表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 【 “17”と呼ばれし魔女  】  作者: お~とらいぶらり
 【 本編 (完結済) 】
4/21

 [ 4 蒼影  ]

 

 【“17”と呼ばれし魔女】――――≪コールド17≫(セヴンティーン)

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

叉門しゃもんだ。姓は先祖が捨てた」


 影に応えて、男は名乗った。


 小手調べは終わり――。

 次は、“何か”仕掛けてくる。

 叉門の読みは、外れたことが無かった。


「我は蒼影そうえいあるじよりたまわりしなり


 建物の陰からゆらりと前足を一歩、踏み出してうそぶく。




「へっ、獣の名乗りを聞くってのは初めてだな」


 男は柄を握りしめ、歩幅を半歩拡げる。

 飛び道具があるわけではないらしい。

 いかに速くとも、それを見越して刀を振るえば良いだけだ。



 獣が弾機ばねを利かせ、地面から建物の側壁いを跳躍し、

 さらに跳び移って叉門の反対側へ回り込む。


「お前ぇさんのスピードも見慣れてきたぜっ!」


 振り返りざまに斬り上げる。

 今度こそ影に深々と刀が食い込――と思ったのも束の間。

 手応えが無く叉門はたたらを踏む。



「なにぃっ!?」


 斬ったはずの影は、虚空へ薄れて消えていく。

 呆然とする叉門の横から猛然ともう一つの影が襲い来る。



「ぐうっ!」


 間一髪、体を捻って致命傷は避けた物の、脇腹に激痛が走る。

 服をちらと見ると三本の切れ目ができていた。大きな爪跡だ。


 影は、素早く距離を取った。

 一度目の交錯から、反撃を警戒しているらしい。


 刀を構えなおす。



「いってぇ、どんな品玉を使いやがった?」


 月明かりの下、獣が尻尾を優雅にくゆらせ立ち止まる。

 その後ろから、もう一匹の狼が現れる。


 大きさは同じ、形も同じ。

 しかし、色が違った。


 後ろから出現した狼は、さらに濃く、夜の闇に溶け込む蒼。



「我が名は蒼影そうえい。主より賜りし名だ」


 獣は低く、しかしはっきりと言った。



  ◆  弐  ◆




「蒼い影……『幻影』を操るのか……こいつぁ見間違うわけだ」


 ニヤリ、と叉門はわらう。

 あの程度で勝負が決してしまっては面白くない。



 蒼影はきびすを返し、再び闇に溶ける。



「退いた……わけねぇよな」


 姿が見えなくなってもなお、その殺気は遙か遠くから向けられている。

 反応が遅れれば、一貫の終わりである。

 圧倒的な速さの前に、叉門は刀を振るうことすらなく倒されるだろう。



 叉門は腰を低くし、息を深く吐いた。

 身じろぎ一つせず、待ち受ける。



 シン――と静まり返った夜のしじまに、ふくろうの声。




 ……………………………ッ…………………



 第六感と言っても良いほどの、微かな兆候。

 研ぎ澄まされた感覚が、風の振動と、土の響きを伝えてくる。

 まだ、解らない。



 ……………………タッ………………タッ…………!




 感じられる。かすかな動きが。

 昼間ならば、おそらく姿が見えるか見えないかくらいの距離。

 闇にうごめく影を、かたまりとして認識する。



 左右、2つの影。

 『幻影』を斬った時に手応えが無かった。

 おそらく実体は無いのだろう。



「・・・・・・どっちだ?・・・・・・」


 少しずつ幅を狭めてくる。

 叉門の構えた場所で合流する算段だろうか。



 瞬間、叉門は左に飛び退すさり、大振りで左上から袈裟掛けに振り下ろす。

 どちらが本物か判別できなかった為、高速の突進を逆手に取り、

 一振りで両方を斬るタイミングで刀を振るったのだ。



 近い方が本物だとすると、蒼影の肩口に直撃する間合い。

 反対とすれば、蒼影の前脚に当たると見込んだが、いずれでも無かった。



 蒼影と『幻影』は二体共、叉門の頭上を跳び超え、翻って爪を閃かせる。

 迷ったが最後、その隙は致命的で――


 ブシュゥゥッ!


 盛大に血が噴き出す。

 鮮血に地面を染めていたのは、蒼影だった。

 叉門は、後ろを向いたまま、刀を振り抜いていた。



「言ったろ? 風が、お前の位置を教えてくれるってな」


 高く跳躍するほど、体躯を支える足に、地面に負担が掛かる。

 着地した音を、叉門は聞き逃さなかったのだ。


おのれ……!」


 叉門は常人よりも優れた五感を持っている。

 冒険者ギルドで言う技能スキルの≪鋭敏感覚/エクストラセンス≫の類だ。

 中でも≪鋭敏聴覚/エクストラヒアリング≫のランクは常識外の化け物である。



「話にならねぇ。本気で掛かって来いよ」



 蒼影は三度、闇に溶け込む。

 助走をつけ、全力で挑んでくるつもりだろう。


 叉門は音に集中し、目をつむる。

 目視では判別しきれない。

 ならば、余計な情報を遮断してしまった方が良い。



 蒼影と『幻影』は、左右が目まぐるしく入れ替わり、螺旋を描く。




 …………タッ………タッ……タッ……タッ…タッ……



「左……右……左……右……」



 左右が交互に入れ替わり――――叉門は目を開く。



「右だ!」



 ガチッ!!


 刀と爪が火花を散らす。

 叉門に牙が迫る。




「蒼影、お止めなさい」


 凛と透き通った声が、両者の耳に届く。

 そこには、浮世離れした美しさを持つ少女が、居た。



☆☆☆☆★★★★★★★★★★★★★

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