Ⅳ-異世界での初めての友達
なんか思い描いた描写とチョットそれて来た?まさかそんなことがあるわけないじゃないか。多分。
職業選定の儀式の日から月日は流れ、俺、ソウマ・スヴェンテは異世界に新たな生を受け10歳になった。
5歳の時にはまだ背が足りなくて覗き込めなかった洗面所にあるガラスにも覗けるようになり、自分の姿を初めて確認することができた。確認したとき、口にした言葉は「なんで俺の髪、銀髪なんだ?」だったが、そこから改めて見ると、眼も燃えるように赤く染まっていた。髪の毛は剣聖である父親、グレイ・スヴェンテからの遺伝で、眼も母親、コーネリア・スヴェンテからの遺伝ということで納得したが、10年位前まで黒髪黒目だったので未だに慣れない。というか、目立つから若干恥ずかしさもある。
10歳の誕生日の時、新たに分かったことなのだが、なんと俺の家は貴族だったらしい。
職業選定の時に名前を見て家名があるから、この世界にもそうゆうのあるんだ位にしか思っていなかったが、家名があるのは貴族だけらしい。
そういえば、俺は7歳の時に一人で外出のを許されたので初めて一人で外に出たんだが、その時に異世界での初めての友達もできた。村からは出るなよと言われたけれど、それを破り、村のすぐそこにある森を一人で歩いていた時にそいつに出会った。そいつの名前はセリア。名前からして女の子だが、俺たちは年も近かったこともあり、意気投合し、毎日遊ぶようになった。
気になることがあり、遊んでいる中、俺はセリアにこんな質問をしてみた。
「なぁ、セリア。」
「ん?なぁに?」
「セリアってエルフ?」
そんな疑問を持ったのは髪が金髪だったのと、目が透き通るように青い色をしていたので、俺が思い描いているエルフのイメージにピッタリだったからだ。
するとセリアは少し、焦ったような顔をしてこういった。
「ち、違うよ?」
嘘だ。なぜなら、セリアは嘘をつくときに必ず左に目を逸らすという癖がある。それにどもったし。
「ふーん。まぁ違うならいいや。」
「な、なんでそう思ったの?」
「ん?うーん、俺が抱いてるエルフのイメージとセリアの姿が同じだったからだよ。実際にエルフを見たことがないから勝手なイメージだけどな。それと、エルフだったら耳がとんがってるだろ?どれくらいとんがってるんだろ?って気になってな。」
「そうなんだ。もし、私がエルフだったとしたら嫌いになる?」
「なんで?エルフだろうが、獣人だろうがセリアはセリアだろ?」
素直にそう言い返すとセリアは少し、驚いたような顔をしたあと、頬を赤く染めた。
「そう・・・だね。」
そう言って、セリアは耳まで隠れる位の帽子を深くかぶり直した。
「そういや、セリア、その帽子いっつもかぶってるよな。熱くねぇの?」
「意外と、涼しいよ?顔への日差しを防げるし。」
「そんなもん?」
「うん。」
「ふーん。まぁ、いいか。今日はなにして遊ぶ?」
「また魔法がみたい!」
「オーケー。セリアは風属性だったよな。」
「うん。ソウマ君は炎だよね?」
「おう。どんなやつにするかな・・・。そうだ。セリア、ちょっとだけ風を吹かしてくれる?」
「こう?」
セリアはそう言ってこっちに手のひらを向けるとそこを起点に俺へと風が吹いてくる。
「そんな感じ、んじゃ、よく見てろ?まず小さい炎を手に出してだな・・・。セリアこれに向かって風を送ってみて。」
手のひらサイズの炎を指先に灯し、それをセリアの前に持ってくる。
「え!?消えちゃうよ?」
「大丈夫だから。やってみ?」
「う、うん。」
そう言って、セリアは俺の指先に灯っている炎に向けて風を送った。
すると、指先の炎は消えることなく、勢い良く更に大きな炎へと変化した。
「え!?なんで!?」
「前にも教えたろ?物が燃えるためにはある3つの要素が不可欠だって。」
「えっと、可燃物と酸素と点火源だっけ?」
「そうそう。今回の可燃物は魔力。酸素は空気中にあるよな。点火源は俺の頭で描いたイメージを魔力に送り込むことで魔力が変化し炎になった。それで、今回セリアに風を送ってもらったよな?それによって酸素が増えて炎の勢いが増したんだよ。」
「へぇ。そんなことができるんだぁ。おもしろいね!」
これくらいだったら地球にいた頃に嫌というほど実験できたんだがな。この世界じゃ科学ってものがあまりないらしい。
「さて、こんなもんだろう。」
そう言って、指先に灯していた炎を消すとセリアが少し残念そうな顔をする。
「ん?なんだ、まだ見たかったか?」
「面白かったからね。今度は別のこと教えて?」
