろうと判断し、彼女の申し出を承諾した。さらに根回しとして、エレン達5年生のメンバーにも話を通した。

 その結果が、今である。

 仮に、今この場で、ユリが辞退しても、エレンによって、指名されてしまう。結局、会長の座につくのは、もはや確定してしまった。

 ユリと、シューイを囲んでいる彼女等のクラスメイトは、やっぱりこうなったかと、みんな苦笑い。シューイがユリを生徒会に誘った時も、ユリはあまり乗り気じゃなかった。元々内気な性格だった彼女を少しでも、人と関わらせようと、シューがお節介をやいた。

 2人とも2年生の時に生徒会に入り、毎回生徒会メンバーとして活動していた。幸いな事に、ユリはなんだかんだで、生徒会に在籍し続けて居た。そして、今回、シューイの手によって会長候補にさせられたのだ。いくら人見知りが治ったと言っても、会長は荷が重すぎる。


 「だから言ったじゃない。」

 「ア、アスキー。」


 2人に声を掛けてきたのは、今回副会長候補に推薦された、サラ・アスキー。ユリのクラスメイトで、魔法学コースの4年生トップ。

 アスキーを副会長に誘ったのもシューイ。自分1人じゃほぼ確実にユリが辞退すると言いかねないので、しっかりとその出口を塞いだ。


 「ユリ1人が会長候補になったら、騒ぎ出すって。」

 「もう、言わないでよー。」


 自分の知らないところで、シューイが工作していたことを知り、目から光が消えていく。完全に逃げ道を奪われた。

 これだけのことをしても、誰も何も言わないのは、これまでの生徒会での仕事ぶりをきちんと見てきているから。

 この学園の生徒会は何も閉ざされた空間ではない。学生の意見はしっかりと聞き入れ、提言すべき物は、しっかりと、教師たちに提言する。各委員会等での予算の事でも、その理由を納得のいく形で提示できる。勿論、文句を言われることも多いが、それは致し方ない。

 そして、多くの学生が生徒会メンバーの顔触れに文句をつけないのは、学園長であるシギー直属の組織であると言う点が強い。生徒会メンバーの選挙には、最終的にシギーによる出馬の許可がいる。その許可を得られて時点で、シギーの信頼を得ている証拠になる。

 生徒会の顧問はシギーだが、選挙の担当は、選挙管理委員会の顧問になる。


 「サラちゃん知ってたら教えてよ~。」

 「言ったらあんた、降りるでしょ。」

 「当たり前だよ。」


 余程会長になるのが嫌なのか、その場にしゃがみ込むユリ。


 「期待してるわユリ。」

 「頑張ってね。」

 「ユリ先輩、私ユリ先輩ならやれるって信じてますから。」


 等々、周りから励ましの言葉を受けるが、当人の耳には殆ど届いていなかった。

 サラと別れたシューイとユリは、生徒会の会議の為、生徒会室へと向かう。ユリが掲示板の前で蹲っている間に、会議の開始時間は過ぎている。


 「すみません、遅くなりました。」


 シューイがユリの手を引きながら生徒会室へと駆け込む。


 「別に構わないよ。思ったより早かったね。」


 既に5分以上遅れたと言うのに、とてもそんな空気は流れていない。それどころか、他のメンバーはのんびりしている。

 エレンを始め、他のメンバーも、今日の会議の開始時刻が予定より遅れるのは想定していた。会長候補がユリ1人の時点で、彼女が何かしらシューイに文句を言うのは分かり切っていた。


 「まあ、今日の開始時刻は普段より30分遅らせているので、丁度良かったのではないでしょうか。」

 「僕としては、ユリ君が納得するまで待っても良かったんだけどね。」

 「そうしたら夜になりますよ?」

 

 セリスとエレンが息を切らしている、シューイとユリを眺め、3年生のメンバーは、5年生の腹黒さに驚いている。

 この5年生、もうやるだけやってそのまま逃げる気だと。


 「ねえ、ユリ君。」

  

 エレンに声を掛けられ、ゆっくり顔を上げるユリ。


 「そんなに会長は嫌かな?」


 これは嫌味では無く、純粋な質問。この1年、エレン自身が会長と言う役職をやって来た中で、彼なりに得る物は確かにあった。何より、会長だけが1人で頑張るわけではないのを、もっとも実感できた。

 

