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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第7章 専門分野の選択
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At147.体験授業、(魔法技術科・現代技術コース)

 秋の魔術祭が終わり、中期も後半に差し掛かる。何も無いと言うわけでは無いが、比較的穏やかな日々が続く。


 「ああああああ!!」


 1年1組に響き渡る1人の少女の悲鳴。リリィの物だ。

 

 「朝からどうしたのさ?」


 教室に入って来たとたんだ。既に来ていたクラスメイトは一斉にリリィに顔を向ける。

 村正が訊ねるとリリィは青冷めた表情で答える。


 「今日小テストじゃん!」


 いつもの事だと分かると、何事もなかったように戻っていく1組。もはや小テストの日にリリィが大騒ぎするのはお約束になって居る。

 教室の入り口で頭を抱えてしゃがむリリィを他所に、イルミアはさっさと自分の席に付く。


 「朝から大変ね~。」

 「2人ともおはよ。」


 村正とユウキが話しているところにイルミアがやって来る。この2人は、リリィの様に、騒ぐような事はない。小テストの前日は毎回イルミアがリリィに復讐をしてあげるのが、通例だったがどうも今回は違う様だ。


 「てか、昨日は復習やんなかったの?」

 

 イルミアは頷くと、


 「試しに黙ってみた。」


 これが普通の事なんだが、村正とユウキはえげつない事を、と思ってしまった。

 この調子で行けば、今期も何かしらの科目で補習コースまっしぐらのリリィ。幸いな事に、魔法史は彼女の得意分野。得意分野と言うわりに、ギリギリのラインを渡り歩いている。後1、2点足りなければアウトのラインだ。これで得意と呼べるのか些か疑問。

 

 「そろそろ自立させないと。」

 「親か、あんたは!」

 「イ゛ル゛ミ゛ィィィィィィ!!!」


 ユウキが突っ込むのと同時に、リリィがイルミアに抱き着く。それを華麗に躱し、地面に倒れ込むリリィ。その様子を見て居たクラス中から笑い声が聞える。

 今日は普通の科目の小テストなので、そこまで成績に大きく響くとは無い。


 「ほら、ホームルーム始めっからさっさと席付け~。」


 レベッカがやって来るとみんな一斉に動きだす。レベッカは朝が一番機嫌が悪くなると学習した。午後になるにつて、柔らかくなって行くので、みんな、面倒事を話すのは決まって午後。朝一で相談する命知らずは殆ど居ない。

 レベッカが連絡事項として、今日の午後の話をする。今日の午後一の講義で、このクラスは魔法技術科・現代技術コースの体験授業が設定されている。


 「貴様等、午後一移動教室だからな、遅れるなよ。」

 

 座学で説明しやすい魔法研究科と違い、現物を見て行く魔法技術科。その為の実習室も結構充実している。学年によって使える教室に差があるのもこの学園の特徴の1つ。

 現代技術コースは、学年が上がると、一回の講義に2、3時間使う事もザラ。因みに実習に使う教室は実習棟と呼ばれる場所にあるので移動に5分から10分掛かる。なので、5年生とかは慣れのせいか、遅刻が多いと言う噂もある。


 「んじゃ、解散。」


 現代魔法の技術、か。

 街中で色々と目にする事多いし、結構元の世界と似てるな~って思っても原理は魔法だったりするんだよな、この世界。良く出来てると言うか、都合が良いと言うか。でも、完全にご都合主義かと言われれば、変なところで違ってくる。

 この世界、なんとなく、()()()()()()()()気がする。



=================================================


 実習棟があるのは、学園敷地の入り口の近く。村正達が今回使用するのは1階教室。


 「さて、始めますか。」


 パンと手を叩いて場を改めるのが、今回の担当教員、タストリー先生。専門は基礎技術だそうだ。


 「基本的に、この現代技術コースは細かい作業が多い分野だと思う。この、細かい作業と言うのは、魔法云々ではなく、そのままだと受け取ってもらって構いません。」


 現代技術で扱うのは、現代、広く一般的に広まっている魔法道具や、魔法技術が中心。勿論、そこにどんな魔法が使われているのかを研究するのは、当たり前の事だが、実際に調べたりまた、組み立てたりする。組み立ての時は、道具を作ると言うのを実際に行うが、そこでは、魔法を殆ど使わない。せいぜい、最初と最後。これが基本的な形になる。

 これが、公共の場所で使われるような、大規模な道具とかになって来ると、システムとして、使える物にして行く。そう言うのを、これから学んでいくコースがこれだ。


 「今、皆さんが居る、この教室も、魔法技術で溢れています。」


 タストリーの言う通り、証明を始め、魔法時計その他色々。


 「後は、屋内で魔法の実習をする場所や、競技場なんかがそうですね。」


 それらの場所には防御魔法の発展形が使われている。


 「こんな感じで、今魔法と言うのは生活にとても密接です。特に、重要なのが、魔法を使えない人でも、しっかりとその恩恵を受けれると言うのが大きいでしょう。」


 魔法技術を魔法使い頼りにしないのが現代技術。かつては、魔法技術は魔法使いしか使えなかった。だが、それでは生活水準の全体的な底上げは難しい。そこで、考えられるよになったのが、魔法使い以外でもきちんと使える物。今は当たり前の技術がどの様にして考えられ、生まれ、そして動いているのか。

