始まり
この街、雷光市はある事が有名だ。
それは、この街でしか出来ないゲームがあるからだ。
それは人を電子情報にし、サーバーに送りゲームをするものである。
そんな街には、私立虹彩高校がある。
普通科、工業科、商業科、農業科、看護科などいろいろな科が集まった学校がある。
全員が学校経営のアパートに住んでいる。
俺は虹彩高校工業科機械科に入学が決まった天鳴樫呂だ。
俺がこの学校に来た理由は一つ、ゲームをするためだ。
実際、高校で単位さえ取れていればこの街で働く事が約束されている。
しかも、授業は1教科90分の4教科の分が1日の授業だ。
そして、学校の決まりに1日に1回はゲームにログインするようになっている。
入学式の時にゲームがみんなに配布され教室で詳細設定、その後は家に帰ってゲームを楽しむようになっている。
そして、入学式があってアパートに帰った俺は配布された箱を開けた。
そこには腕時計と取扱い説明書が入っていた。
俺は説明書を読む。
腕時計を利き手とは逆の方に着けて『ログイン』っと言ってキャラクター作成をするらしい。
俺は腕時計を左の腕に着けて書いてあったとおりに言う。
「ログイン。」
すると、体が光に包まれ体の感覚が消えた。
意識がしっかりしていて情報の中を飛んでいく。
そして、出口が見えて投げ出された。
ゲーム内
始まりの草原
俺は体の感覚が戻って来たので自分の体が草の上に転がっているのが分かった。
「動けますか?」
横から声を掛けられたので立ち上がりそっちを見る。
そこには、巨大な羽ペンを持った少女がいた。
「始めましては、私は入学生の情報を管理する『3年』のチルルと言います。早速ですがあなたは1年のカロンさんですね。今から武器とログアウト場所の設定をしますので少し話に付き合ってくださいね。」
なぜか、3年を強調したのか解らないがそう言って一拍置き、先輩は話し始めた。
「次のうち、使いたいモノを選んでください。1・剣2・斧3・槍4・弓5・拳6・杖の中から1つ選んでください。」俺は悩む必要はなかった。
「1の剣でお願いします。」
すると先輩は肩からさげていたバックから紙を取り出し胸にあったボールペンで何か書き質問を続けた。
「次のうち、使う武器を選んでください。1・両手剣2・片手剣3・ナイフの中から1つ選んでください。」
これも即答する。
「両手剣でお願いします。」
先輩は紙に書き込み次の質問をしてきた。
「最後の質問です。ログアウト場所はログインしたところでいいですか?学生はそっちの方が早く家に帰れますよ?」
先輩がアドバイスしてくれた。「それじゃお願いします。」
先輩は紙に書き終えたのかこっちを見て、
「お疲れ様、このゲームを楽しんでね。後、紅髪の拳闘士のセキナってキャラに会ったら学校に来るようにってチルルが言ってたと伝えといて。」
っと言ってきた。
「解りました。会ったら言っときます。」
答えると先輩は嬉しそうに言った。
「それじゃ、コレは武器と私のキャラカードね。キャラカードは本に入れていればメールを送れるようになるからなんかあったら連絡をくださいね。後はそこのゲートから街に行けば設定は完了ね。お疲れ様。」
先輩はそう言って俺をゲートに突き飛ばした。
また、体の感覚がなくなるより早く、街に着いた。
中央街
セントラル
俺は、この後どこに行くか考えてなかった。
そんな時だった。
「そこ退いて!」
小さな女の子が走ってくる。その後ろから数人の男が走ってくる。
俺は女の子を建物の陰に突き飛ばしそこを見えないように立つ。
男達はそのまま真っ直ぐ走って行った。
「ありがとう!助けてくれて。私は機械科1年のウォン。あんた名前は?」
ウォンが質問してくる。
