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世界最強は善人じゃない~やりたい事だけして好きな人だけ守ります。あれ? 結局善人している?~  作者: 村岡 太一
二章 世界最強の幼児

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三七話 八つ当たり

 僕はエヌに振られた。


 正直、ショックだったけど、僕はエヌが好きだからエヌの考えを尊重する。


「ベルク様。おはようございます」

「おはよう」

「あ、あの」


 エヌが起きたから、頭を撫でた。

 昨日まで撫でられる側だったけど、今日は僕が頭を撫でた。


 エヌは少し戸惑とまどっているけど、それぐらいで僕の手を受け入れてくれた。


「エヌの髪はとても綺麗だね。ずっと触っていたいよ」


 乱れた髪を撫でながら整えた。


「エヌもベルク様の髪が好きですよ。白くなっちゃいましたけど、その色もいいと思いますよ」

「ありがとう。そろそろ行こうか。ご飯が用意されているよ」

「あ、あの……」


 エヌが僕の頭を撫でようとしたけど、僕は先に動いた。

 撫でられるのも好きだけど、これじゃ男っぽくない。


「家出をしちゃったから、久しぶりの家族との食事だから緊張しちゃうね」

「嫌なことがあったらエヌが慰めてあげますからね」

「大丈夫だよ。もうエヌの前であんな恥は晒さないから」


 実家で食事をするのは久しぶりだ。


 僕たちは家族が食事をする為の食堂に向かった。


 ――――――


「おい。ベルク。一年前は世話になったな」


 身の程知らずの一個上の兄さんが食堂に行くまでの道で待ち構えていた。


「何の用ですか?」

「食事の前に決闘をしろ。勿論、お前の侍女を賭けて――」

「……身の程知らずが」

「ぐはっ!」


 僕は兄の首を掴んだ。


「決闘って言ってたよね? 自分の主人が言った事だろ」


 兄の専属侍女が僕に刃を突き立てて来た。

 当然ながら、普通の刃は僕には刺さらない。


「その手を放してください! 《ファイヤーボール》――ま、魔法が発動しない」

「ふっ。無駄なことを」

「《ファイヤーボール》! 《ファイヤーボール》! お願い発動して」


 なんでこいつらは、身の程も弁えずに僕に立ち向かおうとなんてするんだろうか?

 こっちとしても迷惑なんだ。


「分かった。哀れだから、君の指を切り落とした箇所だけ指を放してあげよう」

「約束ですよ」

「や、やめろ。あいつは関係ないだろ」


 侍女が刃を指に押し当てた。刃が皮膚を貫き血が流れ始めた。だけど、それ以上は刃が動かない。切断をする勇気はないみたいだ。


「ベルクッッぅ! お前だけは許さないぞ」

「ははは! 自分から吹っ掛けておいてその言葉はお笑い以外の何物でもないだろ」

「お、お前――」


 兄を地面に叩きつけた。

 気絶はしていない程度に威力は調整した。まあ、もし仮に気絶しても意識を戻す方法はいくらでもある。


「俺は言ったよな。今度、エヌを狙ったらただじゃ済まさないって。てめぇの頭はそんなに劣っているのか? 同じザルゴルの血を持っているはずだよな」

「お、俺が悪かった。許してくれ」

「ああ。なるほど、認識の違いって奴かな。知るか。その程度も考えられないのか」

「痛ぇ! クソがッ!」


 兄の手の甲を踏み抜いた。


「じゃあ、選択して貰おうか。兄さんのメイドさんを僕にくれるか。両手足を砕かれるか。どっちにする?」

「死ね。クソ野郎」

「ははは! 愚かだね。両方をご希望されるなんて」


 兄は僕を睨みつけるだけの威勢はあるみたいだ。


「ベルク様。やめて下さい! やるなら私の体にしてください!」

「その言い分だと、君の手足と兄さんの手足が同価値って事になるけど、君は兄さんと同じ地位なのかな?」

「わ、私を好きにして貰っても構いません。だから――」

「気持ち悪いなあ。その胸の脂肪が邪魔すぎるんだよ。兄さんの趣味? 僕には理解できないね」


 これが弱者を虐げる感覚。意外と悪くない。

 そもそも、兄さんは僕の大事なエヌを奪おうとしたんだ。そんな相手が弱者でも強者でも関係はない。徹底的に叩きのめす。


「お願いします。エッシュ様をお許し下さい。まだ八歳なんです。なんでもしますから」

「僕はまだ六歳なんだけどね。いや、まだなってすらないけど。それで、あっちの未熟さを許して僕に大人になる事を強要するんだ」

「そのような意図はありませ――」

「グアァァ!」


 兄さんの片足を踏み抜いた。悲鳴が屋敷の中に響いた。


「僕はね。君たちに慈悲を掛けているんだよ。だって、爪を一枚ずつ剝がしたり、皮膚を削ぎ落している訳じゃないんだ。手足を潰すぐらい僕も修行で何度もやってきた。やろうと思えば、知り合いの拷問官を呼んで拷問してもいいんだよ。おまけにいっぱい反省できるように回復魔法を掛けてあげることも出来る。どう? それに比べれば慈悲深いでしょ」