「そうだな・・・あまり大規模なことはできないしな。魔力も少なくなってきたし。」
俺は、5歳の時職業選定をした時からLVは1から上がっていない。だが、日々魔力を使用することで多少は上昇した。
今の俺のステータスはこんな感じだ。
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名前:ソウマ・スヴェンテ 種族:人間
年齢:5歳 性別:男 LV:1
メイン職業:魔装士(魔装使用時にステータス補正15%)
サブ職業:剣聖(刀剣使用時にステータス補正5%)
賢者(魔法威力上昇、【叡智】スキル取得)
ウェポンマスター(武器使用時にステータス補正10%、【武装術】スキル取得)
錬金術師(【錬成】【精錬】【鑑定】スキル取得)
召喚士(【召喚魔法】【契約】スキル取得)
魔法剣士(刀剣使用時にステータス補正3%【付与魔法】取得)
銃使い(銃使用時にステータス補正3%)
武闘家(【徒手空拳】スキル時にステータス補正5%、【徒手空拳】スキル取得)
忍(忍法威力上昇、【忍法】スキル取得)
HP:1100/1000 MP:900/1200
力:110
魔法力:120
物理防御力:100
魔法防御力:100
敏捷:110
運:100
スキル:【全属性魔法】・【武装術】・【叡智】・【錬成】・【精錬】・
【鑑定】・【召喚魔法】・【契約】・【付与魔法】・
【徒手空拳】・【忍法】・【隠蔽】
加護:創造神ユリアの加護(経験値取得50%上昇、スキル習得率UP)
魔装:無し
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森を歩き回ってたおかげで体力、HPも多少増え、力もついた。若干ステータス的に魔力寄りになってしまったが、魔装を使う上では問題ないだろう。
そういえば、そろそろ魔装も作らないとな。最初に何からつくろうか。炎属性って言ってるし、炎の魔装から作るか。
こうゆうときの【叡智】さん!起動!
『お呼びでしょうか?マスター。』
これは、【叡智】というスキルによって生み出された人格。質問すればわかる限り答えてくれるという、簡単に言うとこの世界の知識をまるごと突っ込んだような感じの辞書だ。分かることには最初に「イエス」と答え、わからないことだと「ノー」と答える。実に便利なスキルだ。
(炎の魔装を作りたいんだが、どうすれば作れるんだ?)
『イエス。それでしたら、最初に手のひらに炎をだし、そこから創り出したい形をイメージすると、適性があれば魔装が創り出せます。顕現に成功した場合、マクロとして魔力に登録され、変更できないようになりますので、良く考えてから創ることをオススメします。』
(武器だとしたらオススメは?)
『イエス。マスターは魔装士の他に、ウェポンマスター、剣聖、魔法剣士の3つの刀剣を扱うことでステータス補正が掛かる職業をお持ちなので、刀剣類をおすすめします。』
(なるほど、了解。ありがとう。)
と、いった具合で聞けばこっちの状況も考えていろいろ教えてくれる。実に便利だ。大事なことなので二回言える位。
「急に黙ってどうしたの?」
「ん?あぁ、いや何でもない。そういやセリアは魔装って持ってるのか?」
「私?私はまだ創ってないよ。適正はあるみたいだけど。」
「そうなのか。作るとしたら何作るんだ?」
「うーん・・・やっぱり弓かなぁ。今まで使ってきた中で一番使いやすかったし。」
お前やっぱりエルフだろ。エルフの武器=弓って認識であってるよね?合ってたはず!
「弓かぁ。クロスボウとかじゃダメなのか?」
「それでもいいんだけど、どっちかっていうと弓の方がしっくり来るんだよね。」
それはきっと【弓術】があるからだと思う・・・。ん?【弓術】にはクロスボウも含まれるのか?だとしたら好みの問題か。
「俺はまだ何にするか決めかねてるんだよなぁ。刀剣類ってのはもう決めたんだけど、刀剣って言ってもいろいろあるじゃん?刀だとか片手直剣とか両手剣とかレイピアとか。」
「そうなんだ。弓にもいろいろあるよ?ショートボウだとかロングボウだとか。」
「大きく分けてその二つとクロスボウだろ?」
「そうだね。」
「こっちだと、刀、片手剣、両手剣、細剣って四種類だからなぁ・・・。」
「大変そうだね。適正って調べたの?」
「いや?まだ調べてないよ。」
「調べる前からもう考えてるなんて、もしなかったらどうするの?」
「なかったときのことなんて考えてない!人生前向きにだ!」
職業が【魔装士】の癖に魔装が使えないなんて事はないと思いたいが・・・。ないよな?うん!無いな!
