戦闘の準備を始める
二階にあった、折りたたみの机と椅子を、元ショールームの一階へ持ってきていた。それらの前には、テレビ台とテレビが置いてある。
店に戻ると、立ったまま喧嘩が始まった。
エレンは怒りが収まらない。
「あんたはバカなのかい。手榴弾を四発も地下道に投げ込んだって!」
耳をほじりながら、
「俺は一人で偽人間たちを殲滅するといったはずだ」
知ったこっちゃないといわんばかりの態度だ。それが、またエレンの怒りを爆発させる。
「軍にいた人間が作戦を無視かい。あの地下で、病院側がアバターに人間を与えている証拠を掴むために吉田が潜り込もうとしてたんじゃないのかい!」
吉田が間に入った。
「まあまあエレンさん、人間をアバターに与えている証拠を撮影することはできなかったですが、あそこが快楽殺人の場所とは思えませんよ。たぶん、エネルギーを補充させる場所だと思います。死体を食べさせていたんじゃないですか?推測ですが、病院側の本当の目的は、スライムに身寄りのない人たちを食べさせて、偽人間にさせて、患者として入院させていたのではないかと思います」
松中博士が加わった。
「あの病院は、アバターの在庫を作っていたってことですね」
「そうだと思います。私のように、低い価格のアバターは、記憶を消して、この時代の観光用に、レンタルや販売されています」
「どこからスライムは現れるのですか?指定した場所に送れるということですか?」
「私にはわかりませんが、戻ったときに調べてみます」
「次は、ゲンさんのいってた、南町の工場を探りましょう」
「ドク、藤原はあたしらまで生き埋めにしようとしたさね」
「何度もいっているだろ、化け猫とポンコツアンドロイドが地下に降りる前にカタをつけるつもりだったんだ。吉田は仮に生き埋めになってもその体から離れて、一旦未来に戻ればいいじゃねぇか。その体は、エネルギーが欲しくなればスライムに戻るんだろ。スライムなら、どうにかして生き埋めになっても出てこれるだろ」
ルミに話を振った。
「ルミ、何かいってやるさね」
困った顔で、
「あたしは戦ってないのに、何もいえないよ。でも、約束は守ったほうがいいと思うよ。デートをすっぽかされたりしたら、傷つくもん」
ルミの方を見ずに、
「このことと、デートの話は、飛躍しすぎだ。デートの約束は絶対に守る」
「ケンちゃん、約束を守ってほしいのよ」
「...」
すかさずエレンが、
「約束するさよ」
突如、殺気をはらんだ藤原が、
「化け猫、調子にのるなよ!」
エレンも藤原の目を見ながら、
「ちょうどいいさね。ムカついてしかたなかったさね。表でやろうじゃないか!」
突如、店のドアが開いた。
「配達です」
ルミが伝票を確認すると、松中博士の方を向き、
「ドクがインターネットで注文したの、届いたみたいだよ」
松中博士が藤原の耳元で聞いた。
「防衛省関係の人間か、わかりますか?」
「観察しておく」
トラックから、店の中へ、大量の箱が運び込まれた。
配達員が帰ったあと、入れ替えのように、ドアが開いた。
「窓ガラスにフィルムを施工に来ました」
松中博士が対応した。
「全ての窓に貼ってください」
「わかりました」
松中博士は藤原に小声で、
「盗聴器などを仕掛けられないように、見張っておいてください」
フィルムと道具を、二人の男性が搬入して、作業を始めた。
松中博士がエレンに、
「今から行ってきてくれるかい」
「そうするさよ」
「ルミ、車で一緒に来てほしいさね」
「いいけど、どこに行くの」
「車の中で説明するさね」
松中博士は吉田の方を向き、
「吉田さん、搬入された箱を開けて、セッティングを手伝ってくれますか」
エレンとルミは、エルグランドワゴンに乗って、店をあとにした。
「乗ってきた車に載せてる物を取りに行くさね」
「車を店に持ってくればいいんじゃないの?」
「あの車は神怪山にとめてたさね。防衛省の井出は、あたしたちの車とルミのシルエイティを見たはずだから、使わないほうがいいさね」
「だから、シルエイティを店に持ってきちゃ駄目っていったんだね」
タワー式立体駐車場に着き、エレンが車を降りた。
係員に駐車券を見せ、
「ちょっと荷物を取りたいさね。車を降ろしてほしいさね」
係員は頷き、操作スイッチを押す。
ルミへ大きな声で、
「ルミ、手伝ってほしいさね」
エレンは、トラックの後ろのドアを開けて、収納箱のような物をルミにニ個渡した。ダンボールでいえば、100サイズぐらいだ。
エレンは、もう一つの頑丈そうな大きな箱を抱えて、ルミの待つエルグランドに戻った。
「次は、ここに行ってほしいさね」
「サバイバルゲームの店?」
買い物が終わり、エルグランドワゴンが、店に帰ってきた。
外から見た店の窓には、ミラーフィルムが貼られ、雰囲気がガラリと変わっている。
エレンがドアを開け、その後ろに、荷物を持ったルミが入ってきた。
店の内部を見渡したエレンが感想をいう。
「ドク、立派な研究所になったじゃないかい」
机の上には、神怪山の研究室と同じ機材が並んでいた。
「吉田さんも手伝ってくれたから、助かったよ。藤原さんが業者を見張っていたが、防衛省関係じゃなかったよ」
「脳剣はどこにいるさね」
「外で鍛錬をしてると思うよ」
「フン、やっぱり脳剣だね。ドク、運んで来たから手伝っておくれ」
エルグランドワゴンに積んでいた荷物を店に運び入れた。
エレンは、ダンボールの箱を、次々に開けていく。中身は、空のペイントボール殻やペイントボールガン、高圧まで耐えられる輸入エアータンクなどがでて来た。
藤原が戻ってきて、冷蔵庫を開けた。缶ビールを手に取り飲んだ。
それを見たエレンが、
「勝手にあたしのビールを飲むんじゃないよ」
「...」
「無視するんじゃないよ」
藤原が、缶ビール片手に近づいてきて、ダンボールの中身を見た。
「こんなおもちゃで何ができる」
「あんたの左手、どうなったさね?」
「俺の左手は、お前が...あー!」
「あの溶解液をペイントボールに仕込むさね。あんたでも防ぎけないさね」
松中博士が、
「エレン、始めよう。南町の工場へ行くとき、武器は必要だよ」
ルミが携帯を見て慌てた。
「エレン、大変なことに」
ルミがテレビをリモコンでつけると、ニュースが聞こえてきた。
『巨大な白い猛禽類が猿をスカイタワーに落としたようです。写真を拡大してみましょう。猿は何かを背負ってますね。リュックですか?』
エレンは悲鳴のような声を上げた。
「ブサとコンじゃないか!何でこんなところに」
松中博士も驚いた。
「エレン、すぐに探して保護するんだ」
「エレン、ドク、車は店の前だからすぐに出せるよ。スカイタワーに行きましょう」