 魔法使いが使うのであれば、個々の魔力に反応させる様にしておけばいいが、全ての人、となればは話しは別。


 「魔法を使うにはごく少量魔力が必要になります。」


 魔法使いとしての素質を見出すには他の人よりも魔力量が多い事が条件になる。この魔力量が多いのは女性に多い。そのため、魔法使いの素質は女性にしか出ない。例外として、エレンや村正の様に男性でも高い素質を見出す者も居る。

 では、魔法使いでない人は、完全に魔力を保有していないのかとなると、実は違う。


 「ハレル学園の研究によれば、魔法を使えない人でも、ごく少量ですが、魔力を保有していると言う研究結果が出されています。これは、魔法学的に見ても、正しいと言えます。」

 「先生質問!」

 

 ユウキが手を挙げる。


 「魔法使いでない人が、魔法道具、技術を使えるようにすると言うことは、ごく少量の魔力を拾うんですよね?」

 「はい。その通りです。」

 「それは、普段私達が魔法を使うのとは何か違うんですか?」


 ユウキの質問に対し、タストリーは、明確な違いを示す。

 

 「分かりやすく言いますと、普段私達魔法使いが魔法を使う時は、魔力を出すと言う作業になります。一方で、魔法道具は吸い取ると言う作業になります。」


 魔力の量が少ないとされる魔法使いと一般人の魔力量では大きな差がある。つまり、魔法使いの中では少量の分類でも、そこに非魔法使いを入れると変わってくる。

 魔力を吸い取ると言うのは、生命魔法を用いて行われる。元々魔法道具には組み立て段階で殆ど魔力を付与してあるので、使用する時は一般人の魔力量でも事足りる。

 こんな事が出来る様になったのも、長い年月をかけて研究が行われてきた成果であると、タストリーが話す。


 「魔法道具は吸い取った魔力を起動回路と呼ばれる物に流します。皆さんが研究したり、学んだり、組み立てたりするのは、この起動回路の部分になります。」


 魔力を流す起動回路を無数に張り巡らせ、その仕組みを理解する。これを2年生でマスターする。出ないと、魔法道具の組み立てに進めない。


 「今日行うのは簡単な装置を扱います。」

  

 その装置と言うのは本当にシンプルなもの。回路を組み、そこに魔力を流し、明かりを点けると言うのも。照明器具の典型的な形だ。

 起動回路と言うのは、人の体内に存在している魔力回路を目に見える形に変えた物。魔力を通す器具を組み合わせて行き、完成させる。魔力を流すには、それぞれに生命分野の魔法を付与させる。学生が使用する器具には予め付与されている。その器具を作るのも今は魔法で自動化されている。


 「今回は形にせず、回路に注目してもらいます。まずは、資料を見てください。」


 配布された資料に目を通す学生たち。その資料には今回組む回路図が記されている。


 「では、各机ごとに用意した物を使って回路図通りに組み上げて見てください。」


 5班に分かれて回路を組んで行く。

 村正は回路図に記されている物と、用意された物を確認して行く。村正は中学で行った電気の実験を思いだした。回路を組むと言うのは口で言うと簡単で、回路図を見ると出来そうだが、これが意外と難しい。道具1つ向きが違うだけで全てが狂うのだから。

 村正の班は、彼以外にイルミア、カロ、ラウラ、クロエの5人。


 「各回路を繋ぐ導線と、魔力を変換させたりする機械、そして照明。」


 スイッチとなる物と照明を導線で結び、途中に魔力を増減させる装置を置く。これは、魔力の多い魔法使いが使えば、抵抗器の役割をし、魔力の少ない一般人が使えばブースターの役割を果たす便利グッズ。この抵抗器、向きがあり、間違えると簡単にショートする。念のためにヒューズの役割を果たす物があるが、ちょっと間違えると。


 「わあっ!?」


 リリィがやらかしたように簡単に飛ぶ。これもやりがちなミス。何回も失敗しながら成長していく。


 「そう言えば何で今回リリィちゃんと離れたの?」

 「ん?」


 カロがイルミアにリリィと違う班になった理由を訊ねる。


 「このバカ!」

 「あうっ。」


 ユウキに叩かれるリリィを見て笑いながら、


 「私と一緒だと真面目にやらないからってユウキが無理矢理引きはがした。」

 

 他4人、全員が納得する理由だった。因みに村正がイルミアと一緒なのは、ただの偶然。


 「回路が完成したらスイッチ入れて、結果を確認してくださいね。」


 それぞれの班で結果を確認し、問題なく照明が点いたを確認する。リリィがやらかしたところも、問題なく明かりが点いた。

 これがこの世界でのあらゆる技術の基礎になる。流通している物はもっと複雑な物。この回路も、もっと小さくコンパクトになっている。村正の元の世界で当てはめれば、ICチップレベル物がこれに当たる。


 「今皆さんに組んでもらった回路、これを極限まで小さくしたものが、袋に入ってるでしょ。」


 色々入ってる道具の中に、何に使うのかよくわからない物が、袋に入ってる。この小さなものが現代の魔力回路を集積した物。集積回路と呼ばれている。


 「この集積回路は、高度な魔法道具に使用されています。皆さんに一番密接なのは学生証ですね。」


 ん?学生証?


