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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第7章 専門分野の選択
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At144.秋の魔術祭Ⅸ

 この状況を打開するには、この環境を上手く利用する以外に他ないでしょう。

 しかし、通常攻撃と言うのも味気ないですし、何より、アリスさんであれば、簡単に防がれてしまうでしょうね。

 

 アリスの魔法によって生み出されたこの環境の中で、セリス・リングはいかにアリスよりも優位に立つかを考えていく。この間にアリスが仕掛けて来ないのを見ると、自分を警戒しているのが伺える。ならば、それに答えるのみ。あまり思考に時間を割くと、アリスが行動に出てしまう。それは避けなくてはならない。せっかく与えられた時間。有効活用するのは基本としてもそこに、制限があるのを忘れてはならない。

 複数の事を同時に処理して行くのも魔法使いの重要な才能。魔法を複数同時に使用すると言う基本があるが、それは思考でも同じ事。

 考えた結果、セリスは1つの策を思い浮かべる。それは、生徒会副会長としての顔しか知らない後輩達が見たら驚くような魔法かも知れない。


 「呪われた分野とはよく言った物ですよ、本当に。」


 生かすも殺すも自分次第。そんな分野が基礎になっている魔法が存在する。生命だ。

 魔法戦闘、と言う側面で見れば、この分野程恐ろしい分野は無いのかも知れない。かつて、魔法がどんあ使われ方をして来たのかを見てば、明白だ。

 

 「人の考える事と言うのはつくづく残酷ですわね。」


 セリスがアリスに杖を向けると、アリスも防御の体勢に入る。だが、防御魔法は展開していない。防御魔法など、必要ない事を証明しようと言うのだ。

 魔法攻撃は防御魔法で防ぐ。それは基礎中の基礎。下級生がやる様な内容。最上級生ともなれば、もっと他の手段を用いなくてはならない。そういう人も中には居るのだ。そんな人たちも見に来ている以上、しっかりと見せなくてはならない。クレア学園の学生のレベルの高さを。


 せっかくです。高難度の方を使いましょう。


 「生きとし生けるものに宿りしもの・其ありて命あり・消えゆく者を再燃し・暖かきを暑くし・命の火を業火に誘え」


 呪文名:高熱

 本来は極地で凍傷や凍死を防ぐ目的で用いる緊急用の魔法。セリスはこの魔法をちょっとアレンジし、既に上昇しつつある体温をさらに急上昇させることに用いた。

 詠唱や呪文名だけを聞けば、熱分野に思われがちだが実際は人の身体に作用させているので生命分野が基本となる魔法。

 詠唱を聞いていたアリスは、何かしらの攻撃系の魔法が来ると予測を立てていた。だが、詠唱が終わっても、何も飛んでこない事に違和感を覚える。

 何故、アリスが直ぐにセリスの魔法に気付かないのか。それは、今ある環境が影響していた。

 既に高温になってる試合会場。気温で言えば40度近くまで上昇している。その暑さのせいで、本来であれば高熱に相当する体温の変化に気づいていない。そして、異変は直ぐに訪れることになる。


 「っえ?」


 突然、アリスの視界が歪み始める。

 視界が大きく歪み、あたりがぼやけ始める。アリスは、何か、視覚や三半規管に影響を及ぼす魔法、若しくは精神系の魔法を疑う。だが、激しい頭痛に(さいな)まれ思考が遅れる。

 意識が遠のこうとしているのが分かる。瞼が重い。必死に意識を保とうとするが、体がバランスを崩し、倒れ込んでしまう。

 倒れたアリスはそのまま意識を失ってしまい、その状態がそのままダメージとして計上され、気絶してしまった事で、敗北が決まった。

 この結果、秋の魔術祭優勝者は、生徒会副会長のセリス・リングとなった。


 「私も限界ですわよ。」


 ギリギリの状態で立っていたセリスも試合終了と同時にその場に座り込む。高温の中に長時間居ると言うのはあまりに危険だった。

 最後の最後までひっくり返されていった今年の秋の魔術祭。セリスが最後に使った魔法は、後輩たちに驚きを与えた。普段の彼女からは想像出来ないような、魔法だったからだ。だが、セリスが最も得意とするのは、生命分野の魔法である。普段の彼女は、表だって人に危害を与える様な魔法は使用しない。これは、セリスが、と言うよりも、生命分野の道に進んで行く人全般に言える事かも知れない。


