At13.休暇
「起きろー!」
この突然の大声で僕は目覚めた。しかしそれに対抗するように布団にくるまり、
「もう少し寝かせてくれ。」
この村正の返答を聞き、完全に切れた彼女は、彼のベッドに手をかざすと、
「ストーム」
同室の少女、ユウキによって僕はベッドから思いっきり吹き飛ばされた。
「いって・・・いきなり吹き飛ばさなくてもいいじゃんか。」
「何言ってんのよ、今何時だと思ってんの?」
え、何時ってまだそんなでもないだろ。そう思って時計を見ると、とっくに昼を過ぎている。
マジか・・・
「えっマジ?」
「マジよ。全く掃除したいからちょっとどいてくれる?」
「あ、はい。」
そう言われて僕はベッドから降りてから、軽く腹に何か入れたかったので食堂に向かうことにした。
食堂に降りると、クラスのみんなが僕の所によって来た。
「紺野君無事なの?」
「え?ああ、無事だけど何で?」
クラスの子たちに囲まれた。
「だって、最後に連絡取ってから一向に連絡付かないし、試験は途中で中止になるし、君たち行方不明になるしで。普通心配するよ。」
あ、そう言えばそんな状況でしたね。色々あって皆に報告するの忘れてた。
「みんなごめん、心配かけたね。これからは気を付けるよ。」
食堂でご飯を食べていると急に頭の中に声が流れてきた。
(紺野君聞こえてる?)
(うっ、聞こえてます。)
(あら、何かあったの?)
(久々だったので、なんか変な感じで。)
(そうだった?まいいや、後で、中庭に来て。)
(中庭ですか?)
(そっ、学園にあるところね。)
なんか久々にイブさんと念話したな。ここへ着た時以来か。そう言ってもまだ1ヶ月経ってないんだよな。色々ありすぎて忘れてたけど。
僕は、食事を一気にかき込むと学園に向かうためにいったん部屋に戻った。
「うおーすごい綺麗。」
部屋に戻ってみると、部屋が綺麗に掃除されていた。
「あ、おかえりー。掃除終わったばっかだから汚さないでよ。」
「うん、わかった。」
ユウキは。こういう家事が得意らしい。前に作ってくれた料理も中々だった。
僕は制服に着替えると、学園の方に向かった。
「ええと、中庭、中庭と。あ、いた。」
「おーい、こっちこっち。」
そこにはなぜかリリィもいた。
「あれ、リリィ何でいるの?」
「私は、ちょっとお願いをしにね。」
「お願い?」
「あの剣貰えないかなーって。」
「だから、それは駄目だったって言ったでしょ。」
あの場から持ち出したのはその剣を貰う為だったんだ。
「そういえば、ここ時々帯剣している人いますよね?」
生徒会長のエレンさんもそうだったが上級生に多くみられる。
「ああ、彼女らは、学生部隊の子たちよ。」
「学生部隊?」
「この学園は有事の際に国から要請があれば、学生が出ることもあるのよ。」
「学生が?」
「そうよ、と言っても基本は住人の避難誘導が主な任務よ。でも、みんな魔法は一流よ。」
そんな役割があったんだこの学園。なんか興味あるな。よくアニメなんかで学生がこういう職についてるのを見てたから、なんとなく憧れはあった。コスプレした時もこういう格好をした。
「それで、僕に話っていうのは?」
「うん、紺野君、2ヶ月後の魔術祭出てみない?」
「何ですか唐突に。」
「この学園では定期的にやっていてね。今度のは1年生~3年生が対象で、各クラスから代表と、他に先生からの推薦枠があるのよ。」
「それで、、僕はイブさんの推薦で出ろと?」
「そゆこと。」
魔術祭。この学園で行われる魔法の技術を競う祭典で、年に何度か開催される。一番大きいのは年度末の全生徒で行うものだ。これは卒業する5年生を祝しての物でもある。
「でも、僕まだそんなに大した魔法使えないですよ?」
「それは問題ないわよ。私が直々に指導してあげるから。」
ええー。正直間に合ってます。だって碌なこと考えてないでしょこの人。
「それじゃ、僕のクラスからは2人出るってことですか?」
「そうなるわね。それはそれで面白いわよ。多いときは1クラスから5人出たこともあったから。」
そんなにか。その時は相当優秀な人が固まったんだな。他の4んは推薦枠なわけだし。
「へ~、紺野君すごいじゃん。じゃあ、私はクラス代表目指そうかな。」
えっリリィ出るの?こういうのに一番無関心そうだったからちょっと意外。
「要件はそれだけですか?」
「うん、それだけ?」
「じゃあ、帰ってもいいですか?」
「いいわよ、明日から練習始めるわよ。」
え、明日から。まだそんなに急がなくてもいいよね?だめだ、顔が明日からやる気満々だ。
「クラスの代表はいつ決めるんですか?」
「先生にもよるけど、早ければ今月中ね。遅いとぎりぎりまで引っ張るわよ。」
「何でぎりぎりまで?」
「その方が対策が取りにくいでしょ?」
あぁ、そゆこと。早く出すとその分相手側に対策を取られて当日不利になるってことか。確かにその方がいいわな。
「でも、僕が出ることが分かったら1組不利じゃないですか。」
「いやいや、みんな君が来るのはわかってるよ。」
「リリィさんの言う通りよ。だって、」
・・・マジか。何を言われたかって?
