エレン 復讐を誓う
エレンもキヨを見ていた。
エレンはニヤっとしてて、
「あたしゃ、キヨとも話してみたいさね」
松中博士は、急がせるように、
「エレン、今日は帰ろう」
「もう少しみんなで話したいさね。特にキヨとは」
ヨシが松中博士に、
「もう少しだけいいじゃねーか」
ヨシが手を上げて、声をかけた。
「キヨ、こっち来いよ」
松中博士は立ったままでいる。
戦闘モードに入ったのだ。
キヨがエレンの横に座った。エレンは、コップに酒を並々と注いでキヨに渡した。
「キヨも飲むさね」
キヨは、いっきに半分ほど飲み干した。
エレンは笑みを浮かべ、挑戦するような目つきで、
「キヨ、いっきに飲みなよ」
キヨは、全部飲み干した。
もう一杯注いでキヨに渡した。
エレンが立ち上がり、ホームレスたちに聞いた。
「この中で、誰が一番酒が強いか飲みくらべはどうさね」
ヨシが酒の入ったコップを掲げて、
「嬢ちゃんがやるなら、やってもいいよ!」
「もちろん、あたしもやるさね」
日本酒の飲みくらべが始まった。一升瓶の中身が減っていく。
エレンがウイスキーの瓶を持ち上げた。
「次はこれさね!」
ストレートでコップに注いだ。ホームレスたちは、次々に脱落し、ブルーシートの家に戻っていく。そのまま、地面に寝てしまった人もいる。
最後にエレンとキヨが残った。
松中博士は、戦闘モードのまま、ずっと二人を見ている。
エレンは、キヨに体を向け、ニヤリっと笑って、
「やっと二人きりで話せるさね」
無表情なキヨが抑揚のない声で、
「あんたら人間じゃないよな」
エレンが目を細め、鋭い視線で、
「あんたも人間じゃないさね。何をする気さね」
「俺たちも知らない。わかっていることは、人間を取り込み、エネルギーにして、記憶を学ぶということ。もう一つは仲間を増やすこと。だから、人間以外は、敵対しない限り何もしない」
「誰からの命令さね」
「それもわからない。本能、命令、プログラム。そう、逆らえないもの」
「今は、何匹いるさね」
「何人いるかはわからない。この会話も、仲間に聞こえているかもしれないよ」
「お前たちは、政府の特殊部隊と戦ったことはあるのかね?」
「特殊部隊?」
キヨは少し考えて、
「もしかして、我々を襲ってきた、あの弱っちい人間どものことか?それなら今は我々の部隊になっているよ」
「食ってなり変わったのか」
「我々はすでに、もっと上までなり変わっているよ。我々が首相になりかわれば、どうなると思う?」
松中博士が会話に割って入った。
「エレン、行こう」
エレンは、それを無視して、
「この人達も食べるのかい」
「いや、彼らは優しくしてくれたから最後にする。一週間後か、一ヶ月後か、一年後か」
松中博士は、エレンの腕を掴み引っ張った。
「エレン!帰るぞ!」
エレンは、立ちながら、
「キヨ、今日は食わないと約束するさね」
「約束しよう」
松中博士とエレンはこの場を去っていった。
エレンと松中は、公園のベンチにいた。
「ドク、監視カメラがないところを通るって、すごく遠回りさね」
「仕方がないよ。防衛省に見つかると追いかけられるからね」
「今日はいろいろ分かったさね。偽人間は普通に会話ができるさよ。奴らはただの化け物じゃないさね。ドクより賢い人間が偽人間になったら、何を作り出すかわからないさね」
「エレン、それより問題なのが、政府の重要なポストに偽人間がいることだよ。このことを知らない人間は、偽人間を排除した我々を、殺人犯として手配するだろう。人知れず、偽人間を排除しないといけないね」
「それだけじゃないさね。それを知った偽人間たちは、あたしたちを襲いだすさね。ドクには、作戦があるのかい」
「まずはゲンさんに会って情報収集しよう。何かわかるかもしれない。私たちは人間ではないので、抵抗しない限り襲われないみたいだしね」
エレンは、ベンチで横になった。
「ドクに任せるよ。でも、今日は楽しかった。あたしゃ、また人間の友達ができたさね。ねえドク、彼らは友達だよね?」
「私も、友達がいなかったからわからないけど、友達だと思うよ」
「明日、ゲンさんのところに行く前に、ヨシさんたちにもう一度会いに行こうよ。あの場所を離れるように伝えないといけないさね」
「そうだね、酒とつまみを持っていってから出発しよう」
次の日、エレンと松中博士は、繁華街へ行く前に、ヨシさんたちに会いに河川敷にやって来た。
ホームレスたちを見て、エレンの顔色が急に変わった。そこにいたキヨに向かって歩いていく。
ヨシさんがニッコリ笑って、エレンに話しかけた。
「嬢ちゃん、昨日はありがとな。美味かったよ」
エレンは怒りの形相で、ヨシさんに向かって、
「ヨシさんのふりなんかするな!スライムが!」
キヨもエレンに近づくと、
「僕は食べていないよ。昨日、僕と君との会話を聞いた仲間が五人ここに来て食べたのさ」
「なぜ止めなかった。世話になったと言ってさね」
「僕は僕が食べないと約束したけど、彼らを守るとは言ってないよ。言ってることが、おかしいかい」
エレンは、キヨを睨みつけた。
キヨは、続けて、
「大体、君たちが僕に近づいたから彼らは食われたのさ。僕たちの会話を聞いていたかもしれないって理由でね。君たちのせいだよ」
エレンは、両手の拳を握って下を向いていた。
松中博士がエレンに、
「行こう」
エレンは、歩きだした。
松中博士は、エレンの肩に手を回し、
「エレン、よく我慢したよ」
エレンは、下を向き歩きながら、
「ドク、あたしにも奴らを殺す理由が出来たさね」
感想って難しいと思います。なので、番号を書いていただけないでしょうか。
これだけで、書く励みになります。
1)話が面白い
2)キャラが面白い
3)文章は普通なのに、読んでしまう
4)面白くないのに読んでしまう。
例えば、1
これだけです。
見えない人にではなく、見える人に書きたいです。一人でいいです。