 「直接的な魔法を使う勇気はまだ、出ないですね。」


 こうして、7日間に掛けて行われた秋の魔術祭も終わりを迎えたのだった。


=================================================


 ピッ。


 図書館で試合の様子を見て居たユウキは自分がこの試合が行われている間に書き留めたノートを見返す。そこには、自分でも解読不能な文字が所々に見受けられ、思わず苦笑いを浮かべる。

 ノートの最後の部分には、”人を知る”と書かれていた。そんなことを書いたのかと、本人が一番驚いていた。何故、自分が無意識のうちにそんなことを書いたのか分からないユウキ。自分で書いた”人を知る”と言うのが一体何を意味しているのか、自問自答を繰り返して行く。

 10分考えても自分がその時何を考えていたのか思いだせないユウキ。今は思いだせなくとも、自分がしっかりと、この決勝戦しっかりと見れていて、得られるものがあったんだと分かると、ホッとした気持ちになる。

 ユウキ自身がこれから先魔法を追究して行く上で、アリスの考え方、アリスの使う魔法を注視していたが、他の先輩はどうなんだと言われたらアリス程では無かった。だから、この決勝戦も、しっかりとセリスにも目を配り、最後にはセリスの魔法に関する何かを記述していた。それは、ただ観戦しているだけでは絶対に出来なかったこと。

 なんとしても、自分の手でつかまなければならな物があるユウキ。時間に余裕がある間に出来る限りのした準備はしておきたい。

 

 「これ借りる時の条件で今日のレポートを後日出すように言われたけど、何書いてるか分かんないとこ思ったより多いわね。」


 シギーに小型モニターを借りる時、ただでは貸してくれなかった。ユウキには課題として、今日の試合で感じた事や気付いた事、これから自分がどう生かすかを1週間を目途にレポートで出すように言われたのだ。

 ただ見てるだけでは先へ進む事は出来ない。何かをメモするのは大前提だが、そのあと、しっかりと自分なりにまとめて、他人に見てもらうとこが大事だとシギーに言われたのだ。

 最初は、このノートをそのまま提出しようかとも考えたが、これを提出するのは気が引けた。


 「今回の後夜祭は、御預けかな~。」


 魔術祭決勝戦の夜に行われる後夜祭。この1週間を締めくくるネレラルのお祭り。後夜祭の中身は夏の時と殆ど変わらない。教師たちが出店を出したりして、訪れる街の人達や学生を相手する。



=================================================


 決勝戦が終わり、会場では、表彰式が行われた。優勝者のセリスには、会場から大きな拍手が送られる。

 表彰式の後は、夏の魔術祭の時と同様教師1人とのエキシビションが行われる。今回出てきたのは学園長であるシギー。普段、シギーが魔法を使ってるところを見れることは学園生活の中では殆ど見る事が出来ない。この貴重な機会を見逃すまいと多くの人が競技場に押し掛ける。

 因みに、競技場のフィールドの端で、イブが何か騒いでいた。どうやら、今回のエキシビションもイブが出ようとしたが、彼女が出てしまうと、一瞬で終ってしまいエキシビションがの意味がないからと、シギーの命令で却下になったのだ。その事に納得のいかないイブがシギーにむかって罵詈雑言を浴びせている。しまいには・・・。


 「シギーちゃんは、この1ヶ月で体重が3キッ・・・。」


 ドッカーン!!とイブの足下が大爆発を起こす。突然の爆発に周囲が唖然としている中で、シギーは笑顔を浮かべならイブの元へと向かう。


 「私の体重が、何?」

 

 イブい不気味な笑顔を近づけるシギー。


 「一体どれだけ私に恥をかかせたら気が済むのかしら?」

 

