神城美愛について
名も知らぬ山奥の神社。
そこは口では言い表せない神聖な空気が充満していた。その場にいるだけでピリピリする、そんな感じがした。
「アンタに頼めば幽霊の類いは退治してくれると聞いた」
男性が正座をして巫女服の少女に話しかけた。男はシャツとネクタイという神社には似合わない服装で真っ直ぐな目をしていた。名を、新里篤と名乗った。
「…知らない間に私も有名になったものね。えぇそうよ。私がこの神社で巫女兼退魔をしている神城美愛よ」
神城美愛と名乗った少女は真っ直ぐな瞳と凛とした顔立ちをしていた。ややショートヘアーの黒髪と巫女服と相まってかとても清楚で近寄りがたい雰囲気を醸し出している。しかしどこか儚げで触れてしまえば消えてしまいそうな、そんな危うさを新里は感じた。
「で、その内容は?」
新里が美愛を観察していると美愛の澄んだ声で現実に戻された。こんな儚げで、危うさすら感じる女に任せて大丈夫なのかと思ったがこのまま話さないと話しが進まないので、新里は不安を持ちながらも口を開く。
「悪霊が、うちの親族を皆殺しにしたんだ」
悪霊、皆殺し、と言う単語に美愛の眉間が少し動く。美愛は少し悩んだ顔をしてから新里に遠慮もせずに
「悪霊に殺されるなんて、弱い人間なのね」
と言った。
新里はギョッとしたが美愛の吸い込まれそうな瞳に負けて言い返そうとしたが強くは言えなかった。
「…全人類がアンタみたいに強いと思わないでくれ」
「それは言い訳よ。霊が人間を殺すなんてできない。霊は人に干渉することは本来できない事なのよ。それが出来てしまったという事はその親族達は自殺願望でもあったのかしら?」
霊、というのは心、身体が弱い人間を好む。殺されたという事は相当な心身にダメージを負った人間という事になる。
「…弱ってたんだ」
「弱ってた?」
「少し前から俺の親達が夢でうなされるようになった。夢の内容は刀を持った男が切りかかってきて、切られた後も身体をバラバラにされる夢と言っていた」
美愛の予想とはちょっと違ったが精神汚染をされて心が弱っていたのはあたっていた。ふーん、と同情も込めずに美愛は
「つまり夢うつつの世界から侵食していった感じなのね…ふん、悪霊のやりそうな事ね」
まぁそれで精神を汚染された人間もそこまでだけどね、と美愛は吐き捨てた。
「で、少し気になる事があるんだけど」
新里の事なんてお構い無しで今度は美愛が新里に訪ねる。
「新里家はその悪霊とやらに皆殺しにされた、とあなたは言ったけどどうしてあなたは殺されてないのかしら」
そう問われ、新里はびっくりしたが、美愛の冷静な姿を見てほんの少し落ち着いた。そして、口を開く。
「―――わからないんだ、何もかもが」
新里が真剣な顔でそう答えた。