「俺はカロン。ところでなんで追いかけられてるの?」
俺が質問するとウォンは信じられないことを言った。
「この世界に入った時にあの人達の上に落ちちゃって『バケツゼリー』を駄目にしちゃったから。」
バケツゼリーとは、イベントで3日に1つしか取れない稀少な果物と雪山の何処かにいる雪だるまが作るバケツ、森の湧き水から出来る最高級品のゼリーだ。
PTの平均レベルが10の所しかない。
「あのー、店の前で話し込まれると迷惑なのですが、もしかして、何かお困りですか?」
建物の陰の俺たちの隠れた場所よりもっと奥から男が出てきた。
「すいません。商売の邪魔をしてしまったみたいで。」
俺が謝ると男は、
「うーん?気にしなくていいよ。それよりそっちの子はバケツゼリーをだめにしたウォンって子だよね。」
ウォンが逃げようと背を向けて走り出したが、それよりも早く首を捕まれてしまった。
「状況は大体理解したよ。その気があれば手伝ってあげるよ?」
男が提案してくる。
「お願いします。でも、俺はまだレベル1なんで足手まといかと思うんですが………」
俺が言うと、ウォンが続けて言った。
「私はレベル3です。助けてもらっても平均が足りなくないですか?」
すると、男は、
「俺は、レベル70だから、2人とも行けるよ。」
言った。
「よろしくお願いします。私が変な事しなければこんな事にならなかったのに。」
ウォンが頭を下げる。
「気にしない。バケツは入口まで持ってきてくれるって、今からなら湧き水を取ってから行こうか。」
男が言った。
「「はい!」」
俺とウォンは勢い良く返事をした。
光の森
フォレストライト
男は、ミックと言った。
湧き水までの道はほとんど真っ直ぐになっていてその途中にボスモンスターがいる。
ミックさんはナイフを両手に持ち俺たちの安全を確保してくれた。
そして、ボスモンスターの前まで来た頃には、俺のレベルは6まで上がっていた。
ステータス振り分けをするように言われた。
左手の時計からステータスを開き『剣』を選択、すると『両手剣』『片手剣』『ナイフ』と表示された。
俺は両手剣に全部を入れた。
すると、テロップが流れた。
『スキルが増えました。『斬り払い』『飛び斬り』『円周斬』』
技の詳細は解らないが実践で使ってみれば解るだろう。
ウォンも終わったらしく、ミックさんが声をかけてきた。
「あの、『デカプニュン』を2人で倒して、湧き水を取ってきてね。時間は10分でね。じゃ、俺も少し別の所に行ってくるね。」
言った瞬間に森の奥に走って行ってしまった。
デカプニュンは、その近くの水から発生するモンスターのボスだ。
「先に行くよ。」
ウォンが駆け出して行った。
俺もそれに続く。
ウォンがデカプニュンにナイフを斬り裂いた。
デカプニュンから一部が飛んでいった。
ウォンは続けて、
「『一閃』!」
っと叫ぶ。
ナイフを突き刺しながら飛び相手の上を超えて真っ二つにした。
「『影歩斬』!」
背後に着地した瞬間に続けて技を発動した。
横にナイフを振った。
デカプニュンは二つの技を受けてバラバラに飛び散った。
デカプニュンをウォンは1人で倒した。
それもあって油断したのだろう。
横からプニュンが攻撃をしてきたのに反応できなかったのは、そのまま倒れてしまう。
周りを見ると大量のプニュンがいた。
プニュンたちは一斉にウォンに襲いかかった。
俺はウォンの所まで走り、大剣を抜きながら技を使った。
「円周斬!」
技を叫ぶと同時に体が勝手に剣を持ちながら回転した。
剣が風を圧縮して、先の方から流れを出した。
周囲にいた全てのプニュンを切り裂いて消滅した。
俺はウォンを見る。
攻撃を受けた脇腹を抑えながら涙目になっている。