まず、第一に僕が男であるということ。それだけで十分出てくる予想がつくという。さらに迷惑なことに僕はこの学園にイブさんの推薦で入学したことになっている。そのため、イブさんが僕を指名するんじゃないかって憶測がすでにとんでおり、じゃあいっそのこと推薦しようってこの人が思ったんだと。
「そんな理由で僕出るんですか?」
「大丈夫、大丈夫、何かあっても死ぬわけじゃないんだから。」
はぁ、まさか僕が魔術祭に出るとことになるなんて。クラスのみんなになんて言えばいいんだろう。よし、一度このことは忘れよう。それに今日はせっかくの休暇なんだから、一度街を見てみよかな。まだ、一度もまともに見たことないしな。それにせっかくだからあそこに行きたいし。
僕は、なぜか一緒についてきたリリィと一緒にあの店に向かった。
「アンティークショップガゼル?」
「そっ、僕がお世話になった人がやってる店なんだ。」
この世界に来て初めて会った人がガゼルさんだ。店の仕入れは彼自ら行うというかなりの慎重派。その分見る目があるから、売れるという。
「いらっしゃい~。おっ、坊主じゃねーか。」
「お久しぶりです。」
「なんだ何か買いに来たんか?」
「ええまぁ、」
店に入るとガゼルさんが店で品物を並べている最中だった。店を見てみると、店名の通りアンティークもおいてあるが、店の一角には、あの時の物がまだ置いてある。あれ、本当にアンティークか?
「うわ~、なんかすごい物がいっぱいある。」
「何だ坊主、これか?」
ガゼルさんが小指を立てながら笑ってる。
「そうだよ~。」
「違います。リリィも余計なこと言わない。」
リリィが悪乗りしたせいで危うくとんでもないことになるところだった。全く。
「それで、なんか欲しいものはあるか?」
「魔法具置いてましたよね?」
「ああ、あるぞ。」
「なんか、魔法の助けになったりするものあったりします?」
「う~んあんまりそういうんはねーな。」
「そうなの?」
「お前さん、中級魔法は使うのか?」
「まだです。」
「まだ早いかもしれんがこれはどうだ?」
そう言ってガゼルさんが持ってきたのは30センチくらいの木の棒?みたいなものだった。
「これは?」
「こいつな、俺が仕入れたんだがまだに売れ残ってる杖だ。」
「杖?」
「ま、簡単にいやぁ、魔法の発動の補助をするためのもんだな。」
「補助?」
「初級や中級ならそんなに必要になることないが、上級になると、扱いが難しくなってうまく発動しないだろ?その補助。」
ガゼルさん曰く、魔法の補助に関しては別に杖でなくてもいいという。別に長さがある程度あればそれで十分だと。こういうのがあれば魔法発動時に魔力が一点に集中し、魔法の不発や暴走の抑えになったりもする。
「坊主んとこの学も何人か帯剣してんだろ?ありゃそのためでもあるんだ。」
なるほど、剣も一定の長さがあるから魔法の補助の条件を満たしているのか。便利だな。
「因みにこれいくらですか?」
「特別に銀貨1枚でやんよ。」
「え、本当?」
「ああ、特別だ。本来は銀貨3枚だかんな。」
「僕まだ、こういう物の価値とかあんまりわかんないんですよね。」
「そうなのか?じゃあ、あいつに教えてもらいな。」
「あいつ?」
ガゼルさんが指さしたのは、店にあるカウンター内にいる女の人だ。
「あいつが俺の嫁さんだ。おーい、エル!」
エルと呼ばれたその人は長い金髪に左目の下に小さななきぼくろのある綺麗な女性だった。
「わーすごいきれー。」
今までいないと思ったらどっから出てきたんだリリィは。
「ふふ、あなたが村正君ね。あの人から話は聞いてるわ。よろしくね。」
「は、はい。」
その後、僕となぜか一緒にいるリリィの2人でエルさんから魔法具について様々な説明を受けた。道具の種類、道具の主な値段それから使用方法など色々と。
「まず、道具の中でも魔法使いに一番有用なのは、こういった杖のように長い直線状の物ね。」
「これですね。」
僕は、さっきガゼルさんから受け取った杖を出した。
「そうそれ、そういったのもが魔法の発動の手助けをするってのはさっき聞いたかしらね?」
「はい、聞いてます。」
長いものが魔法を発動する際に魔力を一転に集めて発動を手助けする。
「じゃあ、こういう物が一体どのくらの値段で取引されてるか知ってる?」
「そこまではさすがに。」
魔法具の値段なんてそこまで気にしたことはなかったと思う。前にガゼルさんの手伝いで魔法具を売るのを手伝ったことがあったけど、そういえばあの時はいくらだったっけ?よく覚えてないんだよな。一応バイト代でもらった額は、確か・・・銀貨10枚程度だった気がするんだよな。
今さらだが、この世界に流通している通貨は全て硬貨である。流通しているのは、下から、銅貨、銀貨、そして金貨である。硬貨はそれぞれ100枚で上のランクの物と交換できる。
「こういう魔法の補助をするものは値段に差が大きく異なったりするものよ。」
「例えば、この杖さっきガゼルさんが銀貨3枚って言ってたけどこれは?」
「まぁ、相場より少し安いくらいかな?」
そうなんだ、てことはかなりお得だったかな。幅がありそうだがどのくらいあるんだろう?
