sweetsweet4
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場所を移動して美愛と羅刹丸は新里の家の前に来ていた。当初は紅葉も着いてくる、と言って聞かなかったが呪いの親玉がいるかもしれない場所に戦う力がない紅葉を、大切な親友である紅葉を連れて行けるわけもないので、美愛はなんとか説得して紅葉を帰らせた。
「別に連れて行っても良かったんじゃねェの?俺様達が守ってやりゃあ済む話しじゃねーか」
「私は斬って捨てる力はあるけども人を守る力はない。連れて来て紅葉を怪我させたら私は退魔師失格よ」
「ずいぶんあの嬢ちゃんにお熱だな。初めて出来た親友がそんなに大事かよ」
「……」
羅刹丸の話しを無視して美愛は新里家の玄関のチャイムを鳴らす。パッと見だが新里の家は紅葉が言ってた通りのセレブ、と言う言葉が似合う家だった。
住宅街なのに一際目立つ建物のデカさ、派手な装飾。これで金持ちが住んでない、と言うのは誰に言っても信じてくれないだろう。
良く言えばゴージャス、悪く言えば落ち着かない。
美愛は新里の家を見てそんな事を思った。
「やっぱ私は庶民の生活の方が良いわね。金は欲しいけど」
「一般人は神社になんか住んでネェだろ」
「うるさい、封印されたいのか」
そんな会話をしながら新里を待つが、しばらくしても新里が出てくる気配はなかった。入れ違いでタイミングが悪かったか、と美愛は諦めて新里家を後にしようとすると
「おかしぃな、なにか妙だ」
と、羅刹丸と思えない真面目な口調で羅刹丸は呟く。普段、そんな態度をとらない羅刹丸なので美愛は少しびっくりして羅刹丸に尋ねる。
「何が妙なのかしら。この家が気に入ったの?」
「確かにテメェが住んでるあのオンボロ神社よりはこっちの家の方が気になるけどよォ…」
「…ずいぶんな言い方ね」
「呪いの気配を全く感じねェ。ここにその悪霊の親玉みたいなのがいるかと思ったんだが」
羅刹丸の意外な一言にようやく美愛も気付く。
―――呪いの気配が感じられない。
美愛の神社まできて、新里の身体にこびりついて離れないくらいの強烈な呪い。
バラバラ殺人が起きたのはこの新里の豪邸内だ。美愛も退魔師をやっているから羅刹丸ほどではないしろ、呪いの類いは感知できる。しかし、この豪邸からはそんな妖の類いの力を微塵も感じない。
そんな事を考えて、美愛はとある事に気付く。
「…そういえば新里はなんでこの事件が悪霊の類いの事件だってわかったのかしら」
新里は美愛に悪霊を退治してくれ、と頼んだが新里篤以外の家族一同が見ていた悪霊の悪夢は一切見ていない、と言っていた。
見ていないのに何故悪霊の仕業だと理解できた?
美愛に嫌な予感が過ったが
「―――誰っ!?」
不意に誰かに叫ばれてその意識は途絶えた