俺はウォンを背中に抱えて湧き水のでているところまで歩いた。
湧き水が出ている所に着いた時、横からミックさんが来た。
「お疲れ様。バケツと果実は取ってきたよ。後、これは打撃攻撃の痛みがある時に使う薬草。ウォンに使ってあげるといいよ。」
そう言って、アイテムを俺に渡してきた。
俺は早速、ウォンに使おうとする。しかし、
「ミックさん。どうやって使うんですか?」
使い方を俺は知らなかった。
すると、ミックさんは使い方を教えてくれた。
「服を持ち上げて打った所に直接つけてあげるんだよ。」
簡単に言えば、現実の処置と同じのようだ。
それから五分が経過したころには、ウォンは痛みがなくなったらしく体を動かしていた。
「さて、材料も無事に揃ったし作りに行きますか。」ミックさんはそう言って街に行く道を歩き始めた。
俺とウォンもそれに続く。
中央街
セントラル
大通り
街に着いた俺たちは大通りの飲食店『KABIGON』にきていた。
ここで、ミックさんの友達がバケツゼリーを作ってくれるらしい。
「やほー。ゴン!厄介事を持って来たよん。簡単な仕事だけどね。」
ミックさんが変な声を店に出しながら入って行く。
店の中にいた人たちが見てくる。
「おぅ。なにしにきた?まさか、ただ飯食いに来たわけじゃないよな?」
奥から少しぶかぶかした白い調理服の男の人が出てきた。
「後、他の人の迷惑になるから裏から入ってきてくれ。これで16回目だぞ。」
少し怒っているようだ。
「一応、手土産に『ダイワのメロン』を20個買ってきたから店の人にも配って食べてくれ。」
ミックさんが言うと、店の中にいた人たちが吃驚したような声をあげた。俺たちと1人を除いて。
『ダイワのメロン』
この世界でも有名な食べ物の1つでダイワというキャラが作るメロンである。
1つが10万以上の価値がある。
「そうか。なら、早速切らせてもらおう。ルイン!セイン!切っといてくれ。」
調理服の人が叫ぶと、すぐに返事があった。
「「わかりました。すぐ行きます。マスター。」」
男女2人の声だった。
「俺たちは奥に行くぞ。その後ろの奴らがどうすればいいか困ってるぞ。」
調理服の人が言い、それに続く。
そこは厨房だった。
「っで。何を作ればいいんだ?」
振り向きざまに言われた。
「ゴン。バケツゼリーを頼む。報酬は『調理師の証』だ。」
ミックさんが言うとゴンさんは即答した。
「めんどくさい。他を当たれ。この前、作ったのでも3日はかかったからな。」
ゴンさんが言い放つ。
すると、今まで黙っていたウォンがゴンさんの前に行き頭を下げた。
「ごめんなさい。私、始めたばかりで何もできないけど、なんでもしますから!」
ウォンが叫んだ。すると、ゴンさんは、
「なんでもか?本当になんでもするのか?」
ゴンさんが聞いてくる。
「はい。なんでもします。」
ウォンがはっきり答える。
「なら、ミック!こいつはお前に任せる。仕事を受けよう。」
ゴンさんが言うと、
「この子は譲る気はないよ。」
ミックさんが笑いながら受ける。
それから俺たちは素材を渡し、店を出た。
中央街
公園
「そろそろ1時だから、解散しようか。」
ミックさんが言う。
「わかりました。それじゃ、俺は落ちます。」
ミックさんに頭を下げて俺はログアウトした。
自室
体が再構築され自分の部屋に戻って来た。
椅子に座っていた状態で部屋の真ん中に……
椅子は部屋の端にある。
俺は背中から床に落ち、頭を強打した。
痛みで声にならない声を出しながら床を転がる。すると、ケータイにメールが届いた。
俺はメールを読む。
『うるさい!』
大家さんからのメールだった。
俺は、痛みがなくならないままベッドで横になり、眠りりについた。