「因みに、一番高いものだとどのくらいなの?」
「リリィちゃんだっけ?いい質問ね。一番高いものだとそうね・・・多分金貨200枚はくだらないはずよ。」
高ー。たかが魔法の補助に使うための道具が金貨200枚?一体誰が買うんだよそんなに高い物。
「ほへ~」
「ふふ、びっくりした?安いものは銅貨50枚から売ってるわよ。」
「それって、どんな物?」
「木の枝から作った物とかね。じゃ、次行くわよ。」
最安値と最高値の差が大きすぎないか?それだけ、魔法使いにとって大事な物ってことなのかな?よく使うペンでさえ安物から高級なものまであるくらいだし。
「次はこれね。」
そう言って今度見せてくれたのは小さな手のひらサイズのお香によく似たものである。
「これは、魔術香。」
魔術香?
「これはね、自分が新しく作った魔法に一体どんな効果があるかを見ることができるの。」
「そんなことができるんですか?」
「ええ、これはどんな系統の魔法かがここから出てくる煙の色で、攻撃、防御、回復の大枠に分かれるの。」
「すごいですね、これ。」
まだ、自分で魔法を考案することなんてないとは思うがいつか、自分で魔法を構築する時が来たらぜひ使いたいな。
「これは、高いんですか?」
「そこそこね、金貨1とかかな。」
あああ、やっぱりそのくらいはしちゃうのか。そのうちどっかでバイトとか始めよう。そもそも、この学園バイトOKなのかな?後で聞いてみよ。
「そういやー、エルさん。」
「何かな?」
「ここって、アンティークショップでしたよね?」
「ええそうよ。」
「普通のアンティークとかってあるんですか?」
「ふふ、あるわよ。何か欲しいのでもあるの?」
「いえ、別にただ興味があったもので。初めてこの店名を見た時びっくりしたので。」
だって、初めてガゼルさんに会った時は魔法の道具専門の人だと思っていたのにこの店の主となっているものがアンティークだよ。
「あはは、まぁびっくりするわよね。全く、うちはアンティーク専門だったのにさ、どっからか持ってきたのか、魔法具が多く集まる店になってしまってね。」
やっぱりもとは違ったんだ。よくこんだけの物を集めることができたな。
「他にもいろんな物があるわ。その時その時で使えたりするものに差があるから、どんなものを求めるかは、その時次第ね。」
「なるほど、いい勉強になりました。」
「こちらこそ、力になれてよかったわ。その杖は買っていかれる?」
「はい、お願いします。」
「ありがとう。」
僕は、ガザルさんの店で杖を購入した。木の棒っと言ったが中々いいものだ。杖の先端が羽のように細工が施されていてこれはこれで味わいがある。
「リリィ、僕なんかについてきて楽しかったの?」
「まぁまぁだった。」
自分からついてきてそれはどうよ?
僕は、帰り道にリリィに学園でのイブさんとの会話の件について聞いてみた。
「ねぇ、何でリリィは赤の英雄の剣を貰おうとしたの?」
「・・・」
リリィはしばらく黙り込んだがやがて、
「なんとなく、かな?」
なんとなく?
「ほらだって英雄の使ってた剣だよ。しかも神具。ちょっと興味が沸かない?」
「わからないでもないが、まだ僕らには早いんじゃないかな?」
「そうかな?」
もし僕らが、上級生ぐらいになっていて魔法の技術もとても優れていたらもしかしたら、もらえたかもしれないけどね。けど、もし僕だったら断っちゃいそうだな。なんか責任が重そうだし。持ってるだけでいろんな面倒事なんかにも巻き込まれそうだし。そんなことにはならないだろうけど。
もう日が暮れる。まぁ、出掛けたのが昼過ぎ出し、こんな時間にもなってるものか。今日は半日潰しちゃったけどそこそこ有意義な午後になったかな。魔法具もせっかく買ったんだし、もっと魔法の勉強をして、この杖を使うのにふさわしくならなくちゃな。
次回At14.やっと始まる普通の授業
第2章終了です。次の第3章は1話完結型を中心で行こうと思います。
時間とかが飛んだりすると思いますがご了承下さい。