 「嫌と言うより、私には荷が重すぎます。」

 「僕は、君の事高く評価している。この2年、僕が君の働きを見て、感じて、来期の会長職に就いてもらいたいと考えて居るのだが。」


 しっかり評価をしてもらえたのは嬉しい。そこに嘘はない。だが、それで来期会長になるかと問われれば、話しは別だ。幾つも降りかかってくる仕事を、さばける自信はない。むしろ、自分はサポートに徹する方が向いている。

 一歩前に出てしまうと、途端に視界が狭くなってしまうのだ。それで周りに迷惑を掛けてしまうのは、嫌なのだ。


 「私、シューちゃんほど自信がある訳でもないですし、会長みたいにみんなを引っ張っていくなんてとても・・・。」

 「けどね、ユリ君。」

 「はい。」

 「ここに居る全員、次の会長は君しか居ないと思っているよ。」


 3年生が会長職の候補にならないのはともかくとして、シューイではなく、ユリを選ぶ理由がしっかりとあった。


 「シューイさんでは、不安しかありません。」

 「シューイだといざというとき、何しでかすか。」

 「ちょっと、先輩たちひどい。」


 セリスと、マリーから自分の欠点を指摘されるシューイ。ひどいと言いながらも、間違いじゃないから耳が痛い。おまけに、


 「シューイ先輩だと、遊んじゃいそうですね。」

 「ユリさんなら、みんなで支えれば大丈夫だと思います。」

 「ユリさん、気づかいできますし。」

 「普段から落ち着いていれば、文句ないんですけどね。」


 後輩にまで色々言われてしまう。つまり、これだけ2人のことをよく見ているのだ。だから見えてくるものがある。


 「確かに、ユリ君はサポートが向いてるかもしれない。それは、この僕が見てもよくわかる。」

 「じゃあ――。」

 「だがね、それはシューイ君に限ったことだ。」


 細かい気づかいなどは、生徒会内での活動を含めるが、ユリ個人が言う、サポート役が似合うというのは、シューイに対してのみなのだ。それ以外では、前に出て、周りを引っ張ることが多い。ただ、ユリ本人のその自覚がないだけ。

 エレンたちは、そうした面もしっかり見ているし、評価している。それは、シギーも同様だ。

 シューイとセットで活動することが多いユリ。大事な場面で上がりやすいシューイを落ち着かせるのは、ユリの役割。反対に、ユリがピンチの時はシューイが助ける。この2人は、一緒にいるほうが、お互いの良さを最大限に発揮できる。なら、あとは、どっちを前に出すか。そうなったとき、ユリの方が良いだろうという判断になったのだ。


 「会長1人に対して副会長2人。もし、シューイ君を会長にしてしまうと、どうしても、ユリ君の意見に偏ってしまう可能性もあるんだ。」

 「それは、私にも言えるのではないでしょうか?」


 エレンは一度うなずく。その考えがなかったわけではない。


 「確かに。君の言う通りだね。でも、ユリ君はそんな真似、しないだろ?」


 シューイとユリの関係性を理解してる5年生は、シューイがユリを会長にしようとしているのを知り、その方が良いと判断した。

 

 「全てをユリさんが1人で背負うわけでは無いわ。」

 「セリスの言う通りだよ。ユリ、何かあっても、周りが支えるから。」


 現副会長2人に、励まされても、すぐには腹を括れない。こればっかしは、どうしようもないのだから。

 いきなり任せたいと言われても、自分には荷が重いと分かっている。それなのに、周りの期待は大きい。


 「難しい事は考えなくて良いさ。この2年、生徒会の活動は見て来ただろ?」

 「はい。」

 「なら、いつも通り、時に忙しく、時にのんびりやれば良いさ。どうせ、文句言われるときは、言われるんだ。」


 避けて通れない、道は存在する。それは、ユリも、この2年で経験した。だからこそ分かる。次の代への期待も大きいと。

 今の代と同じような働きをしてくれると。他の委員会から、文句が飛んで来るのは、生徒会がしっかり仕事しているから。しっかりみて、聞いて、判断するから。出て来る意見は、どこも、しっかり、それぞれの事を考えているから。だから、話をしようとしてくる。期待してなければ、そもそも話をしようとは思わない。


