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エレン対防衛省特殊部隊2

命令が終わると同時に、アンドロイドは右側の大型リボルバーを抜いて撃った。

エレンに大型の麻酔弾が命中し、銃声とともに森の中に弾き飛ばされた。

井出は隊長の藤原とアンドロイドに命令した。

「森に入って、エレンを捕まえて連れてこい。歩くこともままならんはずだ」

藤原は半笑いで井出を見つめた。

「いやですよ。猫は森の中に誘ってるんですから。一旦引いて、森の木を切り倒すか、燃やす準備が必要です。森に入っては死人が出ますよ」

井出は藤原に語気を強めて命令した。

「エレンには、麻酔弾が刺さっている。今しか捉えるチャンスはない。行け!」

藤原はその言葉を鼻で笑った。

「刺さってるわけないでしょ。俺は行かないっすよ」

名無し部隊の隊員に向かって、

「お前たちも行かなくていい。殺されるだけだからな」

井出は藤原に怒りを覚えた。

「上官の命令は絶対だ!」

藤原は返事もせず、そっぽを向いた。

「戻ったら上に報告するからな」

井出はアンドロイドに合図をした。左側のガンホルダーからオートマチックガンを引き抜き、森の中に入って行った。

森の奥から、「う〜」というエレンの痛みを堪える声が聞こえてきた。その方向にアンドロイドが歩いていく。

正面にエレンが現れた。右の唇を釣り上げ、ばかにした笑顔で、大型の針が付いた麻酔弾を右手に持ってブラブラさせている。

「この程度の物が、あたしに当たるわけないさね。まあ、当たったとしても、マントを傷つける事さえできないさね」

エレンはアンドロイドの後ろと左右に、気づかれないように蔓が近づいているのを確認した。

アンドロイドは拳銃のトリガーを絞った。弾はエレンを通過したように見えた。すばやく動いたのである。

エレンの動きに反応したアンドロイドだが、蔓が瞬時に巻きついて、追うのが遅れた。上からも左右からも蔓が伸びて、足まで体をぐるぐる巻きにした。

アンドロイドの体に巻きついた蔓が、プチプチと音を立て引きちぎれていく。

エレンが地面を足で叩いて合図した。

蔓が引きちぎられたと同時に、アンドロイドは突如開いた穴に吸い込まれるように落ちていった。

何かが一瞬で穴を掘ったのだ。

エレンはアンドロイドが落ちた穴へ、カゴから取り出した水筒のような物から、粘性の砂を大量に穴へ注ぎ込んだ。

エレンは十メートルほどの深さの穴を覗き込み、動きを止めていくアンドロイドを見下ろした。

「こいつは、ナノサイズの動力阻害装置さね。あんたらの頭じゃ対策してないだろう」

飛んでいるカナブン型カメラに向かって、

「見てるんだろ。このアンドロイドは貰っておくよ。元々ジジイの設計だしね」

エレンはマントの内ポケットに手を入れ、下手投げで何かを投げた。

小型の投網である。飛んでいるカナブン型カメラを捕まえ、高電流を流した。

地面に落ちたカナブンをエレンが踏みつけ壊した。

藤原が、井出に急いで進言した。

「猫がこっちに向かって来ますよ。逃げたほうがいい」

広場の前に立ち並ぶ針葉樹の真ん中の頂上にエレンが立っていた。

「もう遅いさね。あんたら、逃さないよ!」

防衛省の部隊を指差し、木を叩いた。

「放ってやりな!」

この木は、刺激を与えると、自己防衛反応が起こる。一瞬にして森の木々に信号が伝わり、枝が一斉に部隊の一団へ向いた。

無数の針のような葉が隊員に向って飛んでいく。逃れることはできない。

藤原が柄を抜き井出を庇った。柄から白いような透明のような刃が生えた剣で飛んでくる葉を切っていく。

元助手の小山は、頭、顔、身体中に針のような葉が刺さって倒れた。

名無し部隊は、咄嗟に頭と顔を守った。体中に切り傷ができ、手や足に葉が刺さっているが、防弾防刃戦闘服のおかげで、致命傷にはなっていない。

森の木の上から、エレンが飛び降りてきた。

エレンが藤原に向って、歩いていく。

「その柄は、思念を増幅させる装置かい?念で刃を作るとは、軍の研究所もいいのを開発したじゃないかい」

藤原は無視して柄を握り直し、剣を正面に構えた。

「小山を車に入れろ。全員車に乗れ! エンジンを掛けろ!」

藤原はエレンに向かって走りだした。

エレンが右手をカゴに入れた。

自分の間合いに入った藤原が、剣を振り下ろした。届かないと思われたその瞬間、白みがかった透明の刃が伸びた。

エレンは後ろに跳びながら、ウツボカズラに似た植物を握って、溶解液を放った。

着地したエレンの右腕から血が地面に流れ落ちたが、マントには傷一つない。思念の刃は、マントを通り抜け、腕だけを切り裂いたのだ。

溶解液のかかった藤原の左腕は、肉が溶けて骨が見え始めている。

藤原は突然、後ろの車に向かって走りだした。柄をベルトに差し込みながら叫んだ。

「脱出だ!」

エレンが叫ぶ。

「そうはさせないよ!」

地面を右足でドンと叩いた。

一台目の車が走り始めた。

動き始めたもう一台の車の後ろのドアが開いた。

藤原が車に追いつくと、名無し部隊の隊員が手を差し伸べた。

「隊長! 捕まってください!」

藤原は差し出された手を右手で掴み、車に跳び乗った。

その直後、地面が盛り上がり、巨大なミミズが車に襲いかかる。

車はトンネルに入ったが、ミミズは追いかけてきた。後部座席に座っている隊員が傷ついた手で、銃をミミズに向けて撃つが、全く効かない。

ミミズは車に追いつくと、前後に並んだ二台の車を一気に押し始めた。

運転手はブレーキを踏んでいるが、何の役にも立たない。

「止まらない!」

トンネルを抜けても、車は押し出されていく。入り口のガードレールは、部隊に破壊されて開いたままだ。

車を押し続けるミミズの勢いは止まらない。車内からは絶叫が聞こえる。

「ウワッー!!」

二台の四WD車は反対車線のガードレールを突き破り、崖から落ちていった。

エレンは血の滲む右腕を押さえながら、脳内で松中博士に話しかけた。

(また引っ越さね)

(エレン、人間を偽人間にする技術は私が以前に研究していたものだ。黄色いピンポン玉のようなAIが偽人間の脳にアクセスして操っているみたいだね。記憶をコピーしているから、偽人間だと誰も気づかないだろう)

(そうかい。それでどうしようっていうんだい)

(私の研究がこんな風に使われるのは我慢ならない。だれがどうやって手に入れたのか探しだす。偽人間もすべて排除する。手伝っておくれ)

(ジジイ、スライム退治は、こっちも命がけさね)

(エレン一人じゃ無理だよ。私をアンドロイドに移しておくれ)

エレンは笑いながら、

(あいつは、あたしの執事にプログラムをし直すさね)

(執事がほしいのかい。私がアンドロイドになって執事をしてあげようか?)

(それなら、こき使ってやろうかね。あんたは、たった二人で何匹いるかも分からないスライムを、すべて排除する気かい)

(まず都会に行って、だれがスライムを作って、何をしているのかを調べるところから始めよう)

(気が乗らないね。それに、あたしにゃスライムを排除する理由もないさね)

(考えといておくれ)








作者より


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