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世界最強は善人じゃない~やりたい事だけして好きな人だけ守ります。あれ? 結局善人している?~  作者: 村岡 太一
二章 世界最強の幼児

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二一話 獣人とドワーフ

 今回、帝国に一緒に行くメンバーは五人だ。


 従者としてエヌを含めて、異種族の三人。

 そして、護衛として無理やりやって来た人間が一人いる。


「いやー。公爵様のご子息となればボクが護衛になるのは当然だよねー」


 宮廷魔法師団の団長であるサラサが護衛として馬車に乗り込んで来た。


 一応、公式で行くから表向きは護衛はいた方がいいかもしれないけど、これは国際問題になるんじゃないかな?

 っと思っていたけど、よく考えたら、ギルケアスは最強と呼ばれる二人を護衛に付けて王都に来ていた。あっちがやったことを返すだけだから問題はないのかもしれない。


「誰が何人来てもどうでもいいけどよ。本当に珍しい鉱物が見れるんだよな」

「うん。ギルケアスにはオリハルコンの鉱山があるんだ」

「それは楽しみだぜ」


 この口の荒い子はドワーフのツクリ。歳は僕の二個上の女の子で、異種族解放同盟の中で唯一と言ってもいい僕にため口で話してくれる人だ。


 僕の使う剣、カイザーエンペラーは彼女に作って貰った。


 発想力とそれを実現する基礎技術という僕にはない才能を持つのがツクリだ。


「ツクリ。お前は主に失礼ではないか?」


 ツクリの態度とは真逆で僕を神格化するような発言をするのが、犬獣人のメツだ。彼は十五歳で武闘派の獣人だ。だけど、体は細いし恰好や見た目はすごい女の子っぽい。

 多分、可愛さという次元で言うならばメツは貴族の令嬢たちよりもあると思う。


「お前はこいつの事が理解できてねぇんだよ。そんな無駄な神格化こそ求められてねぇんだよ」

あるじのお陰で豊かな生活が出来ているのだぞ! 敬意を払うのは当然だろ!」

「メツもツクリも落ち着いて」


 二人は僕に対する接し方で対立している。


「主の為に命を張るためにぼくは来たんだ。お前みたいな遊びで来たような奴とは違うんだ」

「ケッ。ベルクが勝てないなら、お前みたいなのは肉の壁にすらなれねぇよ。それこそ犬死にってやつじゃねえのか?」

「それでも命を懸けるのが忠義じゃないのか!? 我ら獣人族はみんな主に身を捧げる覚悟がある」


 僕が止めたのに、二人は過熱してしまっている。


 実を言うと、現状において解放同盟全体で獣人とドワーフの対立が起こっている。

 その原因は僕にある。


 みんな僕の事を慕ってくれているのは変わりない。だけど、その慕い方に違いがあってそれが対立構造を生んでしまった。


 獣人は僕を神の如く崇拝して、ドワーフは僕を一人の子どもとして扱ってくれている。

 エルフの人たちはハイエルフのサミュを慕っているから、あんまり関係しないかな。


 僕が連れて来た二人は各種族の中でも顕著に僕への対応が違う。


「喧嘩は止めて」

「ですが主――」

「二人が喧嘩すると僕にとって嫌なことなんだ」


 僕は敵からみんなを守る力は手に入れたと思う。だけど、仲間のみんなの対立が生まれた時にどうすればいいか分からない。

 それは僕が避けて来た『政治』の領域に入って来る。


 ここに敵はいない。いるのは味方だけ。どっちが悪いとかそんな簡単な話でもない。


「申し訳ございません」


 今でこそ、獣人たちが使う武器はドワーフが作っていて、対外交渉や武力は獣人の領域になっていて利害が一致している。だから、態度では問題があるけど実害は出ていない。

 だけど、この問題はいつか深刻な溝を作り出すと思っている。


 望んではないけど、このままじゃ宗教の解釈論争みたいになって、血が流れる可能性もある。


 最終手段はあるにはあるけど、それはみんなの生産性を下げる事に繋がるし、僕が居なくなった後に禍根を生む。


 普段、僕は異種族解放同盟の人たちの所に行くことはあまりない。

 今回の件で対極の二人を連れてきて、数日見てみると何かしら解決策が見えるかもしれない。


 ――――――


 僕の考えは甘かった。二人は事あるごとに互いを罵り合っていた。


 食事の時。僕に料理を渡す時は。