「そろそろ日が暮れちゃうね。」
「そうだな・・・今日はこの辺にしとくか。」
「うん、またねソウマ君。」
「あぁ、またなセリア。」
そういって、手を振り合い互いに帰路につく。
ちらりとセリアの方を見やるが、その姿はもうなくなっていた。
「俺も帰るか。」
そう言って村の方向に歩き出すソウマ。
村に到着すると、南門の前で父親、グレイが仁王立ちしていたのを森の影から見えた。
「げっ・・・父さんが門にいる・・・。東門に回るか・・・。」
森の中を歩き、東門の方へ回るが、次は母さんが門の前に立っていた。
「うげぇ・・・こりゃ、村の外に出てたのがバレたのかね?こうなったら、最終手段かな。」
俺は最終手段としてスキル【忍法】の中の一つを使った。
「【隠遁】」
この技は姿を周りの風景と同化させ、匂いや気配も消すという便利忍法だ。現在技術の言うところのステルス迷彩的な感じ。
そうやって、母さんの横を通り過ぎようと忍び足でこっそり歩いて行く。
が---
「ソウマ。まだまだ甘いわね。匂いや気配を消せても、魔力は消せてないわよ?」
げっ!?バレたっ!?
母さんがこちらに手を伸ばしてくるのを音を立てないように必死に避け、忍び足のままダッシュで家に向かう。
「あら?確かにここにソウマの魔力があったんだけど・・・。あの子も腕をあげたわね。逃げられちゃったわ。まぁ平然とした顔で家にいると思うからいいのだけれど。」
ソウマが逃げたあと、母さん、コーネリアはそう呟き、南門で待ち構えているグレイを共に家に向かった。
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「さて?どうゆうことか説明してもらおうかしら?」
俺、ソウマは現在両親に正座させられている。
理由は、なぜ村の外に出ていたのかだ。
両親はニコニコした顔でこちらを見てくる。逆にそれが怖い・・・。
「危ないから入ったらダメだと言ってただろう?なぜ出ていたんだ?」
「えっと・・・怒らない?」
「場合による。」
「えぇ・・・。お、怒らないんだったら教える。」
「あのね?ソウマ。」
母さんの手が俺の頭に添えられる。
(徐々にこめかみの辺の指に力を入れてきてない!?アイアンクローが俺の頭にぃぃぃぃぃぃ!?)
「交渉できる立場だと思ってるのかしら?」
(ひぃぃぃぃ!?めっちゃニコニコしとる!?てかめっちゃ痛い!頭蓋骨割れちゃう!)
「ソウマー。話しといたほうが身の為だぞ~。」
(父さん~!?説得するよりも助けて!?)
「わ、わかったから。話すから!離してぇぇ!?」
「そう、なら良かった。息子の頭蓋骨を割らなくてすんだわ。」
「そうゆう問題!?」
「んで?なんで森に入っていたのかしら?ん?もう一発いっとく?」
「結構です!えっと・・・最初、外出の許可もらった時にも森の中で遊んでたんだけど、その時に森で俺と同年代の子に会いまして・・・そこからずっとその子と遊んでたわけなんだけど・・・。」
ソウマはセリアの容姿や出会った経緯について詳しく話した。
すると、両親は互いを見つめ合う。
「どう思うあなた?」
「うーん、エルフ族の子供かとは思うんだが・・・。」
「ちなみに、その子はなんていうんだったかしら?ソウマ」
「えっと、セリアだよ。」
「女の子か?」
「そうだよ?」
「ふむ・・・その子の魔法属性とか聞いたか?」
「それならちょうど今日話してたよ。風だって。」
「あなた・・・」
「あぁ、その子はエルフだな。それもはぐれの。」
「え?はぐれ?」
「そうだ、あの森に本来エルフは住んでいない。」
あの森には住んでいない・・・?ならセリアに家族はいるのか?もしかして、一人でずっとあの森に住んでいるのか?まだ10歳だぞ?
「セリアには・・・両親がいないのかな?」
「多分・・・そうなんだろうな。」
「・・・そう、分かった。明日、聞いてみる。ところで・・・」
「うん?どうしたの?ソウマ。」
「俺は一体いつまで正座していればいいんでしょうか?」
「あら?まだしてたの?もう立っていいわよ。ご飯にしましょ。」
お母様。それはいくらなんでもひどくないですかね?というか、ただいま足が痺れてるから立てないんですが・・・。
さて、ここからどうやってつないでいこうか・・・。
ブクマ・感想が力になると思います。