[ 16 雪風 ]
【“17”と呼ばれし魔女】――――≪コールド17≫
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「蒼影、あたし達が捕まっていた部屋に、叉門を運んで」
「御意」
研究室と思しき部屋に向けて、身体を引きずる。
様々な言葉が頭の中を巡る。
(あなたは、この刀に認められた)
(手に馴染む…………こいつは『俺自身』だ)
(生命力の転移、それがこの計画の主幹だ)
(ミス・セヴンティーンの一族の血に、高い適性がある)
(姉の生命力が流れ込んだ)
(“雪風”を『媒介』と呼んでいた)
(そう、私は貴女の中に居るわ)
(無限の可能性に、目をそむけないで)
(吸収・転移時の生命力の劣化が無い)
(『生命力』以外の転移を否定するものではない)
――あたしの考えが、間違っていないのなら。可能性は、ゼロではない――
研究室に到着した。
叉門を、縛られていた台に乗せる。
蒼影には、部屋の外を見張らせる。
「“雪風”、お願い、力を貸して……」
雪風で自分の指を撫でる。
赤い筋が、血が流れる。
雪風を台座に配置する。
そして、忌まわしき記憶を、深層意識から呼び覚ます。
姉が殺された日のことを。
すなわち、「儀式が行われた時」のことを。
決して、忘れたことはなかった。
忘れられるはずがなかった。
忘れてはいけなかった。
あたしは、儀式を「再現」する――――。
◆ 弐 ◆
――――三ヵ月後。
一人の少女が、ライトクシアの森を歩いていた。
手には刀を携えている。
〈ここが沙雪の故郷か〉
「ノプチーニとはだいぶ違うでしょう」
少女は刀と喋っていた。
沙雪は、叉門の『生命力』を『意識』ごと、“雪風”に吸収させた。
本来、組織の儀式は、そこから別の個体に転移させる手順だが、
『転移』を実行しないことで、“雪風”に叉門を定着させたのだ。
“雪風”と叉門の相性など、様々な条件が重なってできたことである。
〈これからどうするんだ?〉
「まずはお墓参りをするわ。それから――」
〈それから?〉
「ゆっくり探せば良いわ。時間は余る程あるでしょう?」
〈責任、取ってくれよ〉
「ギルドに婚姻届でも出す?」
〈20歳になったらな〉
少女の足元には、いつも影がつき従っていた。
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