決起
夜明け前に、家をでる。
「父上、行ってまいります」
父の眠っている背中に声をかける。ジーザメリウス公爵は、息子の声をしっかり背中で受け止めていた。
バルコニーでピアスを外す。既に自分で変化の魔法は、かけられるが、リルにとっては、自分自身の為の儀式のようなものだ。
風を纏い夜明け前の群青色の空を駆け抜けていき
グライシス侯爵邸の客室のバルコニーに降り立った
「シファー、すまなかった。かなり遅くなってしまったな」
「リル様からも、殿下からもご連絡頂いておりましたので大丈夫でございます」
「グライシス家の方々との食事は、大丈夫だったか? 」
「何も、話さなかったので大丈夫でございます」
それは、大丈夫 なのか?
「そうか、ありがとう
ご苦労だった引き続きハイネ嬢を頼む」
「御意」そう言ってシファーは、消えた。
昨夜、グーゼラスから受け取ったクラーケンの資料を読み
テレパシーで、ヘイロンに連絡する。
「どうした、リル」
「ヘイロン、すまないが姿を消してグライシス領の港まで来てくれないか」
「姿を消して? 」
「実は、クローケンが現れるようになってな、お前の力を借りたいんだが、ドラゴンまで現れたら領民が驚くだろう」
「確かに、では上空でお前が呼ぶまで姿を消して待機すればいいんだな」
「ああ、すまないが頼む」
「すぐ行くよ」そう言ってテレパシーを切った。
さて、今回のクローケンだが、ホクトは相性が悪い様なので姿を消してシファーと一緒にここを守ってくれ
クローケンの騒ぎに紛れてサタームスの私兵が襲ってくる可能性がある
「わかった、任せて」ホクトが元気に返事してくる
ブルー、マシロは俺についてくれ、ブルーは大きくなっていても大丈夫だマシロは小さいまま、人に見られないようにフードかポケットに隠れていてくれ
コン、コン とノックの音がした
「お客様、お食事のご準備ができました、どうぞ食堂にお越しください」と侍女の声がした
「はい、ありがとうございます すぐに参ります」
食堂に行くと既にグライシス家の4人は席についていた
「アルさん、ゆっくり休めましたか?」
グライシス侯爵が声を掛けてくれた
「ありがとうございます、お陰様でよく眠れました」
「昨日はお疲れのようで話ができなかったが、今日は元気そうでよかった」
シファー、本当に一言も話さなかったんだな・・・・・・
「ああ、昨日はすまなかった、クラウスさん」
「いやいや、それで朝から申し訳ないが………」
「クラウス! 朝からいきなり失礼ではないか」
「いえ、侯爵様、本当は、昨日お話を聞かなければならなかったのに申し訳ございませんでした クラウス様 クラーケンの件ですよね」
「ご存じだったのか」
やはり、クラウスは、クラーケンの件で俺を侯爵邸に招いたのだな
「はい、私は、クラーケンを退治する為にここに参りました」
「冒険者と、お聞きしたのでもしやと思い邸に招いたのですが……」
「クラウス様、クラーケン退治に参りましょう」
クラウスと固く握手をし、食事をとり港へ向かう準備をする。
正直すぐそばで食事をするハイネのことも気にはなるが、まだ彼女の顔をまともに見られない俺だった