 「この学生証にはこの集積回路が埋め込まれています。これが、寮の部屋の鍵として使える理由です。」


 ああ、この学生証ICカードになってるのか。

 魔法で何とかなってると思ったら、割と現実的だった。いや、魔法でなんとかしてるんだけど。


 「4年生になると、この集積回路を使って色々な実験等も行います。魔法研究科との最大の違いは、実験内容の違いですね。魔法そのものを実験するのが研究科。魔法を使った道具を実験するのが技術科です。」


 トライ&エラーを繰り返しながら、1つの道具を完成させる。この実験棟には先輩たちが作って残した物が資料用に残されている。

 色々残されているが特に目を引くのが、周囲を暗くすると言う物。一体何のためにこれを作ろうとしたのか、謎。味方によってはガラクタ扱いされるような物で溢れている。基本的に卒業するまでに持ち帰るのだが、置いて行くと言うことは、作った当人も邪魔だったのだろう。


 「ここまで駆け足でやってきました。何か質問ある人。」

 「はい。」

 

 手を挙げたのは村正。


 「魔法道具って、全てに回路が存在するんですか?」

 「現代の物には全て存在しています。ですが、過去の物は一部例外が存在します。」

 「それは、やっぱり技術が無かったからですか?」

 「・・・そうですね。一般人が使える様な道具はかつてはありませんでした。それは、回路が無かった。つまり、魔法使いしか使えない物には基本的に回路は必要ありません。」


 村正の質問は、普通の質問に聞こえる。だが、彼の質問の裏側を理解出来るのは3人だけ。

 村正が今の質問をしたのは、今手元にある物が、魔法道具の1つであるから。可能性はゼロに近いが、もし、一般人が使用できるとしたらそれは、候補が増えることを意味する。

 時代的背景を考えても、精霊具などを一般人が使える可能性は消えたと言って良い。


 「現代魔法道具の中には、魔法使い専用の物があります。それらは、主に魔法開発に使用される物になります。それこそ、魔力を自ら注いで使用するものです。」


 魔法使い専用の道具は、昔からの方式の方が何かと都合が良い。専門道具は、蓋を開けると、もう見たくないと思う程複雑なので、そういうのが好きなら面白いとタストリーが話した。

 タストリーは主に、この分野を得意としている。一番複雑怪奇な物に触れている時が、一番魔法使いやってると感じられるそうだ。この彼女の意見は、1年生にはまだ早かった様だ。

 1人興奮していたタストリーは咳払いをして、質疑応答を再開する。


 「この回路図って読めなきゃ駄目なんですか?」

 「このコースで学ぶのであれば必須能力になります。また、既に完成されている回路を、回路図に書き写すと言う作業もありますよ。」


 それを聞いた学生から、嫌そうな声が漏れ出る。それは村正とて例外ではない。今回のはとても簡単だったが、これがどんどん複雑になって来ると思うと、ちょっと考える。

 例として、タストリーが4年生の授業で使う回路図を見せる。


 「なに、これ・・・。」


 めちゃくちゃ複雑に組まれた何かの回路図が黒板に張り出された。そこには、魔力回路が何重にも張り巡らされ、途中にいくつもの器具を挟んでいる。これを見ながら回路を実際に組んで道具を作る。

 だから覚える事が多い。通常の魔法に加え、この魔法道具関係の授業で扱う、器具の名前まで覚えなくてはならない。おまけに、毎回レポートがある。


 「各期の期末試験では、実験で使用した回路図を見て、問題文中に記述された回路図を見て、どこに問題があるかを見極めてもらいますよ?」


 難しい事が多い分、魔法自体の考え方も変えられる。

 冬の魔術祭では、技術科の学生が、学んだ内容を生かして、色々な道具を引っ張り出してくるのが通例。その中に歴史を混ぜたのが技術科の魔法史コース。だから、冬の魔術祭は魔法技術科・魔法史コースが強い。

 魔法使いが、己の力だけで出来ることは限界があることをある意味、最初に知れる。

 だから次々と道具を生み出そうと考える。もうちょっと便利にならないかな~。この考えがヒントになる。そのヒントを忘れなければ、この世界でやっていけるかも知れないとタストリーはいう。保障はしかねると最後に言い残す。

 

 「さて、今日はこれでおしまいです。皆さんがもしも、生活の中の技術に興味を持って、もっと知りたいなって思ったら、このコースに入ってください。」




次回At148.二者面談

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