風の精霊
「ヴェイアヴァスタ 風の疾風 」と唱え、風を纏い空を駆け抜けていく
俺が先ず飛びだし、蛇螻蛄の気を逸らす
その後、後方からブルーとヘイロンが飛び出し魔石のあるだろう位置までいくが 蛇螻蛄が体をくねらせなかなか近寄れない
頭部を狙うが鋭い牙を素早く動かし俺を噛み砕こうとする
腹部を狙うヘイロンは蛇螻蛄のカッターのように鋭い固い羽に苦戦している
蛇螻蛄の背中にのり尻尾の鋭い尾が槍のようにブルーを襲うがブルーは懸命に避けながらも、ヴェイアヴィスポリス (風の渦)を繰り出しながら健闘している
攻防を繰り返して時間が経っていく……
このままでは、蛇螻蛄が仲間を呼んでしまう
「焦るな…… 焦るな…… 」と自分に言い聞かせる
活路を開くんだ
あのポッカリ浮かんでいたスツールのような雲が急に動き出した
動き出した途端、パァーとマントのように戦っている俺たちの上にマントのように広がった
その瞬間、蛇螻蛄の魔石が緑色の光を放った
「ブルー! ヘイロン! 一撃で行くぞ! 」
「ヴオルヴィオローデン(魔弾)」
ミスリルソードが七色の光を激しく放つ
蛇螻蛄の頭部にある一番大きな緑の魔石を貫いた
俺の攻撃と同時にヘイロンは、腹部の魔石に龍の雷をブルーは、尻尾の魔石に風の槍を貫く
蛇螻蛄は声を発することも無く粉々に散った
「こいつは、鍵を持っていなかったのか」
と思いきや、緑色の粉が上空のマントのように吸い上げられていく
「 ヘイロン! みんなを乗せて雲の上空に行ってくれ 」
雲の上に上がると大きな扉が扉が開いて佇んでいた
「中は、降りても落ちないのか?」
恐る恐る扉の中に飛びおり中にはいるとそこにはグリフォンとシルフがいた
シルフは白銀の長い長い髪の妖精だ
妖精というには、大人っぽく女神のようだ
「ありがとう、リル
よく蛇螻蛄の急所がわかったわね 」
「御礼を申し上げるのは、こちらの方ですよ
あなたが示してくださったんですよね
あの雲がないと今頃は、蛇螻蛄の餌食になっていたかもしれません」
「ふふふっ、それはどうかしら
それで貴方は、風の魔力を解放したいのよね」
「はい、いかがでしょうか
僕は、あなた達に認めていただけるのでしょうか」
「そうね、まだまだ未熟だけどこれからだものね
この力を解放したとしても貴方が使いこなせるように、貴方自身が成長しないといけないわ
その為の風の解放だと思ってね」
そういうとシルフは、長い髪を揺らしながら舞いながら風を起こす
柔らかい優しい風がキラキラ煌めきながら俺を包む優しく染み込むように風の魔力が俺に入ってくる。静かな「解放」だった
「私達は、行くわね
でもいつもあなたを見ているから…… 」
そう言って緑色の鍵を手渡してくれた
あの緑色の粉が鍵だったのか・・・・
「ありがとうございました 」
「あ、そうだ 水の扉は、ここにはないわよ」
「え、 どこにあるかお聞きしたいのですが……」
「う〜ん、 そうね・・・ 魔塔の主人に聞くといいわ」
そう言ってシルフとグリフォンは、飛び去ってしまった
魔塔の主人というと、ニコラス・グリー学園長
学園か、魔塔いずれかにいるだろう
「いずれにしても仕切り直しだな」
龍の渓谷まで降りていき、お母さんドラゴンや子供達に声をかける
「大丈夫ですか? 誰も怪我などなかったですか?」
「ありがとう、リル あなた達のおかげで誰も怪我することなく無事だったわ
あなたには、ヘイロンだけでなく他の子供も助けてもらったことになるわね」
「いえ、今回は、ヘイロンやみんなの力が大きかったです」
「ヘイロン、ブルー、ホクト、マシロ ありがとう」
「リルこの恩は、必ずいたしますね
ドラゴンは、何があってもあなたの味方でいるわ」
「では、私達は、これで一度ここを離れます
ヘイロン、ここで君とも別れるよ」
「リルいつでも呼んでくれ、飛んで行くから」
「ああ、ありがとう、必ず」
一度、家にかえり父上に報告し、水の扉を探さなければならない。
俺たちは、龍の渓谷を離れ家路へと急いだ