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世界最強は善人じゃない~やりたい事だけして好きな人だけ守ります。あれ? 結局善人している?~  作者: 村岡 太一
一章 分岐点

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九話 ハイエルフ

 戦場が分かれ、サミュラスのいる場所は魔法使いのみとなった。


「なぜだ! あなたはエルフでありながら、この世界の惨状に目を向けない!?」

「亜人種たちが迫害されていることは知っている」

「それを知っておきながら、傍観ぼうかんするとは。今の貴様は人族に飼いならされた犬だ!」


 感情に任せた炎魔法は威力こそ高かったが繊細さが欠けていた。


「? 犬で悪いことがあるの?」

「エルフとしての誇りがないのか!」

「エルフに誇りなんてあったの?」

「貴様!」


 攻撃をしようとしたエルフの女だったが、魔法が出ることはなかった。


「遊びはおしまい。ハイエルフとして相手する」


 ハイエルフとなったサミュラスの周囲に魔力が集まりだした。

 周囲の魔力が消え、エルフたちの魔力もほとんど奪われた。


「な、なにをした!」

「ハイエルフは周囲の魔力を奪い取る。氷魔法《氷花ひょうか》。雷魔法《弱電流じゃくでんりゅう》。毒魔法《睡眠毒スリープ》」


 喋っていた女だけ凍らされ、残りの三人は電気で気絶させられた上で眠らせる魔法で倒された。


「ば、化け物だ」

「どうする? 死ぬ? 捕まる?」

「やめろ。私たちは同族じゃないか」

「……同族は嫌い。でも、君たちの団体の理念は素晴らしいものだと思う。全種族が平等な世界。頑張って欲しいとも思う」

「だったら、なぜ、こちら側に着いてくれない?」

「わたしはわたしの周りを守るので精一杯。だから、何度も言っている。邪魔はしない」

「無責任だ!!」


 同族でありながら、人間のことばかりを考える相手に怒鳴った。


「ハイエルフに進化したあなたさえいれば、我々の勝利は確実になる。それに、どっちつかずであってもあなたがいない我々の士気が下がる! ただ長生きなだけのエルフならば、どうにでもできた。だが、ハイエルフはエルフにとって信仰の対象だ! ここで仲間にしなければエルフは動けなくなる。だから、頼む。仲間になってくれ!」

「焦りすぎ。誰にそそのかされた?」


 異種族解放同盟についてはサミュラスは何度も勧誘を受けてきた。だが、その度に干渉をしない事だけを約束するだけで、互いに動きはなかった。


 なのに、今日は対策を練った上で攻めて来た。

 この戦力をぶつける相手と時期を見誤っている。サミュラスはそこが疑問だった。


「ゼドアムという国はあなたと英雄ガルローの二枚の看板で外敵から身を守っている。《叡智の司書長》。いや《戦場の悪魔》サミュラス・リッター。あなたのお陰で世界的に見てエルフの地位は高いものとなった。だが、あなたが死ねば世界が混乱する。我々はそれに乗じる」

「君たちは醜い政治の被害者。どこの国かは大体分かるけど、今は許してあげる。《麻痺毒まひ》」


 魔法で残っていた女の体を拘束し、他の魔法を解いた。


「今はわたしとガルローの二枚看板。でも、これからはあの子が世界の中心になる。あの子が信念を持って君たちに味方するのなら、わたしも協力する」


 ――――――


 一方、暗殺者の二人は終始、一方的な戦闘が行われていた。


「あー。これだから、暗殺者って嫌いなんですよ」

「がぁ」

「もう、手足を動かすのも辛いでしょうに。殺意だけは一人前ですね。あなた。国で訓練を受けた暗殺者ですね」


 黒い影を纏った獣人の女はエヌによって地面に倒された。


「なぜ見える?」

「闇魔法ですか? こんなのベルク様とのお遊びに比べたら隠れてないも同然ですよ」


 再び獣人が背景と同化し隠れた。


「獣人のパワー。毒の短剣。闇魔法。全部無駄ですよ。あなたはエヌには勝てません」

「死ね」

「だから、何度言ったら分かるんですか?」

「がぁ」


 短剣を避けられて今度は腹部を蹴られた。

 エヌは追撃をしなかった。


「なんで殺されないか分からないですか? これは教育なんですよ。あなたは黒狼こくろう族ですよね。犬って序列に逆らわないってエヌは学びましたよ」

「犬じゃない。死ね」

「異種族解放同盟なんて初めて知りましたけど、そんなエヌにも今回の襲撃について一つ。分かっちゃったんですよ」

「ぐっ」

「それは、あなたが他国から派遣された工作員ってことです。先輩のアドバイスですけど、今から自害するか逃げた方が楽ですよ。まあ、あなただけは逃がしはしませんが」

「がぁ」


 それは一方的な暴力だった。

 ボロボロになった獣人の体は打撲跡が一つまた一つと増えていく。


「覚悟は決まりましたか? まあ、そう簡単には決まらないですよね」


 エヌは獣人を地面に倒した後、両肩を外した。


 獣人は目を血走らせながらも痛みに耐え、エヌを睨みつけた。


「まだ抵抗するんですか。その執念深さは認めます」

「死ね!」


 腕が動かない代わりに噛みつきで殺そうとした。

 しかし、そんな単調な動きがエヌに通じるはずもなく、首を掴まれて地面に叩きつけられた。


 両腕が動かない状態で馬乗りされ、足を動かすことでしか抵抗ができなかった。


「かわいらしい牙ですね。あっ。これが毒ですか?」


 倒れた獣人の口を開かせて、奥歯あった毒を取り除いた。


「それにしても獣人は頑丈ですね。打撃だけでは倒せませんでした。でも、もういっぱい動いたのでおねんねの時間ですよ」


 獣人の少女の首を絞め意識を落した。



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