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sweetsweet



「お仕事入ったんだ。また暫くみーちゃんが遠くに行っちゃう感じがするなぁ…」



寂しいなぁ、と。荒汐紅葉(あらしおもみじ)は本当に寂しそうな顔をしてチョコレートケーキを頬張って言った。美愛はちょっと困った顔で紅葉に答える。



「そんな事言わないで。連れて行ったら紅葉を怪我させてしまうかもしれないし」


「もうっまたそれ!私だってみーちゃんの役に立ちたい!あの時のお礼だってまだしてないし!」


「あの時はあの時よ。紅葉は気にしなくていいの」




ぶーっと頬を膨らまして子供のように怒る紅葉を見て美愛(みちか)はクスクスと笑う。同時に平和だな、と美愛は砂糖とミルクを普通の人間が見たら引かれるぐらい入れた珈琲を飲みながら思う。


友人の荒汐紅葉と他愛のない会話をすることだけが美愛の心が安らぐ瞬間だ。


ここは都市のとあるファミレス。

駅の近くにあるのか、学業を終えた学生達がよく集まる。特に女子学生達に人気で、ここのファミレスのデザートは特に美味しいと評判のファミレスだ。




「一家全員バラバラ殺人事件、息子は無傷で詳細がわからぬまま事件は迷宮入り、か…ふーん」



美愛は珈琲を片手にスマートフォンのニュースを見ながら興味無さげに言う。美愛に仕事の依頼をしてきた新里篤が美愛に教えたものだった。美愛の反応が気になったのか、紅葉がその話題に食い付いた。



「あ、その事件私も知ってるよ。怖いよねぇバラバラ殺人なんて…」


「そんな有名な事件だったの?」


「そのバラバラ殺人があったお家の人達がテレビでも紹介されてたセレブでね、一週間くらいニュースで話題にされてたよ」


「アイツそんな有名人だったのか」



美愛が言うアイツ、とは昨日美愛に仕事依頼をしてきた無愛想な男、新里篤の事である。美愛は美少女らしからぬ汚い笑みを浮かべて



「報酬アップの口実ができたわ…ウフフ」



と、紅葉に聞こえない声で言った。



「でもその事件、怪しいよね。息子さんだけ生き残って他の人が全員殺されちゃうなんて」


「紅葉この事件に詳しそうだから聞くけど、その事件が起こった家の家族構成ってどんな感じだった?」


「確か生き残った息子とその母親と父親の三人だったはずだよ」



美愛は普段山奥の神社でひっそりと暮らしている為世間に疎い。こういった話しは現役バリバリJKの紅葉に頼る事が多い。チョコレートケーキを食べ終わった紅葉がおしぼりで口を拭いて言葉を続ける。



「だからこそ怪しいんだよその生き残った息子さん…最初はその息子さんが犯人だといろんなところで話題になったんだけど」


「けど?」


「証拠不十分で犯人と断定出来なかったの。で、今に至る…って感じだよ」


「まぁ証拠がなきゃそんなもんよね」


「でもやっぱその息子さん怪しいよ!なんか特殊な事して隠蔽してるんじゃ…」


「―――その可能性はゼロにちけぇと思うぜ」



―――ふと。

この女子二人組の空間にいやに存在感のある男の声が聞こえる。新里と美愛が二人で話してた時にも聞こえた謎の声だ。



「アイツから微弱だが素敵で旨そうな呪いの匂いがした。今回の事件は退屈しなさそうだなァ」



突如美愛の背後に少し細い男がケタケタ笑いながら現れる。全てを見下したような目付き、聞く者を不快にさせる笑い方、鬱陶しい長髪、そして、下半身はほとんど薄くなって見えない人間の形をしていない何か。


例えるなら幽霊。

悪く言うと不気味な人ならざる何かがヘラァとした顔で美愛の直ぐ近くに現れた。

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