 「どうしようもなくなれば、学長に泣きつけば良いわよ。」

 「セリス先輩・・・。」

 「ちゃんと手を指し伸ばしてくれる人だから。」


 学生だけでは無理な事は生まれてくる。そう言った時は、大人の手を借りればいいのだ。全てを学生だけで行う必要は、最初からない。


 「僕らだって、君らの見えないところで、先生方の手を借りてるんだ。」

 「そうなんですか?」

 「勿論、他の学生には見せないよ。」


 知らなかった。それが率直な感想だった。いつも、完璧に仕事をこなしている会長と副会長が、実は、隠れて先生の手を借りていたなんて。


 「あ、せっかく最後まで見栄張りたかったのに。」 

 「こらこら、マリー。」


 こうして、恥ずかしいところをさらけ出すのも、ユリの不安解消に役立つなら、それで良い。

 初めから何もかも完璧な人など、どこにも居ないのだから。ただ、見えないところで助けてもらってるだけ。それを隠すのは、ちょっとした見栄だ。


 「周りを引きつけられるのも、大事な能力の1つだ。それを発揮すれば良い。」


 ユリの目には、期待と言うより、一緒にやりたいと言う、シューイや3年生の目があった。

 ユリ1人を先頭に歩かせるのではなく、全員が並んで歩くことが目的なのだ。それを悟ったユリは、自信無さげに返事を返す。


 「自信ないですよ?」

 「その時は、シューイさんを酷使すれば良いわ。」

 「そうね、今回の事を仕組んだのも、彼女だし。」

 「シューイ君なら、君の為に必死になるさ。」

 

 一気に、シューイに負担が回った。そんな言い草だったと言う。


 「先輩達嘘でしょ。」

 「おや、ユリ君を祭り上げて終わりになるわけ、無いだろ?」


 会長と副会長の笑顔は、シューイに鋭く突き刺さった。


=================================================


 一週間後の、生徒会選挙、信任投票の為の演説会。不信任、なんて事は無いが、それぞれが、何を思って、次の学園を作り上げて行きたいのか。その事を伝える大事な日。

 立候補、推薦含め、副会長までの演説が終わり、残すは、会長候補のユリのみ。


 「もう、無理~。」

 「大丈夫。ユリちゃんなら。私がついてるもん。」


 耳打ちでユリを励ますシューイ。その声に、しっかり頷くユリ。

 ゆっくり深呼吸して、壇上に出る。視界には、1年生から5年生までの全学生に加え、教師全員が、ユリの声に耳を傾けている。これから、自分が耳を傾けなくてはならない人が、自分の声に耳を傾けようとしている。


 「生徒会、会長候補のユリ・ホークランドです。私は、これまで多くの学生が築き上げて来た、この学園を次の代へと引き継いでいきたいと考えています。私は、2年間、生徒会に所属してきた中で、色々な事を学んできました。その中で、生徒会の仕事ぶりを、多くの人達が見て居てくれている事を何度も知ることが出来ました。私達がしっかり、学園の為に仕事をしているからこそ、私達と話をしようと、多くの学生たちが、私達の元を訪れてくれました。私は、これからも、先輩たちが作ってくれた学生との信頼関係を守り抜くため、これまで以上に、生徒会メンバー全員で仕事に取り組んで行きます。私達生徒会の元には、日々多くの意見が届いています。その意見1つ1つにしっかり目を通しています。今後も、この取り組みを始め、私達に期待してくれる皆さんの声に応えられるように、精いっぱい努めてまいります。」


 お辞儀をして、壇上を後にするユリ。ステージ袖に入った瞬間、勢いよくシューイに飛びつく。


 「もう無理、もう無理、もう無理、もう無理ーーー。」

 「はいはい。お疲れ様です。次期会長さん。」

 「シューちゃんの意地悪!」




 ――翌日。

 昨日の演説を受け、各役職の信任投票の結果が張り出される。結果は、次の通り。


 会長:4年2組 ユリ・ホークランド

 副会長:4年1組 シューイ・フォウル

 副会長:4年2組 サラ・アスキー

 会計:3年1組 アンジェ・ステン

 会計:3年1組 ルーシィ・オウリン

 会計:3年3組 スオミ・イングラム

 会計:3年4組 ミオ・ファントム

 書記:2年2組 ケルト・ローラン

 書記:2年4組 キャロル・ストラディル


 この9名が第74代生徒会役員として就任する。



次回At150.体験授業、(魔法技術科・魔法史コース)



次期生徒会は第74代ですが、これは、学園誕生から生徒会が誕生するまではかなりの年月がかかっているからです。

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