 喉元につきつけられた杖から今にも魔法が放たれようとしている。

 あのシギーが怒るとここまで怖いのかと、普段は見せないシギーの表情を見て驚いてる学生たち。そんな学生の中でも彼だけは違った。


 「イブさん、馬鹿なの?」


 苦笑いを浮かべながらイブとシギーの方を見てる村正。彼の隣に立ってるユーリはシギーが怒るところを始めて見た様子。

  

 「紺野君は、学長が怒ったところ見たことあるの?」

 「うん。」

 「ふ~ん。」


 まさか自分も怒られた1人とは口が裂けても言えない。

 イブが頭を下げ、シギーはセリスとエキシビションを行う為にフィールドに戻る。しかし、イブはまだあきらめてなかった。最後の最後で、声を大きくする拡声魔法で、シギーの恥ずかしい秘密を暴露した。


 「シギーちゃんは胸を盛ってま―――――――す!!」


空気を震わす、そんな風にも思わせるイブの大声。その声は、学園の外にまで響いたとか。


 「そ、そうなんだ――。」


 大勢の、それも外部の人も訪れている魔術祭の場で暴露されたシギーの秘密。当然、場は静まり返る。多くの女子生徒は顔を赤らめている。当然、それでは済まない人達も居る。それは仕方ない。だが、仕方ないで済ませられる訳もなく。

 イブには、問答無用でシギーが雷を最大で落す。威力を全く調整していないので、イブは気絶。


 「レベッカ!」

 「は、はい。」


 突然名指しで呼ばれたレベッカは、慌ててシギーの元へ駆け寄る。キョトンとした表情のレベッカも中々珍しい。というより、あのレベッカもシギーには頭が上がらないんだと多くの1年生が感じた。


 「これ、その辺に置いといて。」


 置いておけ、そうは言われても扱いに困る。そう思うレベッカは仕方なく、競技場の端にイブを寝かせる。

 そして、トバッチリはこれに収まらない。今のイブの大声を聞いてしまった村正。当然、脳裏には色んな事が過ってしまう。この場に居る男性の殆どは来場者。簡単に手を出せる相手ではない。かと言ってギルディスに手を出すほど、肝は据わって居ない。この場にフォルテが居たら、間違いなくギルディスにトバッチリが飛んだだろう。

 そして、数少ない候補、と言うよりもう彼しか居なかった。


 バリンッ。


 「ぎゃあ!?」


 競技場の結界に穴を開け、何かが村正のおでこに当たる。その衝撃で村正は後方へ吹き飛ぶ。

 村正の言葉を聞き取った地獄耳かそれとも単なる八つ当たりか。その真意は定かではない。ただ言われない不幸が彼を襲った。


 「だ、大丈夫?」


 思わず、ユーリが駆け寄って村正の身を案ずる。


 「うん。生きてるよ。」

 「冗談言えるんなら大丈夫だね。」


 悲しい事に村正の事を気にしてくれたのはユーリと周囲の2、3人だけだった。他はと言うと、決して破れないと言われていた、競技場の結界を破ったシギーに注目が行く。一体どんな魔法を使ったんだと。

 通路の壁に身を寄せている村正は、誰も自分を心配してくれない事にちょっと切なくなる。

 そうこうしてるうちに、セリスとシギーのエキシビションが始まり、会場の視線はフィールドに注がれる。


 「僕ちょっと休んでくる。」

 「あ、うん。いってらっしゃい。」


 おでこを抑えながら村正は観客席を後にする。

 通路には、チラホラ人が見受けられる。全員が全員、エキシビションを見ると言うわけでは無いようである。

 まだ痛みのあるおでこをさする村正。競技場の外に出ると、すでに一部の教師たちが後夜祭の準備に取り掛かっている。後夜祭のメインとなると通りを抜け、学園の裏庭の方へと歩いていく。裏庭は、芝生になってるだけの場所。村正は、そこに寝転ぶ。


 「まだヒリヒリする。」


 空を見上げながらぼやいている村正に、誰か近づいてきた。


 「いや~魔法使いの女性ってのはつくづくおっかないね~。」


 聞き覚えのある声に、村正は勢いよく起き上る。そこに居たのは、2ヶ月ぶりにある少女だった。




次回At145.久しぶりの少女

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