ヒロインの親友
思い出したのは、全て終わった後だった。
この世界は乙女ゲーム。そして、私に割り振られた役は主人公の親友だった。
この世界の元となったゲーム「重ねた掌」は、芸術学校が舞台で、5人の攻略キャラのどれか一人を選んで攻略する、恋愛と青春が詰め込まれたゲームだ。
さて、そんな世界の親友ポジな私こと雪村 友音はさっきまでヒロインちゃんと親友「だった」、えぇ過去形です。
なぜ、過去形か。そんな理由は簡単で私がこのゲームの記憶を思い出してしまったから。そして、客観的に自分を見ることができたからである。
思い出す前の私は、可愛いヒロインちゃんに精一杯尽くす使い勝手の良い女だったと思う。
寮で同じ部屋になったヒロインちゃんにいつも明るく話しかけ、なにかとイケメンたちと一緒にいることが多く、尚かつイケメンと一緒にいること以外は自分の事しかしないヒロインちゃんの反感を持つ周りを鎮めつつ、むしろ好印象になるようにヒロインちゃんのいいところを語る。ヒロインちゃんがなにか悩んでたら、勿論相談を受けるしアドバイスもする。そんな活動を続けたせいか、自他共に認めるヒロインちゃんの親友になっていた。
本当に大変だったな……この一年。
この乙女ゲームのヒロインちゃんは成り上がりタイプ。初めは、親戚やら友達やらに撮った写真を褒められる程度のヒロインちゃんが写真家としてプロを目指すのだ。他の人よりもたくさん努力しなきゃならない。それはわかっている、わかっているのだが、もう少し周りも見て欲しかった!!!!
気づいたらいなくなってるヒロインちゃんを探すのにどれだけ私の時間が削れたか!!!あの子、少し目を話したら基本厄介事を持ってくるんだもん!!!
さて、そんな私は一時期スランプに陥っていた。思ったような風景が写真に収められないのだ。流石にあの時は焦ったし、悔しくて何度も泣いた。そんな中でもヒロインちゃんは平気な顔して厄介事を持ってくる。女の先輩に絡まれたのはまだ可愛い方だ。あるコンクールの審査員の一人に気に入られてセクハラされて泣きついてきた時を思い出すと頭が痛くなってくる。ヒロインの美貌半端ねえ。
その時私が起こした行動も頭痛ものだ。ヒロインの攻略対象に知らせに行っただけだったんだから。
そこは先生もしくはコンクールの責任者に伝えろよ!!!
えぇ、みなさんもお気づきのようにこれはイベントです。2度目にセクハラされそうになったヒロインを、警戒していたヒーローが助けるっていうやつです。
そんなこんなでヒロインちゃんのフォローしつつ、自分の腕を磨いて、悩みまくってスランプ脱出。やっとのこさ一年過ぎました。そして終業式に思い出しました。ちなみにあれだけ尽くしてるのにもかかわらず、グループ活動またはペアにならなきゃいけない時にヒロインちゃんと同じになった回数は0回(ヒロインちゃんはいつも攻略対象者の誰かと組んでいます)です。しかも、私が必要なイベントとヒロインの成長に必要な相談以外でヒロインちゃんが私に話しかけてくれた回数も0回。これでヒロインちゃんもゲームの記憶あるんじゃね?使い勝手のいい駒としか思われてないんじゃね?
もちろん普段から一緒に行動してるわけでもありません。これを親友と言っていいのですか?
この役どころの美味しいところは、攻略対象者たちとヒロインの親友という理由で気軽に話しかけることができるし、話しかけられることもあることでしょう。(でも、ほとんどヒロインちゃん絡みの話しかしない)
今の私から言わせてみればそれしか返ってきません。いくら成績を犠牲にしても何も気づかずに目の前でいちゃつかれるだけです。
ってことで、私はヒロインちゃんの親友をやめることにします。
そして、ヒロインちゃんと関わらないでいいように学校もやめます。というか、今の私の成績じゃあ辞めるしかない状況に追い込まれてます。誰よりも上を目指さなきゃいけない世界で底辺を這いずりまわっているのですから。今すぐ親に言って退学手続きをしなきゃな。
私はもう疲れました。次は普通の子と友達になりたい。
乙女ゲームやら、逆ハーありのあるアニメを見てヒロインの親友って使い勝手の良い駒だよなと思ったことがはじまりです。悪役令嬢は因果応報、自業自得だろうけど、何もしてない親友が一番可愛そうなことになってないか?と。まぁ、親友ちゃんが腹黒だったりしてなんとかなってたりするときもあるんですけどねw
気が向いたら続きを書きます。