薬瓶
ジョンという食堂であった男に連れて行かれたのは、ステンリーという家の商家だった。
応接室に通され、侍女していたというリリー・ステンリーの父親ジャック・ステンリーと母親のサリーナ・ステンリーと会うことができた。
「娘は、2週間ほど前王宮から暇を出され帰ってきたのですがその際、右腕に火傷を負っていて王宮からの説明は
娘が,ミルフィー様に失礼をはたらいたこと、そして自ら火傷を負ってしまったと理由で暇を出されたと帰されたのです」
「いや、ミルフィーが!!」
(ユリアス・・・・)立ちあがろうとするユリアスの服をひき制止する
ユリアスがドスンとソファに座るが呆然としていたままだ
「私達は医者の卵なのでお嬢様の患部を見せていただきたいと思っています、このように最高級のポーションも持っております」
ハイネに持たされたポーションがこんなふうに役に立つとは・・・・
「ありがとうございます、ただ、今娘は誰とも会えない状態でございまして・・・・・」
「では、私だけでも・・・・・・一度だけ機会を作っていただけませんか」
しばらくの沈黙が続いたあと、ジャックがひと呼吸おいて口を開いた
「よろしくお願いいたします、娘の火傷を治していただけるのであれば・・・・・・」
「はい、ぜひご期待にお応えできるように努力いたします」
シファーとユリアスには応接室で待ってもらい、俺だけ部屋に案内された
「リリー、お医者様がいらしているの入るわね」
部屋にはいるとベットにもたれ座る16歳くらいの女の子がいた
「リリー、こんにちは私はアルという医者です
今日は良いお薬を持ってきました 君の怪我を治したいと思ってね すまないが怪我をした右腕を見せてくれないか? 」
しかし、彼女は焦点が合わない瞳でぼーっとしたまま俺の呼びかけのも反応しなかった
サリーナの許しを得て彼女のベッドサイドまで近づきもう一度声をかけた
「ほら、薬を持ってきたよ」と薬瓶を彼女に見せて声をかけてみた
初めてこちらを振り向いた途端、焦点があっていなかった瞳が大きく見開き体が震え出した
「え!? 」と俺が言った瞬間
「いやあ〜!!怖い! 怖い!怖い!」と泣き叫びながらベッドから落ちた
「リリー!! どうしたの!」
「きゃあああ!申し訳ございません、お許しください!!もういたしません」
とリリーは震えながら小さく丸まり土下座をして叫ぶ
しかし、完全に興奮状態だ、過呼吸の症状も出ている
「ラヒーラ」と手をかざす
七色の光がリリーを包む呼吸が落ち着き右腕のひどい火傷のあとが少しずつ治っていく
よく見ると右腕だけでなく見えている部分あちらこちらにあざがあったようだ
この調子なら身体中あざだらけだったに違いない しかしあざも綺麗に治っていく 良かった……
「サリーナさん、私がどのように治したかは他言無用でお願いいたします」
サリーナさんは、リリーを抱きしめながら泣きながら頷いた
リリーが何か呟いている「紫・・・・怖いの・・・・ごめんなさい」
体の傷は治っていても心の傷は治せない
「サリーナさん、心の傷は治せなかったようです 必ず元のリリーさんに戻れるように支えてあげてください」
そういうと
「火傷や体についた傷を治していただいただけでもすごくありがたいです。諦めていたんです・・・・・・本当にありがとうございます」
そう言って深々とお礼を言ってくれた 騒ぎを聞いて応接室にいた3人が部屋にやってきた
「何事だ!」と怒鳴りながら入ってきたジャックはリリーの綺麗になった肌を見て泣きじゃくりながら彼女とサリーナを抱きしめていた
「どうしたんだ、リル」ユリアスに尋ねられ
「いや、この薬瓶を見せた途端・・・・」そう言ってさっき見せた薬の瓶を手にもった
薬瓶が光に照らされ紫色の瓶がアメジストのように光った
「やっぱりそうか、そうだったんだ」
「何がそうだったんですか?」シファーが俺に問いただす
「わかったんだ、「お姫様」が! 」
これで俺たちの目的地に辿り着けるかもしれない