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ヘヴンズ・ドアー  作者: 浮草堂美奈
第十一章 此処は大乱、吹くは神風編
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九十六話―クリスティーナと厳島、決着

 ドイツ騎士団の目的。

 それはやはり水であった。

 今やヨーロッパの水質は完全に汚染され、病でばたばたと人が死んでいる。

 かってのペストの流行を思わせる事態だ。

 故に、クリスティーナは奪いに来たのだ。

 汚染されておらぬ、島国の水を奪いに来たのだ。

「主は私を許されぬ。しかし、私は常に十字架の元に戦っている! 厳島君尋、神の御許へ逝け!」

 剣を振り上げるクリスティーナに、厳島は高笑いを上げた。

「なんじゃ、おはん、十字架だのきりすとだの、そんなもんがなかと戦えんが!?」

「どういう意味だ?」

 厳島は高笑いをやめない。

 薩摩武士は、日ノ本侍さぶらいは、ごく、シンプルに歪んだ高笑いをやめない。

「強か奴と戦いたか! それで良か!」

 クリスティーナの目つきが鋭くなる。切っ先が真っ直ぐ向く。

「厳島君尋、君は、いや、君達日本人は人でなしだ。神に与えられた命を自らの欲の為に無碍にする、ごく純然たる人でなしだ」

 厳島の鋭い歯が口から見える。

おいどまはな、死にたて堪らんのだ。まっこち立派な死が欲しいんじゃ。それが何がおかしか。どうせ人は死ぬものぞ。ならば、誉ある屍ばなりたいこつが何がおかしか。嗚呼、死にたか、死にたか、おはんを斬って、皇にお褒めの言葉ば貰って死にたか!」

 にたり。

「そして、勝って死にたか」

 クリスティーナは咆哮した。

「この悪魔があああああああ!」

 それは、愛の咆哮。

 クリスティーナの高周波による音のカッターである。

 一瞬にして、周囲の日本武士がばらばらになっていく。

「全軍! 死ぬなら今ぞ!」

「おおおおおおおおおお!」

 厳島の大音声に、日本武士たちが鬨の声を上げ、突進してくる。

「WOWOWOWOWOWOWOWーーーーーーー!」

 クリスティーナの音のカッターが、彼らの首を取っていく。

 そのまま、クリスティーナと厳島は、真っ直ぐぶつかりあった。

 もはや会話の余裕はなかった。

 ただ、しゃむに、剣と刀が打ち合った。

「チェストーーーーッ!」

 厳島の一撃が、クリスティーナの左半身を割った。

 ずるりと、肉骨ごと滑り落ちる左半身。

 厳島の顔が笑みに歪む。

 その瞬間、右手だけで、クリスティーナは剣を握り。

 厳島の腹を刺し貫いた。

 切っ先が背中に現れる、見事な貫通であった。

 クリスティーナはそのままばったり倒れ、二度と動かなかった。

 厳島は、剣が貫通したまま、ふらつく足で躯に近づいた。

 そして、その見開いた目を、刀で節くれだった指で閉じてやった。

「お前様はんさあが好きじゃ」

 それが、厳島の最期の言葉だった。

 幕末の志士は、ヴァルハラに散った。


「厳島様お討死!」

 通信機と伝令の忍が一斉に叫びだした。

「皇のご命令を!」

 そうして駆け出した足が、ふいに止まった。

 クリスティーナが下りてきた山から、一人の忍が、足取りもおぼつかぬ様子で下りてきたからである。

「皇に……至急伝令……」

 忍は、前線にたどり着くと、大きく喀血した。

「山上から、ドイツ騎士団全軍が進撃してきます……」

「なんと!?」

「その数およそ百……」

 一斉に、日本武士団は辺りを見回した。

 そして、この絶望的事態を把握した。

 五万の日本武士団は、クリスティーナによって、最早二千にも満たない兵数となっていたのだ!

 しかも、兵の質が違う。

 日本武士団は、飯塚幾之助と厳島君尋の戦力が特出しているが、他は”鍛錬した雑魚”と云った兵しかいない。

 しかし、ドイツ騎士団は違う。一人一人が、能力こそないものの、ほとんど戦士に近い技量を持っている。

 日本武士団は、この状況を”理解”した。

 

 日本城本丸。

 皇は、ドイツ騎士団進撃の報告を聞き、「如何なされますか?」と問われた。

「答えは一つ」

 皇は、立ち上がった。

「総員玉砕せよ!」

 伝令の忍は、一礼して戻って行った。

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