あっけない最後
鉱山には、魔塔の魔術師達そして魔塔の主であるグリーと俺が踏み込んでいった
鉱山の指揮をとっていたのはカリオス王国宰相コリー・ユルーゼとアレクだった
見事にあっけなく鉱山は魔術師により制圧され、ユルーゼとアレクは、魔塔に連行され作業員たちは解放され用意された馬車に乗り家へと帰って行ったのだ。
そして、サタームスはというと反サタームス派の先鋒アッサム公爵にこれまでの背任行為の数々の証拠と前皇帝夫妻暗殺の証人が現れ、そして今回の禁忌の魔術による責任が決め手になり牢獄へと囚われたのである。
彼らの処刑は数日うちに行われるであろう
長い間ずっと願っていたサタームス親子の失脚、両親の仇うちだが、あまりにもあっけない幕の降り方に何か、大切なものを見落としているような気持ちが、心の中をしめていた
カリオス王国国王は、自分は何も知らずユルーゼが勝手に行ったこととしカリオス王国王室には関係ない事だと切り捨てた
サタームス親子の処刑の日取りが決まり、アッサム公爵が正式に俺を皇太子として迎えたいと、俺と父上に会いにジーゼメリウスの館まで数人の家臣と共にやってきた。
「私は、実はこんなにあっけなくサタームス親子が失脚するとは思いもしなかったのです。結局私は、何もできず両親の無念を晴らせなかったように思う・・・・・・・こんな私にただ、前皇帝の息子だからというだけで皇太子の名を名乗って良いものなのでしょうか」
「リアイアル様、私達は実はずっとこれまで貴方様がどれだけ努力されて生きていたかを、ジーザメリウス卿が、皆様方がこれまでリアイアル様を、愛され大切に育てて下さった事も私達は陰ながら見守り続けておりました」
「ルディお前、全て知っていたのか」
「コーティ、お前と何年の付き合いだと思っているんだ。私たちが皇子に何もできない分 お前が、どれだけ愛情をこめて育ててくれていたか。本当に感謝している」
「リル、お前には申し訳ないが私も、どうしてもポリーとジュリアの仇は俺自身の指揮のもとで行いたかったのだ」
父上の本音だった
父上は長年水面下で動き今回の指揮を全て取っていたのだった
「リアイアル様、我が国は現在瀕死の状態です 我らには光が、この国をもう一度立ち直らせるための希望の光が必要なのです どうか我らと共に、貴方の父上の国をもう一度笑顔で溢れる国にしていただきますよう我らと共に歩んでいただけないか」
「私で、いいのか、私もずっと父の国を笑顔で溢れる国に戻したいと願っている。私にみんな力を貸してくれるのか」
「もちろんでございます」
「わかりました、まだサタームスの事が終わったとしてもまだ何か解決していない気がする。これまで同様油断することのなきようよろしく頼む」
「かしこまりました」
その日は、リル・ジーザメリウスとしての最後の日になった。
家族水入らずに食事をし、母上は、
「貴方が誰になっても私の息子には変わりありません、貴方は私の息子リルです」
泣きながら俺を抱きしめた
双子は何が起こっているのかわからず ただ、いつもと違う雰囲気に戸惑っていた
夜、自分の部屋にいると父上が入ってきた
「心配するな、何も変わらない ここはいつまでもお前の家で、これまで通り何かあれば帰って来い 他の誰でもない、お前の父親は私なのだからな」と泣きながら強く抱きしめられた
「はい、俺は貴方の。息子です いつまでも」
夜が更けていく 明日からの生活が突然のことが多すぎて心が追いついて行けていないままに、そして何かスッキリしない気持ち悪さがまとわりついて離れないのだ
誰かに、操られているようなそんな気持ちにさえ陥ってしまうのだ
そして、日にちが変わるとともに父上に頂いたピアスを外し小さな小箱に大切にしまったのだ
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