「主は肉の方が好きに決まっている。もっと配分を調整しろ」

「あいつに好き嫌いなんてねぇだろ」

「以前、肉についてお話されていただろう」

「それとこれは違うだろ。獣人は考える頭もないのか?」

「そこまで、早くご飯にしよう」


 宿で寝る場所を決める時。


「男女で別れましょう! 主とぼくが一緒に寝ます」

「あいつは五歳児だろ。なら男女とか関係ないだろ。お前だけ一人で寝ろよ」

「なんだと。主も立派な男性なんだぞ。ドワーフみたいに無機物しか見れない種族には主が立派なおすであることは分からないんだな」


 こんな感じで何かと口論となる。互いに種族単位で相手を口撃こうげきするからたちが悪い。


 うーん。どうしたものか。と思ったけど、僕は獣人の事はあまりよく知らない。

 ドワーフの人たちは武器や魔法陣を作る過程で色々会話をしてきたけど、獣人とはあんまり深く関わってこなかった。


 初期構想の魔法陣事業において、手先が器用なドワーフが陣を描き、魔力のあるエルフが魔力を込めるという流れは想像していた。獣人は村の護衛をしてくれればいいやぐらいの印象だった。

 だけど、獣人の人たちは自分で頭を働かせて商人として活動して、自分たちの力で流通路を確保した。


 実は僕は獣人の人たちがなんで異種族解放同盟に入っているか具体的な事例は知らない。


「男女で別れよう」

「お前がそう言うなら別に構わないぜ」


 ツクリ以外が残念がっているように見えるけど、ここでは僕が一番権力を持っている。

 みんな僕の決定に従って、部屋を割り振った。


「メツ。君にちょっと聞きたいことがあるんだ」

「はい! なんでしょうか?」


 メツはご機嫌に尻尾を振っている。何がそんなに嬉しいか僕にはよく分からない。

 この分からないを色々聞いてみよう。


「メツはなんで女の子みたいな恰好をしているの?」

「これはですね。種族の特性です。黒狼族は男女関係なく女性のような見た目なんです」

「じゃあ、男女の見分けはどうするの? 子孫を残すのも難しそうじゃないかな?」

「ご心配なく、我々は匂いで雄雌を見分けます」


 見た目じゃなくて、匂いで見分けるんだ。

 正直、個人の趣味だと思っていたから聞かなかったけど、種族としての特性があったんだ。


「すごいね。じゃあ、好きな相手とかは見た目じゃなくて匂いで決めるのかな?」

「そうですね。他の種族とは違ってその傾向が強いと思います」


 なるほど、少し分かった気がする。

 獣人は他種族とは感覚が違う。それが分かれば理解の道筋はなんとなく分かる。


「あっ。ぼくは主に身を捧げているので、この体は好きにして構いません。むしろ好きにしてください」


 僕が獣人の生体に興味を持ったと勘違いしたのか、体を実験体として使っていいとまで言っている。きっと、種族の違いによって感性の違いもあるはずだ。


 メツの尻尾が激しく揺れている。表情からも分かるけど、僕に身を捧げることを喜びとしている節がある。


「僕を慕ってくれるのは嬉しいけど、獣人のみんなは僕に忠誠を誓うみたいなレベルだよね。メツはなんでそんなに尽くしてくれるの?」

「これは、黒狼族だけではないと思いますが、獣人の群れは強い雄を中心に動きます。主は言うまでもなく強い雄です」


 なるほど、獣人は強さを重視するんだ。剣術名家のシット家なんかも似たような感じだけど、獣人は匂いとかより本能的な所で相手の強さを察するみたいだ。


「さらに群れを豊かにしてくれる雄にはみんな尊敬をします。ぼくは弱くて迫害された身なので、強い雄を見ると気分が高まるんです。商売の護衛をしていて、雄のぼくの体にも価値があるって知りました。主が望むのなら何でもします」


 僕には他人に尽くすっていうその考え方? 倫理観なのかな。よく分からないし、まだ理解は出来ないと思う。

 だけど、慕われていて嫌な気持ちはしない。


「じゃあ、尻尾と耳を触らせてよ。少し気になっていたんだ」


 実は前から獣人の体については興味があった。

 人の体に触るというのはそれなりの理由がないと難しい。


 二人っきりだし、男同士だから今しかない。


「喜んで!」

 

 本人は嬉しそうにしているし、いろいろ触ってみた。

 感触は人間の髪とは違って、ふわふわしていて気持ちよかった。


 

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