プロローグ
「ねぇみーちゃん、そのおしるこジュース美味しい?」
荒汐紅葉が口に今日の昼飯のクリームパンを頬張りながらみーちゃん、と呼んだ少女、神城美愛に聞いた。美愛はおしるこジュースを飲み干してから紅葉の問いに答えた。
「私はこのおしるこジュースがないと死ぬ。言うなれば栄養ドリンクみたいなものね」
「めっちゃ身体に悪そうな栄養ドリンクだね…というかそんな摩訶不思議なジュースを飲んでるの身近じゃみーちゃんぐらいしかいないし」
「みんなまだまだ舌が子供なのよ。これは大人にしかわからない味なのは私だって理解しているわ」
「…たまにみーちゃんって可愛らしいアホになるよね…」
「可愛いなんて言ってくれるじゃない」
罵倒したはずだが美愛は照れ顔であはは、と笑う。全く会話が噛み合って無いが紅葉は気にする事はなかった。いつものことなので慣れっこなのである。
「みーちゃん、最近お仕事大変なんでしょ?最近ちゃんと寝てる?大丈夫?」
「…アンタって急にお母さんみたいになることあるわよね…そうね、今回の敵は結構手強かったわね。まぁおかげさまで報酬もいっぱい貰えたんだけどね」
ほら、と言って美愛は分厚い封筒を紅葉に見せる。中には大量の札束が入っており、思わず紅葉はほえーっと間抜けな声を出してしまった。
「これ、私の時より数倍多いよね」
「アンタの時は特別だったけど今回はだいぶ手を焼いたからねぇ。まぁしばらくおしるこジュースに困る事はないわ」
「だからなんでおしるこジュース…」
「疲れた時に甘いもん採ると回復が早いのよ」
よくわからない屁理屈を言って美愛はケタケタ笑ってみせる。紅葉はしばらく封筒をじっと見てねだるような顔で
「このお金で焼肉いかない?」
と言った。
現金な奴めと美愛は思ったがこんな大金1日で使いきれないし、まぁいいかという感じでため息をついて口を開く。
「…良いわよ別に。今日は美愛様が全額おごってあげるから好きなだけ食べなさーい!」
「わーい!みーちゃん大好き!」
紅葉がガシッと美愛に抱きついた。友人のがめつさに半苦笑いを浮かべながらポツリと呟く。
「どっかに寝てるだけでお金が手にはいる甘い甘い仕事はないのかなぁ」
美愛にとって、友人と戯れてる甘い日常は、仕事の辛さを忘れられる至福の一時なのであった。