「お、お願いします。お許しを――」


 兄さんの侍女は抵抗を諦めて土下座をした。


「ベルク! そこまでだ。今すぐ離れろ!」


 兄さんの悲鳴で家中の人たちが集まって来た。家族が勢ぞろいするのが食堂じゃなくてこんな廊下になるなんてね。

 当主のお父さんやお爺ちゃんも来ている。


「エツド公爵閣下。なぜ、私が止めないといけないのですか?」

「お前のそれはやりすぎだ。まだ、八歳の子供を相手に――」

「ギャァァー! や、やめてくれ」



 僕は兄さんの残っていた手を踏み抜いた。


「お前! 私の言うことが聞けないのか!?」

「閣下には申し訳ございませんが、納得できない理由で行動を阻害しないで頂きたい」

「どうしたんだ。そんな子じゃなかっただろ」


 兄さんの残った足を潰した。

 もう悲鳴が出ないのか泡を吹き始めた。


「兄さんの専属侍女は僕が貰います。いや、やっぱり要らないから一般給仕をしてて。これは命令だから。逆らったら、関係ないけど兄さんをいじめるから気を付けて」

「は、はい。承知いたしました」

「お待たせしました。話は終わりました。さて、食事にしましょうか。兄さんは食事の気分じゃないと思うので、余った分は僕が貰います」


 集まった人だかりを通ろうとしたけど、お父さんとお爺ちゃんが道を空けてくれなかった。


「ベルク。お前。何をしたのか分かっているのか?」

「ええ。兄さんから侍女を懸けた決闘を挑まれて僕が勝利した。僕は過去の賭けの清算も含めて手足を破壊した。何か問題がありますか?」


 貴族の決闘において、賭け事を反故ほごにした場合にはそれなりの罰則を与えることができる。その罰則は自由に決められる。

 そもそも、命を懸けることが前提の決闘において命があるだけでも喜んで欲しいぐらいだ。


「そんなことをしていると仲間がいなくなるぞ」

「『無償で手を差し伸べよ』でしたか。それは狂ったレベルの善人同士での理想論だ。この世はそんな次元で成立してない。悪意を持って搾取されるぐらいなら、僕は化け物と呼ばれてもいい」


 フェトラが見た世界の僕は悪意によって搾取されていたらしい。

 今度はそんな間違いはしない。


「僕と敵対したいなら、いくらでも相手をします。国だって相手にしてやります」

「お前はそんな男じゃなかっただろ」

「いえ、元からこの考えで行動していました。ただ、僕の大切なものを狙う相手に優しくし過ぎてしまっただけです。これからは容赦はしません。それがベルクという男です」


 従者の人たちは怯えているけど、どうでもいい。この場で僕にとって大事なのはエヌだけだ。


「そうか。それがお前の選択なんだな。分かった。ケサド。お前は絶対にベルクと対立するな。お前たちの利益は相反しないはずだ。くれぐれも感情的にならないように」

「承知いたしました」


 ケサド兄さんがお父さんに深々と頭を下げた。

 お父さんにとって一番嫌なことは当主争いで血が流れることだ。僕は当主の座に興味なんてない。兄さんを傷つけたのはあくまで個人的な理由だ。


 下手に刺激をすれば、国すら傾きかねない相手に何かを強制するよりも、凡庸な長男に安全策を取らせた方が何倍も楽だろう。


「食事の用意は出来ている。行こうか」


 一代前のザルゴル家はもっと悲惨な光景が日常だったことを考えるとお父さんは僕の行動をそれほど問題視するつもりはないみたいだ。


「……ベルクや。食前に儂と戦ってくれんかのう」


 お爺ちゃんは何かを悩んだ後、戦いを挑んできた。


「別にいいけど、怖くないの?」


 さっきの光景を見てから僕に勝負を挑むのは正気の沙汰とは思えない。


「ベルクは優しいからのう。老人の運動に付き合ってくれるよのう」

「……ええ。運動ならば付き合いますよ」


 お爺ちゃんはお爺ちゃんなりに考えがあるみたいだ。僕は大切なものさえ狙われていなかったらいくらでも勝負は受けるし、戦いの範疇を出たりはしない。



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